血糖値は厳格にコントロールするべきですか?

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今回は、血糖値をしっかり下げるべきなのか検討したメタ分析の論文です。

 

参考文献 Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21791495

 

PMID:21791495

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:18歳以上の2型糖尿病患者

E:血糖値の厳格コントロール

C:血糖値の標準コントロール

O:(Primary)総死亡、心血管死亡

 (Secondary)重篤な低血糖、全心筋梗塞、非致死性心筋梗塞、致死性脳卒中、非致死性脳卒中、うっ血性心不全、光凝固、網膜症(新規発症、悪化)、微量アルブミン尿、腎不全(腎不全の悪化、血清アルブミンの倍化)、末梢血管疾患(脚の血管再建術、末梢動脈疾患、間欠性跛行)、切断、重篤な低血糖

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

・2名の評価者が独立してデータ抽出している

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2出版バイアス

情報元:MEDLINE、EMBASE、Cochrane database of systematic reviews

・without any language restriction(言語制限なしに検索されている)

・未出版のデータを集めているかは不明

 

出版バイアス多少はあるかも

 

3、元論文バイアス

・13個のRCTを集めている

・Jadad scoreを用いて元論文の質を評価している

・Table1より、ほとんどの元論文がJadad score3点以上

 

元論文バイアスはさほど問題なさそう

 

4、異質性バイアス

→Primary outcomeは、やや異質性が高いように思われる

 

 結果

※今回の論文はP<0.01で有意差あり

 

【Primary outcome

総死亡

リスク比1.04 (99%CI:0.91~1.19)  I2=42% P=0.47

 

心血管死亡

リスク比1.11 (99%CI:0.86~1.43)  I2=61% P=0.29

 

Secondary outcome】

心筋梗塞

リスク比0.90 (99%CI:0.81~1.01)  I2=0% P=0.02

 

非致死性心筋梗塞

リスク比0.85 (99%CI:0.74~0.96)  I2=0% P<0.001

 

脳卒中

リスク比0.96 (99%CI:0.83~1.13)  I2=0% P=0.55

 

非致死性脳卒中

リスク比1.00 (99%CI:0.83~1.21)  I2=0% P=0.95

 

うっ血性心不全

リスク比1.17 (99%CI:0.91~1.50)  I2=59% P=0.11

 

網膜症(新規発症、悪化)

リスク比0.85 (99%CI:0.71~1.03)  I2=54% P=0.03

 

光凝固

リスク比0.91 (99%CI:0.71~1.17)  I2=57% P=0.32

 

視力の悪化または失明

リスク比1.00 (99%CI:0.96~1.05)  I2=0% P=0.99

 

神経障害(新規発症、悪化)

リスク比0.99 (99%CI:0.95~1.03)  I2=0% P=0.54

 

微量アルブミン尿(新規発症、悪化)

リスク比0.90 (99%CI:0.85~0.96)  I2=31% P<0.001

 

腎不全の悪化または血清クレアチニンの倍化

リスク比1.03 (99%CI:0.98~1.08)  I2=0% P=0.15

 

末梢血管イベント

リスク比0.98 (99%CI:0.84~1.13)  I2=34% P=0.69

 

切断

リスク比0.84 (99%CI:0.54~1.29)  I2=0% P=0.30

 

重篤な低血糖

リスク比2.33 (99%CI:1.62~3.36)  I2=63% P<0.001

 

感想

 このメタ分析では、血糖値を厳格にコントロールするのと標準的にコントロールするので、総死亡、心血管死亡は変わらないという結果。また、低血糖はやはり厳格にコントロールした方が2.33倍多いという結果である。

 元論文のそれぞれの目標血糖値や患者の対象年齢、糖尿病罹患期間なども異なるため、一概には言えないと思うが、必ずしも厳格な血糖コントロールを行った方がいいとは言い切れない。

 Table1を見てみると、元論文の対象患者の年齢は比較的若く、追跡期間もあまり長くない物も多い。この事も結果に影響しているのかもしれないと感じた。

 あくまでメタ分析の結果であるが、統合されている元論文は重要文献が盛りだくさんという印象なので、今更ながらPROactive試験など、まだ読んでいない物は読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。