血糖異常患者はn-3系脂肪酸で心血管死亡を防げますか?

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今回は血糖異常患者に対するn-3系脂肪酸についての論文です。

 

参考文献  n-3 fatty acids and cardiovascular outcomes in patients with dysglycemia.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=22686415

 

PMID:22686415

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 ※インスリングラルギン使用 vs 通常ケアの比較も同時並行で行われている、2×2の研究デザイン

 

論文のPECO

P:食後血糖異常、耐糖能異常、糖尿病のいずれかがある、心血管イベント高リスクの患者12536名

E:n-3系脂肪酸(465mgのEPA+375mgのDHA)→6319名

C:プラセボ→6292名

O:(Primary) 心血管死亡

  

除外基準

研究に使われていないn-3系脂肪酸の中止を望まない、HbA1c>9.0%、過去4年以内の冠動脈バイパス術、重篤な心不全、声明に影響を及ぼす悪性腫瘍

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検化されている

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→12500名(パワー90%、α=5%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→99.4%

 

追跡期間

→中央値6.2年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 n-3系:63.5±7.8歳 vs プラセボ:63.6±7.9歳

心筋梗塞脳卒中、血行再建術既往 n-3系:59.1% vs プラセボ:58.6%

高血圧 n-3系:78.7% vs プラセボ:80.3%

HbA1c(中央値) n-3系:6.4% vs プラセボ:6.4%

食事由来のEPA-DHA n-3系:210.0mg/日 vs プラセボ:209.3mg/日

 

 【アウトカム】

Primary outcome(心血管死亡)

 

 n-3系:1.55/100人年 vs プラセボ:1.58/100人年

調整HR=0.98(95%CI:0.87~1.10) p=0.72

 

Secondary outcome

心筋梗塞脳卒中・心血管死亡の複合アウトカム

n-3系:2.92/100人年 vs プラセボ:2.88/100人年

調整HR=1.01(95%CI:0.93~1.10) p=0.81

 

☆総死亡

n-3系:2.57/100人年 vs プラセボ:2.62/100人年

調整HR=0.98(95%CI:0.89~1.07) p=0.63

 

不整脈による死亡

n-3系:0.78/100人年 vs プラセボ:0.70/100人年

調整HR=1.10(95%CI:0.93~1.30) p=0.26

 

 

☆致死性・非致死性心筋梗塞

n-3系:0.95/100人年 vs プラセボ:0.88/100人年

調整HR=1.09(95%CI:0.93~1.27) p=0.28

 

☆致死性・非致死性脳卒中

n-3系:0.86/100人年 vs プラセボ:0.93/100人年

調整HR=0.92(95%CI:0.79~1.08) p=0.32

 

心不全による入院

n-3系:0.91/100人年 vs プラセボ:0.88/100人年

調整HR=1.02(95%CI:0.88~1.19) p=0.76

 

☆血行再建術

n-3系:2.54/100人年 vs プラセボ:2.65/100人年

調整HR=0.96(95%CI:0.87~1.05) p=0.39

 

狭心症

n-3系:2.11/100人年 vs プラセボ:2.12/100人年

調整HR=1.00(95%CI:0.90~1.10) p=0.94

 

☆虚血による手足・手指切断

n-3系:0.14/100人年 vs プラセボ:0.13/100人年

調整HR=1.09(95%CI:0.974~1.62) p=0.67

 

☆心血管イベントによる入院

n-3系:6.87/100人年 vs プラセボ:7.00/100人年

調整HR=0.98(95%CI:0.92~1.04) p=0.50

 

感想

 n-3系脂肪酸EPA+DHA)を服用しても、心血管死亡やいずれのSecondary outcomeも、抑制できないという結果。

 今回用いている用量は、国内で使用されているEPA+DHA製剤の通常容量より少ない量(1/2~1/4)である点は注意が必要かもしれない。食事によるn-3系脂肪酸の摂取も多少影響はあるのかもしれないが。

 今回の患者背景を見てみると、ベースラインで心筋梗塞脳卒中・血行再建術を経験した患者が60%近くを占めている。また、併用薬も多い。

 少なくとも、このような心血管イベント高リスクの患者に対するn-3系脂肪酸の有用性は、今回の論文からだと大きくなさそうだと感じた。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。