プラスグレルはクロピドグレルより心血管イベントを減らせますか?
ご訪問ありがとうございます。
さて、今年の更新はこれが最後になるかと思います。というのも、明日から実家に帰省するんですが、実家にはネット環境が無いので更新不可能かと・・・。
そんなこんなで、今年最後は、抗血小板薬のプラスグレルとクロピドグレルの比較です。
参考文献 Prasugrel versus clopidogrel in patients with acute coronary syndromes.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=17982182
PMID:17982182
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:急性冠症候群リスク中~高リスクでPCIを受ける予定の患者13608名
E:プラスグレル(ローディングドーズ60mg、維持用量10mg)をアスピリンと併用
C:クロピドグレル(ローディングドーズ300mg、維持用量75mg)をアスピリンと併用
O:(Primary) 心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム
※除外基準
→出血リスクが高い、貧血、血小板減少症、病理学的頭蓋内所見、5日以内のチエノピリジン系使用
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率99.9%(lost to follow upは14名.)
追跡期間
→治療期間中央値14.5ヶ月
結果
【ベースライン】
年齢:プラスグレル群:中央値61歳 クロピドグレル群:中央値61歳
【アウトカム】
心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム(Primary outcome)
プラスグレル群:643/6813件(9.9%)vs クロピドグレル群:781/6795件(12.1%)
HR=0.81(95%CI:0.73~0.90) p<0.001 NNT=49
心血管死亡
プラスグレル群:133/6813件(2.1%)vs クロピドグレル群:150/6795件(2.4%)
HR=0.89(95%CI:0.70~1.12) p=0.31
非致死性心筋梗塞
プラスグレル群:475/6813件(7.3%)vs クロピドグレル群:620/6795件(9.5%)
HR=0.76(95%CI:0.67~0.85) p<0.001
非致死性脳卒中
プラスグレル群:61/6813件(1.0%)vs クロピドグレル群:60/6795件(1.0%)
HR=1.02(95%CI:0.71~1.45) p=0.93
【安全性】
大出血
プラスグレル群:146/6741件(2.4%)vs クロピドグレル群:111/6716件(1.8%)
HR=1.32(95%CI:1.03~1.68) p=0.03
感想
Primary outcomeである心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカムは、クロピドグレル群に比べ、プラスグレル群は19%少ないという結果である。個々のアウトカムについて見てみると、非致死性心筋梗塞はプラスグレル群で有意に少ないという結果になっている。
日本人は、クロピドグレルの代謝活性化に関与するCYP2C19のPMがおよそ20%と多いため、クロピドグレルの効果が十分に得られない患者が多いと言われている。日本人ではよりプラスグレルに優位な結果になるかもしれない。
ただし、この研究に用いられているプラスグレルの用量は維持量が10mg/日と、国内で用いられている通常維持用量(3.75mg/日)より多い量となっている点は注意が必要かと思う。
大出血はクロピドグレル群よりもプラスグレル群で有意に多いという結果である。この点ではクロピドグレルの方が有利となる。また、薬価も後から発売されたプラスグレルの方が高くなっている。
国内で用いられている用量だと、出血はもっと少ないかもしれないし、Primary outcomeの抑制効果はもう少し小さくなるかもしれない。
確かに、プラスグレルの方が優れている点もあるが、クロピドグレルにも利点があるので、何でもかんでもプラスグレルとはいかない印象である。実際プラスグレルが処方されている患者は、自分の薬局ではあまり多くないように感じている。あと、プラスグレルには脳や末梢への適応は無い事も押さえておきたい。
今年も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
また来年もよろしくお願い致します♪
それでは皆様、よいお年を('ω')ノ