糖尿病患者のアスピリン服用は心血管イベントの一次予防にどの程度有効ですか?

ご訪問ありがとうございます。

今回は、糖尿病患者に対するアスピリンの心血管イベント予防効果についてです。

 

参考文献 Aspirin for primary prevention of cardiovascular events in people with diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials.

リンク  http://www.bmj.com/content/bmj/339/bmj.b4531.full.pdf

PMID:19897665

 

研究デザイン:メタ分析(6つのRCTが対象)

 

論文のPECO

P:糖尿病で心血管イベントの既往歴の無い患者10,116名

E:アスピリン服用(アスピリン群)

C:プラセボもしくは無治療(コントロール群)

O: 総死亡、心血管性死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中

 

※使用したアスピリンの量 100mg~650mg/day

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

2名の評価者が独立して選定

評価者バイアス問題なし

 

2、出版バイアス

情報元: MEDLINE、コクラン

Searches were limited to published English language articles.(英語で書かれたものだけ)

一応、追加データも集めようとしている

出版バイアスが含まれている可能性あり

 

3、元論文バイアス

Quality assessmentに記載あり。隠蔽化が不明確な研究が3つ含まれる。

元論文バイアスが多少存在する可能性あり

 

4、異質性バイアス

心筋梗塞脳卒中、心血管因性死亡に関して、中程度の異質性

主要心血管イベント、総死亡に関して、異質性は少ない

 

追跡期間

3.6~10.1年(アウトカム発生までの期間として妥当)

 

結果

主要心血管イベント(心血管因性死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、総死亡)

アスピリン群:601/4789件 コントロール群:657/4795件

RR0.90 (95%CI: 0.81‐1.00)  I2=0%    NNT=87

 

心筋梗塞

アスピリン群:395/5064件 コントロール群:439/5053件

RR0.86 (95%CI: 0.61‐1.21)  I2=62.2%    NNT=113

 

脳卒中

アスピリン群:181/4789件 コントロール群:201/4795件

RR0.83 (95%CI: 0.60‐1.14)  I2=52.5%   NNT=243

 

心血管因性死亡

アスピリン群:298/4275件 コントロール群:328/4282件

RR0.94 (95%CI: 0.72‐1.23)  I2=56.6%   NNT=146

 

総死亡

アスピリン群:493/4275件 コントロール群:525/4282件

RR0.94 (95%CI: 0.72‐1.23)  I2=0%   NNT=138

 

(サブグループ解析)

心筋梗塞

男性

アスピリン群:103/1552件 コントロール群:162/1574件

RR0.57 (95%CI: 0.34‐0.94)   NNT=28

 

女性

アスピリン群:119/1612件 コントロール群:126/1564件

RR1.08 (95%CI: 0.71‐1.65)  NNT=150

 

脳卒中

男性

アスピリン群:49/1277件 コントロール群:44/1316件

RR1.11 (95%CI: 0.75‐1.64)   NNH=203

 

女性

アスピリン群:58/1612件 コントロール群:69/1564件

RR0.75 (95%CI: 0.37‐1.53)   NNT=123

 

副作用

総出血:RR=2.50(95%CI:0.76-8.21)

消化管出血:RR=2.11(95%CI:0.64-6.95)

消化管症状:RR=5.09(95%CI:0.08-314.39)

悪性腫瘍:RR=0.84(95%CI:0.62-1.14)

 

感想

 主要心血管イベントはリスク比こそ0.90であるが、NNTを計算してみると87名と、その影響は思っていたより小さいのかな?といった印象。心筋梗塞脳卒中、心血管因性死亡、総死亡いずれも、NNTを計算してみると思っているより影響は小さいのかなという印象。

 本メタ分析で用いられている論文の中には、アスピリン325mg/day、650mg/dayのものもあり、650mg/dayを用いている研究は対象人数も多く、特に脳卒中のRRに対する影響が大きいような印象。

 元論文の中で、対象患者の平均年齢が不明な研究が多い点は結果に影響が及ぶ可能性があるため考慮が必要である。

 サブグループ解析ではあるが、心筋梗塞に対しては男女の違いによりその予防効果が異なる可能性がある。女性では、男性に比べ予防効果が芳しくないのかもしれない。元論文についても読んでみる必要がある。

 

女性のみを対象とした研究↓↓

A randomized trial of low-dose aspirin in the primary prevention of cardiovascular disease in women.

リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15753114

PMID:15753114

 

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。