心血管疾患リスク中程度ではコレステロールを下げた方がいいですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、心血管疾患リスク中程度の患者に対するロスバスタチンの効果についてです。

 

参考文献 Cholesterol Lowering in Intermediate-Risk Persons without Cardiovascular Disease.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27040132

 

PMID:27040132

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

 論文のPECO

P:心血管疾患の既往歴は無いが、リスクが中程度の患者12,705名

E:ロスバスタチン10mg/日

C:プラセボ

O:(Primary) <first>心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム

<second>心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、血行再建術、心不全、心停止の蘇生術の複合アウトカム

 

 (Secondary)心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、血行再建術、心不全、心停止の蘇生術、虚血性の狭心症の複合アウトカム

 

※リスクファクター:ウエスト・ヒップ比、HDLコレステロール低値、現在・最近の喫煙、摂食障害、早期冠動脈疾患の家族歴、軽度腎機能障害

 

除外基準

心血管疾患のある者、スタチン・ARB・ACE-I・チアジド系利尿薬の適応または禁忌

 

※本研究は、カンデサルタン+ヒドロクロロチアジドvs プラセボの研究と2×2の研究デザインとなっている。

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

サンプルサイズ

12,700名(パワー80%以上、α=5%)

 

一次アウトカムは明確か?

→それぞれ3つ、6つのアウトカムの複合アウトカム。一次アウトカムとして複合アウトカムが2つ設定されているので注意が必要かもしれない。

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→盲検化されている(double-blind)

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

追跡期間

→平均5.6年

 

結果

(first co-primary outcome) 心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム

E群3.7%(235/6361) vs C群4.8%(304/6344) 

HR=0.76(0.64-0.91) p=0.002 NNT=91

 

(second co-primary outcome) 心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、血行再建術、心不全、心停止の蘇生術の複合アウトカム

E群4.4%(277/6361) vs C群5.7%(363/6344) 

HR=0.75(0.64-0.88) p<0.001  NNT=77

 

(Secondary outcome)心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、血行再建術、心不全、心停止の蘇生術、虚血性の狭心症の複合アウトカム

E群4.8%(306/6361) vs C群6.2%(393/6344) 

HR=0.77(0.66-0.89) p<0.001  NNT=72

 

安全性

筋肉痛や筋肉の衰弱がロスバスタチン群で有意に多い

E群5.8%(367/6361) vs C群4.7%(296/6344) p=0.005

 

 

感想

 心血管因性の死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカムとしては、ロスバスタチン服用群が有意に減らす事が出来る可能性が示唆されている。しかし、心血管因性死亡に関してはほとんど差が無いという結果。 

 first co-primary outcomesecond co-primary outcome共に非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中による差が、両群間の複合アウトカムの差をもたらしている感じ。使用されているロスバスタチンの用量としては、10mgとやや多めかなという印象を持った。

 また、NNTを計算してみたところ91名、77名という事なので、そこまで服用の有無による違いは大きくないかなという印象。

 本研究のみで結論する事は出来ないが、心血管疾患リスクが中程度であっても躍起になってコレステロールを下げようとしなくてもいいのかもしれない。他のスタチンやフィブラートに関しても調べてみたい。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

慢性心不全患者の治療にはオルメサルタンを上乗せした方がいいですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、慢性心不全患者を有する高血圧患者への、オルメサルタンの使用に関する研究についてです。

 

参考文献 Clinical impacts of additive use of olmesartan in hypertensive patients with chronic heart failure: the supplemental benefit of an angiotensin receptor blocker in hypertensive patients with stable heart failure using olmesartan (SUPPORT) trial.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25637937

 

PMID:25637937

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

 論文のPECO

P:症候性慢性心不全を有する高血圧患者で、ACE-Iまたはβブロッカー治療を受けている者

E:既存治療にオルメサルタン追加→578名

C:オルメサルタン追加無し→569名

O:(Primary) 総死亡、非致死性急性心筋梗塞、非致死性脳卒中心不全悪化による入院の複合アウトカム

 (Secondary)心血管因性死亡、心血管系による入院、心不全マーカー、心血管疾患の進行、心房細動、糖尿病、腎機能障害

 

 ※除外基準

腎機能障害、慢性血液透析、オルメサルタンに対する過敏症、重度肝機能障害、血管浮腫の既往、悪性腫瘍、生命を脅かす病状、妊婦・妊娠の可能性、6か月以内の心血管手術歴、6か月以内の急性心筋梗塞、6か月以内の経皮的冠動脈置換術

 

ランダム化されているか?

