ACS後の患者に対するアログリプチンは、心血管イベント発生に影響しますか?

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今回は、アログリプチン vs プラセボの心血管イベントへの影響を調べた、EXAMINE試験を読んでみました。

 

参考文献 Alogliptin after acute coronary syndrome in patients with type 2 diabetes.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23992602

 

PMID:23992602

 

研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣勢試験)

※非劣勢マージン1.3

 

論文のPECO

P:15~90日以内に入院を要する急性心筋梗塞または不安定狭心症を発症した、2型糖尿病患者(DPP-4阻害剤、GLP-1アナログ製剤を使用していない患者が対象)

HbA1c=6.5~11.0%(インスリン製剤使用例では7.0~11.0%)

E:既存治療にアログリプチン上乗せ

C:既存治療にプラセボ上乗せ

O:(Primary) 心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム

 

※除外基準:1型糖尿病、不安定な心機能障害(NYHA分類クラスⅣの心不全、治療抵抗性狭心症、コントロール不良の狭心症、重篤な弁膜症、重篤なコントロール不良の高血圧)、スクリーニング14日以内の透析

 

※アログリプチンの用量は腎機能に応じて調整

eGFR≧60ml/min/1.73㎡ →25mg

30≧eGFR>60 ml/min/1.73㎡ →12.5mg

30 ml/min/1.73㎡≧eGFR →6.25mg

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→Cox proportional-hazards models were used to analyze the time to the first occurrence of a primary or secondary end-point event among all randomly assigned patients,の記載があり。ランダム化された人数と、結果の人数が同じなのでITT解析かと・・・。

 

※非劣勢試験なので差が出にくくなると言われているITT解析ではなく、FASかPer-protocol解析の方が望ましいのではないかと思ったり・・・。

 

サンプルサイズ

→5400名(パワー91%)

 

追跡期間

→中央値18カ月

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:E群:61.0歳 C群:61.0

HbA1c:E群:8.0±1.1% C群:8.0±1.1

 

ベースラインからのHbA1cの変化

E群:-0.33% vs  C群:+0.03%

 

★Primary outcome(心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム)

E群:305/2701件(11.3%)vs C群:316/2679件(11.8%)

HR=0.96(95%CI≦1.16) 非劣勢:p<0.001 有益性:p=0.32

 

プラセボと比較して非劣勢が示された。有益性は示されず。

 

有害事象

低血糖、急性・慢性膵炎、悪性腫瘍の発生は両群で類似

 

感想

 プラセボと比較して、アログリプチンは心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム発生について非劣勢が示された。アログリプチンで心血管イベントが減らせるかというよりは、アログリプチンで心血管イベントを増やさないかを確かめるという前提という物であるところは注意が必要かと思われる。

 一応、HbA1cはアログリプチン群でやや低下が見られたようだが、あまり大きな変化とは感じなかった。それもあってか、低血糖の発生はプラセボと大差はなかったようである。

 二重盲検が行われているようだが、HbA1cが少しの差とはいえ若干ブラインドが破綻する可能性もあるかもしれない。ただ、Primary outcomeして設定されているものは、盲検化が見破られても影響は少ないのかもしれないが。

 Discussionにも少し記述があるが、追跡期間の中央値は18か月であり、より長期的な追跡をした場合の結果は分からない。この結果をもって、DPP-4阻害薬は心血管イベントを増やさないとも言い切ることは出来ないのかなと感じた。

  また、対象患者はACS後であるし、もともと心血管イベントリスクの高い患者が多かったようで、中央値18カ月の追跡期間の間に両群11%以上の患者でイベントが発生している。心血管イベントリスクのもう少し低い患者群では差が出てくる可能性もあるのかな?

 

 まあ、「新しい薬ほど効果は優れているんだろう」みたいな固定観念は捨てて、一次情報に立ち返り、冷静に情報を吟味するという事は非常に重要だと思います。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。