高カリウム血症後のMRA中止 vs 継続

ご訪問ありがとうございます。 

  

今回はMRA(ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬)を新規に開始し、その後に高カリウム血症を起こした患者で、MRAを中止した場合と継続した場合の予後を比較した研究の論文を読んでみます。 

  

 

参考文献 Stopping Mineralocorticoid Receptor Antagonists After Hyperkalaemia: Trial Emulation in Data from Routine Care 

  

リンク  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34196082/ 

  

PMID:34196082 

  

研究デザインtarget trial emulation 

  

論文のPECO 

P:MRAを新規に開始した後、高カリウム血症(血清カリウム>5.0 mmol/L)が起こった患者 

E:高カリウム血症から6ヶ月以内にMRAを中止 

C:少なくとも6ヶ月間はMRAを継続 

O:心不全による入院+脳卒中+心筋梗塞+死亡の複合アウトカム 

 

※使用していたMRAは97%がスピロノラクトン、 3%がエプレレノン 

 

※「index高カリウム血症(最初の高カリウム血症)」から6ヶ月以内に、新たにMRAの処方がなかった場合はMRA中止と判断した 

 

除外基準:透析患者、介護施設入所患者、eGFRやカリウム値の情報が欠如している患者 

  

 

情報源は何か? 

SCREAM(スウェーデンのストックホルムの医療情報データベース)に登録された患者情報 

  

真のアウトカムか? 

真のアウトカムと言える 

 

交絡因子 

併存疾患(糖尿病、高血圧、心筋梗塞、末梢血管疾患、脳血管疾患)、併用薬(ACE阻害薬、ARB、β遮断薬、ポリスチレンスルホン酸ナトリウム、チアジド/ループ利尿薬、NSAIDs、その他の降圧薬)、eGFR 

 

 

 その他 

Immortal-time bias(不死時間バイアス)を避けるような工夫や、intention-to-treat解析に近づくような工夫を行なっている 

  

 

Chat-GPTに今回の研究のデザインを説明させてみました。 

『Target trial emulationとは、「本当はRCTを行いたいけれど実施が難しい場合に、観察研究データを使ってRCTに近い解析を再現する方法」です。今回の研究では、高カリウム血症を起こした患者に対して、「MRAを中止する場合」と「継続する場合」を比較しました。 
  

ただし通常の観察研究では、「後からMRAを中止した患者」を最初から中止群として分類してしまう問題があります。例えば、4か月後にMRAを中止した患者は、その4か月間を生存していなければ「中止群」に入ることができません。つまり中止群には、「少なくとも一定期間は生存できた患者」が集まりやすくなります。 
  

この“生き延びなければその群に入れない期間”を immortal time(不死時間)と呼び、結果を歪める原因になります。 そこで本研究では、各患者を「MRAを中止した世界」と「継続した世界」の2つに複製(cloning)しました。 その後、実際の経過と合わなくなった時点で、そのデータを打ち切り(censoring)しました。 
 

 さらに、打ち切りによって生じる偏りを補正するために、重み付け(weighting)を行いました。 
このようにして、研究者は過去の診療データを使いながら、RCTに近い公平な比較を目指したのです。』 

 

 

  

結果 

【ベースライン】 

・年齢:76歳 

※69%の患者が心不全既往あり 

 

eGFR49ml/min/1.72m2 

  

(index時の高カリウム血症の重症度) 

・Mild(5.0〜5.5mmol/L)75% 

・Moderate(5.5〜6.0mmol/L)18% 

・Severe(6.0mmol/L以上)7% 

 

・MRA開始後 3ヶ月以内の高カリウム血症58% 

 

 (併存疾患) 

・心筋梗塞:34% 

・高血圧:77% 

・末梢血管疾患:16% 

・脳血管疾患:20% 

・糖尿病:38% 

 

(併用薬) 

・ACE阻害薬/ARB:77% 

・βブロッカー:78% 

・チアジド/ループ利尿薬:76% 

・その他の降圧薬:30% 

・NSAIDs:11% 

 

  

  

【アウトカム】 

Primary outcome(心不全による入院+脳卒中+心筋梗塞+死亡の複合アウトカム)  

中止群:63.6%95%CI62.0〜65.4) vs    継続群:60.0%95%CI:58.7〜61.6) 

HR1.10(95%CI:1.061.14)  

  

  総死亡 

中止群:42.0%(95%CI:40.2〜43.8) vs    継続群:38.7%(95%CI:37.2〜40.1) 

HR=1.11(95%CI:1.05~1.17)  

  