→されている

 

一次アウトカムは明確か?

→4つのアウトカムの複合アウトカムなので明確かとは思うが、オープンラベルでの研究なので、入院というソフトエンドポイントが含まれている点は注意

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→オープンラベル

 

サンプルサイズ

各群565名(パワー80%、α=0.05)

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析が行われている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

追跡率=99.9%

 

追跡期間

→中央値4.4年

 

結果

(Primary endpoint)総死亡、非致死性急性心筋梗塞、非致死性脳卒中心不全悪化による入院の複合アウトカム

E群:192/578名(33.2%) vs C群:166/569名(29.2%)

HR=1.18(95%CI:0.96-1.46) p=0.112

 

※サブグループ

総死亡、非致死性急性心筋梗塞、非致死性脳卒中心不全悪化による入院の複合アウトカム

・ACE-I(+)、βブロッカー(-)治療患者

HR=1.12(95%CI:0.75-1.66) p=0.588

 

・ACE-I(-)、βブロッカー(+)治療患者

HR=0.66(95%CI:0.39-1.12) p=0.118

 

・ACE-I(+)、βブロッカー(+)治療患者

HR=1.47(95%CI:1.11-1.95) p=0.005

 

 

感想

期間全体では、オルメサルタン上乗せの有無で、Primary outcomeは抑えることが出来なかったという結果。さらに言えば、ややイベントを増やすかもしれないという結果。

 複合アウトカムを構成する個々のアウトカムに関しても、特に差が見られているものは無い。

 サブグループ解析において、ACE-I、βブロッカーにオルメサルタン上乗せの3剤併用では、オルメサルタンを上乗せしない場合に比べ、優位にイベント発生を増やすという結果が出ている。この結果を鵜呑みにする事は出来ないが、少なくともオルメサルタンの上乗せによるメリットはあまり大きくないのではないだろうかという印象。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

重度慢性心不全患者はカルベジロールで死亡を減らせますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、慢性心不全患者に対するカルベジロール使用についてです。

 

参考文献 Effect of carvedilol on survival in severe chronic heart failure.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=11386263

 

PMID:11386263

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

 論文のPECO

P:安静時または最小限の労作時に心不全の症状を有し、正常体液量であり、駆出率<25%の慢性心不全患者

E:心不全の標準治療+カルベジロール→1156名

C:心不全の標準治療+プラセボ→1133名

O:(Primary) 総死亡

 (Secondary)死亡と入院の合計

 

 ※除外基準

原発性の弁疾患または可逆性の心筋症による心不全、心臓移植歴、心臓移植の予定、重度の原発性肺疾患、腎疾患、肝疾患、βブロッカー禁忌、2か月以内の冠動脈再建術、急性心筋梗塞、脳虚血イベント、不安定心室性頻拍、心室細動、4週以内のαブロッカー、CCB、クラスⅠ抗不整脈薬使用、2か月以内のβブロッカー使用、収縮期血圧<85mmHg、心拍数<68/min、血清クレアチニン>2.8mg/dL、血清カリウム<3.5mmol/Lまたは血清カリウム≻5.2mmol/L、スクリーニング期間(3-14日)中に血清クレアチニン0.5mg/dL以上増加、体重1.5kg以上増加

 

ランダム化されているか?

→されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→されている

 

サンプルサイズ

→具体的な数字は記載なし(パワー90%、α=0.05)

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

追跡率=100%

 

追跡期間

→平均10.4カ月

 

結果

死亡

E群:130/1156名 vs C群:190/1133名

C群に比べ、E群で35%(95%CI:19-48%)のリスク減少 p=0.0014

 

※累積年間死亡リスク(Kaplan-Meierより)

E群:11.4% vs C群:18.5%

 

死亡と入院の合計

E群:507/1156名 vs C群:425/1133名

C群に比べ、E群で24%(95%CI:13-33%)のリスク減少 p<0.001

 

感想

今回の研究の平均追跡期間は10.4カ月とあまり長くないが、この期間でもカルベジロール服用群の方が総死亡は有意に低下したという結果。(しかも、カルベジロールの有益性が早い段階で分かったので、研究が途中で打ち切りになっている)

 本研究患者のカルベジロール平均用量は37mg/dayなので、国内の慢性心不全に用いる通常量(2.5~10mg×2回/day)よりはやや高用量ではある点や、4週以内にCCBを使用している患者など除外されている点は、結果の適用時に注意が必要。

