厳格な血糖値コントロールで心血管イベントは減らせますか?(ADVANCE)

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、まだ読んでいなかったADVANCE試験の論文を読んでみました。

 

参考文献 Intensive blood glucose control and vascular outcomes in patients with type 2 diabetes.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=18539916

 

PMID:18539916

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:30歳以上の時点で2型糖尿病と診断された55歳以上の患者のうち、大血管イベントまたは細小血管イベント既往あり、または血管疾患リスクファクターを1つ以上持つ者11140名

E:厳格血糖コントロールHbA1c<6.5%)

C:標準血糖コントロール(その地域のガイドラインに従った目標値)

O:(Primary) 主要な大血管イベント(心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)、主要細小血管イベント(腎症や網膜症の新規発症や増悪)、また、その複合アウトカム

 

除外基準

→被検薬に対する禁忌、長期間のインスリン療法

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→大血管イベント(3つの複合アウトカム)、細小血管イベント(2つの複合アウトカム)、また、大血管イベントと細小血管イベントの複合アウトカムが一次アウトカムとして設定されているため、少し注意かも。

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→記載が見つからなかったが、HbA1cを測らなければ研究が成り立たないと思われるので、二重盲検は不可能かと思われる。

「An independent End Point Adjudication Committee, unaware of the group assignments」 →PROBE法?

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→具体的なサンプル数の記載は無い(パワー90%、α=5%)

 

追跡率

→99.8%

※lost to follow-upは厳格コントロール群で7名、標準コントロール群で10名

 

追跡期間

→中央値5年間

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:両群ともに66±6歳

 

HbA1cの変化

厳格コントロール群:ベースライン平均7.5% → 治療後6.5%

標準コントロール群:ベースライン平均7.5% → 治療後7.3%

 

【Outcome

主要大血管イベントと、主要細小血管イベントの複合アウトカム(Primary outcome

厳格コントロール群:1009/5571件(18.1%)vs 標準コントロール群:1116/5569件(20.0%)

HR=0.90(95%CI:0.82~0.98) p=0.01

 

主要大血管イベント

厳格コントロール群:557/5571件(10.0%)vs 標準コントロール群:590/5569件(10.6%)

HR=0.94(95%CI:0.84~1.06) p=0.32

 

主要細小血管イベント

厳格コントロール群:526/5571件(9.4%)vs 標準コントロール群:605/5569件(10.9%)

HR=0.86(95%CI:0.77~0.97) p=0.01

 

腎症の新規発症または悪化

厳格コントロール群:230/5571件(4.1%)vs 標準コントロール群:292/5569件(5.2%)

HR=0.79(95%CI:0.66~0.93) p=0.006

 

網膜症の新規発症または悪化

厳格コントロール群:332/5571件(6.0%)vs 標準コントロール群:349/5569件(6.3%)

p=0.50

 

感想

 厳格な血糖コントロール群では、HbA1cが7.5%から6.5%に低下した。一方、標準コントロール群では、7.5%から7.3%への変化であった。

 ところが、血糖値を厳格にコントロールしても大血管イベントは、HR=0.94(95%CI:0.84~1.06) p=0.32と、標準コントロールした場合と変わりなかった。

 細小血管イベントに関しては、HR=0.86(95%CI:0.77~0.97) p=0.01と有意に減っている。標準コントロールに比べ、厳格に血糖をコントロールした場合、14%細小血管イベントを減らす事が出来たという結果だが、網膜症については有意差無しであり、有意差が出ているのは腎症の発症または悪化である。

 腎症についても、HR=0.79(95%CI:0.66~0.93) p=0.006と21%リスクを減らす事が出来るという結果であるが、実際はそもそもどちらにしても発症しない患者が大部分であるところも認識しておく必要があるのではないだろうか。

 

 ACCORD試験の結果も含め、血糖値は厳格にコントロールしても、イベント発生は案外そんなに変わらないかもしれないという印象であります。

 引き続き、VADT試験についても読んでみようと思います。まずは、有名論文を一通り読んでみようかなあと思っています。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

グリニド薬、SU薬、アカルボースの心不全による入院リスクの比較

ご訪問ありがとうございます。

 

実は、わたくし、明日5/18の誕生日で30代の仲間入りを果たします。

 

というわけで、これが20代最後の記事になります。

 

さて、諸事情により、最近α-GIについて調べているのですが、その中で気になる論文を見つけましたので読んでみました。

 

アブストラクトしか読めなかったので詳細は分からないですが、参考までに。

 

参考文献 Comparing the risks of hospitalized heart failure associated with glinide, sulfonylurea, and acarbose use in type 2 diabetes: A nationwide study.

