アロマターゼ阻害薬で骨折リスクは増えますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、アロマターゼ阻害薬と骨量、骨折の関係についての論文です。

 

先日、骨密度の低下を指摘されて、整形外科からエルデカルシトールカプセル0.75㎍が追加になった症例がありました。併用薬を確認してみると、乳腺外科からアナストロゾールが処方されていました。

 

アナストロゾールは、アンドロゲンからエストロゲンを作る際に使われるアロマターゼを阻害します。

アンドロゲンからのエストロゲン合成が抑えられるため、閉経後乳がんに使われます。

 

アロマターゼの阻害により、エストロゲンの合成が抑制されるわけですが、エストロゲンは骨吸収抑制にも関与しています。このことから、アロマターゼ阻害薬により、骨密度の低下や骨折が増えるのか?という疑問がわきました。

 

そこで、調べると今回の文献にたどり着きました。(アブストラクトのみ・・・。)

 

参考文献 Risk of cancer treatment-associated bone loss and fractures among women with breast cancer receiving aromatase inhibitors.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/16800971

 

PMID:16800971

 

研究デザインコホート研究

 

論文のPECO

P:乳がん患者のうち骨転移が無く、骨粗鬆症や骨折が無い患者12368名

E:アロマターゼ阻害薬服用あり→1354名

C:アロマターゼ阻害薬服用無し→11014名

O:①骨量減少(骨粗鬆症または骨減少症) ②骨折

 

※アロマターゼ阻害薬

→アナストロゾール、エキセメスタン、レトロゾール

 

※抗エストロゲン薬(タモキシフェンなど)服用患者は除外

 

研究対象集団の代表性

→大きな問題は無いと思われる

 

真のアウトカムか?

→骨量は代用のアウトカム、骨折は真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?

→年齢、並存疾患

 

追跡期間

→不明

 

結果

①骨量が低下した患者の割合

   ・E群:8.7% vs C群:7.1% RR=1.4(95%CI:1.1~1.6) p=0.01

  ・調整後のリスク:E群で27%(95%CI:4~55%)上昇 p=0.02

  

②骨折

   ・E群:13.5% vs C群:10.3% RR=1.4(95%CI:1.2~1.6) p=0.001

  ・調整後のリスク:E群で21%(95%CI:3~43%)上昇 p=0.02

 

感想

 アブストラクトだけで不明点も多いが、アロマターゼ阻害薬で骨量の低下や、骨折の増加が起こる可能性があるという結果である。

 アロマターゼ阻害薬を服用している患者が整形外科を受診した場合などは、骨密度の測定結果を見せてもらい、その推移についても確認しておいた方がよさそうである。

 また、もともと骨折リスクの高い患者では、骨折を避けるために転倒などにも注意を促した方がよさそうである。

 今回の症例が、アロマターゼ阻害剤と関連しているのかは不明であるが、あくまでも可能性の一つとしてあり得るのかな?と思った症例だった。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

ビスホスホネートの休薬について

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、3年以上服用した患者のビスホスホネート継続vs中断で骨折に差があるかを比較した研究です。アブストしか読めませんが・・・。

 

参考文献 Bisphosphonate Drug Holiday and Fracture Risk: A Population-Based Cohort Study.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/29529334

 

PMID:29529334

 

研究デザイン:後ろ向きコホート研究

 

論文のPECO

P:3年以上ビスホスホネートを服用している45歳以上の女性39502名

E:ビスホスホネート休薬(12カ月以上中止)

C:ビスホスホネート継続(C1:アドヒアランス50%以上、C2:アドヒアランス50%未満)

O:骨粗鬆症関連骨折

 

 

研究対象集団の代表性

→問題無いと思われる(This retrospective cohort study, conducted within 4 Kaiser Permanente integrated health system regions)

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

→不明

  

結果

骨粗鬆症関連骨折

E群 vs C1群 HR=0.92 (95%CI:0.84~0.99

 

E群 vs C2群 HR=0.71 (95%CI:0.65~0.79

 

股関節骨折

E群 vs C1群 HR=0.95 (95%CI:0.83~1.10

 

E群 vs C2群 HR=0.59 (95%CI:0.50~0.70

 

椎体骨折

E群 vs C1群 HR=0.83 (95%CI:0.74~0.95

 

E群 vs C2群 HR=0.68 (95%CI:0.59~0.78

 