 対象患者の平均年齢は約63歳、平均追跡期間は10.4カ月なので、患者年齢もまだ若く、差が出にくそうなセッティングにも感じたが、この条件でも死亡に差が見られている。もう少し低用量を用いた場合の結果も気になる所。

 しかし、Kaplan-Meier曲線を見てみた感想として、死亡を何年も先延ばしにするという事は期待できないかな?と感じた。

 この結果のみでは結論できないので、関連論文も後日読んでいく必要がある。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

ナトリウム摂取量と脳卒中による死亡にはどの程度関連がありますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

基本的なことでですが、塩分摂取を控えると本当に脳卒中などのリスクは下がるのか?というのが気になったので調べてみました。

 

参考文献 Sodium intake and risk of death from stroke in Japanese men and women.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15143292

 

PMID:15143292

 

研究デザイン:一般集団対象コホート研究(日本 岐阜県高山市

 

論文のPECO

P:1992年に岐阜県高山市に在住の35歳以上の男性13,355名と、女性15,724名

E:高用量or中等量ナトリウム摂取

C:低用量ナトリウム摂取

O:脳卒中による死亡

 

脳卒中、虚血性心疾患、悪性腫瘍の患者は除外

 

研究対象集団の代表性

岐阜県高山市の一般人口を対象にしており、大きな問題は無いと思われる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

マッチングされているか?

→不明(記載が見つけられず)

 

調節した交絡因子は何か?

→年齢、教育水準、婚姻状態、BMI、喫煙、アルコール消費量、糖尿病と高血圧の病歴、タンパク質、カリウムビタミンE摂取量。

 

☆ナトリウム摂取量の推定の仕方

①半定量食物摂取頻度調査票を使用して食事歴を評価。

半定量食物摂取頻度調査票・・・日本人が比較的よくとっている100種類以上の食品について、どのくらいの頻度で食べるのか、1回にどれくらいの量を食べるのかを答えて頂き、代表的な食品や栄養素について、1日当りの摂取量を計算するという仕組みのもの。

 

②前年の各食品摂取頻度とナトリウム摂取量から、日本食品組成標準表を用いて摂取量を推定した。

 

追跡期間

1992年~1999年(7年間)

 

結果

(男性)

ナトリウム摂取量

低用量群:4070mg/day   中用量群:5209mg/day   高用量群:6613mg/day

 

脳卒中による死亡

低用量群:23/30,670人年 

中用量群:40/30,779人年 HR=1.60(95%CI:0.92-2.80)

高用量群:74/29,587人年 HR=2.33(95%CI:1.23-4.45)

 

 

(女性)

ナトリウム摂取量

低用量群:3799mg/day   中用量群:4801mg/day   高用量群:5930mg/day

 

脳卒中による死亡

低用量群:40/36,719人年 

中用量群:39/36,874人年 HR=1.33(95%CI:0.80-2.21)

高用量群:53/36,530人年 HR=1.70(95%CI:0.96-3.02)

 

感想

 ナトリウム摂取量は、個々に質問するような形で確認しているので、摂取量の評価方法としてどの程度妥当であるのかは疑問であるが、摂取量が高くなると脳卒中による死亡は増加傾向にある。

 ちなみに、ナトリウム量(mg)×2.54÷1000=食塩相当量(g)であり、日本人における食塩摂取目標は男性8g未満、女性では7g未満とされている。

 確かに、ナトリウム摂取量が増加すると脳卒中による死亡は男女ともに増加傾向にはあるが、そもそもの発生頻度が少ないので、絶対数的な違いはあまり大きくないのかもしれない。男性では、喫煙率や飲酒などの関係なのか、女性に比べてやや脳卒中による死亡のHRが高くなる傾向にある。

 日本人では、醤油や味噌などをよく使用する事もあり、塩分摂取量は多くなりがちと言われている。この結果のみを基にすると、案外塩分摂取量を控えても脳卒中による死亡に対する影響は大きくないのかなという印象である。この論文のみで結論することは出来ないので、関連論文についても追跡していく必要がある。

 

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

テルミサルタンは脳卒中の再発予防にどれぐらい有効ですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

そして、遅ばせながら、あけましておめでとうございます。

本年も定期的な更新を心がけていきますので、皆さま宜しくお願い致します。

 

とういことで、前回の更新から少し間があいてしまいましたが、2017年の一発目になります。

 

今回は、脳卒中を起こした患者へのテルミサルタン投与で脳卒中の再発は防ぐことが出来るか?について検討した研究です。

 

