メトホルミンで2型糖尿病関連イベントは防げますか?(UKPDS34)

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は前回のUKPDS33に続きまして、UKPDS34を読んでみました。

 

参考文献 Effect of intensive blood-glucose control with metformin on complications in overweight patients with type 2 diabetes (UKPDS 34). UK Prospective Diabetes Study (UKPDS) Group.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/9742977

 

 PMID:9742977

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:新規に糖尿病を発症した、過体重(理想体重の120%以上)で空腹時血糖109.8~270mg/dLの患者1704名(3カ月の食事療法を行った者、高血糖症状無し、25~65歳:平均53歳)

E:メトホルミンを用いた厳格な血糖コントロール:空腹時血糖<108mg/dl(6.0mmo/L)を目指す→342名

C:食事療法のみ→411名

O:(Primary)

①糖尿病関連エンドポイント(突然死、高血糖または低血糖による死亡、致死性・非致死性心筋梗塞狭心症心不全脳卒中、腎不全、切断、硝子体出血、光凝固を必要とする網膜症、失明、水晶体摘出術)

②糖尿病関連死亡(心筋梗塞脳卒中・末梢血管疾患・腎疾患・高血糖低血糖による死亡、突然死)

③総死亡

 

 ※メトホルミンの用量:開始用量850mg/日、最大2550mg/日

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→アウトカムが複数存在するため注意が必要かも

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→盲検化はされていないと思われる

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる(Table1)

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→記載が見つけられず

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→具体的な追跡率が分からなかったが、ランダム化された人数と結果の人数が同じなので大きく影響を及ぼすほどの脱落ではないかも。

 

追跡期間

→中央値10.7年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 E群:53歳 C:53歳

空腹時血糖 E群:145.7mg/dl C群:144mg/dl

 

HbA1cの変化】

E群:ベースライン:7.3%→6.7%→7.9%→8.3%

C群:ベースライン:7.1%→7.5%→8.5%→8.8%

 

※Intensive群:クロルプラミド、グリベンクラミド、インスリン使用

 

①糖尿病関連エンドポイント

E群:98/342件(29.8/1000人年)vs C群:160/411件(13.3/1000人年)

RR=0.68(95%CI:0.53~0.87)  p=0.0023

 

※Intensive群 :350/951件 vs C群:160/411件

RR=0.93(95%CI:0.77~1.12)  p=0.46

 

②糖尿病関連死亡

E群:28/342件(7.5/1000人年)vs C群:55/411件(12.7/1000人年)

RR=0.58(95%CI:0.37~0.91)  p=0.017

 

※Intensive群 :103/951件 vs C群:55/411件

RR=0.80(95%CI:0.58~1.11)  p=0.19

 

③総死亡

E群:50/2729件(13.5/1000人年)vs C群:89/1138件(20.6/1000人年)

RR=0.64(95%CI:0.45~0.91) p=0.011

 

※Intensive群 :190/951件 vs C群:89/411件

RR=0.92(95%CI:0.71~1.18)  p=0.19

 

心筋梗塞

E群:39/342件(11.0/1000人年)vs C群:73/411件(18.0/1000人年)

RR=0.61(95%CI:0.41~0.89)  p=0.01

 

※Intensive群 :139/951件 vs C群:73/411件

RR=0.79(95%CI:0.60~1.05)  p=0.11

 

脳卒中

E群:12/342件(3.3/1000人年)vs C群:23/411件(5.5/1000人年)

RR=0.59(95%CI:0.29~1.18)  p=0.13

 

※Intensive群 :60/951件 vs C群:23/411件

RR=1.14(95%CI:0.70~1.84)  p=0.60

 

・細小血管イベント

E群:24/342件(6.7/1000人年)vs C群:38/411件(9.2/1000人年)

RR=0.71(95%CI:0.43~1.19)  p=0.19

 

※Intensive群 :74/951件 vs C群:38/411件

RR=0.84(95%CI:0.57~1.24)  p=0.38

 

感想

 メトホルミンを用いる事で、糖尿病関連エンドポイント、糖尿病関連死亡、総死亡いずれも減らす事が出来るという事が示唆されている。

 本研究において、空腹時血糖目標値は108mg/dl(6.0mmo/L)以下であったが、これは上手くコントロール出来ていないようである(Figure3)。

 それにも関わらず、この研究の結果では心筋梗塞も減らす事が出来たという結果。UKPDS33では、結果が細小血管イベントに引っ張られている感じではあったが、こちらはハードエンドポイントも減っている点は着目したいところ。

 用いられているメトホルミンの量は、開始用量850mg/日で、その後1700mg/日、最大2550mg/日と、日頃見かける用量よりも多いような印象がある。

 対象となっているのは、過体重な患者群であり、このような患者に対しては少なくとも、グリベンクラミドやインスリンよりはメトホルミンを使う価値があるように思える。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。