COPD患者に対するLABAの使用は心血管イベントに影響を与えますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、9/24(土)に開催した第3回居酒屋抄読会in梅田で使用した論文に関してです。

 

もし、当日、または録画配信をご視聴いただいた方がいらしたら、ご視聴ありがとうございました。

 

当日は、多くの方にご参加、そして多くのコメント頂き大変うれしかったです。

 

という事で、主に自分のための振り返りです。

 

用いた論文は、COPD患者に吸入のLABAを使用した場合、心血管有害事象は増えるか?といった論文です。

 

参考文献  Inhaled Long-Acting β2-Agonists Do Not Increase Fatal Cardiovascular Adverse Events in COPD: A Meta-Analysis

リンク   http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26378450

 

PMID:26378450

 

研究デザイン:メタ分析(RCT 24研究)

 

論文のPECO

P:COPD患者

E:LABAを使用する→12291名

C:プラセボ→7784名

O:致死性の心血管有害イベント(突然死、突然心臓死、心臓死)

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

2名の評価者が独立して評価

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2出版バイアス

情報元:MEDLINE、EMBASE、コクランライブラリー、

・その他関連する参考文献についても調べているが、著者への連絡は取っていない。

・英語以外の言語を用いて書かれたものは除外されている

・ファンネルプロットは、一応きれいな形であるがきれいすぎる気もする

 

出版バイアスは存在する可能性あり

 

3、元論文バイアス

元論文の質に関してJadad scoreを用いて評価している

→すべての研究が3点以上なのでそれなりに元研究の質は担保されているとは書いているが、5点満点の3点は低い印象

 

元論文バイアスはあやしい気がする

 

4、異質性バイアス

Primary outcomeに関してはI2=0%なので異質性は少ない

 

追跡期間

長期使用:6か月以上、短期使用:12~26週間

 

結果

致死性心血管有害事象

E群 vs C群 RR=0.65(95%CI:0.50-0.86)p=0.002  I2=0%

NNT=171名?

 

サブグループ解析

サルメテロール vs プラセボ

E群 vs C群 RR=0.64(95%CI:0.46-0.90)p=0.010  I2=0%

 

その他のLABA(ホルモテロール、インダカテロール、ビランテロール、オロダテロール、アホルモテロール)では、プラセボ比較で致死性心血管有害事象に有意差無し

 

長期使用研究(8研究)

E群 vs C群 RR=0.64(95%CI:0.47-0.87)p=0.004  I2=0%

 

短期使用研究(16研究)

E群 vs C群 RR=0.78(95%CI:0.40-1.50)p=0.45  I2=0%

 

FEV1<50%

E群 vs C群 RR=0.69(95%CI:0.50-0.96)p=0.03  I2=0%

 

FEV1>50%

E群 vs C群 RR=0.62(95%CI:0.32-1.23)p=0.17  I2=0%

 

感想

全体で見ると、プラセボと比較して、LABA使用で致死性心血管有害事象を減らすような結果となっている。しかし、内容をよく見てみるとサルメテロールを使用した研究のうちの1つ(Calverley2007)が大部分を占めており、結果がその研究に引っ張られているような感じである。他の研究はイベントの発生件数が1件などと、そもそも発生件数が少ないものが多々含まれている。また、この大部分を占めている研究はメーカー主導の研究のようなので、結果は割り引いて考える必要がある。

すべての結果がI2=0%であったり、ファンネルプロットがあまりにもきれいすぎる印象を感じたりと、何かと出来過ぎた研究のような印象が残った。fixed effect modelを用いたメタ分析を初めて読んだが、このモデルでいいのかなど、この辺は勉強不足のためよく分からなかった。

全体のプラセボ群の患者数が、本文中では7784名なのに、フォレストプロットでは9011名となっている理由もよく分からなかった。

2015年の論文だが、元論文の評価にJadad scoreを用いている点も少し時代遅れ(?)といった印象。

安全性といった点からも、このメタ分析のみから評価するのは危険な感じがするので、関連論文にも当たる必要がある。

 

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。