心血管疾患リスク中程度ではコレステロールを下げた方がいいですか?

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今回は、心血管疾患リスク中程度の患者に対するロスバスタチンの効果についてです。

 

参考文献 Cholesterol Lowering in Intermediate-Risk Persons without Cardiovascular Disease.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27040132

 

PMID:27040132

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

 論文のPECO

P:心血管疾患の既往歴は無いが、リスクが中程度の患者12,705名

E:ロスバスタチン10mg/日

C:プラセボ

O:(Primary) <first>心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム

<second>心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、血行再建術、心不全、心停止の蘇生術の複合アウトカム

 

 (Secondary)心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、血行再建術、心不全、心停止の蘇生術、虚血性の狭心症の複合アウトカム

 

※リスクファクター:ウエスト・ヒップ比、HDLコレステロール低値、現在・最近の喫煙、摂食障害、早期冠動脈疾患の家族歴、軽度腎機能障害

 

除外基準

心血管疾患のある者、スタチン・ARB・ACE-I・チアジド系利尿薬の適応または禁忌

 

※本研究は、カンデサルタン+ヒドロクロロチアジドvs プラセボの研究と2×2の研究デザインとなっている。

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

サンプルサイズ

12,700名(パワー80%以上、α=5%)

 

一次アウトカムは明確か?

→それぞれ3つ、6つのアウトカムの複合アウトカム。一次アウトカムとして複合アウトカムが2つ設定されているので注意が必要かもしれない。

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→盲検化されている(double-blind)

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

追跡期間

→平均5.6年

 

結果

(first co-primary outcome) 心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム

E群3.7%(235/6361) vs C群4.8%(304/6344) 

HR=0.76(0.64-0.91) p=0.002 NNT=91

 

(second co-primary outcome) 心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、血行再建術、心不全、心停止の蘇生術の複合アウトカム

E群4.4%(277/6361) vs C群5.7%(363/6344) 

HR=0.75(0.64-0.88) p<0.001  NNT=77

 

(Secondary outcome)心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、血行再建術、心不全、心停止の蘇生術、虚血性の狭心症の複合アウトカム

E群4.8%(306/6361) vs C群6.2%(393/6344) 

HR=0.77(0.66-0.89) p<0.001  NNT=72

 

安全性

筋肉痛や筋肉の衰弱がロスバスタチン群で有意に多い

E群5.8%(367/6361) vs C群4.7%(296/6344) p=0.005

 

 

感想

 心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカムとしては、ロスバスタチン服用群が有意に減らす事が出来る可能性が示唆されている。しかし、心血管因性死亡に関してはほとんど差が無いという結果。 

 first co-primary outcomesecond co-primary outcome共に非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中による差が、両群間の複合アウトカムの差をもたらしている感じ。使用されているロスバスタチンの用量としては、10mgとやや多めかなという印象を持った。

 また、NNTを計算してみたところ91名、77名という事なので、そこまで服用の有無による違いは大きくないかなという印象。

 本研究のみで結論する事は出来ないが、心血管疾患リスクが中程度であっても躍起になってコレステロールを下げようとしなくてもいいのかもしれない。他のスタチンやフィブラートに関しても調べてみたい。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。