高リスクの高血圧患者へのACE阻害薬・カルシウムチャネルブロッカー vs 利尿薬
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今回は、高血圧患者に対するACE-I、CCB、利尿薬の比較をした研究の論文を読んでみました。
参考文献 Major outcomes in high-risk hypertensive patients randomized to angiotensin-converting enzyme inhibitor or calcium channel blocker vs diuretic: The Antihypertensive and Lipid-Lowering Treatment to Prevent Heart Attack Trial (ALLHAT).
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/12479763
PMID:12479763
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:心血管疾患リスク因子を1つ以上持つ、55歳以上の高血圧患者33357名
E:①アムロジピン2.5~10mg/日→9048名
②リシノプリル10~40mg/日→9054名
C:クロルタリドン12.5~25mg/日→15255名
O:(Primary) 致死性冠動脈心疾患、非致死性心筋梗塞の複合アウトカム
(Secondary)総死亡、脳卒中、複合冠動脈心疾患(Primary outcome、冠動脈血行再建術、入院を要する狭心症)、複合心血管疾患(複合冠動脈心疾患、脳卒中、入院を必要としない狭心症、心不全、末梢動脈疾患)
※リスク因子
最近6か月以内の心筋梗塞または脳卒中、左心室肥大、2型糖尿病既往歴、最近の喫煙、HDLコレステロール<35mg/dl、アテローム性動脈硬化による心血管疾患
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
サンプルサイズ
→パワー83%、α=0.0178
脱落率は結果を覆すほどあるか?
lost-to follow upは、クロルタリドン群339名、アムロジピン群200名、リシノプリル群218名→追跡率:97.7%
追跡期間
→平均4.9年
結果
【ベースライン】
平均年齢:いずれの群も66.9±7.7歳
平均血圧:いずれの群も146/84 mmHg
致死性冠動脈心疾患、非致死性心筋梗塞の複合アウトカム(Primary outcome)
リシノプリル群:796/9054件vs クロルタリドン群:1362/15225件
RR=0.99(95%CI:0.91~1.08) p=0.81
アムロジピン群:798/9048件vs クロルタリドン群:1362/15225件
RR=0.98(95%CI:0.90~1.07) p=0.65
心不全(Secondary outcome)
リシノプリル群:612/9054件vs クロルタリドン群:870/15225件
RR=1.19(95%CI:1.07~1.31) p<0.001
アムロジピン群:706/9048件vs クロルタリドン群:1362/15225件
RR=1.38(95%CI:1.25~1.52) p<0.001
感想
アムロジピン、リシノプリル、利尿剤であるクロルタリドンいずれを使っても、Primary outcome発生に違いは無いという結果である。
あくまでもSecondary outcomeだが、心不全に関してはアムロジピンやリシノプリルと比較して、クロルタリドンの方が優れている可能性も示唆されている。
個人的には、Figure2で利尿剤のクロルタリドンが、アムロジピン以上の降圧を示している点は衝撃だった。チアジド系利尿剤は侮れないと感じたが、今回用いられているクロルタリドンは国内ではすでに販売中止となっている。
同系統のチアジド系利尿剤としては、トリクロルメチアジドやヒドロクロロチアジドが国内では用いられているが、同じチアジド系利尿薬だからと言って、この結果をそのまま他のチアジド系利尿薬に当てはめる事は出来ないかもしれないと現時点では感じている。
というのも、以下のような報告も見つけたからである。
Chlorthalidone Reduces Cardiovascular Events Compared With Hydrochlorothiazide:A Retrospective Cohort Analysis
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=21383313
PMID:21383313
ALLHAT研究と患者背景は異なりそうだが、ヒドロクロロチアジドは心血管イベント抑制という点でクロルタリドンに劣るかもしれないという報告である。
まだ、こちらはしっかり読んでいないので後程読みますが、今日はもう力尽きたのでこのあたりで。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。