参考文献 Telmisartan to prevent recurrent stroke and cardiovascular events.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=18753639

 

PMID:18753639

 

研究デザインプラセボ対照 ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:直近(ランダム割り付け前90日以内)に虚血性脳卒中を起こした患者20332名

E:テルミサルタン80mg/day→10,146名

C:プラセボ→10,186名

O:(Primary) 脳卒中の再発

 (Secondary)主要心血管イベント(心血管因性死亡、脳卒中再発、心筋梗塞、新規の心不全心不全の増悪)、新規糖尿病発症

 

 

除外基準

原発性出血性脳卒中脳卒中後の重度障害、試験対象抗血小板薬が禁忌の患者

 

※ちなみに本研究は、アセチルサリチル酸+ジピリダモールvsクロピドグレルと、テルミサルタンvsプラセボの比較を2×2のデザインを用いて検討している

 

ランダム化されているか?

→されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確と言える

 

真のアウトカムか?

脳卒中の再発は真のアウトカムと言える

 

盲検化されているか?

→不明。実薬群vsプラセボ群の血圧値の変動により盲検化不可能と考えられた?

 

サンプルサイズ

→もともとは15,500名を予定していたが、アウトカム発生件数が予想より少なかったため20,000名以上となった(パワー91%)

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=99%(lost to follow upは、テルミサルタン群:51名、プラセボ群:74名)

 

追跡期間

→平均2.5年

 

結果

脳卒中の再発

E群:880/10146(8.7%)vs 934/10186(9.2%) 

HR=0.95(95%CI:0.86-1.04) p=0.23  NNT=202名

 

主要心血管イベント(心血管因性死亡、脳卒中再発、心筋梗塞、新規の心不全心不全の増悪)

E群:1367/10146(13.5%)vs 1463/10186(14.4%) 

HR=0.94(95%CI:0.87-1.01) p=0.11  NNT=113名

 

新規糖尿病発症

E群:125/10146(1.2%)vs 151/10186(1.5%) 

HR=0.82(95%CI:0.65-1.04) p=0.10  NNT=400名

 

有害事象

低血圧

E群:393/10146(3.9%)vs 186/10186(1.8%) p<0.001

 

失神

E群:21/10146(0.2%)vs 6/10186(0.1%) p=0.004

 

 

感想

 20,000名以上の患者を対象にした大規模な研究であるが、結局、脳卒中の再発はプラセボと差が無いという結果である。今回の対象患者は、直近に虚血性脳卒中を経験して間もない患者であるので、虚血性脳卒中を発症したことのない高血圧症患者を対象にした時の結果も気になる所。

 本研究の結果では有害事象として、プラセボ群とあまり大きな差のある物はないので、すでに服用している患者であれば無理に中止する必要もないとは思う。

 しかし、少なくとも本研究の結果からすると、脳卒中の再発予防を目的として積極的に使う必要性もあまり感じられなかった。

 テルミサルタンには、血圧改善作用や臓器保護作用のほかに糖尿病改善作用があるとも言われている。本研究では、あくまでもSecondary outcomeであり、新規発症の検討という事で条件も異なるが、糖尿病新規発症に関しては差が見られていない。糖尿病の新規発症をPrimary outcomeとして検討した研究もあれば、今後調べてみる必要があると感じた。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

サキサグリプチンで2型糖尿病患者の心血管イベントは防げますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、DPP-4阻害剤の1つ、サキサグリプチンの効果についてです。

 

参考文献 Saxagliptin and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes mellitus.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23992601

 

PMID:23992601

 

研究デザイン:多施設共同ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:2型糖尿病患者のうち、心血管イベントの既往もしくはリスクがある者

E:サキサグリプチン5mg or 2.5mg→8210名

C:プラセボ→8212名

O:(Primary) 心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合アウトカム

 (Secondary)心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中心不全による入院、冠動脈再建術、不安定狭心症の複合アウトカム

 

除外基準

6か月以内のインクレチン関連治療、末期腎疾患による透析、腎移植、血清クレアチニン>6.0mg/dL

 

ランダム化されているか?

→されている

 

一次アウトカムは明確か?

