小児に対するノイラミニダーゼ阻害剤はインフルエンザ治療・予防にどれぐらい有効?
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そろそろ流行の季節になってきましたが、インフルエンザの治療薬について調べています。隣の市では、すでに1か月ぐらい前から出てきているという話も聞きます。
インフルエンザ治療薬の第1弾は、オセルタミビル・ザナミビルのインフルエンザ治療&予防効果を見たメタ分析の論文です。
参考文献 Neuraminidase inhibitors for treatment and prophylaxis of influenza in children: systematic review and meta-analysis of randomised controlled trials.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19666987
PMID:19666987
研究デザイン:システマティックレビュー&メタ分析(7つのRCT)
※7つのRCTのうち4つは治療効果を、3つは予防効果を見たRCT
論文のPECO
P: インフルエンザの診断または疑いのある、12歳以下の小児で入院していない者
E:ノイラミニダーゼ阻害剤使用
C:ノイラミニダーゼ阻害剤使用無し
O:インフルエンザ症状解消までの時間と、インフルエンザ発生率
一次アウトカムは明確か?
→Primary outcomeとして2つ挙げられているが、一応明確と思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
4つのバイアス
1、評価者バイアス
・2名の評価者が独立してデータ抽出
評価者バイアスはさほど問題なさそう
2、出版バイアス
情報元:MEDLINE、EMBASE、Cochran
・言語制限無しに検索
・未出版のデータも探している
出版バイアスはさほど問題なさそう
3、元論文バイアス
※治療効果を検討した4つの研究のうち1つのみHigh quality、残りの3つは隠蔽化、盲険化が判定不能
※予防効果を検討した3つの研究は、いずれもmoderate quality(1つはオープンラベル)
元論文バイアスの存在する可能性がある
4、異質性バイアス
インフルエンザの治療効果を検討した項目では、異質性が記載されておらず不明。予防効果に関しては、I2=0%なので異質性は少ない。
結果
・症状の改善・軽減までの期間の中央値
確定診断のインフルエンザ
吸入ザナミビル
NAI30009研究 E群:4.0日 C群:5.25日 差1.25日(0.5-2.0) p<0.001
NAI30028研究 E群:5.0日 C群:5.5日 差0.5日(NA) NA
※NA:Not Available
経口オセルタミビル
WV15758研究 E群:2.6日 C群:4.2日 差1.5日(NA) p<0.001
WV15759/WV15871研究 E群:3.8日 C群:4.8日 差1.1日(NA) p=0.12
臨床上のインフルエンザ
吸入ザナミビル
NAI30009研究 E群:4.5日 C群:5.0日 差0.5日(0.0-1.5) p=0.011
・通学/日常活動への復帰までの中央値
吸入ザナミビルでは、確定診断のインフルエンザ、臨床上のインフルエンザともに有意に1日短くするという研究あり。経口オセルタミビルでは、有意差無しの研究が1つのみ。
・症候性インフルエンザ発症率(予防効果を検討)
E群:17/427件 C群:56/436件 差-0.08(95%CI:-0.12~-0.05) p<0.001
I2=0% NNT=13
感想
システマティックレビュー&メタ分析だが、組み込まれたRCT数が少なく、元論文の質も疑わしい所がある。症状改善までの期間としては、予想していたよりも短くならないのだなと感じた。症状改善までの期間は結果が統合されていないし、効果があるというものも、効果が無いというものも含まれているので、この論文の結果だけもって何とも言い難い。症状改善が1日早くなれば、親御さんの負担もその分軽減されるであろうし、それだけの効果がある可能性もあるよね~という感じかな?
予防効果に関してはNNTが13という事で、まずまず効果があるのかもしれないが、他にも関連論文や元論文を読んでみなければと思う。予防に関しては、自費になる所も忘れてはならないポイントかな。ザナミビルとラニナミビルの比較も気になる所。
そろそろ、マスクもしないといけないですね。あ、そうだ、マスクでインフルエンザがどれぐらい予防できるのかも気になりますね~。
引き続き、インフルエンザ関連の論文読んでいこうと思います。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。