虚血性脳卒中・TIA後のピオグリタゾン
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今回は、虚血性脳卒中・TIA後のピオグリタゾンに関する論文です。
参考文献 Pioglitazone after Ischemic Stroke or Transient Ischemic Attack.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26886418
PMID:26886418
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:虚血性脳卒中またはTIA既往あり、糖尿病ではないがインスリン抵抗性のある(HOMA-IR>3.0)40歳以上の患者3876名
E:ピオグリタゾン45mg/日
C:プラセボ
O:(Primary) 致死的・非致死的脳卒中と心筋梗塞の複合エンドポイント
※除外基準
→糖尿病(空腹時血糖≧126mg/dl、HbA1c≧7.0%)、NYHA分類クラス3~4、NYHA分類クラス2で駆出率低下が見られる心不全、活動性の肝疾患、アラニンアミノトランスフェラーゼが基準値上限の2.5倍以上、ヘモグロビン<8.5g/dl、中等度~重度の圧痕性浮腫、14日以内の頸動脈血行再建術、エストロゲン含有避妊薬使用、経口グルココルチコイド使用、心不全既往、膀胱癌既往、膀胱癌リスクを増加させる状況
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
サンプルサイズ
→3136名(パワー90%、α=5%)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→lost-to-follow-upは2.6%(追跡率=97.4%)
追跡期間
→中央値4.8年
結果
【ベースライン】
平均年齢:ピオグリタゾン群:63.5±10.6歳 プラセボ群:63.5±10.7歳
HbA1c:ピオグリタゾン群:5.8±0.4 プラセボ群:5.8±0.4
【アウトカム】
致死的・非致死的脳卒中と心筋梗塞の複合エンドポイント(Primary outcome)
ピオグリタゾン群:175/1939件(9.0%)vs プラセボ群:228/1937件(11.8%)
HR=0.76(95%CI:0.62~0.93) p=0.007 NNT=37
ピオグリタゾン群:127/1939件(6.5%)vs プラセボ群:154/1937件(8.0%)
HR=0.82(95%CI:0.61~1.10) p=0.19
ピオグリタゾン群:96/1939件(5.0%)vs プラセボ群:128/1937件(6.6%)
HR=0.75(95%CI:0.52~1.07) p=0.11
【安全性】
膀胱癌
ピオグリタゾン群:12/1939件(0.6%)vs プラセボ群:8/1937件(0.4%)
p=0.37
骨折
ピオグリタゾン群:133/1939件(6.9%)vs プラセボ群:94/1937件(4.9%)
p=0.008 NNH=50
ピオグリタゾン群:29/1939件(1.5%)vs プラセボ群:32/1937件(1.7%)
p=0.70
4.5kg以上の体重増加
ピオグリタゾン群:1013/1939件(52.2%)vs プラセボ群:653/1937件(33.7%)
p<0.001
13.6kg以上の体重増加
ピオグリタゾン群:221/1939件(11.4%)vs プラセボ群:88/1937件(4.5%)
p<0.001
浮腫
ピオグリタゾン群:691/1939件(35.6%)vs プラセボ群:483/1937件(24.9%)
p<0.001
感想
Primary outcomeである致死的・非致死的脳卒中と心筋梗塞の複合エンドポイントは、ピオグリタゾン群でHR=0.76(95%CI:0.62~0.93)と、プラセボ群との比較で有意に減らす事が出来たという結果。ただし、脳卒中単独やACSでは有意差無しとなっている。
本研究で用いられているピオグリタゾンの用量は45mg/日と、国内で用いられる上限量となっている。この点は実臨床で活用する上で注意が必要かと思う。
副作用については、骨折や体重増加、浮腫などがプラセボより多くなるという結果。浮腫は時々お見掛けするが、思いのほか頻度は高めなのだと感じた。
心不全は2群間で差が無いが、心不全既往のある患者は除外されており、また症例数が少ないためこのような結果になっているのかもしれない。
浮腫のメカニズムは、ラットなどの細胞実験レベルだが、このような感じだそうです。
http://dm-rg.net/news/2011/05/010962.html
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。