75歳以上の高齢者はしっかり血圧を下げた方がいいですか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、あの有名なSPRINT試験のうち、75歳以上の患者を対象にしたサブ解析の論文を読んでみました。
参考文献 Intensive vs Standard Blood Pressure Control and Cardiovascular Disease Outcomes in Adults Aged ≥75 Years A Randomized Clinical Trial
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27195814
PMID:27195814
研究デザイン:ランダム化比較試験
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
論文のPECO
P:SPRINT試験の被験者のうち75歳以上の2636名
E:厳格な降圧療法(収縮期血圧<120mmHgを目指す)
C:標準的な降圧療法(収縮期血圧<140mmHgを目指す)
O:(Primary) 非致死性心筋梗塞、心筋梗塞に至らない急性冠症候群、非致死性脳卒中、急性非代償性心不全、心血管死亡の複合アウトカム
(Secondary)総死亡
※除外基準
→2型糖尿病、脳卒中の既往歴、6か月以内の症候性心不全(左室駆出率<35%)、6か月以内に10%以上の体重減少、認知症、収縮期血圧<110mmHg、施設入居者
一次アウトカムは明確か?
→複合アウトカムなので明確と判断して良さそう
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→盲検化されていない(血圧測定で見破られる可能性が考えられる)
サンプルサイズ
→3250名(パワー81.9%、α=5%)
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている(?)
追跡期間
→中央値3.14年
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率100%
結果
血圧の変化
ベースラインの収縮期血圧 E群:141.6mmHg C群:141.6mmHg
治療期間を通しての収縮期血圧 E群:123.4mmHg C群:134.8mmHg
Primary outcome(非致死性心筋梗塞、心筋梗塞に至らない急性冠症候群、非致死性脳卒中、急性非代償性心不全、心血管死亡の複合アウトカム)
E群102/1317 2.59%/年(95%CI:2.13~3.14)
C群148/1319 3.85%/年(95%CI:3.28~4.53)
HR=0.66(95%CI:0.51~0.85) p=0.001 NNT=27(3.14年で)
E群37/1317 0.92%/年(95%CI:0.26~1.27)
C群53/1319 1.34%/年(95%CI:1.02~1.75)
HR=0.69(95%CI:0.45~1.05) p=0.09
急性冠症候群
E群17/1317 0.42%/年(95%CI:0.26~0.68)
C群17/1319 0.42%/年(95%CI:0.26~0.68)
HR=1.03(95%CI:0.52~2.04) p=0.94
E群27/1317 0.67%/年(95%CI:0.46~0.97)
C群34/1319 0.85%/年(95%CI:0.61~1.19)
HR=0.72(95%CI:0.43~1.21) p=0.22
E群35/1317 0.86%/年(95%CI:0.62~1.20)
C群56/1319 1.41%/年(95%CI:1.09~1.83)
HR=0.62(95%CI:0.40~0.95) p=0.03
心血管死亡
E群18/1317 0.44%/年(95%CI:0.28~0.70)
C群29/1319 0.72%/年(95%CI:0.50~1.03)
HR=0.60(95%CI:0.33~1.09) p=0.09
非致死性心筋梗塞
E群37/1317 0.92%/年(95%CI:0.67~1.27)
C群53/1319 1.34%/年(95%CI:1.02~1.75)
HR=0.69(95%CI:0.45~1.05) p=0.09
非致死性脳卒中
E群25/1317 0.62%/年(95%CI:0.42~0.91)
C群33/1319 0.83%/年(95%CI:0.59~1.16)
HR=0.68(95%CI:0.40~1.15) p=0.15
非致死性心不全
E群35/1317 0.86%/年(95%CI:0.62~1.20)
C群55/1319 1.39%/年(95%CI:1.06~1.81)
HR=0.63(95%CI:0.40~0.96) p=0.03
総死亡
E群73/1317 1.78%/年(95%CI:1.41~2.24)
C群107/1319 2.63%/年(95%CI:2.17~3.18)
HR=0.67(95%CI:0.49~0.91) p=0.009 NNT=41(3.14年で)
有害事象
低血圧
E群:2.4% vs C群:1.4%/年 HR=1.71(95%CI:0.97~3.09)
失神
E群:3.0% vs C群:2.4%/年 HR=1.23(95%CI:0.76~2.00)
電解質異常
E群:4.0% vs C群:2.7%/年 HR=1.51(95%CI:0.99~2.33)
急性腎障害・腎不全
E群:5.5% vs C群:4.0%/年 HR=1.41(95%CI:0.98~2.04)
感想
SPRINT試験のうち、75歳以上の患者を対象としたサブ解析である。Primary outcomeのHRは0.66、NNT=27ということで血圧をしっかり下げた方が良さそうな結果と感じた。また、総死亡のHRも0.67、NNT=41となかなかインパクトがある結果。
ただ、複合アウトカムに含まれる事象で有意差が出ているものとしては心不全ぐらいであり、しかもサブ解析ということなので、この結果だけをもって75歳以上では血圧を厳格に下げた方がいいとは言い切れないという印象。適応を考える際には、2型糖尿病患者は除外されている点は注意しておきたい。
有害事象も、有意差こそ出ていないが、低血圧、失神、電解質異常、急性腎障害・腎不全いずれも厳格降圧群で高くなる傾向が見られているので注意が必要かと思う。また、記載は見当たらないが、骨折などの有害事象も気になる所である。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
チョコレート摂取は心不全に影響がありますか?