感想

 アブストしか読めずに詳細は分からないが、ビスホスホネートを3年以上継続した後に中止しても、その後も継続した場合と比較して骨粗鬆症関連骨折は増えないという結果である。

 これまで読んだ論文の中には、ビスホスホネートは長期服用でむしろ骨折が増える可能性を示唆するものもあった。あくまで後ろ向きコホート研究ではあるし、アブストラクトだけでは、患者背景など不明点は多いが、長期服用している患者のビスホスホネートを一旦中止しても良いか判断する際の根拠の一つぐらいには使えるのかもしれない。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

腰痛や変形性関節症に対してアセトアミノフェンはどの程度有効ですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

ご無沙汰しております。しばらく更新をさぼってしましました、すみません・・・。(-_-)/~~~ピシー!ピシー!

 

今回は、アセトアミノフェンの腰痛や変形性関節炎に対する効果を見た研究です。

 

参考文献 Efficacy and safety of paracetamol for spinal pain and osteoarthritis: systematic review and meta-analysis of randomised placebo controlled trials.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=25828856

 

PMID:25828856

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:腰痛または変形性関節炎の患者

E:アセトアミノフェン

C:プラセボ

O:痛みの強さ、身体障碍、QOL

 ※痛み、障害の程度は0~100のスケールに変換

 

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

・Two independent reviewers extracted data→2名の評価者が独立してデータ抽出

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2出版バイアス

情報元:MEDLINE、EMBASE、AMED、CINAHL、Web of Science、LILACS、International Pharmaceutical Abstracts、Cochrane Central Register of Controlled trials

 

・未出版のデータも探している

・There were also no restrictions for languages・・・→言語制限なく検索

 

 

出版バイアスはさほど問題なさそう

 

3、元論文バイアス

・Risk of biasが著しく大きい物は無い(Fig2)

 

元論文バイアスもさほど問題なさそう

 

4、異質性バイアス

結果を参照

 

※When our treatment effects were smaller than 9 mm, although significant, we considered the effect as small and not clinically important.

→VASスケールで9mm以下の差であれば、有意差が出ようと臨床上重要な差とはみなされない

 

結果

☆腰痛患者

痛み

・即時(≦2週間) E群 vs C群の差 1.4(95%CI:-1.3~4.1)

 

・短期間(2週間~3カ月)  E群 vs C群の差 -0.5(95%CI:-2.9~1.9)

 

身体障害

・即時(≦2週間) E群 vs C群の差 -1.9(95%CI:-4.8~1.0)

 

・短期間(2週間~3カ月)  E群 vs C群の差 0.4(95%CI:-1.7~2.5)

 

☆変形性関節症患者

痛み

・即時(≦2週間) E群 vs C群の差 -3.3(95%CI:-5.8~-0.8)

 

・短期間(2週間~3カ月)  E群 vs C群の差 -3.7(95%CI:-5.5~1.9)

 

身体障害

・即時(≦2週間) E群 vs C群の差 -1.7(95%CI:-6.0~2.6)

 

・短期間(2週間~3カ月)  E群 vs C群の差 -2.9(95%CI:-4.9~-0.9)

 

【有害事象】

全有害事象

E群 vs C群 リスク比=1.0 (95%CI:0.9~1.1)

 

重篤な有害事象

E群 vs C群 リスク比=1.2 (95%CI:0.7~2.1)

 

全有害事象

E群 vs C群 リスク比=1.0 (95%CI:0.9~1.1)

 

脱落

E群 vs C群 リスク比=1.2 (95%CI:0.9~1.5)

 

有害事象(肝臓)

E群 vs C群 リスク比=3.8 (95%CI:1.9~7.4)

 

感想

 腰痛患者に対してのアセトアミノフェンは、痛みも身体障害もプラセボと比較して改善しなかったという結果。変形性関節症の患者では、2週間以内の痛みは有意に減らすという結果ではあるが、0~100mmのスケールで9mm未満の差は臨床上意義の大きな差とはみなされないということなので、大きな改善は見込めない可能性がある。

 また、有害事象のうち肝機能異常はリスク比が3.8と高くなっている。あくまで、元論文で用いられたアセトアミノフェンの量は3000~4000mg近く、この用量を用いている処方はほとんど見ない。