MACE(心血管死亡+心筋梗塞+脳卒中+心不全) 

中止群:51.3%(95%CI:49.4〜53.3) vs    継続群:48.6%(95%CI:47.0〜50.2 

HR=1.05(95%CI:1.01~1.10)  

  

高カリウム血症再発(血清カリウム>5.0mmol/L) 

中止群:50.1%(95%CI:48.2〜52.3) vs    継続群:63.0%(95%CI:61.4〜64.6) 

HR=0.75(95%CI:0.72~0.79)  

 

中等度/重度の高カリウム血症再発(血清カリウム>5.5mmol/L) 

中止群:24.0%(95%CI:22.4〜25.9) vs    継続群:32.6%(95%CI:31.0〜34.1 

HR=0.73(95%CI:0.67~0.78)  

 

 

  

備考 

 MRA新規開始後に高カリウム血症を起こした患者では、その後にMRAを中止した方が高カリウム血症の再発は少なくなっています。しかしながら、心不全による入院や心筋梗塞、脳卒中、死亡の複合アウトカムであるPrimary outcomeや、総死亡、MACEなどは中止群で多くなっています。 

 

 観察研究のデータを用いて、RCTを模倣するように解析した研究デザインがtarget trial emulationです。RCTになるべく近くなるようにデザインされた研究ですが、この研究も観察研究の1つなので、未知のバイアスなどの影響は考慮する必要があります。 

 

 本研究のアウトカムの発現状況を見てみると、Primary outcomeは両群ともに60%以上、死亡も40%近くと、もともとかなり予後の悪い患者集団であったことが想像できます。少なくともこのような患者では血清カリウム値が5.0mmol/Lを少し超えた時に、MRAを即中止するべきかというと、そこは慎重に判断する必要があるように思います。もちろん血清カリウム値のモニタリングは重要です。 

 

    MRA中止群でも高カリウム血症の再発は50%程度に見られています。ベースラインで併用薬としてACE阻害薬やARBを使用していた患者の割合が 77%と高く、 これらの薬剤も高カリウム血症を起こすため、このことも影響しているのかもしれません。 

 

   今回の研究におけるMRAはスピロノラクトンが97%、残りはエプレレノンでした。比較的最近発売が開始されたエサキセレノンやフィネレノンは、今回の研究に含まれていないことにも留意が必要です。 

 

 RAS阻害薬に関しても同様の報告があり、こちらもあらためて読んでみようと思います 

Stopping renin-angiotensin system inhibitors after hyperkalemia and risk of adverse outcomes. 

 

PMID:34610282 

 

リンク:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/34610282/ 

 

今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。 

 

 

HFrEFに対するベルイシグアトの効果

ご訪問ありがとうございます。 

 

 実は本日2026年5月4日は、この論文要約ブログを立ち上げてちょうど10年となる日です。何かよくわからずはてなブログに登録した日のことも、まだ何となく覚えています。あの頃は、論文要約ブログを書かれている先生を何名か見つけて、その先生方に対する憧れもあって始めたような気がします。

 

 節目の日だし、今日更新しないわけにはいかないか、、、というわけで、前回の更新から少し間は空いてしまいましたがブログを更新しようと思います。

 

 今回はHFrEF患者に対する、ベルイシグアトの効果についての論文を読んでみます。 

 

 可溶性グアニル酸シクラーぜ(sGC)は、内皮細胞由来の一酸化窒素(NO)の受容体として働き、NOが結合すると、シグナル伝達物質であるcGMPの産生を触媒します。

 

 慢性心不全ではNOの産生が低下しており、またsGCのNO感受性が低下しています。これによりcGMPシグナルが低下し、心肥大や繊維化の亢進、冠血流低下などが起こり、心不全が進行します。

 

 ベルイシグアトは、NO非依存的にsGCを直接刺激します。また、内因性NOに対するsGCの感受性を高め、cGMPの産生を促進します。このような機序により、心不全の進行を抑制すると言われています(ベリキューボ錠 インタビューフォームより)

  

それでは今回のお題論文です。

 

参考文献   Vericiguat in Patients with Heart Failure and Reduced Ejection Fraction 

  

リンク https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/32222134/ 

  

PMID:32222134 

  

研究デザイン:ランダム化比較試験 

  

論文のPECO 

P:左室駆出率(LVFE)<45%で、ナトリウム利尿ペプチド上昇がみられる、NYHA分類クラスⅡ〜Ⅳ度の18歳以上の慢性心不全患者5050名 

E:ベルイシグアト10mg 1日1回 2526名

C:プラセボ 2524名

O:心血管性死亡と、初回心不全入院の複合アウトカム 

  

