アトルバスタチンを増量すると心血管イベントは減らせますか?
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今回はアトルバスタチンの増量による心血管イベント抑制効果についての論文を読んでみました。
参考文献 Intensive lipid lowering with atorvastatin in patients with stable coronary disease.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15755765
PMID:15755765
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:LDLコレステロール<130mg/dLの冠動脈心疾患患者10001名
E:アトルバスタチン80mg(LDL<75mg/dLを目指す)
C:アトルバスタチン10mg(LDL<100mg/dLを目指す)
O:主要心血管イベント(冠動脈心疾患による死亡、非致死性非処置関連心筋梗塞、心停止後の蘇生、致死性・非致死性脳卒中)
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率=99.3%
追跡期間
→中央値4.9年
結果
【ベースライン】
平均年齢:10mg群:60.9±8.8歳 80mg群:61.2±8.8歳
LDLコレステロール:10mg群:98±18% 80mg群:97±18%
治療期間のLDLコレステロール平均値
10mg群:101mg/dL 80mg群:77mg/dL
主要心血管イベント(冠動脈心疾患による死亡、非致死性非処置関連心筋梗塞、心停止後の蘇生、致死性・非致死性脳卒中)→Primary outcome
10mg群:548/5006件(10.9%)vs 80mg群:434/4995件(8.7%)
HR=0.78(95%CI:0.69~0.89) p<0.001 NNT=46
心血管死亡
10mg群:127/5006件(2.5%)vs 80mg群:101/4995件(2.0%)
HR=0.80(95%CI:0.61~1.03) p=0.09
非致死性非処置関連心筋梗塞
10mg群:308/5006件(6.2%)vs 80mg群:243/4995件(4.9%)
HR=0.78(95%CI:0.66~0.93) p=0.004
心停止後の蘇生
10mg群:26/5006件(0.5%)vs 80mg群:25/4995件(0.5%)
HR=0.96(95%CI:0.56~1.67) p=0.89
致死性非致死性脳卒中
10mg群:155/5006件(3.1%)vs 80mg群:117/4995件(2.3%)
HR=0.75(95%CI:0.59~0.96) p=0.02
感想
主要心血管イベントはアトルバスタチン10mgから80mgに増やす事で、22%減らす事が出来るという結果。NNTは46なので、その意義は個人的には小さくは無いように感じた。
しかし、国内でのアトルバスタチンの用量は、高コレステロール血症では20mgまで、家族性高コレステロール血症では40mgなので、80mgというのは高用量である。このことから、国内で用いる事を想定する場合は解釈に注意が必要かと思う。
LDLコレステロールに着目すると、100mg/dLを目指すより75mg/dLを目指してコントロールした方が、心血管イベントは少ないようである。ただ、これは単純にコレステロール低下による効果以外に、スタチンのプレイオトロピック効果によるものもあるのかもしれないが・・・。
個人的には、スタチンの増量をする場合とエゼチミブを併用する場合でどうなのかが気になる。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。