心房細動患者に対するジゴキシンと死亡

ご訪問ありがとうございます。

 

前回の投稿時に、心不全と心房細動は分けて考えた方が良さそうと、日ごろから大変尊敬している先生に教えて頂きまして。そんなわけで、今回は心房細動患者に対するジゴキシンのSR&MAです。そもそも、私の勤めている薬局ではジゴキシンの処方例は非常に少ない印象ではありますが・・・。

 

他にも似たような研究がいくつかあるようですが、とりあえず1本読んでみました。

 

参考文献 Systematic review and meta-analysis of mortality and digoxin use in atrial fibrillation.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27064796

 

PMID:27064796

 

研究デザイン:システマティックレビュー&メタ分析

 

論文のPECO

P:心房細動(AF)の患者

E:ジゴキシン服用あり→111978名

C:ジゴキシン服用無し→389643名

O:(Primary)総死亡

 (Secondary)心血管死亡

 

一次アウトカムは明確か?

→明確。

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

・2名の評価者が独立してデータ抽出

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元:MEDLINE、EMBASE、Google Scholar、CINAHL、Cochran central datebase

 

・言語制限なしに集めている

・関連する参考文献や未出版のデータも検索している

・Funnel plotを見た感じも、そこまで大きな問題はなさそう

 

出版バイアスはさほど問題なさそう

 

3、元論文バイアス

・RCTのほかに観察研究やPost hoc解析の結果も含まれている

 

複数の研究タイプが含まれているようなので、やや注意が必要

 

4、異質性バイアス

・Primary outcomeのI2=88%と異質性は高い。他の結果も異質性は高い。

 

 

結果

平均年齢:73.8歳

 

★総死亡

(全体) HR1.27 (95%CI:1.19~1.36) I2=88% P<0.001

 

(心不全ありの患者) HR1.21 (95%CI:1.12~1.30) I2=77% P=0.002

 

(心不全無しの患者) HR1.47 (95%CI:1.25~1.73) I2=91% P<0.0001

 

※RCTのみの結果:HR=1.46 (95%CI:1.09~1.94) I2=82% P<0.0001

 

★心血管死亡

HR1.21 (95%CI:1.12~1.30) I2=74% P<0.001

 

 

感想

 心房細動の患者に対するジゴキシンは、総死亡を増やす可能性があるという結果である。RCT以外に観察研究も含まれているようで、また異質性も高いため注意は必要とは思うが、この結果は軽視できないものと思う。

 ジゴキシンの効能・効果に「心房細動・心房粗動による頻脈」があるが、今回の結果を見ると、心房細動を持つ患者に対してジゴキシンをあまり安易に使うべきではないような印象を持った。心不全を併発している患者と併発していない患者でやや結果に差がある点も興味深い。

 異質性が高いという事もあるので、今後このSRに組み入れられている元論文も読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。