ACE阻害薬、ARBは肺炎リスクを低下させますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

在宅施設の往診時に、入居者さんの誤嚥性肺炎予防としてACE阻害薬が追加になるケースを時々経験します。

 

ACE阻害薬の副作用である空咳を逆手に取った使用法です。

 

今回は、ACE阻害薬、ARBと肺炎に関する論文を読んでみました。

 

参考文献 Risk of pneumonia associated with use of angiotensin converting enzyme inhibitors and angiotensin receptor blockers: systematic review and meta-analysis.

 

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22786934

 

PMID:22786934

 

研究デザイン:システマティックレビュー&メタアナリシス

 

論文のPECO

P:37の研究(18のRCT、11のコホート、2つのネステッドケースコントロール、6つの症例対象研究)に組み入れられた患者

E:①ACE阻害剤 ②ARB

C:ACE阻害薬・ARBの服用無し

O:(Primary)肺炎

 (Secondary)肺炎による死亡

 

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

Two reviewers independently selected randomized controlled trials and・・・

→2名の評価者が独立して論文選定

 

Two authors independently extracted data on study

→2名の評価者が独立してデータ抽出

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元:MEDLINE、Web of Science

 

・No language restrictions were applied.

→言語制限なしにデータ収集

 

・追加データや未出版のデータも集めている

 

・Visual inspection of funnel plots did not reveal any obvious asymmetrical tail (see supplementary figure 12).

 

出版バイアスはさほど問題なさそう

 

 

3、元論文バイアス

・RCT、コホート研究、ネステッドケースコントロール研究、症例対象研究が含まれている

 

・The overall quality of included studies was good. However, reporting quality for a few studies, particularly observational ones, was low as some of these were abstracted from character limited sections such as letters or comments.

→全体的に元論文の質は良好であったが、いくつかの特に観察研究では質の低い物もあった

 

元論文バイアスはやや注意が必要かも(特に観察研究)

 

4、異質性バイアス

観察研究を含めた解析では異質性が高い傾向にある。肺炎の発生に関して、RCTのみの統合では、異質性は低い。

 

結果

★肺炎の発生(Primary outcome

①ACE阻害剤 vs C

・全研究 OR0.66 (95%CI:0.55~0.80)  I2=79%  NNT=65/2年

・RCTのみ OR=0.69(95%CI:0.56~0.85)I2=0%

コホート+ネステッドのみ OR=0.58(95%CI:0.38~0.88)I2=79%

・症例対象研究のみ OR=0.67(95%CI:0.49~0.93)I2=73%

 

 ARB vs C

・全研究 OR0.95 (95%CI:0.87~1.04)  I2=14% 

・RCTのみ OR=0.90(95%CI:0.56~0.85)I2=7%

コホート+ネステッドのみ OR=1.01(95%CI:0.94~1.09)I2=0%

 

③ACE阻害薬 vs ARB 

・全研究 OR0.69(95%CI:0.79~1.01)I2=0%

 

★肺炎による死亡(Secondary outcome

①ACE阻害剤 vs C

・全研究 OR0.73 (95%CI:0.58~0.92)  I2=51% 

・RCTのみ OR=0.61(95%CI:0.20~1.90)I2=61%

コホート+ネステッドのみ OR=0.73(95%CI:0.57~0.94)I2=57%

 

ARB vs C(1つのRCTのみ)

OR0.63 (95%CI:0.40~1.00)   

 

感想

 具体的な患者の特徴が読み取れず、患者個別に適応する上では個々の論文も読んでみなければならないが、少なくとも肺炎の予防という目的ならARBよりもACE阻害剤の方が優位なのではないかと感じた。

 全体を通してだと、RCTと観察研究を統合する事がいいのか?という所はあるが、RCTのみの統合結果では、ACE阻害薬を使用した方が、ARBよりも肺炎予防効果は期待できそう。あくまで、肺炎予防に関してはというところだが。

 個人的には担当している在宅施設にご入居の、80歳を超えるような虚弱の高齢者への適応が気になっている。適応を考えるうえで、患者背景も重要なので、個々の元論文についても読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。