ご訪問ありがとうございます。
そして、皆さま、ハッピーバレンタイン!
男性の皆さまは、1年のうちで1番ソワソワする日かも知れませんね(*'ω'*)
今回は、バレンタインということで、チョコレート関連の論文を読んでみました。
チョコレートの消費と心不全に関する論文です。
参考文献 Chocolate consumption and risk of heart failure in the Physicians' Health Study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=25311633
PMID:25311633
研究デザイン:前向きコホート研究
論文のPECO
P:男性医師20278名
E:チョコレートを食べる頻度が、①月に1~3回 ②週に1回 ③週に2~4回 ④週に5回以上
C:チョコレートを食べる頻度が月1回未満
O:心不全の発症
研究対象集団の代表性
→USの男性医師を対象としているので、一般化は難しいと思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?
→年齢、BMI、アルコール摂取、喫煙、運動、カロリー摂取、心房細動
追跡期間
→9.3年
結果
心不全の発生
★全体
チョコレート消費が月1回未満 5.32/1000人年 HR=1.00(reference)
1~3回/月 4.37/1000人年 HR=0.86(95%CI:0.72~1.03)
1回/週 4.12/1000人年 HR=0.80 (95%CI:0.66~0.98)
2~4回/週 4.71/1000人年 HR=0.92(95%CI:0.74~1.13)
5回以上/週 4.50/1000人年 HR=0.82(95%CI:0.63~1.07)
★BMI<25kg/㎡の被験者のみ
チョコレート消費が月1回未満 HR=1.00(reference)
1~3回/月 HR=0.86(95%CI:0.65~1.15)
1回/週 HR=0.70 (95%CI:0.50~0.99)
2~4回/週 HR=0.72(95%CI:0.50~1.04)
5回以上/週 HR=0.59(95%CI:0.37~0.94)
★BMI≧25kg/㎡の被験者のみ
チョコレート消費が月1回未満 HR=1.00(reference)
1~3回/月 HR=0.87(95%CI:0.69~1.09)
1回/週 HR=0.88 (95%CI:0.68~1.13)
2~4回/週 HR=1.06(95%CI:0.82~1.37)
5回以上/週 HR=1.01(95%CI:0.73~1.39)
感想
全体的には、チョコレート摂取が月に1回未満の群よりは、何回か食べた群の方が心不全のハザード比はやや小さくなる傾向が見られる。
サブ解析でBMIが25以下の被験者は、チョコレートを週に何回か食べた方が、ほとんど食べないより心不全のハザード比が小さくなる傾向があるようで、BMIが25以上の被験者ではあまり変わらないような結果である。具体的にどれぐらいの量食べたのか?どのようなチョコレートを食べたのか?など気になる所はあるものの。
研究の対象がUSの男性医師という事で、一般化はかなり難しい印象であり、今回の結果のみから心不全の発症抑制効果があるとは言うことが出来ないが、心不全の発生という観点からは、チョコレートをほどほどの量であれば日常的に食べてもいいのかなという印象。まぁ、甘いものは止められませんわな(´-ω-`)
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
手指衛生の指導とフェイスマスクでインフルエンザの家庭内感染を防ぐことが出来ますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、手の衛生とフェイスマスクで、インフルエンザの家庭内感染が予防できるかについての論文を読んでみました。
参考文献 Facemasks and hand hygiene to prevent influenza transmission in households: a cluster randomized trial.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=19652172
PMID:19652172
研究デザイン:クラスターランダム化比較試験
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
論文のPECO
P:インフルエンザ様症状で外来受診し、インフルエンザ迅速検査でインフルエンザA型またはB型陽性となった(index member)407名のうち259家族の794名(contact)が解析された
E:①手指衛生(H群) ②手指衛生+フェイスマスク(HF群)
C:生活スタイルの指導(C群)
