ロゼレムを服用すると寝つきは良くなりますか?
第4弾は、ラメルテオン(ロゼレム)の睡眠に与える影響を調べてみました。
これまでの睡眠薬とは異なる作用機序で、ラメルテオンはメラトニン受容体作動薬です。
これまでの睡眠薬とは異なり、強引に眠らせるのではなく、自然な眠気を誘発するという特徴があるようです。
こんな特徴のロゼレムですが、ロゼレムって、そんなに睡眠に対して効果があるのかな?と常日頃から疑問に思っていたので、早速論文を探して読んでみることにしました。
Efficacy and Safety of 6-Month Nightly Ramelteon Administration in Adults with
Chronic Primary Insomnia
リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/19294955
ランダム化されているか?
Designのところに、Randomizedの記載があるのでランダム化
研究デザイン:ランダム化、二重盲検、プラセボ比較
論文のPECO
E:ラメルテオン8mg
C:プラセボ
O:(Primary)睡眠導入までの時間(LPS)
(Secondary)合計睡眠時間(TST)等
※除外基準
ナルコレプシー、睡眠関連呼吸障害、概日リズム障害、錯眠、3カ月以内の睡眠スケジュール変更、7日以内の旅行、体重減少プログラム中、30日以内の運動ルーチンの変更、レストレスレッグス症候群、周期性脚運動障害、線維筋痛症、6か月以内の精神障害、薬物・アルコール依存症、30日以内の神経系・肝臓・腎臓・内分泌系・心血管系・消化器系・呼吸器系・血液系・代謝系の疾患、身体検査・心電図・臨床検査における異常、ラメルテオン過敏症、睡眠・覚醒機能へ影響を及ぼす薬物等(タバコ、中枢神経系薬を含む)
一次アウトカムは明確か?
Primary outcomeとして睡眠導入までの時間を設定。睡眠ポリグラフィー検査により評価。この1点に絞られていることからも、アウトカムは明確と思われる。
睡眠ポリグラフ検査:睡眠障害の原因と程度が正確に判定できる検査。睡眠の状態、呼吸の状態、心電図、睡眠中の姿勢、下肢の動きなどの体の動き、などの生理機能を同時に連続して一晩中記録する。睡眠時無呼吸症候群、周期性四肢運動障害、レム睡眠行動障害などの診断に用いられる。
真のアウトカムか?
睡眠は日常生活で重要な部分であるため、真のアウトカムと言える
追跡期間
6か月(追跡期間としては妥当)
妄検化されているか?
MethodsのDesignにdouble-blindの記載があるので妄検化
ITT解析を行われているか?
記載なし。但し、Figure1より、Allocated to placebo:224名、Allocated to ramelteon:227名に対し、Analyzedもそれぞれ224名、227名(割り付けと、解析人数がどちらの群も同じ)なので、ITT解析とみなせると判断した。
脱落率は結果を覆すほどあるか?
RESULTのDisposition and Baseline Characteristicsに、Of these subjects, 335 (74.3%) completed double-blind treatmentの記載があるため、追跡率74.3%
やや、脱落率が高めだなという印象
結果
ベースラインのLPS、TST
|
LPS |
TST |
ラメルテオン群 |
70.75min |
329.28min |
プラセボ群 |
69.53min |
329.72min |
(Primary endpoint)
服用開始後のLPS
具体的に何分に変化したかは記載されていないが、Polysomnographic Sleep Measuresの6行目にSimilarly, a consistently greater change from baseline was observed in the ramelteon group (ranged from 54%-56%) compared with the placebo group (ranged from 30%-47%).の記載がある。ベースラインのLPSから計算してみると以下の通りになる。
|
変化率 |
LPS |
P値 |
ラメルテオン群 |
54-56% |
31.13~32.545min |
p<0.05 |
プラセボ群 |
30-47% |
36.85~48.67min |
服用開始後、1週間後、1、3、5、6カ月後でいずれも有意差あり(p<0.05)
(Secondary endpoint)
合計睡眠時間
|
ベースライン |
1週間後 |
1か月後 |
3か月後 |
プラセボ群 |
329.72min |
365.73min |
373.79min |
379.31min |
ラメルテオン群 |
329.28min |
381.08min |
380.01min |
380.81min |
|
5か月後 |
6か月後 |
プラセボ群 |
379.07min |
380.11min |
ラメルテオン群 |
380.81min |
381.39min |
1週間後のみ、ラメルテオン群とプラセボ群の間に有意差あり。それ以外は有意差無し。
(有害事象)
|
プラセボ群(n=223) |
ラメルテオン群(n=228) |
頭痛 |
18(8.1%) |
18(7.9%) |
上気道感染症 |
6(2.7%) |
11(4.8%) |
鼻咽頭炎 |
11(4.9%) |
10(4.4%) |
尿路感染症 |
9(4.0%) |
9(3.9%) |
めまい |
5(2.2%) |
7(3.1%) |
吐き気 |
8(3.6%) |
7(3.1%) |
感想
睡眠導入までの時間(LPS)は、ラメルテオン群ではベースラインの70.75分から、服用開始後31.13~32.545分に短縮されている。一方、プラセボ群では、ベースラインの69.53分から、服用開始後36.85~48.67分に短縮されている。服用開始後1週間で、プラセボ群に比べ、ラメルテオン群でLPSの差が大きく開いているような感じである(約15分の差)。しかしながら、有意差はついているものの、それ以降はいずれの時点もLPSの差は10分未満である。
プラセボと比較すると、その差はあまり大きくなさそうである。しかし、実際使った場合では、ラメルテオンを服用するとプラセボ効果+αの効果として現れるので。ベースラインからの変化を考えると、その睡眠導入までの時間は40分程度短縮できるかもしれないという結果であり、侮れないかもしれないと感じた。
但し、脱落率が比較的高い点と、研究の支援に製造販売元の武田薬品が関わっている点から、結果はやや割り引いて考えるべきではないだろうか。
いずれにせよ、睡眠などは精神状態にも大きく左右されるので、プラセボ効果も含め、服することで安心して眠る事が出来るのであれば、服用するのもいいのではないかな?といった感じだろうか。
除外基準に喫煙者が含まれているようなので、喫煙者に対する効果はもっと小さくなるかもしれない。
関連論文もあるので、これらも今後読みたい。
1.http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/17803013(2007年と古い論文ですが)
2.http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21256803(こちらは、Abstractしか読めませんが)
(補足)
ロゼレムで注意したいのが、抗うつ薬のフルボキサミン(商品名:デプロメール/ルボックス)との併用が禁忌である点。フルボキサミンが、ラメルテオンの代謝酵素を阻害することで、ラメルテオンのAUCが顕著に増加する恐れがあるため。
今回も、最後までお付き合いいただきありがとうございました。