心血管イベントリスク中程度の患者は血圧を下げるべきですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、心血管イベントリスク中程度の患者群において、降圧療法のベネフィットについて調べている研究の論文を読んでみました。

 

参考文献 Blood-Pressure Lowering in Intermediate-Risk Persons without Cardiovascular Disease.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27041480

 

PMID:27041480

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:心血管イベントリスク中程度(下記の心血管イベントリスク因子のうち少なくとも1つがある)の心血管疾患の無い患者12705名(男性:55歳以上、女性:65歳以上)

※リスク因子が2つ以上ある場合、60歳以上の女性も組み入れられている

E:カンデサルタン16mg+ヒドロクロロチアジド12.5mg→6356名

C:プラセボ→6349名

O:(Primary) ①心血管死亡、非致死性心筋梗塞脳卒中の複合アウトカム

       ② ①+心停止蘇生、心不全、血管再生の複合アウトカム

 

※心血管イベントリスク因子

エスト-ヒップ比が高い、低HDLコレステロール血症の既往、喫煙歴あり、血糖異常、若年性の冠動脈疾患家族歴、軽度腎機能障害

 

※除外基準

心血管疾患のある患者、被検薬・ACE-I禁忌の患者、中等度~重度腎機能障害、症候性低血圧症

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→12700名(パワー80% α=5%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

※Supplementary Appendixより、lost to follow upはE群52名、C群38名

→追跡率99.3%

 

追跡期間

→中央値5.6年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:E群:65.7±6.4歳 C群:65.8±6.4歳

収縮期血圧:E群:138.2±14.7mmHg C群:137.9±14.8mmHg

拡張期血圧:E群:82.0±9.4mmHg C群: 81.8±9.3mmHg

 

服用後のベースラインからの血圧低下

収縮期血圧:E群:10.0±13.1 mmHg C群:4.0±12.9 mmHg

拡張期血圧:E群:5.7±8.2 mmHg C群:2.7±7.9 mmHg

 

★①心血管死亡、非致死性心筋梗塞脳卒中の複合アウトカム(first primary outcome

E群:260/6356件(4.1%)vs C群:279/6349件(4.4%)

HR=0.93(95%CI:0.79~1.10) p=0.40

 

★② ①+心停止蘇生、心不全、血管再生の複合アウトカム(second primary outcome

E群:312/6356件(4.9%)vs C群:328/6349件(5.2%)

HR=0.95(95%CI:0.81~1.11) p=0.51

 

脳卒中

E群: HR=0.80(95%CI:0.59~1.08) p=0.14

 

心筋梗塞

E群: HR=0.84(95%CI:0.58~1.21) p=0.34

 

★冠動脈血行再建術

E群: HR=0.83(95%CI:0.58~1.19) p=0.32

 

感想

 心血管イベントリスク中程度の患者では、カンデサルタン16mg+ヒドロクロロチアジド12.5mgの併用で心血管死亡、非致死性心筋梗塞脳卒中の複合アウトカムを減らす事が出来なかったという結果。

 今回用いられている用量は、カンデサルタン、ヒドロクロロチアジドともに国内で用いられている量より多いが、そもそも今回の患者群のベースラインにおける平均血圧も138/82mmHg程度とそこまで高いわけでもないため、差が出にくかったという事もあるのかもしれない。

 少なくとも、心血管イベント既往の無いリスク中程度の患者において、収縮期血圧140mmHg未満のようなそこまで血圧が高くない場合は、必死になって降圧薬治療をする事のベネフィットは大きくないのではないかと感じた。

 関連論文にも当たってみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。