O:(Primary) RT-PCRにより確認されたインフルエンザ二次感染
(Secondary)7日後に臨床症状として確認されたインフルエンザ二次感染
※Clinical definition1:37.8℃以上の発熱、咳、頭痛、咽頭痛、筋肉痛のうち2つ以上の症状を呈する者
Clinical definition2:37.8℃以上の発熱+咳または咽頭痛
※C群:感染予防と症状緩和の両面で食生活と生活習慣の重要性を伝えた。
H群:感染予防のために手指衛生が重要であることを伝え、提供された液体石鹸を使用して手洗いをするように、また、くしゃみや咳などで手が汚れたらアルコールを刷り込むように指導。
HF群:H群の介入+家庭内感染を防ぐためにフェイスマスクが有効であることを伝え、家で出来るだけフェイスマスクを着用するように指導された。
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→Primary outcomeは代用のアウトカムかもしれない。Secondary outcomeは真のアウトカムと思われる。
盲検化されているか?
→盲検化されていない(盲検化できないと思われる)
サンプルサイズ
→各群100~200世帯(パワー80%、α=5%)
※100世帯では55~70%の差を検出、200世帯では45~55%の差を検出できる
ITT解析を行われているか?
→不明(Participants were analyzed in the group to which they were randomly assigned, regardless of adherence…と記載があるためITT解析されているかも。)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
追跡率=63.6%
追跡期間
→7日間
結果
RT-PCRにより確認されたインフルエンザ二次感染(vs C群)
H群 vs C群 OR=0.57(95%CI:0.26~1.22)
HF群 vs C群 OR=0.77(95%CI:0.38~1.55)
Clinical definition1(vs C群)
H群 vs C群 OR=0.92(95%CI:0.57~1.48)
HF群 vs C群 OR=1.25(95%CI:0.79~1.98)
Clinical definition2(vs C群)
H群 vs C群 OR=0.81(95%CI:0.33~2.00)
HF群 vs C群 OR=1.68(95%CI:0.68~4.15)
★index memberが症状発症後36時間以内に介入した患者のみの結果
RT-PCRにより確認されたインフルエンザ二次感染(vs C群)
H群 vs C群 OR=0.46(95%CI:0.15~1.43)
HF群 vs C群 OR=0.33(95%CI:0.13~0.87)
Clinical definition1(vs C群)
H群 vs C群 OR=0.46(95%CI:0.22~0.96)
HF群 vs C群 OR=0.86(95%CI:0.48~1.53)
Clinical definition2(vs C群)
H群 vs C群 OR=0.64(95%CI:0.20~2.02)
HF群 vs C群 OR=1.45(95%CI:0.49~4.24)
感想
RT-PCRにより確認されるインフルエンザウイルス二次感染は、H群、HF群ともに、有意差こそ無いがオッズ比が小さくなる傾向が見られている。一方、臨床上のインフルエンザウイルス二次感染は、Clinical definition1の36時間以内のH群のみ有意な減少、他は差が無く、むしろHF群では増加傾向が見られよく分からない結果となっている。
まず、Table6を見てみると、介入のアドヒアランスが非常に低いと思われる。例えば、H群でも、手指衛生を保てたと判断されたのは全体の54%程度、HF群に割り当てられた世帯者でも、確実にマスクをしたのは全体の26%に過ぎなかったようである。また、C群でも、45%は手指衛生を保てたと判断されているし、液体せっけんによる手洗いは77%がしている。これらから、最終的によく分からないような結果となっているような気がする。
何かよく分からない結果ではあるが、少なくとも手洗いやフェイスマスクを否定するようなものではないので、どちらもしないよりはした方がいいのかもしれない。
今回の介入で、看護師からマスクの重要性の指導をしっかり受けたにも関わらず、アドヒアランスがここまで低いというのも考えさせられるので、どのように指導すればアドヒアランスが高まるのかについても検討する必要があるのかもしれない。
私、少しインフルエンザにビビりながら生活していますが、皆さんもまだまだ気を抜かずに行きましょう。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
経口グルココルチコイドは心血管・脳血管イベント発生に影響しますか?