 この論文の結果からだと、アセトアミノフェン300mg×3回ぐらいの治療効果はわずかなものになってしまうかもしれない。しかし、実際にアセトアミノフェン200mg 1錠で痛みが治まったという患者もいるし、実際の効果としてはプラセボ効果も上乗せされて現れると思われるので、一概に意味が無いとは言えないと思う。

 短期間使用しても、痛みの改善が見られなければ長期間使用しても鎮痛効果は期待できないのかもしれない。関連する論文も読んでみようと思う。

 

 今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

重篤な喘息患者に対するフルチカゾン+サルメテロール vs フルチカゾン単独

ご訪問ありがとうございます。

今回は、コントロール不良な気管支喘息患者に対する、フルチカゾン+サルメテロール vs フルチカゾン単独の比較をしたRCTを読んでみようと思います。

 

参考文献 Serious Asthma Events with Fluticasone plus Salmeterol versus Fluticasone Alone.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26949137

 

PMID:26949137

 

研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣性試験) 非劣性マージン:2.0

 

論文のPECO

P:1年以内に重篤な症状悪化を経験した、12歳以上の持続的な喘息患者

E:フルチカゾンプロピオン酸(100㎍、250㎍、500㎍)+サルメテロール(50㎍)1日2回吸入

C:フルチカゾンプロピオン酸(100㎍、250㎍、500㎍)1日2回吸入

O:(Primary) 【安全性】重篤な喘息関連イベント(死亡、気管内挿管、入院)

       【有効性】最初の喘息症状の悪化

 

※除外基準

生命を脅かすような喘息経験者、年間10箱以上の喫煙者、不安定な喘息患者

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

FAS解析

 

サンプルサイズ

→11664名(パワー90%、片側α=0.025)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=99.3%(lost to follow-upはE群48名、C群37名)

 

追跡期間

→26週間

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:E群:43.4±17.45歳 C群:43.4±17.28歳

 

【アウトカム】

重篤な喘息関連イベント(死亡、気管内挿管、入院)

E群:36件(34/5834名) vs C群:38件(33/5845名)

HR=1.03(95%CI:0.64~1.66) p=0.003 非劣性が成立

 

・最初の喘息症状の悪化

(全体)

E群:480/5834件(8%)vs C群:597/5845件(10%)

HR=0.79(95%CI:0.70~0.89) p<0.001

 

(過去のグルココルチコイド吸入またはnon-LABA療法でコントロール不良患者)

E群:91/1405件(6%)vs C群:106/1398件(8%)

HR=0.83(95%CI:0.63~1.10) p=0.20

 

(過去のグルココルチコイド+LABA吸入療法でコントロール不良患者)

E群:102/1016件(10%)vs C群:124/1040件(12%)

HR=0.84(95%CI:0.65~1.09) p=0.19

 

(過去のグルココルチコイド+LABA吸入療法でコントロール良好患者)

E群:239/2652件(9%)vs C群:304/2663件(11%)

HR=0.76(95%CI:0.65~0.91) p=0.002

 

(過去のグルココルチコイド吸入療法でコントロール良好患者)

E群:38/612件(6%)vs C群:54/608件(9%)

HR=0.68(95%CI:0.45~1.03) p=0.07

 

 

感想

 安全性のアウトカムは、グルココルチコイド単独群に対して、グルココルチコイドにサルメテロールを上乗せした群の非劣性が示されている。安全性に関しては、むしろ心血管イベントについてどうなのかという所を知りたい。

   有効性のアウトカムは、HR=0.79(95%CI:0.70~0.89) p<0.001と、サルメテロールを上乗せした方が有意に少ないという結果になっている。

 サブ解析を見ると、すでにグルココルチコイド単独または、グルココルチコイド+LABAでコントロール不良な患者では、喘息症状の悪化にE群とC群間で有意差もない。

 グルココルチコイド単独でコントロール良好な患者であれば、わざわざサルメテロールを上乗せする必要は無いように思われる。

 一方、グルココルチコイド+LABAで安定している患者では、ステロイド単独に安易に変えない方がいいのかな?とも感じた。この辺りは関連論文を見つけて読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

脳卒中予防ではアスピリンにクロピドグレルを併用した方がいいですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回も、引き続きクロピドグレルの論文を読んでみました。

 

参考文献 Efficacy and safety of adding clopidogrel to aspirin on stroke prevention among high vascular risk patients: a meta-analysis of randomized controlled trials.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/25110930

 

PMID:25110930

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:血管イベントリスクの高い患者

E:アスピリンとクロピドグレルを併用

C:アスピリン単独

O:脳卒中、大出血

 

 一次アウトカムは明確か?