※ガイドラインに基づく標準治療に上乗せ 

 

※ベルイシグアトは血圧や臨床症状を見ながら、2.5mg→5mg→10mgと段階的に増量

 

※組み入れ基準のナトリウム利尿ペプチドの数値

洞調律患者:BNP >300pg/mL  NT-proBNP >1000pg/mL

心房細動患者:BNP >500pg/mL NT-proBNP >1600pg/mL

 

 

除外基準

収縮期血圧<100mmHg、長時間作動型硝酸薬/可溶性グアニル酸シクラーぜ刺激薬/ホスホジエステラーゼⅤ阻害薬の併用または使用予定の患者、静注強心薬や植込み型補助人工心臓(VAD)の使用

 

ランダム化されているか? 

→ AbstractのMETHODSに「randomized」と記載があり、ランダム化されている 

  

一次アウトカムは明確か? 

→複合アウトカム(心血管死亡+心不全による入院)なので明確といえる 

  

真のアウトカムか? 

→真のアウトカム 

  

盲検化されているか? 

→AbstractのMETHODSに「double-blind」と記載があるので、盲検化されている 

  

均等に割り付けられているか 

→Table1を見る限り、均等に割り付けられていると思われる 

  

ITT解析を行われているか? 

→METHODSのStatistical Analysisに「Efficacy outcomes were examined in the in- 

tention-to-treat population・・・」と記載があるので、ITT解析されていると思われる 

  

脱落率は結果を覆すほどあるか? 

→lost to follow-upはベルイシグアト群9名、プラセボ群11名なので、大きな影響はなさそう 
ただし、試験レジメンの中止(Discontinued)が多いのは気になる 

  

追跡期間 

→中央値10.8ヶ月 

  

結果 

【ベースライン】 

・年齢 E群:67.5±12.2歳 vs    C群:67.2±12.2歳 

 

・ 過去3ヶ月以内の心不全入院歴 66.2% vs    C群:67.6% 

  

・過去3〜6ヶ月以内の心不全入院歴 18.0% vs    C群:16.5% 

 

・心不全に対する過去3ヶ月以内の利尿薬静脈内投与歴 15.8% vs    C群:15.9% 

 

・BMI    E群:27.7±5.8 vs    C群:27.9±6.1 

  

・平均駆出率     E群:29.0±8.3% vs    C群:28.8±8.3% 

  

 (NYHA classによる分類) 

・classⅡ  E群:58.6% vs    C群:59.3% 

  

・classⅢ  E群:40.0% vs    C群:39.4% 

 

・classⅣ  E群:1.4% vs    C群:1.2% 

 

・HFrEF診断からの期間  E群:4.7±5.5年 vs    C群:4.8±5.4年 

 

・NT-proBNP(中央値)  E群:2803.5pg/mL vs      C群:2821.0pg/mL

  

・アドヒアランス >80%の患者の割合  E群:93.8% vs       C群:93.4%

 

  

【アウトカム】 

Primary outcome(心血管死亡+心不全による最初の入院の複合アウトカム)  

E群:897件/2526名(35.5%) vs    C群:972件/2524名(38.5%) 

HR=0.90(95%CI:0.82~0.98) p=0.02 

NNT=24名

  

 

心血管死亡 

E群:414件/2526名(16.4%) vs    C群:441件/2524名(17.5%) 

HR=0.93(95%CI:0.81~1.06)  

  

  

心不全による入院 

E群:691件/2526名(27.4%) vs    C群:747件/2524名(29.6%) 

HR=0.90(95%CI:0.81~1.00)  

  

 

総死亡 

E群:512件/2526名(20.3%) vs    C群:534件/2524名(21.2%) 

HR=0.95(95%CI:0.84~1.07)  

  

(有害事象) 

症候性低血圧 

E群:9.1% vs     C群:7.9% 

  

備考 

 ベルイシグアトを通常治療に上乗せすると、心血管死亡と心不全による入院の複合アウトカムは、有意に減少したという結果です。Primary outcomeの個々のアウトカムでは有意差無しとなり、複合アウトカムで有意差ありとなっています。 症例数が多くなる分、複合アウトカムにすると有意差が出やすくなったのかもしれません。 

 

 ベースラインにおける年齢は平均67歳ほどと、比較的若い印象です。NT-proBNPは中央値が2816pg/mLと高値でした。NYHA分類は、classⅢの患者が40%近くを占める集団でした。また、追跡期間は中央値10.8ヶ月ですが、そのような短期間でも心血管死亡が17%程度、総死亡が20%程度に起こっています。これらのことから、対象となった患者群はもともと死亡リスクが高く、重症度の高い心不全の集団であった可能性が考えられます。 