ご訪問ありがとうございます。
またまた、経口ステロイドについての論文です。
今回は、コホート内症例対象研究の論文を読んでみました。
参考文献 Use of oral glucocorticoids and risk of cardiovascular and cerebrovascular disease in a population based case-control study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=15253953
PMID:15253953
研究デザイン:一般人口対象コホート内症例対象研究
論文のPECO
P:UKの一般診療データベースに登録された50歳以上の患者
(対象)症例と性別、年齢、一般治療、基礎疾患、登録日でマッチング(1:1)した患者
E:グルココルチコイドの服用あり50656名
C:グルココルチコイドの服用無し50656名
O:心血管イベント発症、脳血管イベント発症
研究対象集団の代表性
→UKの一般診療情報データベースが用いられており問題は無いかと思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
曝露の定義
current use:発症日の3カ月前以内のグルココルチコイド処方
recent use:発症日の3カ月以上前、1年前以内のグルココルチコイド処方
past use:発症日1年以上前のグルココルチコイド処方
※グルココルチコイド服用量は、プレドニゾロン等量に換算されている
調節した交絡因子は何か?
→NSAIDs、ホルモン補充療法、降圧薬、硝酸薬、経口抗凝固薬、抗血小板薬、糖尿病治療薬、気管支拡張薬、クロモグリク酸、経口グルココルチコイド、DMARD、喫煙、BMI
結果
※%は、それぞれCase全体・Control全体に占める患者の割合
★心血管イベント・脳血管イベントの発症(全体)
Case:30.3% vs Control:26.4% 調整OR=1.25(95%CI:1.21~1.29)
★服用時点ごとの心血管イベント・脳血管イベントの発症
Current use
Case:16.1% vs Control:11.9% 調整OR=1.48(95%CI:1.41~1.54)
Recent use
Case:6.9% vs Control:7.3% 調整OR=1.03(95%CI:0.98~1.09)
Past use
Case:7.3% vs Control:7.3% 調整OR=1.08(95%CI:1.02~1.14)
★Current useの1日当たりの服用量ごとの心血管イベント・脳血管イベントの発症
<7.5mg/day
Case:4.5% vs Control:3.4% 調整OR=1.44(95%CI:1.34~1.55)
7.5~20mg
Case:4.1% vs Control:3.3% 調整OR=1.30(95%CI:1.21~1.40)
>20mg
Case:5.3% vs Control:3.5% 調整OR=1.63(95%CI:1.52~1.75)
★累積服用量ごとの心血管イベント・脳血管イベントの発症
<500mg
Case:4.4% vs Control:3.2% 調整OR=1.61(95%CI:1.38~1.88)
500~1810mg
Case:4.7% vs Control:3.7% 調整OR=1.34(95%CI:1.16~1.54)
1810~5418mg
Case:4.6% vs Control:3.8% 調整OR=1.19(95%CI:1.03~1.37)
>5418mg
Case:4.6% vs Control:3.0% 調整OR=1.56(95%CI:1.35~1.80)
★発生イベントごとの調整OR
・虚血性心疾患
Case:25.6% vs Control:24.0% 調整OR=1.09(95%CI:1.03~1.15)
Current use
Case:12.1% vs Control:20.2% 調整OR=1.20(95%CI:1.11~1.29)
Recent use
Case:6.3% vs Control:6.9% 調整OR=0.93(95%CI:0.85~1.02)
Past use
Case:7.2% vs Control:6.9% 調整OR=1.07(95%CI:0.98~1.17)
・心不全
Case:44.4% vs Control:33.1% 調整OR=1.91(95%CI:1.79~2.87)
Current use
Case:27.9% vs Control:15.3% 調整OR=2.66(95%CI:2.46~2.87)
Recent use
Case:9.0% vs Control:9.1% 調整OR=1.40(95%CI:1.27~1.55)
Past use
Case:7.5% vs Control:8.6% 調整OR=1.19(95%CI:1.08~1.32)
Case:23.4% vs Control:23.6% 調整OR=0.95(95%CI:0.89~1.01)
Current use
Case:10.5% vs Control:10.8% 調整OR=0.91(95%CI:0.84~0.99)
Recent use
Case:5.7% vs Control:6.1% 調整OR=0.89(95%CI:0.80~0.99)
Past use
Case:7.3% vs Control:6.7% 調整OR=1.06(95%CI:0.96~1.17)
