SSRI、SNRIは消化管出血に影響しますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

先日、とある勉強会に参加させて頂きまして、そこでSSRIと出血について話題に上がっていました。

 

正直な所、これまであまり意識していなかった部分で、非常に興味深くお話を聞いていましたが、自分でも調べてみることにしました。

 

参考文献  Use of SSRI, But Not SNRI, Increased Upper and Lower Gastrointestinal Bleeding: A Nationwide Population-Based Cohort Study in Taiwan.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26579809

 

PMID:26579809

 

研究デザインコホート研究(台湾)

 

論文のPECO

P: 台湾の国民健康保険データベースに登録された一般人口

E:①SSRIを服用→8809名

   ②SNRIを服用→944名

C:SSRISNRI服用無し(Control群)→39012名

O:上部消化管出血(UGIB)、下部消化管出血(LGIB)

 

※除外基準:アルコール関連疾患、消化管の悪性腫瘍、炎症性腸疾患、試験参加以前の消化管出血

 

SSRI服用者:12週の間にSSRIを少なくとも28 DDD服用し、SNRIは服用していない

SNRI服用者:12週の間にSNRIを少なくとも28 DDD服用し、SSRIは服用していない

 

※DDD:Defined dairy dose(1日投与量)

 

SSRIフルボキサミンフルオキセチンパロキセチンセルトラリンシタロプラムエスシタロプラム

SNRIミルナシプラン、ベンラファキシン、デュロキセチン

 

研究対象集団の代表性

→台湾の国民健康保険データベースが用いられており、大きな問題無し

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

年齢、性別、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患(CAD)、COPD、慢性腎臓病、単純性の消化性潰瘍(PUD)、肝硬変、脂質異常症、アセチルサリチル酸・NSAIDs・選択的COX-2阻害剤・ステロイド・クロピドグレル・チクロピジン・ワルファリンの使用

 

追跡期間

UGIB:中央値5.06年  LGIB:中央値5.08年

 

 結果

上部消化管出血(UGIB

SSRI vs C群 HR=1.97(95%CI:1.67~2.31) p<0.001

 

SNRI vs C群 HR=1.09(95%CI:0.58~2.04) p=0.786

 

下部消化管出血(LGIB

SSRI vs C群 HR=2.96(95%CI:2.46~3.57) p<0.001

 

SNRI vs C群 HR=0.84(95%CI:0.32~2.27) p=0.737

 

SSRI累積服用量との関連

上部消化管出血(UGIB

SSRI(28~140 DDD)vs C群 HR=2.39(95%CI:1.68~3.39) p<0.001

 

SSRI(141~280 DDD)vs C群 HR=2.39(95%CI:1.82~3.13) p<0.001

 

SSRI(>280 DDD) vs C群 HR=1.71(95%CI:1.39~2.10) p<0.001

 

下部消化管出血(LGIB

SSRI(28~140 DDD)vs C群 HR=3.77(95%CI:2.55~5.57) p<0.001

 

SSRI(141~280 DDD)vs C群 HR=3.18(95%CI:2.30~4.40) p<0.001

 

SSRI(>280 DDD) vs C群 HR=2.71(95%CI:2.15~3.41) p<0.001

 

感想

 SSRI服用と上部消化管出血(UGIB)、下部消化管出血(LGIB)の関連が示唆されている。一方で、この結果によるとSNRIは消化管出血との関連はSSRIと比較すると小さいようである。

 ただ、SSRI累積服用量と、消化管出血発生の相関は見られていない。SSRI服用初期に消化管出血が多いという事?とも思ったが、本当のところはまだ分からない。

 SSRI服用患者では、そもそもストレスに弱く、胃腸症状をきたしやすいという所も関連があるかもしれない。個人的には、交絡因子としてPPIH2ブロッカーの併用も加えてもいいんじゃないかと思った。

 また、TABLE5を見ると、SSRIとアセチルサリチル酸やNSAIDsの併用では、SSRIによる上部消化管出血リスクがさらに高くなるという結果。

 アセチルサリチル酸NSAID服用患者ではPPIの併用がなされることが多いが、これら単独処方時はPPIを併用しない例でも、SSRIとの併用時には念のためPPIの併用を考慮に入れた方がいいのかもしれない。

 「SSRI bleeding」でPubmed検索すると、他にも多数の論文が引っかかってきたので、それらにもあたってみる。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。