急性心筋梗塞の二次予防に、水溶性スタチンと脂溶性スタチンで違いはありますか?

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今回はスタチンについて興味深い論文を見つけたので、読んでみました。

 

参考文献  Assessment of lipophilic vs. hydrophilic statin therapy in acute myocardial infarction – ALPS-AMI study.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=25392071

 

PMID:25392071

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:20歳以上で血清LDLコレステロール≧70mg/dlの、急性心筋梗塞発生後96時間以内にPCIを受けた患者508名

E:脂溶性スタチン(アトルバスタチン) →255名 

C:水溶性スタチン(プラバスタチン)→253名

O:(Primary) 総死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症、入院を要する虚血性心不全、冠血行再建術の複合アウトカム

 

※両群とも10㎎/日から開始し、LDLコレステロール<100mg/dlを目指す。4週後にLDLコレステロール<100mg/dlを達成しなければ20mg/日に増量。開始8週後にまだLDLコレステロール<100mg/dlを達成していなければ、10㎎のエゼチミブを追加。

 

除外基準

冠動脈バイパス術予定患者、妊婦、肝臓病、腎臓病、悪性腫瘍、重篤な不整脈、血行動態不安定(低血圧、うっ血性心不全、急性心不全後の器質的合併症)

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→複合アウトカムなので明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→PROBE法を用いている

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→500名(パワー80%、α=5%)

(引用文献15を参照)

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=Rationale+and+design+of+assessment+of+lipophilic+vs.+hydrophilic

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率95.9%

 

追跡期間

→2年間

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 プラバスタチン:65.7±11.7歳 vs アトルバスタチン:66.3±11.4歳

TC プラバスタチン:240.1±38.6mg/dl vs アトルバスタチン:203.2±40.8mg/dl

LDL-C プラバスタチン:130.2±33.2mg/dl vs アトルバスタチン:131.0±33.9mg/dl

HDL-C プラバスタチン:47.6±11.4mg/dl vs アトルバスタチン:48.0±12.4mg/dl

TG プラバスタチン:142.9±114.2mg/dl vs アトルバスタチン:130.8±94.3mg/dl

 

※エゼチミブの追加投与が必要となった患者

プラバスタチン:19% vs アトルバスタチン:4.7% p<0.001

 

【アウトカム】

☆Primary outcome(総死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症、入院を要する虚血性心不全、冠血行再建術の複合アウトカム)

アトルバスタチン:80/255名(31.4%)vs プラバスタチン:77/253名(30.4%) 

HR=1.181(95%CI:0.862~1.619) p=0.299

 

☆総死亡

アトルバスタチン:3.5% vs プラバスタチン:5.5%  p=0.277

 

☆心血管死亡

アトルバスタチン:1.2% vs プラバスタチン:1.2%  p=0.992

 

心筋梗塞

アトルバスタチン:0% vs プラバスタチン:0.4%  p=0.315

 

脳卒中

アトルバスタチン:0.4% vs プラバスタチン:2.0%  p=0.098

 

☆血行再建術

アトルバスタチン:24.7% vs プラバスタチン:20.2%  p=0.219

 

心不全による入院

アトルバスタチン:2.7% vs プラバスタチン:2.4%  p=0.790

 

※安全性

治療の中止はアトルバスタチン2.4%、プラバスタチン2.8%(p=0.7677)

※中止の主な理由は肝機能障害

 

感想

 この研究では、二重盲検をしておらず(LDL-Cなど検査値を追っていく必要があるため、盲検化不可能と思われる)、PROBE法を採用している。それにも関わらずソフトエンドポイントである、入院を要する心不全や、冠動脈再建術が複合アウトカムに含まれている。そして、実際に発生したアウトカムの大部分が冠動脈再建術である。この点は注意したい。

 そもそも、水溶性・脂溶性の違いの他に、プラバスタチンはスタンダードスタチン、アトルバスタチンはストロングスタチンに分類される。Figre2を見てみると、総コレステロールやLDLコレステロールの変化に両群で差が出ている。LDLコレステロール低下に関しては確かにアトルバスタチンの方が優位かと思われる。

 しかし、総死亡・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・不安定狭心症・入院を要する虚血性心不全・冠血行再建術の複合アウトカム、また個々のアウトカムは、いずれも両群で違いはないという結果である。

 エゼチミブの追加投与はプラバスタチン群19%、アトルバスタチン服用群4.7%と、プラバスタチン服用群の方が多いので、個人的に、プラバスタチン群ではエゼチミブを併用している割合が高い影響で、アウトカム発生が多少減っているのでは?という疑問もある。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。