 

  本研究では、ガイドラインに基づく治療にベルイシグアトまたはプラセボを上乗せした効果を見ています。Supplementary Apendixで併用薬を見てみると、ACE阻害薬/ARBを73%、β遮断薬を93%、MRAを70%、ARNIを14%程度の患者が併用しています。ベルイシグアト意外にもしっかり治療薬が使われており、ベルイシグアト vs プラセボの治療効果の差は検出されにくくなっているかもしれません。 

 

 あくまでサブグループ解析の結果ですが、LVEF >40%、なんならLVEF >35%の患者群では、ベルイシグアトとプラセボの差が無くなってしまっています。やはり使い所はHFpEFよりはHFrEFかなという印象です。これに関しては、HFpEF患者を対象とした研究の論文を読む必要があります。

 

 またNT-proBNPが5314.0pg/mLを超える患者群では、Primary outcomeの有意差無しとなっています。年齢による違いを見ると、75歳以上では差が無いという結果になっています。ベースラインのNT-proBNPの値や年齢も考慮する必要があるかもしれません。

 

 現時点では重症な心不全患者で、ファーストラインとして推奨されている薬剤を使用しても症状が増悪する場合の、次のオプションのような薬剤でしょうか。 心不全診療ガイドライン2025年改訂版でも、「十分なガイドライン推奨治療にもかかわらず心不全増悪をきたしたNYHA心機能分類Ⅱ〜ⅣのHFrEF患者(LVEF<45%)に対して、心血管死または心不全入院の抑制を目的としてベルイシグアトの投与を考慮する。【推奨クラスⅡa】」となっています。

 

 さて、自分の勉強のためにと思って(ブログを書かれていた先生方への憧れもあって)ブログを立ち上げて、いつの間にか10年が経過しました。新しい情報は日々増えていき、これまでの当たり前が覆されることも多々あります。正直「ヤバい、勉強しないと置いていかれる」という危機感は、いつまで経っても続いています。薬剤師免許を取得してから何年経っても、勉強は継続していかなければなりません。これからもマイペースで、このブログを更新していこうと思います。今後ともよろしくお願いたします。

 

左室駆出率>40%の心不全患者に対するフィネレノンの効果

 ご訪問ありがとうございます。

 

 今回は左室駆出率>40%の心不全患者に対する、フィネレノンの効果を検討したランダム比較試験の論文を読んでみます。心不全の中でも、いわゆるHFpEFとHFmrEFの患者さんが対象となっています。

 

 フィネレノンは、非ステロイド型(構造中にステロイド骨格を持たない)の、選択的ミネラルコルチコイド受容体拮抗薬です。構造式は、添付文書等で確認してみてください。

 

 フィネレノンはこれまで「2型糖尿病を合併する慢性腎臓病」に対する適応がありましたが、昨年2025年12月に「慢性心不全(ただし、慢性心不全の標準的な治療を受けている患者に限る)」にも適応が追加されています。

 

参考文献 Finerenone in Heart Failure with Mildly Reduced or Preserved Ejection Fraction.

 

リンク https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39225278/

 

PMID:39225278

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:40歳以上でLVEF>40%以上の心不全患者

E:フィネレノン20mgまたは40mg(eGFR値によって最大量を調整)を、通常治療に上乗せ

C:プラセボを通常治療に上乗せ

O:全心不全増悪イベント(初回または再発の心不全による予期せぬ入院または緊急受診)+心血管死亡の複合アウトカム

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→複合アウトカムなので明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→AbstractのMETHODSに「double-blind trial」と記載があるので、盲検化されている

 

均等に割り付けられているか

→Table1を見る限り、均等に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→METHODSのStatistical Analysisに「The primary analysis was performed according to an intention-to-treat approach・・・」と記載があるので、ITT解析されている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→lost to follow-upは6名なので、大きな影響はなさそう

 

追跡期間

→中央値32ヶ月

 

結果

【ベースライン】

年齢 E群:71.9±9.6歳 vs    C群:72.0±9.7歳

 

収縮期血圧 E群:129.5±15.3mmHg vs    C群:129.3±15.3mmHg

 

BMI    E群:29.9±6.1 vs    C群:30.0±6.1

 

eGFR     E群:61.9±19.4ml/min/1.73m2 vs    C群:62.3±20.0ml/min/1.73m2

 

eGFR <60の患者の割合    E群:48.3% vs    C群:47.9%

 

