デノスマブで椎体骨折はどれぐらい防ぐことが出来ますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、調剤薬局ではあまり関わることが無いかもしれないですが、担当している在宅施設で使用されている患者さんがいらっしゃる、デノスマブと骨折についての論文です。

 

参考文献 Denosumab for prevention of fractures in postmenopausal women with osteoporosis.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19671655

 

PMID:19671655

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:腰椎または股関節の骨密度Tスコア-2.5~-4.0の60~90歳の女性7868名

E:デノスマブ60mg皮下注 6か月ごとに1回、36か月

C:プラセボ皮下注 6か月ごとに1回、36か月

O:(Primary) 新規の椎体骨折

 (Secondary)非椎体骨折、股関節骨折

 

※除外基準

代謝に影響がある状況、3年以上のビスホスホネート使用、5年以内にビスホスホネート静注・フッ化物・ストロンチウム使用、6週以内に副甲状腺ホルモンまたはその代謝物・ホルモン補充療法・SERM・チボロン(合成エストロゲン)・カルシトニン・カルシトリオール使用、骨密度Tスコア<-4.0、重篤な繰り返す骨折

 

※骨密度Tスコアについてはこちらを参照↓

http://gecommunity.on.arena.ne.jp/archive/bmd_shittoku/ost_04.html

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→盲険化に関する記載が見つけられず

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→82%が36か月の試験を完遂、76%が全ての機会に注射を打った

 

追跡期間

→平均36カ月

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:デノスマブ群:72.3±5.2歳 プラセボ群:72.3±5.2歳

 

Tスコア

腰椎 デノスマブ群:-2.82±0.70 プラセボ群:-2.84±0.69

全股関節 デノスマブ群:-1.89±0.81 プラセボ群:-1.91±0.81

大腿骨頸部 デノスマブ群:-2.15±0.72 プラセボ群:-2.17±0.71

 

【アウトカム】

新規椎体骨折(Primary outcome

デノスマブ:2.3% vs プラセボ:7.2%

RR=0.32(95%CI:0.26~0.41) p<0.001 NNT=21

 

非椎体骨折

デノスマブ:6.5% vs プラセボ:8.0%

HR=0.80(95%CI:0.67~0.95) p=0.01 NNT=67

 

股関節骨折

デノスマブ:0.7% vs プラセボ:1.2%

HR=0.60(95%CI:0.37~0.97) p=0.04 NNT=200

 

36か月後の骨密度(プラセボ群との差):Figure2参照

椎体:9.2%(95%CI:8.2~10.1)

全股関節:6.0%(95%CI:5.2~6.7%)

 

【有害事象】

・悪性腫瘍、感染症、心血管イベント、脳卒中、冠動脈心疾患、末梢動脈疾患、心房細動いずれも両群で有意差無し

・湿疹はデノスマブ群3.0%、プラセボ群1.7%(p<0.001)

 

感想

 デノスマブを6か月に1回打つことで、椎体骨折を抑制できるという結果である。また、継続して6か月ごとに接種することで骨密度が上昇するという結果である。デノスマブ皮下注1本の薬価は29,296円であり、ビスホスホネート剤やエルデカルシトールよりはやや割高となるようである。

 それでも、個人的に比較的進行した骨粗鬆症患者にはビスホスホネート剤やエルデカルシトールなどよりは使用する価値があるのではないかと感じた。ただし、36か月以降の骨折リスクなどがどの程度維持されるかという点は不明である事、この後長期に追跡した後で悪性腫瘍リスクがどうかという事がこの論文では不明である点は注意が必要かと思う。

 長期に追跡した論文や、テリパラチドを使用した場合どうなのかなどの論文についても読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。