 

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27923207

 

PMID:27923207

 

研究デザイン:後ろ向きコホート研究

 

論文のPECO

P:新規に2型糖尿病を発症した患者

E:①グリニド系開始(25638名) ②SU剤開始(272140名)

C:アカルボース開始(29376名)

O:心不全による入院

 

研究対象集団の代表性

→台湾の国民健康保険データベースが用いられており大きな問題は無いと思われる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?

→調整はされているようだが、詳細についてはアブストラクトからは不明

 

追跡期間

→不明

 

結果

心不全による入院

・グリニド系 vs アカルボース  調整HR=1.53(95%信頼区間:1.24~1.88)

 

・SU剤 vs アカルボース  調整HR=0.94(95%信頼区間:0.80~1.11)

 

感想

 アブストラクトしか読むことが出来ず、交絡因子などの詳細は分からないが、アカルボースと比較してグリニド薬は心不全による入院リスクがやや高い可能性が示唆されている。追跡期間が分からないため、何とも言い難い所ではあるが・・・。

 後ろ向きコホートであり、詳細も読めなかったためこの結果だけで結論付けることは出来ないが、同じテーマについてデータを追っていきたい。また、これらの薬剤のベネフィットについてもまだ調べられていないため、今後調べていく。

 

そんなわけでさよなら、20代!

 

よろしく、30代!

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

コリンエステラーゼ阻害薬はアルツハイマー型認知症患者の心筋梗塞・死亡は減らしますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

個人的に、ドネペジルの効果に関しては非常に気になっているが、なかなか調べられていなかったため今回1本読んでみました。

 

参考文献 The use of cholinesterase inhibitors and the risk of myocardial infarction and death: a nationwide cohort study in subjects with Alzheimer's disease.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23735859

 

PMID:23735859

 

研究デザインコホート研究

 

論文のPECO

P:アルツハイマー認知症患者7073名(平均年齢79歳)

E:中枢性コリンエステラーゼ阻害剤使用→5159名

C:中枢性コリンエステラーゼ阻害剤使用無し→1914名

O:心筋梗塞、死亡

 

研究対象集団の代表性

スウェーデン認知症登録簿を基にしており、大きな問題は無さそう

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

→年齢、性別、認知症の混合、同居人の有無、在宅ケア、MMSEスコア、抗うつ薬、神経遮断薬、降圧薬、血糖降下薬、冠血管疾患の既往歴

 

追跡期間

→平均503日

 

結果

(コリンエステラーゼ阻害剤)

E群;心筋梗塞 74/5159名  死亡;427/5159名(571日)

C群;心筋梗塞 42/1914名  死亡;329/1914名(392日)

 

心筋梗塞と死亡の複合

HR=0.66(95%CI:0.56~0.78) NNT=11

 

・死亡

HR=0.64(95%CI:0.54~0.76) NNT=12

 

心筋梗塞

HR=0.62(95%CI:0.40~0.95) NNT=132

 

※E群とC群を1:1でマッチング(3352名)した場合

心筋梗塞と死亡の複合

HR=0.66(95%CI:0.55~0.79)

 

・死亡

HR=0.60(95%CI:0.50~0.72)

 

心筋梗塞

HR=0.52(95%CI:0.32~0.86)

 

(メマンチン)

心筋梗塞と死亡の複合

HR=1.16(95%CI:0.97~1.38)

 

・死亡

HR=1.15(95%CI:0.95~1.38)

 

心筋梗塞

HR=1.22(95%CI:0.76~1.97)

 

感想

 あくまで1つのコホート研究の結果であるが、アルツハイマー認知症患者が中枢性抗コリン薬を使用することで、1年半程度の期間で見ると生存確率は上がるかもしれない事を示唆する結果である。また、心筋梗塞も少ない傾向にある。

 ベースラインの患者条件を見てみると、70代後半~80代前半でありここからの生存という事にはなるが、その中で家族は、本人とやり残したことを出来る時間を捻出できる可能性もある。

 しかし、この1本の論文から寿命が延びるので中枢性抗コリン薬を服用させる方がいいと結論する事は早計と感じているので、MMSEやADAS-cogについて検討したものなど関連論文や、反対に有害事象に関する論文も読んでおかなければならない。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

PS 

このような場合、患者からの視点よりも、その介護者や患者の視点という物が重要視される方がいいのではないかというご意見を頂きました。非常にありがたいです。少なくとも、延伸しているのは健康寿命ではないという。非常に難しいですね。

 