(LVEFごとの患者割合)

<50% E群:36.5% vs    C群:36.0%

 

50〜60% E群:44.3% vs    C群:44.9%

 

>60% E群:19.2% vs    C群:19.1%

 

NYHA分類classⅡの患者の割合  E群:69.3% vs    C群:68.9%

 

SGLT2阻害薬の併用割合  E群:13.1% vs    C群:14.1%

 

 

【アウトカム】

Primary outcome(全心不全増悪イベントと心血管死亡の複合アウトカム) 

E群:1083件(624名)/3003名 vs    C群:1283件(719名)/2998名

RR=0.84(95%CI:0.74~0.95) p=0.007

 

 

全心不全増悪イベント

E群:842件/3003名 vs    C群:1024件/2998名

RR=0.82(95%CI:0.71~0.94) p=0.006

 

 

心血管死亡

E群:242件/3003名 vs    C群:260件/2998名

HR=0.93(95%CI:0.78~1.11) 

 

 

(有害事象)

血清カリウム値>6.0mmol/L

E群:86件/2898名(3.0%) vs    C群:41件/2889名(1.4%)

 

 

 

備考

 左室駆出率>40%の心不全、いわゆるHFpFE、HFmrEF患者において、フィネレノンはプラセボと比較して心不全増悪イベントと心血管死亡の複合アウトカムを減らしています。複合アウトカムの内訳を見てみると、心不全増悪イベントでは有意差が見られていますが、心血管死亡は有意差無しとなっています。

 

 心不全の増悪による入院を繰り返すような患者では、入院を減らすための良い適応になるのかもしれません。今回の研究はLVEF>40%のHFpEF、HFmrEFの患者が対象なので、HFrEFにこの結果を当てはめることはできない点は注意が必要です。

 

 本研究は通常治療にフィネレノン、またはプラセボを上乗せするデザインとなっています。ここでTable1の併用薬を確認してみると、ベースラインとしてSGLT2阻害薬を併用していた患者の割合が13〜14%となっています。今日の臨床における併用割合と比べて少ない印象を、個人的には持ちました。SGLT2阻害薬を併用している患者の割合がより多い集団では、効果の差がより小さくなるのかもしれません。

 

 あくまでサブグループ解析の結果ですが、LVEF>60%の患者ではRR=0.94(95%CI:0.70〜1.26)と、Primary outcomeに有意差が付いていません。例数が少なく検出力不足なのかもしれませんが、どうなのでしょうか。

 

 フィネレノンはスピロノラクトンと比較すると頻度が少ないのかもしれませんが、今回の研究でも 3%に見られているように、血清カリウム値が上昇することもあるため、高カリウム血症の既往などがある患者では注意が必要です。血液検査の結果もしっかり確認する必要があり、フィネレノン錠の添付文書にも、血清カリウム値の範囲ごとの用量基準が掲載されています。また、血清カリウム値が5.5mEq/Lを超えている患者では禁忌です。

 

 腎機能による用量基準値も掲載されており、慢性心不全に使用する場合、eGFRが60ml/min/1.73m2以上の患者は開始用量が20mg、維持用量は40mg、eGFRが25〜60ml/min/1.73m2の患者は開始用量が10mg、維持用量が20mgとなっています。eGFRが25ml/min/1.73m2未満の場合は禁忌となるので、腎機能のチェックも重要となります。

 

 また、併用禁忌に該当する薬剤もあります。特にCYP3A阻害薬であるクラリスロマイシンは、他科からの臨時処方などで使用される頻度も高く、うっかり併用される可能性が考えられます。相互作用にも注意が必要です。ピロリ除菌に用いるパック製剤も、クラリスロマイシンが含まれている製品では注意が必要です。

 

 その他の注意点として、添付文書に「10mg錠と20mg錠の生物学的同等性は示されていないので、20mgまた40mgを投与する場合に、10mgを使用しないこと」という注意書きもあります。経口セマグルチド錠のような注意点ですね。

 

 適応が追加となったことで、今後も使用頻度が増えてくることが予想されます。上記の通り注意する点が多い薬剤ですが、これらの注意点を念頭において適切な薬物治療が行われるようにする必要があります。

 

 

今回も最後までお読みいただきありがとうございました。

 

中等度〜重度慢性腎臓病患者のSGLT-2阻害薬による有害事象

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は中等度以上のCKD患者に対する、SGLT-2阻害薬の有害事象についての論文です。

 

参考文献 Association between sodium-glucose cotransporter-2 inhibitor and adverse events in patients with moderate to severe chronic kidney disease: a systematic review and meta-analysis of randomized controlled trials.