感想
心血管・脳血管イベント発生の調整ORは1.25と、ややグルココルチコイド服用群でのリスク上昇する可能性が示唆される結果である。あくまで観察研究であり、1日当たりの服用量、累積服用量との相関性があるかというのは微妙だが、全体を通してグルココルチコイド服用と心血管・脳血管イベント発生の関連性はありそうかなという印象である。
発生イベントごとに見てみると、脳血管系よりも心血管系のイベントとの相関が高そうで、特に心不全には影響がありそうな感じがする。やはり、グルココルチコイド服用中は少なくとも心不全などの前兆が見られていないか注意する必要がありそうだと感じた。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
2/25(土)第4回居酒屋抄読会配信のご案内
ご訪問ありがとうございます。
さて、これがブログの第100記事目の投稿になりますが、今回は居酒屋抄読会のご案内です。
2/25(土)の21:00頃から、第4回の居酒屋抄読会を開催し、リアルタイムでツイキャス配信致します。
今回は、大阪の梅田の居酒屋より配信予定です。
いつもと同じく、個室居酒屋でお酒を飲みながら、のんびり、まったり、ゆるーくやろうと思います。
今回のメンバーはzuratomo(ずらとも)先生、リンコ先生、キャノン先生、ぐっち先生、そして居酒屋抄読会の永遠の初心者枠であります、わたくし、にいやんの5名です。あと1名参加して頂けるかもしれないので、6名になるかもしれません。
今回は、男性の脱毛症に対するデュタステリドvsフィナステリドのRCTを取り扱ってみようと思います。
使用文献はこちら↓↓
Superiority of dutasteride over finasteride in hair regrowth and reversal of miniaturization in men with androgenetic alopecia: A randomized controlled open-label, evaluator-blinded study.
リンク
http://imsear.li.mahidol.ac.th/bitstream/123456789/183386/1/ijdvl2017v83n1p47.
pdf#search=27Superiority+of+dutasteride+over+finasteride+in+hair+regrowth+and+
PMID:27549867
※pubmed検索ではフリーで全文を読めないので、上のリンクから入手して頂ければと思います。
ツイキャス配信はこちら↓↓
http://twitcasting.tv/zuratomo4
そして、今回は視聴者の皆様から仮想症例シナリオを募集しようと思います。
お題論文に関連する仮想症例シナリオを作って頂ける方いらっしゃいましたら、2/15(水)を目途に、出来たシナリオをzuratomo先生までTwitterのダイレクトメールで送って頂きたいです。
zuratomo先生のTwitterアカウント↓↓
https://twitter.com/zuratomo4?lang=ja
※応募が無ければ、こちらで仮想症例シナリオは用意します(*'ω'*)
今回も、配信中にその都度、気軽にコメントを頂けると嬉しいですし、視聴して下さる方とも一緒に議論できればより楽しい抄読会になるのではないでしょうか。
さあ、楽しい土曜日の夜です。
視聴頂けるみなさまも、ぜひビールやチューハイ、ワイン、など片手に持ちながら、気軽にご参加いただければと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
朝食を摂らないと脳卒中・冠動脈心疾患に影響ありますか?
ご訪問ありがとうございます。
ブログを昨年5/5に突然初めて、ちょうど9カ月。気付けばこれが99記事目のようです。
さて、99記事目の今回は、個人的に何とかしなければならないと考えている、「朝食を摂る事」について取り扱ってみようと思います。
私個人は、何時に寝ても朝が辛くてなかなか起きれず、結局朝食を摂らないまま出勤する日がほとんどなんです(´・ω・`)
これは何とかしないと思い、ちょっとでも摂れるようにこれから意識していこうと思っています。
さて、今回の論文は朝食を摂る頻度と、冠動脈心疾患、脳卒中の関係についてです。
参考文献 Association of Breakfast Intake With Incident Stroke and Coronary Heart Disease: The Japan Public Health Center-Based Study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26732562
PMID:26732562
研究デザイン:前向きコホート研究
論文のPECO
P:心血管イベント、悪性腫瘍の既往の無い45~74歳の82,772名(男性:38,676名、女性44,096名)
E・C:1週間のうち、朝食を摂る日数別に分類(0~2日、3~4日、5~6日、7日)
O:脳卒中、冠動脈心疾患
研究対象集団の代表性
→日本の一般人口を対象にしたデータを使用しており、大きな問題は無いと思われる(ただし、東京と大阪のデータは除外されている)
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?