私自身、薬局での服薬指導時に患者さんのご家族からお話を伺う機会も多いです。

その中で、患者さんご家族から介護の苦労についてお話を聞かせてもらう事もあれば、「まだまだ一緒にいたい。」、「まだまだ長生きしてほしい。」、「100歳まで生きてほしい。」というような希望を伺うこともあります。

 

認知機能の低下が見られまだ薬を飲んでまで寿命を延ばすということ、難しいテーマです。今回の論文については社内にも持ち込んで、社内抄読会のお題にするか、または、このテーマについてディスカッションする機会を作ってみようかと思います。

2型糖尿病患者に対する低用量アスピリンの一次予防効果は?(JPAD)

ご訪問ありがとうございます

 

実は、本日でこのブログも2年目に突入します。

 

この1年、いろいろありました。いろんな先生方の支えもあり、居酒屋抄読会という企画も5回ほど開催させていただきました。

 

飽き症の自分が1年も続けることが出来るとは、開始時点では思いもしていませんでしたが、ひとえに支えて下さっている皆様のおかげであります。感謝申し上げます。

 

2年目の1発目は、2型糖尿病患者に対する低用量アスピリンの一次予防効果を検討した論文(JPAD)です。

 

参考文献 Low-dose aspirin for primary prevention of atherosclerotic events in patients with type 2 diabetes: a randomized controlled trial.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=18997198

 

PMID:18997198

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:30~85歳で、動脈硬化性疾患の病歴の無い2型糖尿病患者2536名

E:低用量アスピリン(81または/100mg/日)

C:アスピリン無し

O:(Primary) 動脈硬化性疾患(突然死、冠動脈性・脳血管性・大動脈性の死亡、非致死性急性心筋梗塞、不安定狭心症狭心症の新規発症、非致死性虚血性・出血性脳卒中TIA、非致死性大動脈・末梢血管疾患:動脈硬化症、大動脈解離、腸間膜動脈血栓)の複合エンドポイント

 

除外基準

→心電図におけるST低下、ST上昇、異常Q波、冠動脈心疾患の既往、脳血管疾患の既往、治療を必要する動脈硬化性疾患の既往、心房細動、妊婦、アスピリン・チクロピジン・シロスタゾール・ジピリダモール・トラピジル・ワルファリン・アルガトロバンの服用、重度の胃・十二指腸潰瘍既往、重篤な肝・腎疾患、アスピリンアレルギー

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→複合アウトカムなので明確と思われる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→PROBE法が用いられている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→2450名(パワー95%、α=5%)

 

追跡率は十分か?

→追跡率=92.4% 

 

追跡期間

→中央値4.37年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:E群:65歳 プラセボ群:64歳

 

動脈硬化性疾患の複合アウトカム(Primary outcome

E群:68/1262件(5.4%)13.6/1000人年vs C群:86/1277件(6.7%)17.0/1000人年

HR=0.80(95%CI:0.58~1.10 p=0.16

 

冠動脈・脳血管性死亡

E群:1/1262件(0.08%)0.2/1000人年vs C群:10/1277件(0.8%)2.0/1000人年

HR=0.10(95%CI:0.01~0.79 p=0.0037

 

有害事象(Table3

消化管出血、その他出血、消化管潰瘍などいずれもアスピリン群で多い

 

感想

 Primary outcomeに関しては、アスピリン群と非アスピリン群でHR=0.80と減少傾向はあるが有意差はないという結果。ベースラインの平均年齢は64~65歳で、そこからの4年ほどの追跡なので、もう少し長期間の追跡の結果も気になる所ではある。

 冠動脈・脳血管性死亡はアスピリン群で有意に減らす事が出来たという結果であるが、あくまでこれはSecondary outcomeであり、さらに発生数がそもそも多くないので、死亡を減らす事が出来るとは言い切れないと思う。

 出血や消化器症状などの有害事象は、アスピリン群で明らかに多い印象であるが、アスピリン服用群ではPPIを併用していた割合はどうだったのか気にはなる・・・。

 有害事象のリスクと得られるベネフィットで考えると、過去に動脈硬化性疾患の既往の無い2型糖尿病患者のうち、少なくとも65歳未満の患者では一次予防効果は大きくは期待できないかもしれない。使うにしても、これまで私が読んできた文献の結果から、PPIの併用はした方がいいかなという印象を持っている。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

そして、2年目も引き続きどうぞよろしくお願い致します。

日本人ではスタチンにEPAを併用した方がいいですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、高コレステロール血症の日本人患者に対して、スタチンにEPAを併用する事で心血管イベントに変化はあるかをみた研究(JELIS研究)の論文です。

 

参考文献 Effects of eicosapentaenoic acid on major coronary events in hypercholesterolaemic patients (JELIS): a randomised open-label, blinded endpoint analysis.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=17398308

