ミラベグロン服用でどの程度トイレの回数を減らせますか?
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今回は、β3受容体アゴニストとして過活動膀胱に対して使われるミラベグロンについてです。
参考文献 Phase III, randomised, double-blind, placebo-controlled study of the β3-adrenoceptor agonist mirabegron, 50 mg once daily, in Japanese patients with overactive bladder
リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24471907
PMID:24471907
研究デザイン:二重盲検 ランダム化 プラセボ比較(第Ⅲ相試験:日本)
ランダム化されているか?
タイトルにズバリRandomizedの記載があるのでランダム化
論文のPECO
P:24週間以上の過活動膀胱症状を有しており、24時間で8回以上の排尿があり、24時間で1回以上の尿意切迫感、もしくは切迫性尿失禁がある成人1139名
E:ミラベグロン50mg/day(380名)
C:プラセボ(381名)、トルテロジン4mg(378名)
O:(Primary) ベースラインから服用12週後までの、24時間の平均排尿回数の変化
(Secondary)尿意切迫感、切迫性尿失禁、キング健康質問票のQOLスコア
※除外基準
真性腹圧性尿失禁、前治療期間前の3日間の平均尿量>3000mL、排尿後の残尿量>100mL、
※キング健康質問票・・・尿失禁に特異的なQOL 質問票。過活動膀胱にも妥当性が確認されている。
サンプルサイズ
990名:各群330名(α=5%、パワー90%)
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
double-blind→盲検化されている
ITT解析を行われているか?
full analysis set population→FAS解析
脱落率は結果を覆すほどあるか?
追跡率=92.5%
結果
ベースラインにおける各群の数値(回/24時間)
|
プラセボ群 |
ミラベグロン群 |
トルテロジン群 |
排尿回数 |
11.29±2.748 |
11.15±2.650 |
11.10±2.567 |
尿意切迫感回数 |
4.42±2.989 |
4.27±2.848 |
4.13±2.810 |
失禁回数 |
1.91±1.760 |
1.99±2.054 |
1.89±1.826 |
切迫性尿失禁回数 |
1.67±1.366 |
1.78±1.752 |
1.71±1.571 |
夜間頻尿 |
1.81±1.198 |
1.72±0.998 |
1.71±1.075 |
ベースラインからの各群の数値の変化(回/24時間)
|
プラセボ群 |
ミラベグロン群 |
p値 |
排尿回数 |
-0.86±2.354 |
-1.67±2.212 |
<0.001 |
尿意切迫感回数 |
-1.37±3.191 |
-1.85±2.555 |
p=0.025 |
失禁回数 |
-0.66±1.861 |
-1.12±1.475 |
p=0.003 |
切迫性尿失禁回数 |
-0.60±1.745 |
-1.01±1.338 |
p=0.008 |
夜間頻尿 |
-0.36±1.062 |
-0.44±0.933 |
p=0.277 |
|
トルテロジン群 |
排尿回数 |
-1.40±2.176 |
尿意切迫感回数 |
-1.66±2.560 |
失禁回数 |
-0.97±1.612 |
切迫性尿失禁回数 |
-0.95±1.583 |
夜間頻尿 |
-0.42±0.845 |
QOLの各項目
失禁、仕事・家事の制限、身体活動の制限、社会的活動の制限、感情、睡眠/活力、重症度評価の項目に関してはプラセボと比較して有意差ありの改善
有害事象
|
プラセボ群 |
ミラベグロン群 |
トルテロジン群 |
便秘 |
10/379件(2.6%) |
13/379件(3.4%) |
13/375件(3.5%) |
口腔乾燥 |
11/379件(2.9%) |
10/379件(2.6%) |
50/375件(13.3%) |
感想
Primary outcomeである、24時間の排尿回数に関しては、プラセボ群に比べ、ミラベグロン群で、有意差をもって改善との結果だが、ベースラインで11回程度の排尿回数を1.5回ほど減らすという程度の改善で、臨床上大きな変化なのかは疑問。個々の感じ方による部分は大きいのかもしれない。
Secondary outcomeに関しても、臨床上そこまで大きい差ではないような印象。
QOLの各項目は、多くの項目でプラセボとの比較で有意な改善である。あくまでもSecondary outcomeで仮説生成的であるが、多少は患者の生活の質改善に役立つのかもしれない。実際、しばらく服用を中止したら、何か調子悪い気がするという患者さんもおられたので、案外侮れない所はあるのかもしれない。
過活動膀胱の治療に関しては、患者の実感が大切になるので、QOLの改善は重要視する必要があるのではないかと思う。過活動膀胱の真のアウトカムとは?
有害事象としては、便秘もプラセボ群とそこまで頻度が変わらないというのは意外と感じた。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。