年齢、性別、BMI、降圧剤使用、脂質異常症治療薬使用、糖尿病治療薬使用、糖尿病の有無、喫煙、運動、睡眠時間、知覚精神的ストレス、独り暮らしかどうか、肉体労働かどうか(YES:農業、林業、漁業など NO:サラリーマン、自営業、専門家、家事、退職者、失業者など)、アルコール摂取量、野菜・果物・魚・大豆・牛乳/乳製品・ナッツ・飽和脂肪酸・食物繊維・ナトリウム摂取量
追跡期間
→15年間
結果
総心血管イベント(vs朝食を週7日摂る群)
0~2日群 調整HR=1.14(1.01~1.27)
3~4日群 調整HR=1.17(0.98~1.39)
5~6日群 調整HR=0.99(0.83~1.19)
P for Trend=0.013
全脳卒中(vs朝食を週7日摂る群)
0~2日群 調整HR=1.18(1.04~1.34)
3~4日群 調整HR=1.14(0.93~1.39)
5~6日群 調整HR=1.00(0.82~1.22)
P for Trend=0.007
脳出血(vs朝食を週7日摂る群)
0~2日群 調整HR=1.36(1.10~1.70)
3~4日群 調整HR=1.22(0.86~1.73)
5~6日群 調整HR=1.10(0.77~1.56)
P for Trend=0.004
くも膜下出血(vs朝食を週7日摂る群)
0~2日群 調整HR=1.10(0.76~1.60)
3~4日群 調整HR=0.94(0.51~1.72)
5~6日群 調整HR=0.66(0.32~1.33)
P for Trend=0.801
脳梗塞(vs朝食を週7日摂る群)
0~2日群 調整HR=1.10(0.92~1.30)
3~4日群 調整HR=1.13(0.86~1.47)
5~6日群 調整HR=1.03(0.79~1.33)
P for Trend=0.217
冠動脈心疾患(vs朝食を週7日摂る群)
0~2日群 調整HR=0.96(0.73~1.25)
3~4日群 調整HR=1.27(0.87~1.85)
5~6日群 調整HR=0.95(0.62~1.44)
P for Trend=0.974
感想
今回の結果から行くと、朝食を毎日摂る群に比べ、0~2日しか摂らない群で脳卒中のうち脳出血がやや多い傾向であった。朝食を摂れない理由なども個々にあり、生活習慣などで未知の交絡も関わっているかもしれないし、この結果はそこまで強烈なインパクトのある結果ではないと感じたが、多少は朝食の摂取と脳出血の間に関連はあるのかもしれない。
昼食を摂らなければ、仕事などに対しても影響が出ることがあるので、朝食はやはり摂っておいた方がいいと思う。
それにしても、個人的にはなかなか朝起きれずに、優先順位が朝食<睡眠となってしまうので、何とかしたいなぁ~と…。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
関節リウマチ患者への経口ステロイドと総死亡・原因別死亡の関連
ご訪問ありがとうございます。
今回も引き続き、経口ステロイド関連の論文です。
参考文献 Oral glucocorticoid therapy and all-cause and cause-specific mortality in patients with rheumatoid arthritis: a retrospective cohort study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27256352
PMID:27256352
研究デザイン:後ろ向きコホート研究
論文のPECO
P:16歳以上の関節リウマチ患者16,762名
E:グルココルチコイド使用
C:グルココルチコイド服用無し
O:総死亡・原因別死亡
※グルココルチコイド使用量は、プレドニゾロン等量に換算されている
曝露(服用)の定義
(1)Ever use:1回でもグルココルチコイドを使用したことがある患者はever user。
(2)Current use:グルココルチコイドを服用している期間はCurrent user。服用していない期間はnon-user。
(3)Current dose:1日当たりのグルココルチコイド服用量を、5mg/dayごとに区切っている。non-userは0。
(4)Current dose category:current doseは、non-use、0~4.9、5~7.4、7.5~14.9、15~24.9、25mg/day以上に区分わけ。
(5)Cumulative dose since cohort entry:エントリー後の累積グルココルチコイド使用量。1,000mgごとに区切っている。
(6)Cumulative dose category:グルココルチコイド累積使用量は、non-use、0~959、960~3,054、3,055~7,299、7,300mg/dayに区分わけ。
研究対象集団の代表性
→UKのプライマリケア電子カルテを使用なので大きな問題なさそう
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?