→明確と言える

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

→Data were extracted independently by 2 investigators (SY Chen, QY Shen).

→2名の評価者が独立してデータ抽出

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元:PubMed、EMBASE、OVID 、Cochrane Central Register of Controlled Trials

・15個のRCTを統合

・関連する追加情報も検索している

・restricted to English only→英語で書かれている論文のみ

・Funnel plot analysis on the outcome of all stroke did not indicate significant publication bias (Figure S14)

 

出版バイアスも大きな問題は無さそう

 

 3、元論文バイアス

・Cochrane collaboration’s toolを使って元論文の質を評価している

・「this meta-analysis was based mainly on studies with low risk of bias」

・FigureS2からも、low risk of biasのものがほとんど

 

元論文バイアスもさほど問題なさそう

 

4、異質性バイアス

いずれも、そこまで大きな異質性は無いように思われる

 

 

結果

※短期間:追跡期間1カ月以下の研究を統合 

 長期間:追跡期間3カ月以上の研究を統合

 

脳卒中

(全体)E群 vs C群 RR0.7995CI0.730.89  I2=37.8% P<0.00001

(短期間) E群 vs C群 RR=0.76(95%CI:0.67~0.85)  I2=30% P<0.00001

(長期間) E群 vs C群 RR=0.81(95%CI:0.73~0.89)  I2=10% P<0.00001

 

☆大出血

(全体)E群 vs C群 RR1.4295CI1.251.62  I2=29% P<0.00001

(短期間) E群 vs C群 RR=1.11(95%CI:0.91~1.36)  I2=0% P=0.30

(長期間) E群 vs C群 RR=1.52(95%CI:1.36~1.69)  I2=7% P<0.00001

 

☆頭蓋内出血

(全体)E群 vs C群 RR1.2595CI0.981.61  I2=48% P=0.07

(短期間) E群 vs C群 RR=0.92(95%CI:0.66~1.30)  I2=0% P=0.65

(長期間) E群 vs C群 RR=1.76(95%CI:1.22~2.54)  I2=0% P=0.002

 

 

感想

 短期間(1カ月以内)、長期間(3カ月以上)の併用の結果はいずれも、アスピリンとクロピドグレルを併用した方がアスピリン単独よりも脳卒中が少ないという結果である。

 一方で、大出血、頭蓋内出血について短期間では両群に差は見られていないが、長期間の結果では有意に併用群の方が多いという結果である。

 この結果から、クロピドグレルとアスピリンの併用を長期に続けると確かに脳卒中は少なくなるかもしれないが、出血リスクが高まる可能性があり、どこかのタイミングで併用から1剤に減らす事も検討する必要があるのかもしれない。今後、主要な元論文についても読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

ラクナ梗塞患者では、アスピリンにクロピドグレルを併用した方がいいですか?

ご訪問ありがとうございます。

ご無沙汰しております。

そして、あけましておめでとうございます(すでに明けて半月以上経ってしまいましたね・・・。)

 

しばらく更新をさぼってしまいました( ;∀;)

 

今年1発目の記事は、ラクナ梗塞患者のアスピリン治療にクロピドグレルは併用した方が良いのか?という論文です。 

 

参考文献 Effects of clopidogrel added to aspirin in patients with recent lacunar stroke.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=22931315

 

PMID:22931315

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:180日以内に症候性ラクナ梗塞を起こした30歳以上の患者3020名

E:アスピリン腸溶錠325mg+クロピドグレル75mg

C:アスピリン腸溶錠325mg+プラセボ

O:(Primary)脳梗塞の再発

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→3000名(パワー90%、α=5%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→Supplementary Appendixより、lost to follow upはプラセボ群27名、クロピドグレル群28名で、追跡率=98.2%

 

追跡期間

→平均3.4年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:63歳

 

【アウトカム】

脳梗塞の再発(Primary outcome

クロピドグレル群:125/1503件(2.5%)vs プラセボ群:138/1517件(2.7%)

HR=0.92(95%CI:0.72~1.16) p=0.48

 

総死亡

クロピドグレル群:113/1503件(2.1%)vs プラセボ群:77/1517件(1.4%)

HR=1.52(95%CI:1.14~2.04) p=0.004

 

大出血

クロピドグレル群:105/1517件(2.1%)vs プラセボ群:56/1503件(1.1%)

