厳格な血糖コントロールで心血管イベントは減らせますか?(VADT)
ご訪問ありがとうございます。
今回は前回のADVANCE試験に続けて、VADT試験を読んでみました。
参考文献 Glucose control and vascular complications in veterans with type 2 diabetes.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19092145
PMID:19092145
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:コントロール不良の2型糖尿病をもつ退役軍人(平均年齢60.4歳)1791名
E:厳格な血糖コントロール(HbA1cをC群と比較して1.5%減らす)
C:標準的な血糖コントロール
O:(Primary) 主要心血管イベントが発症するまでの時間
※主要心血管イベント:心筋梗塞、脳卒中、心血管死亡、うっ血性心不全、血管疾患の手術、手術不能な冠動脈疾患、虚血性壊疽の切断
※使用薬剤
・BMI>27の患者:メトホルミン+ロシグリタゾンで開始
・BMI<27の患者:グリメピリド+ロシグリタゾンで開始
・厳格コントロール群はHbA1c<6、標準コントロール群はHbA1c<9を達成しなければインスリン導入
除外基準
→HbA1c<7.5%、6か月以内の心血管イベント発生、進行性のうっ血性心不全、重篤な狭心症、余命7年未満、BMI>40、血清クレアチニン>1.6mg/dl、アラニンアミノトランスフェラーゼが基準値上限の3倍以上
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→PROBE法?
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
サンプルサイズ
→1700名(パワー86%、α=5%)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率=93.6%
追跡期間
→中央値5.6年
結果
【ベースライン】
・平均年齢:厳格コントロール群:60.3±9.0歳 標準コントロール群:60.5±9.0歳
・両群ともに糖尿病の診断から平均11.6年
・HbA1c 厳格コントロール群:ベースライン 9.4±2.0% → 6か月後 6.9%
標準コントロール群:ベースライン 9.4±2.0% → 6か月後 8.4%
心血管イベント発生までの時間(Primary outcome)
HR=0.88(95%CI:0.74~1.05) p=0.14
心血管死亡までの時間
HR=1.32(95%CI:0.81~2.14) p=0.26
全死亡までの時間
HR=1.07(95%CI:0.81~1.42) p=0.62
厳格コントロール群:24.1% 標準コントロール群:17.6%
感想
本研究の対象者は退役軍人であり、その結果を目の前の患者さんにそっくりそのまま適応する事は出来ないかもしれないが、HbA1cを8.4%で維持するのと、6.9%で維持するのとでは心血管イベント発生までの時間に差は見られないという結果であった。
今回の研究では、ベースラインのHbA1cが9.4%と、比較的コントロール不良の糖尿病患者が対象となっているが、それでもHbA1cを厳格にコントロールしてもイベント発生は変わりがない。
使用されている薬剤として、いずれもロシグリタゾンが開始薬剤として用いられており、これの有害事象としてもしかすると結果に影響を与えているかもしれない。また、厳格コントロール群では、HbA1c<6を達成していない場合にインスリン併用ということなので、インスリンを使いすぎな感じもする。
いぞれにせよ、ACCORD試験、ADVANCE試験の結果も含め心血管イベントを抑制するという目的での血糖コントロールは、案外厳しくしなくても大丈夫なのかもしれないなという感想。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。