DPP-4阻害薬の服用で感染症は増えますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、DPP-4阻害薬に関して気になる論文を見つけたので、読んでみることにしました。
参考文献 DPP-4 inhibitors and risk of infections: a meta-analysis of randomized controlled trials.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26417956
PMID:26417956
研究デザイン:メタ分析
論文のPECO
P:2型糖尿病患者
E:DPP-4阻害薬使用あり
C:DPP-4阻害薬使用無し(プラセボ、他の血糖降下薬)
O:感染症
※感染症
インフルエンザ、鼻咽頭炎、副鼻腔炎、咽頭洞炎、咽頭炎、気管支炎、気道感染、上気道感染、下気道感染、肺炎、胃腸炎、尿路感染症、細菌性腎盂腎炎、慢性腎盂腎炎の悪化、膀胱炎、前立腺炎、尿中細菌の増加、胃腸炎、肝炎、胆嚢炎、虫垂炎、ウイルス感染症、肛門潰瘍、皮膚潰瘍、足白癬、蜂巣炎、ウイルス性心膜炎、クロストリジウム感染症、ブドウ球菌創傷感染症、大腸菌菌血症、敗血症、感染及び寄生
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
4つのバイアス
1、評価者バイアス
・2名の評価者が独立してデータ収集
評価者バイアスはさほど問題なさそう
2、出版バイアス
情報元:MEDLINE(PubMed)、EMBASE、 Cochrane Central Register of Controlled Trials
・追加データも探そうとしている
・言語制限に関する記載は見つけられず
出版バイアスはさほど問題なさそう
3、元論文バイアス
Cochrane risk of bias tool を用いて元論文の質を評価している
→Supplementary Figure1
(http://www.readcube.com/articles/supplement?doi=10.1002%2Fdmrr.2723&index=0&ssl=1&st=08010b67a6e4244d31a6ea291c632706&preview=1)を見てみると、ほとんどがLow risk
元論文バイアスもさほど問題なさそう
4、異質性バイアス
それぞれの結果を参照
結果
全感染症
DPP-4阻害薬 vs プラセボ OR=0.97 (95%CI:0.91~1.04) I2=42% p=0.40
DPP-4阻害薬 vs メトホルミン OR=1.22 (95%CI:0.95~1.56) I2=41% p=0.12
DPP-4阻害薬 vs SU薬 OR=1.09 (95%CI:0.93~1.29) I2=40% p=0.29
DPP-4阻害薬 vs チアゾリジン薬 OR=0.86 (95%CI:0.65~1.14) I2=0% p=0.29
DPP-4阻害薬 vs α-GI OR=1.03 (95%CI:0.33~3.22) I2=73% p=0.96
※DPP-4阻害薬ごとの比較
アログリプチン vs プラセボ OR=1.28 (95%CI:0.99~1.67) I2=41% p=0.06
リナグリプチン vs プラセボ OR=0.84 (95%CI:0.69~1.03) I2=41% p=0.09
シタグリプチン vs プラセボ OR=1.07 (95%CI:0.92~1.25) I2=0% p=0.37
サキサグリプチン vs プラセボ OR=0.98 (95%CI:0.92~1.05) I2=13% p=0.65
ビルダグリプチン vs プラセボ OR=0.84 (95%CI:0.69~1.02) I2=27% p=0.07
呼吸器感染症
DPP-4阻害薬 vs コントロール OR=0.98(95%CI:0.91~1.05) I2=39% p=0.58
尿路感染症
DPP-4阻害薬 vs コントロール OR=1.11(95%CI:0.93~1.32) I2=17% p=0.27
消化器系感染症
DPP-4阻害薬 vs コントロール OR=1.17(95%CI:0.66~2.07) I2=0% p=0.59
感想
DPP-4阻害薬の使用で、感染症リスクは増えないことが示されている。ただ、アログリプチンでは、有意差は出ていないものの、感染症リスクが高まる傾向が見られる点が気になる。
この結果から評価すると、DPP-4阻害薬の感染症への寄与度はそこまで大きくは無いのではないかと思う。
しかし、そもそも糖尿病患者では感染症のリスクが高くなっている事が予想されるため、うがいの徹底や歯周病予防の観点から口腔ケアなど心がけた方がよいのではないだろうか?
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。