 

PMID:17398308

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:総コレステロール>6.5mmoL/L(約250mg/dL)の日本人患者18645名

E:スタチンにEPA1800mg/日を併用→9326名

C:スタチン単独→9319名

O:(Primary) 主要冠血管イベント(心臓突然死、致死性・非致死性心筋梗塞、不安定狭心症、血管形成術、ステント挿入、冠動脈バイパス術)

 

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→複合アウトカムのようなので明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→PROBE法が用いられている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→パワー80%、α=5%で、具体的なサンプル数の設定数に関する記載は見つからず

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=98.9%

 

追跡期間

→平均4.6年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:E群:61歳 C群:61歳

併用スタチン:両群ともにプラバスタチンが60%、シンバスタチンが36~37%

 

主要心血管イベント(Primary outcome

E群:262/9326件(2.8%)vs C群:324/9319件(3.5%)

HR=0.81(95%CI:0.69~0.95) p=0.011  NNT=148名

 

サブグループ解析

①primary prevention(過去に心血管イベント発生が無い患者のみ)

主要心血管イベント

E群:1.4% vs  C群:1.7%

HR=0.82(95%CI:0.63~1.06) p=0.132 

 

②secondary prevention(過去に心血管イベント発生がある患者のみ)

主要心血管イベント

E群:8.7% vs  C群:10.7%

HR=0.81(95%CI:0.66~1.00) p=0.048 

 

感想

 Primary outcomeである主要心血管イベントは、HR=0.81という事でEPAを併用した方が19%ほど減らす事が出来るという結果。ただし平均4.6年の追跡でNNT=148と、服用しなくてもあまり大きな影響は無いのかもしれない。

 この研究は、二重盲検ではなくPROBE法が用いられており、その上で血管形成術、ステント挿入、冠動脈バイパス術などのソフトエンドポイントがアウトカムに含まれているため、解釈には注意が必要であり、結果は割り引いて考える必要がある。

 複合アウトカムに含まれる個々の要素としては、いずれもEPA併用でリスクは低下傾向にはあるが、有意差が出ているのは不安定狭心症のみ(HR=0.78 95%CI:0.62~0.95)で、これもNNT=334と大きなインパクトは無い。

 有害事象としては、吐き気などの消化器症状や、出血がやや増える可能性があるようである。

 EPA製剤は、カプセルも大きく1度に2Capを1日3回の服用が必要、粒状カプセルも飲みにくいと訴える患者さんは結構多いと感じている。その飲みにくさを上回るだけのベネフィットを得られるかは疑問が残るという印象。海外の物などで同様の研究の論文も読んでみる必要がある。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

リバーロキサバンとダビガトランで出血リスクに違いはありますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、DOAC(Direct oral anticoagulants)であるリバーロキサバンとダビガトランの出血リスクについて検討されたSR&MAの論文です。

 

参考文献 Bleeding outcomes associated with rivaroxaban and dabigatran in patients treated for atrial fibrillation: a systematic review and meta-analysis.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28056795

 

PMID:28056795

 

研究デザイン:システマティックレビュー&メタ分析

 

論文のPECO

P:非弁膜症性心房細動患者

E:リバーロキサバン→1581名

C:ダビガトラン→3314名

O:(Primary)出血イベント、頭蓋内出血、消化管出血

 (Secondary)脳卒中/全身性塞栓症/TIA静脈血栓塞栓症、死亡

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

5名の評価者が独立してデータ抽出

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元:EMBASE、Medline、Cochrane Central Registry of Controlled Trials

 

・英語で書かれたもののみ

・参考文献についても検索している

・ファンネルプロットでは、個人的にはやや左下のデータが欠損しているような印象(これぐらいは問題ないような気もするが・・・)

 

出版バイアスは大きな問題はなさそうだが、個人的には少し慎重に評価したいと感じた

 

3、元論文バイアス

→5つの観察研究のみを統合している(観察研究なのでRisk of biasの評価はしていない)

 

元論文バイアスもさほど問題なさそう

 

4、異質性バイアス

→Primary outcomeのいずれもI2=0%なので異質性は低いと考えられる

 

結果

総出血イベント

リバーロキサバン:79/1578件 vs ダビガトラン:124/3311件

OR1.28 (95%CI:0.95~1.72) I2=0% P=0.11

 

頭蓋内出血

リバーロキサバン:3/507件 vs ダビガトラン:4/1417件

OR2.18 (95%CI:0.51~9.25) I2=0% P=0.29

 

消化管出血

リバーロキサバン:9/507件 vs ダビガトラン:17/1417件

OR0.98 (95%CI:0.43~2.25) I2=0% P=0.97

 