HR=1.97(95%CI:1.41~2.71) p<0.001

 

 

感想

 Primary outcomeである脳梗塞の再発は、クロピドグレルを併用しても減らす事が出来なかったという結果。また、総死亡はクロピドグレル併用群でおよそ1.5倍に増え、大出血も約2倍に増えている。

 使用しているアスピリン腸溶錠は325mgと、国内で用いられている量より多いので出血はこの研究では多くなっているのかもしれない。

 少なくともこの結果は、ラクナ梗塞既往でアスピリン服用中の患者にクロピドグレルを併用する事を推奨するような結果ではないと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

今年も宜しくお願い致します。

プラスグレルはクロピドグレルより心血管イベントを減らせますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

さて、今年の更新はこれが最後になるかと思います。というのも、明日から実家に帰省するんですが、実家にはネット環境が無いので更新不可能かと・・・。

 

そんなこんなで、今年最後は、抗血小板薬のプラスグレルとクロピドグレルの比較です。

 

参考文献 Prasugrel versus clopidogrel in patients with acute coronary syndromes.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=17982182

 

PMID:17982182

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:急性冠症候群リスク中~高リスクでPCIを受ける予定の患者13608名

E:プラスグレル(ローディングドーズ60mg、維持用量10mg)をアスピリンと併用

C:クロピドグレル(ローディングドーズ300mg、維持用量75mg)をアスピリンと併用

O:(Primary) 心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム

 

※除外基準

→出血リスクが高い、貧血、血小板減少症、病理学的頭蓋内所見、5日以内のチエノピリジン系使用

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率99.9%(lost to follow upは14名.)

 

追跡期間

→治療期間中央値14.5ヶ月

 

結果

【ベースライン】

年齢:プラスグレル群:中央値61歳 クロピドグレル群:中央値61歳

 

【アウトカム】

心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム(Primary outcome

プラスグレル群:643/6813件(9.9%)vs クロピドグレル群:781/6795件(12.1%)

HR=0.81(95%CI:0.73~0.90) p<0.001  NNT=49

 

心血管死亡

プラスグレル群:133/6813件(2.1%)vs クロピドグレル群:150/6795件(2.4%)

HR=0.89(95%CI:0.70~1.12) p=0.31

 

非致死性心筋梗塞

プラスグレル群:475/6813件(7.3%)vs クロピドグレル群:620/6795件(9.5%)

HR=0.76(95%CI:0.67~0.85) p<0.001

 

非致死性脳卒中

プラスグレル群:61/6813件(1.0%)vs クロピドグレル群:60/6795件(1.0%)

HR=1.02(95%CI:0.71~1.45) p=0.93

 

【安全性】

大出血

プラスグレル群:146/6741件(2.4%)vs クロピドグレル群:111/6716件(1.8%)

HR=1.32(95%CI:1.03~1.68) p=0.03

 

感想

 Primary outcomeである心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカムは、クロピドグレル群に比べ、プラスグレル群は19%少ないという結果である。個々のアウトカムについて見てみると、非致死性心筋梗塞はプラスグレル群で有意に少ないという結果になっている。

 日本人は、クロピドグレルの代謝活性化に関与するCYP2C19のPMがおよそ20%と多いため、クロピドグレルの効果が十分に得られない患者が多いと言われている。日本人ではよりプラスグレルに優位な結果になるかもしれない。

 ただし、この研究に用いられているプラスグレルの用量は維持量が10mg/日と、国内で用いられている通常維持用量(3.75mg/日)より多い量となっている点は注意が必要かと思う。

 大出血はクロピドグレル群よりもプラスグレル群で有意に多いという結果である。この点ではクロピドグレルの方が有利となる。また、薬価も後から発売されたプラスグレルの方が高くなっている。

 国内で用いられている用量だと、出血はもっと少ないかもしれないし、Primary outcomeの抑制効果はもう少し小さくなるかもしれない。

 確かに、プラスグレルの方が優れている点もあるが、クロピドグレルにも利点があるので、何でもかんでもプラスグレルとはいかない印象である。実際プラスグレルが処方されている患者は、自分の薬局ではあまり多くないように感じている。あと、プラスグレルには脳や末梢への適応は無い事も押さえておきたい。

 

今年も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

また来年もよろしくお願い致します♪

 

それでは皆様、よいお年を('ω')ノ