リンク  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39579179/

 

PMID:39579179

 

研究デザイン:システマティックレビュー&メタアナリシス(RCTのSR&MA)

 

論文のPECO

P:stage3以上の慢性腎臓病患者

E:SGLT-2阻害薬

C:プラセボ

O:循環血液量減少、尿路感染症、筋骨格系の痛み

 

情報源

MEDLINE (PubMed経由)、Cochrane Central Register of Controlled Trials、 ClinicalTrials.govのウェブサイト

 

 

出版バイアス

→comprehensively searched to extract all relevant studies(関連する論文を網羅的に検索した)と記載あり

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

 

結果

○循環血液量減少

 SGLT-2阻害薬 vs   プラセボ:リスク比=1.15(95%CI:0.98〜1.35) p=0.08

 

○尿路感染症

 SGLT-2阻害薬 vs   プラセボ:リスク比=1.03(95%CI:0.94〜1.12) p=0.56

 

○筋骨格系の痛み

 SGLT-2阻害薬 vs   プラセボ:リスク比=0.69(95%CI:0.41〜1.17) p=0.17

 

※心臓病のある患者のサブグループでは、循環血液量の減少がSGLT-2阻害薬で有意に多い

リスク比=1.21(95%CI:1.06〜1.39) p<0.01

 

 

備考

 患者全体としては有意差こそ無いものの、循環血液量減少が多くなる傾向が見られました。尿路感染症や筋骨格系の痛みの増加は見られていません。

 

 アブストラクトしか読むことができなかったので、元論文バイアスや出版バイアスに関する情報など、詳細な情報は確認できませんでした。

 

 SGLT-2阻害薬は、循環血液量の減少(脱水)に注意が必要です。血液検査でBUN/SCr比が20を超えたり、血液濃縮によりアルブミン値やヘモグロビン値、尿酸値の上昇が見られるなどの変化が見られることがあります。SGLT-2阻害薬に限らずですが、これらの変動にも注意したいところです。

 

 脱水に関連する事象がどの季節に多いか検討した、国内の研究もあります。

参考文献 A retrospective study of seasonal variation in sodium-glucose co-transporter 2 inhibitor-related adverse events using the Japanese adverse drug event report database.

リンク https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/39627353/

 

PMID:39627353

 

 この研究によると、脱水に関連した有害事象は夏季の7〜8月と、冬季の12月〜2月が多いとなっています。夏場は気温が高いことにより、また冬場は水分摂取量が低下することによる脱水リスクがあるようです。夏場だけではないというところは、注意が必要だと思います。

 

今回も最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。

SGLT-2阻害薬は貧血リスクを減らしますか?②

ご訪問ありがとうございます。

 

これが節目の200記事目らしいです。特に何かあるわけでも無いですが、今後も気の向くままに続けていこうと思います。

 

今回の論文は、前回に引き続きSGLT-2阻害薬と貧血に関する論文です。前回はDPP-4阻害薬との比較でしたが、今回はGLP-1受容体作動薬(GLP-1 RA)との比較になります。

 

参考文献 Use of SGLT2 Inhibitors vs GLP-1 RAs and Anemia in Patients With Diabetes and CKD.

リンク  https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38436955/

 

PMID:38436955

 

研究デザイン:後ろ向きコホート研究

 

論文のPECO

P:18歳以上でHbA1c>6.5%の2型糖尿病かつ、stage1〜3の慢性腎臓病患者13,799名

※Stage1〜3の慢性腎臓病:eGFRが30〜60mL/min/1.73m2、eGFR>60mL/min/1.73m2かつアルブミン/クレアチニン比(UACR)>30mg/g

E:SGLT-2阻害薬(エンパグリフロジン、ダパグリフロジン、カナグリフロジン、ertugliflozin)新規開始 12,331名

C:GLP-1受容体アゴニスト(リキセナチド、リラグルチド、デュラグルチド、セマグルチド) 新規開始 1,468名

O:複合貧血アウトカム(貧血イベントの発生、貧血治療の開始)

※貧血イベント:ヘモグロビン値が男性:<13g/dL 女性:<12g/dL、ICD-10による貧血の診断

 

除外基準

→糖尿病ケトアシドーシスの既往、1型糖尿病ネフローゼ症候群、腎移植、悪性腫瘍、HIV

 

研究対象集団の代表性

→情報源として台湾の大規模医療電子記録であるChang Gung Reserch Database(CGRD)が用いられており、代表性として大きな問題は無いと思われる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