脳卒中/全身性塞栓症/TIA

リバーロキサバン:32/1581件 vs ダビガトラン:91/3314件

OR0.81 (95%CI:0.53~1.23) I2=0% P=0.32

 

静脈血栓塞栓症

リバーロキサバン:7/695件 vs ダビガトラン:8/1593件

OR2.06 (95%CI:0.73~5.82) I2=0% P=0.17

 

死亡

リバーロキサバン:45/730件 vs ダビガトラン:100/1627件

OR1.42 (95%CI:0.99~2.06) I2=38% P=0.06

 

感想

 総出血イベントは有意差こそ出ていないものの、ダビガトランと比較してリバーロキサバンでリスクが高くなる傾向にある。頭蓋内出血は、そもそもイベント発生数が少ないため何とも言えない印象であり、消化管出血は両群でほとんど差が無いという結果。

 個人的には、ダビガトランの出血リスクはDOACの中でも高いという認識でいたが、実はリバーロキサバンは更に出血リスクが高い可能性がある事が示唆されており、リバーロキサバンが出血リスクの低いDOACという認識は改めなければならないと感じた。

 実際、抗凝固薬の中で出血リスクがどのあたりに位置するのかを検討するためには、他のDOACやワルファリンとの比較に関する論文も探して読んでみる必要がある。

 ところで、この2剤間では腎機能についても注意が必要な薬剤である。この辺りも加味する必要はあるであろう。リバーロキサバンの他、アピキサバンエドキサバンクレアチニンリアランス<15mL/minで禁忌となるが、ダビガトランクレアチニンリアランス<30mL/minで禁忌とされている。ちなみに、肝消失型薬剤であるワルファリンも、重篤な腎障害患者においては禁忌となっている。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

心房細動患者に対するジゴキシンと死亡

ご訪問ありがとうございます。

 

前回の投稿時に、心不全と心房細動は分けて考えた方が良さそうと、日ごろから大変尊敬している先生に教えて頂きまして。そんなわけで、今回は心房細動患者に対するジゴキシンのSR&MAです。そもそも、私の勤めている薬局ではジゴキシンの処方例は非常に少ない印象ではありますが・・・。

 

他にも似たような研究がいくつかあるようですが、とりあえず1本読んでみました。

 

参考文献 Systematic review and meta-analysis of mortality and digoxin use in atrial fibrillation.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27064796

 

PMID:27064796

 

研究デザイン:システマティックレビュー&メタ分析

 

論文のPECO

P:心房細動(AF)の患者

E:ジゴキシン服用あり→111978名

C:ジゴキシン服用無し→389643名

O:(Primary)総死亡

 (Secondary)心血管死亡

 

一次アウトカムは明確か?

→明確。

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

・2名の評価者が独立してデータ抽出

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元:MEDLINE、EMBASE、Google Scholar、CINAHL、Cochran central datebase

 

・言語制限なしに集めている

・関連する参考文献や未出版のデータも検索している

・Funnel plotを見た感じも、そこまで大きな問題はなさそう

 

出版バイアスはさほど問題なさそう

 

3、元論文バイアス

・RCTのほかに観察研究やPost hoc解析の結果も含まれている

 

複数の研究タイプが含まれているようなので、やや注意が必要

 

4、異質性バイアス

・Primary outcomeのI2=88%と異質性は高い。他の結果も異質性は高い。

 

 

結果

平均年齢:73.8歳

 

★総死亡

(全体) HR1.27 (95%CI:1.19~1.36) I2=88% P<0.001

 

(心不全ありの患者) HR1.21 (95%CI:1.12~1.30) I2=77% P=0.002

 

(心不全無しの患者) HR1.47 (95%CI:1.25~1.73) I2=91% P<0.0001

 

※RCTのみの結果:HR=1.46 (95%CI:1.09~1.94) I2=82% P<0.0001

 

★心血管死亡

HR1.21 (95%CI:1.12~1.30) I2=74% P<0.001

 

 

感想

 心房細動の患者に対するジゴキシンは、総死亡を増やす可能性があるという結果である。RCT以外に観察研究も含まれているようで、また異質性も高いため注意は必要とは思うが、この結果は軽視できないものと思う。

 ジゴキシンの効能・効果に「心房細動・心房粗動による頻脈」があるが、今回の結果を見ると、心房細動を持つ患者に対してジゴキシンをあまり安易に使うべきではないような印象を持った。心不全を併発している患者と併発していない患者でやや結果に差がある点も興味深い。

 異質性が高いという事もあるので、今後このSRに組み入れられている元論文も読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。