→性別、年齢、BMI、喫煙、社会経済的地位(SES)、ベースライン以前の1年間の累積グルココルチコイド使用量、ベースラインのカールソン併存疾患指数、メトトレキサート・ヒドロキシクロロキン・スルファサラジン・レフルノミド・ペニシラミン・アザチオプリン・シクロスポリン・金製剤の注射の使用、NSAIDの使用
追跡期間
→中央値6.1年
結果
※1日平均服用量は7.5mg、累積服用量は5.3g
①グルココルチコイド使用の有無による総死亡・原因別死亡発生率
総死亡
Never use:15.5/1,000人年(14.6~16.5)vs Ever use:44.0/1,000人年(42.1~46.0)
心血管疾患による死亡
Never use:6.40/1,000人年(5.84~7.07)vs Ever use:15.8/1,000人年(14.7~17.0)
腫瘍による死亡
Never use:2.87/1,000人年(2.49~3.31)vs Ever use:10.1/1,000人年(9.17~11.0)
呼吸器疾患による死亡
Never use:1.98/1,000人年(1.67~2.35)vs Ever use:8.46/1,000人年(7.65~9.36)
その他の原因による死亡
Never use:4.25/1,000人年(3.78~4.77)vs Ever use:9.74/1,000人年(8.87~10.7)
②総死亡・原因別死亡の調整ハザード比
★Ever use vs Never use
総死亡 調整HR=1.97(95%CI:1.81~2.15)
心血管疾患による死亡 調整HR=1.66(95%CI:1.45~1.91)
腫瘍による死亡 調整HR=3.20(95%CI:2.66~3.86)
呼吸器疾患による死亡 調整HR=2.64(95%CI:2.11~3.31)
その他の原因による死亡 調整HR=1.39(95%CI:1.16~1.66)
★Current use vs non-useによるハザード比
総死亡 調整HR=1.77(95%CI:1.62~1.93)
心血管疾患による死亡 調整HR=1.58(95%CI:1.37~1.83)
腫瘍による死亡 調整HR=2.22(95%CI:1.84~2.68)
呼吸器疾患による死亡 調整HR=1.92(95%CI:1.57~2.36)
その他の原因による死亡 調整HR=1.69(95%CI:1.41~2.02)
★Current doseが5mg/day増えるごとに調節HRはどれだけ高まるか
総死亡 調整HR=1.33(95%CI:1.30~1.35)
心血管疾患による死亡 調整HR=1.21(95%CI:1.16~1.27)
腫瘍による死亡 調整HR=1.46(95%CI:1.42~1.49)
呼吸器疾患による死亡 調整HR=1.36(95%CI:1.30~1.41)
その他の原因による死亡 調整HR=1.25(95%CI:1.20~1.31)
★Current doseカテゴリーごとの調整ハザード比(vs non-use)
総死亡
0~4.9mg群 調整HR=1.02(95%CI:0.87~1.20)
5.0~7.4mg群 調整HR=1.44(95%CI:1.26~1.64)
7.5~14.9mg群 調整HR=2.24(95%CI:1.98~2.54)
15.0~24.9mg群 調整HR=4.50(95%CI:3.61~5.62)
>25mg群 調整HR=11.0(95%CI:8.87~13.6)
心血管疾患による死亡
0~4.9mg群 調整HR=1.10(95%CI:0.85~1.41)
5.0~7.4mg群 調整HR=1.59(95%CI:1.31~1.94)
7.5~14.9mg群 調整HR=1.96(95%CI:1.59~2.24)
15.0~24.9mg群 調整HR=2.79(95%CI:1.80~4.31)
>25mg群 調整HR=2.48(95%CI:1.23~4.99)
腫瘍による死亡
0~4.9mg群 調整HR=0.79(95%CI:0.51~1.22)
5.0~7.4mg群 調整HR=1.07(95%CI:0.75~1.52)
7.5~14.9mg群 調整HR=2.34(95%CI:1.75~3.13)
15.0~24.9mg群 調整HR=8.07(95%CI:5.41~12.0)
>25mg群 調整HR=31.3(95%CI:23.5~41.9)
呼吸器疾患による死亡
0~4.9mg群 調整HR=0.87(95%CI:0.57~1.33)
5.0~7.4mg群 調整HR=1.74(95%CI:1.30~2.32)