→年齢、性別、HbA1c、eGFR、アルブミン/クレアチニン比(UACR)、BMI、ヘモグロビン(g/dL)、ヘマトクリット(%)、併存疾患、併用薬(Table1に記載あり)

 

追跡期間

 →中央値2.5年

 

 

結果

【ベースライン】

○年齢 SGLT-2阻害薬:62.4±12.3歳 vs   GLP-1 RA:61.5±13.3歳

 

HbA1c   SGLT-2阻害薬:8.4% vs   GLP-1 RA:8.6%

 

○eGFR   SGLT-2阻害薬:69.9mL/min/1.73m2 vs   GLP-1 RA:69.3mL/min/1.73m2

 

○UACR   SGLT-2阻害薬:101.0mg/g vs   GLP-1 RA:101.0mg/g

 

○ヘモグロビン   SGLT-2阻害薬:13.8g/dL vs   GLP-1 RA:13.9g/dL

 

【効果】

○複合貧血アウトカム(Primary outcome)

 SGLT-2阻害薬:8.33/100人年 vs   GLP-1 RA:10.20/100人年

HR=0.81 (95%CI:0.73~0.90)  NNT=55名

 

 

○貧血イベントの発生

 SGLT-2阻害薬:7.77/100人年 vs   GLP-1 RA:9.83/100人年

HR=0.79 (95%CI:0.71~0.87)

 

 

○貧血治療の開始

 SGLT-2阻害薬:2.73/100人年 vs   GLP-1 RA:2.76/100人年

HR=0.99 (95%CI:0.83~1.19)

 

感想

 GLP-1 RAと比較して、SGLT-2阻害薬では貧血が少ないという結果でした。ランダム化比較試験ではなく後ろ向きコホート研究なので、未知の交絡因子の影響が残っている可能性があり、結果の評価には注意が必要かと思います。

 

 本研究では2型糖尿病と、ステージ1〜3の慢性腎臓病を併存している患者が対象となっています。ベースラインのeGFRは、両群ともに70mL/min/1.73m2程度でした。どちらかというとアルブミン/クレアチニン比が30mg/gを超えているために、慢性腎臓病とされた患者が多いという印象でした。

 

 Table3のサブ解析の結果を見てみると、年齢、性別、HbA1c、eGFRによらず、SGLT-2阻害薬の方が貧血が少ないという結果は一貫しています。

 

 Table2を見てみると、HbA1cの経時的な推移は両群で類似しているようです。このことから、血糖コントロールとは別の機序で貧血の発生に差が現れているのかもしれません。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

SGLT-2阻害薬は貧血リスクを減らしますか?①

ご訪問ありがとうございます。

 

今回はSGLT-2阻害薬とDPP-4阻害薬の、貧血の有病率を比較した論文についてです。

アブストラクトしか読むことができないので、詳細な情報については不明です。

 

参考文献 The beneficial effects of sodium-glucose cotransporter 2 inhibitors on anemia in type 2 diabetes-a real world study.

リンク https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/40120086/

 

PMID:40120086

 

研究デザイン:後ろ向きコホート研究

 

論文のPECO

P:2型糖尿病患者 22,896名

E:SGLT-2阻害薬 11,448名

C:DPP-4阻害薬 11,448名

O:貧血の有病率

 

情報源:Clalit Health Services

 

 

結果

・貧血 HR=0.60(95%CI:0.58〜0.63)

 

・貧血に関連した入院 HR=0.67(95%CI:0.58〜0.77)

 

・貧血治療 HR=0.84(95%CI:0.78〜0.92)

 

 

備考

 DPP-4阻害薬と比較して、SGLT-2阻害薬服用で貧血が少ないという結果でした。本研究はアブストラクトしか読むことができず、詳細な内容については確認できませんでした。

 

 またランダム化比較試験ではなく、後ろ向きコホート研究です。そのため、バイアスなどは多少あるのかもしれません。

 

 SGLT-2阻害薬の貧血改善に関するメカニズムとして、エリスロポエチンの産生を増加するという報告もあります。

・Possible Mechanism of Hematocrit Elevation by Sodium Glucose Cotransporter 2 Inhibitors and Associated Beneficial Renal and Cardiovascular Effects.

リンク:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/31009585/

PMID:31009585

 

  関連論文として、以下のSGLT-2阻害薬 vs GLP-1受容体アナログ製剤の、貧血を比較した研究についても読んでみようと思います。

参考文献:Use of SGLT2 Inhibitors vs GLP-1 RAs and Anemia in Patients With Diabetes and CKD.