→複合アウトカムなので明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→されている

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→記載なし

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

追跡率=99.8%

 

追跡期間

→中央値2.1年

 

結果

(Primary outcome)

心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合アウトカム

E群(613/8280:7.3%)vs C群(609/8212:7.2%) 

HR=1.00(95%CI:0.89-1.12) p=0.99

 

(Secondary outcome)

心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中心不全による入院、冠動脈再建術、不安定狭心症の複合アウトカム

E群(1059/8280:12.8%)vs C群(1034/8212:12.4%) 

HR=1.02(95%CI:0.94-1.11) p=0.66

 

心不全による入院

E群(289/8280:3.5%)vs C群(228/8212:2.8%) 

HR=1.27(95%CI:1.07-1.51) p=0.007

 

感想

本研究の結果からは、心筋梗塞心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合アウトカムに関してプラセボと差は無いという結果。また、複合アウトカムを構成する個々のアウトカムも差は無く、臨床上、2型糖尿病患者にサキサグリプチンを用いる事のメリットは疑問が残るところ。

追跡期間は中央値で2.1年という事なので、もう少し長期間の結果が気になる所ではある。

一方、心不全による入院に関しては、サキサグリプチン服用群で有意に増加するという結果となっているので、この点に関しても注意したいところ。DPP-4阻害剤と心不全に関する関連についてはしばしば議論されている所なので、より深く調べてみたい。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

ベザフィブラートは心筋梗塞・安定狭心症患者の2次予防に効果がありますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、心筋梗塞・安定狭心症既往の患者へのベザフィブラートの2次予防効果を検討した、BIP Studyの論文を読んでみました。

 

参考文献 Secondary prevention by raising HDL cholesterol and reducing triglycerides in patients with coronary artery disease.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10880410

 

PMID:10880410

 

研究デザイン:ランダム化比較試験(イスラエル

 

論文のPECO

P:45~74歳で心筋梗塞、もしくは安定狭心症の既往歴があり、総コレステロール180~250mg/dL、HDL-C≦45mg/dL、TG≦300mg/dL、LDL-C≦180mg/dL(50歳未満はLDL-C≦160mg/dL)の患者

E:ベザフィブラート400mg/日

C:プラセボ

O:(Primary) 致死性・非致死性心筋梗塞、突然死→The primary end point wasとなっているので、複合アウトカム?

 (Secondary)不安定狭心症による入院、経皮冠動脈形成術、冠動脈バイパス術、脳卒中、総死亡

 

 

除外基準

インスリン依存性糖尿病、重症心不全、不安定狭心症肝不全、腎不全、ベザフィブラートに対する過敏症、直近の脂質改善薬使用

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

心筋梗塞も突然死も誰が見ても明らかなので明確と言える

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→されている

 

ITT解析を行われているか?

All patients who took the study medication at least once (n=3090) were included in the

intent-to-treat analysisの記載あり→FAS

サンプルサイズ

→3000名(パワー62~85%、α=5%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率99%

 

追跡期間

→平均6.2年

 

結果

ベースラインからの検査値の変化

・総コレステロール

E群:-4.5mg/dL  C群:+0.2mg/dL

 

・LDL-C

E群:-6.5mg/dL  C群:-1.3mg/dL

 

・HDL-C

E群:+17.9mg/dL  C群:+3.5mg/dL

 

・TG

E群:-20.6mg/dL  C群:+4.6mg/dL

 

(Primary outcome)

合計(非致死性心筋梗塞+致死性心筋梗塞+突然死)

E群(211/1548:13.6%) vs C群(232/1542:15.0%) p=0.26

 

非致死性心筋梗塞

E群(150/1548:9.7%) vs C群(172/1542:11.2%) p=0.18

 

致死性心筋梗塞

E群(18/1548:1.2%) vs C群(17/1542:1.1%) p=0.87

 

突然死

E群(43/1548:2.8%) vs C群(43/1542:2.8%) p=0.98

 

(Secondary outcome)

いずれも両群で大きな違い無し

 

有害事象

両群で違いは無し

 

感想

 ベザフィブラート服用群のTGは低下、HDLは増加と、検査値には改善が見られている。しかし、非致死性心筋梗塞、致死性心筋梗塞、突然死はいずれもプラセボ群と差が無いという結果である。

 ベースラインのTG≧200mg/dLの患者では、Primary outcomeの発生に有意差こそ出ているが、絶対数としての違いは大きくなさそうであり、この結果からだと積極的にベザフィブラートを服用する必要は無いかなと感じた。

 TG値が下がり、HDL値が高くなれば理論上は心筋梗塞も防ぐことが出来ると予想されるが、実際はこのような結果である。

 この結果も、理論と現象の乖離と言えるのかもしれないし、理論は暫定的なものであるという所を示しているのかもしれない。今後もアップデートを繰り返していく必要がある。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。