7.5~14.9mg群 調整HR=2.19(95%CI:1.62~2.97)
15.0~24.9mg群 調整HR=8.03(95%CI:5.31~12.2)
>25mg群 調整HR=11.4(95%CI:6.84~19.0)
その他の原因による死亡
0~4.9mg群 調整HR=1.15(95%CI:0.85~1.57)
5.0~7.4mg群 調整HR=1.23(95%CI:0.93~1.63)
7.5~14.9mg群 調整HR=2.66(95%CI:2.09~3.38)
15.0~24.9mg群 調整HR=2.06(95%CI:1.09~3.90)
>25mg群 調整HR=6.87(95%CI:4.01~11.8)
★累積グルココルチコイド量が1000mg増えるごとに、調整ハザード比はどれだけ高まるか
総死亡 調整HR=1.06(95%CI:1.05~1.07)
心血管疾患による死亡 調整HR=1.05(95%CI:1.04~1.07)
腫瘍による死亡 調整HR=1.06(95%CI:1.04~1.08)
呼吸器疾患による死亡 調整HR=1.07(95%CI:1.05~1.09)
その他の原因による死亡 調整HR=1.07(95%CI:105~1.08)
★累積グルココルチコイド量カテゴリーごとの調整ハザード比(vs non-use)
総死亡
0~959.9mg群 調整HR=1.60(95%CI:1.42~1.81)
960~354.9mg群 調整HR=1.83(95%CI:1.62~2.07)
3055~7299.9mg群 調整HR=2.11(95%CI:1.87~2.39)
>7300mg群 調整HR=3.11(95%CI:2.74~3.52)
心血管疾患による死亡
0~959.9mg群 調整HR=1.41(95%CI:1.16~1.72)
960~3054.9mg群 調整HR=1.38(95%CI:1.12~1.70)
3055~7299.9mg群 調整HR=1.91(95%CI:1.57~2.32)
>7300mg群 調整HR=2.59(95%CI:2.11~3.18)
腫瘍による死亡
0~959.9mg群 調整HR=2.51(95%CI:1.97~3.21)
960~3054.9mg群 調整HR=3.84(95%CI:3.04~4.87)
3055~7299.9mg群 調整HR=3.31(95%CI:2.55~4.30)
>7300mg群 調整HR=3.85(95%CI:2.90~5.10)
呼吸器疾患による死亡
0~959.9mg群 調整HR=2.18(95%CI:1.61~2.95)
960~3054.9mg群 調整HR=2.24(95%CI:1.64~3.05)
3055~7299.9mg群 調整HR=2.65(95%CI:1.95~3.61)
>7300mg群 調整HR=4.85(95%CI:3.59~6.55)
その他の原因による死亡
0~959.9mg群 調整HR=1.04(95%CI:0.79~1.36)
960~3054.9mg群 調整HR=1.16(95%CI:0.88~1.52)
3055~7299.9mg群 調整HR=1.48(95%CI:1.15~1.92)
>7300mg群 調整HR=2.54(95%CI:1.98~3.25)
感想
これまでに読んだ論文では、グルココルチコイド服用で、やや心血管イベントが高まる可能性が示唆されていた。今回の論文は、曝露情報の妥当性がやや劣るとされている後ろ向きコホート研究であるが、やはりグルココルチコイド服用ありvs服用無しでは、総死亡(HR=1.97)や心血管疾患による死亡(HR=1.66)、また腫瘍や呼吸器疾患による死亡も、服用あり群で若干リスクが高まる可能性が示唆されている。
この研究結果のみで、グルココルチコイドが死亡にどの程度関連するかというのは難しい所ではある。1日25mg以上というのはあまり見かけない印象であり、症例数が少なかった影響もあるかもしれないが、少なくとも総死亡、心血管疾患による死亡、他の原因による死亡も用量依存が見られている。このことから、グルココルチコイド服用量と死亡の間には、多少なりと関連があるのではないかと感じている。
グルココルチコイドの累積服用量に関しても、死亡との間に用量依存が見られるので、症状が安定していれば徐々に減量というのも検討してもいいのかもしれない。しかし、これまで有害事象の側面ばかり調べているので、今後は関節リウマチに対する経口ステロイドの効果の面も調べていく必要がある。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。