リンク:https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/38436955/

PMID:38436955

 

最後までお付き合いいただき、ありがとうござました。

LVEF>40%の心不全患者に対してダパグリフロジンは有効ですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

いつの間にやら4月に突入し、今日から薬剤師○○年目を迎えました。

 

さて今回は、左室駆出率(LVEF)≧40%の心不全患者に対する、SGLT-2阻害薬ダパグリフロジンの効果を検討した論文になります。DELIVER試験と呼ばれている研究です。

 

LVEF≧40%ということなので、HFmrEF(ヘフエムレフ)とHFpEF(ヘフペフ)の患者さんが対象ということですね。

 

それでは、論文を読んでみましょう。

 

参考文献 Dapagliflozin in Heart Failure with Mildly Reduced or Preserved Ejection Fraction.

リンク https://pubmed.ncbi.nlm.nih.gov/36027570/

 

 PMID:36027570

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:左室駆出率>40%以上の心不全患者6,263名

E:ダパグリフロジン10mg/日(3,131名)

C:プラセボ(3,132名)

O:(Primary) 心不全の増悪と、心血管死亡の複合アウトカム

心不全の増悪:心不全による予期せぬ入院、心不全による緊急受診

 

ランダム化されているか?

→METHODSにWe randomly assigned ・・・と記載があり、ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→複合アウトカムなので明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカムと言える

 

盲検化されているか?

→METHODSのTRIAL DESIGN AND OVERSIGHTにdouble-blindと記載があるので、二重盲検化されている

 

均等に割り付けられているか

→RESULTSのPATIENTSに「The demographic and clinical characteristics of the two groups were well balanced at baseline」と記載あり。またTable1より、均等に2群に割り付けられていると思われる。

 

ITT解析を行われているか?

→STATISTICAL ANALYSISに「All the analyses were performed according to the intention-to-treat principle」と記載があり、ITT解析されている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→lost to follow-upはダパグリフロジン群:2名、プラセボ群:1名なので、結果を覆すほどの脱落は無さそう

 

追跡期間

→中央値2.3年

 

結果

【ベースライン】

○年齢中央値:ダパグリフロジン群:71.8±9.6歳 プラセボ群:71.5±9.5歳

 

○NYHA分類

ダパグリフロジン群 Class Ⅱ:73.9% Ⅲ:25.8% Ⅳ:0.3%

プラセボ群 Class Ⅱ:76.6% Ⅲ:23.1% Ⅳ:0.3%

 

○平均LVEF:ダパグリフロジン群:54.0±8.6% プラセボ群:54.3±8.9%

 

 

【効果】

心不全の増悪と心血管死亡の複合アウトカム(Primary outcome)

ダパグリフロジン群:512/3131件(16.4%) vs プラセボ群:610/3132件(19.5%)

HR=0.82(95%CI:0.73〜0.92)

 

心不全による入院と心不全による緊急受診

ダパグリフロジン群:368/3131件(11.8%) vs プラセボ群:455/3132件(14.5%)

HR=0.79(95%CI:0.69〜0.91)

 

心不全による入院

ダパグリフロジン群:329/3131件(10.5%) vs プラセボ群:418/3132件(13.3%)

HR=0.77(95%CI:0.67〜0.89)

 

心不全による緊急受診

ダパグリフロジン群:60/3131件(1.9%) vs プラセボ群:78/3132件(2.5%)

HR=0.76(95%CI:0.55〜1.07)

 

心血管死亡

ダパグリフロジン群:231/3131件(7.4%) vs プラセボ群:261/3132件(8.3%)

HR=0.88(95%CI:0.74〜1.05)

 

 

【有害事象】

○尿路感染症

ダパグリフロジン群:30/3126件(1.0%) vs プラセボ群:32/3127件(1.0%)

 

 

備考

 HFpEFの患者に対するダパグリフロジン10mgの服用は、プラセボと比較してPrimary outcome(心不全の増悪と心血管死亡の複合アウトカム)を減らしています。

 

 ベースラインのLVEF平均値は約54%でした。サブグループ解析の結果でLVEFが60%以上の患者群でも、ダパグリフロジンによりPrimary outcomeが減っているという結果です。

 

 本研究では、もともとLVEF <40%を経験し、その後にLVEF>40%となった患者(HFimpEF)も組み入れられています。サブグループ解析の結果を確認すると、このような患者群でもPrimary outcomeが減っています。幅広い患者群で、結果が一貫しているように感じました。

 

 どちらかというと、死亡というよりは心不全の増悪を減らしているような結果となっています。

 

 

 最後までお付き合いいただき、ありがとうございました。