低用量アスピリンによる消化管障害はPPI併用でどの程度防げますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、低用量アスピリン療法へPPIを併用することで消化管障害が防げるか?についてです。
日頃、併用されていることが当たり前のように感じていますが、その「当たり前」という感覚を一旦かっこに入れて、論文を読んでみました。
参考文献 Proton pump inhibitors in prevention of low-dose aspirin-associated upper gastrointestinal injuries
リンク http://www.ncbi.nlm.nih.gov/pmc/articles/PMC4419080/pdf/WJG-21-5382.pdf
研究デザイン:メタ分析
論文のPECO
P:低用量アスピリンを2週間以上継続して服用している18歳以上の患者
C:プラセボ、粘膜保護剤(ゲファルナート100mg/day)、H2ブロッカー(ファモチジン20~80mg/day:コントロール群
O:低用量アスピリン療法時の上部消化管潰瘍、消化管出血、DAPT時の上部消化管潰瘍、DAPT時の主要心血管イベント
※用いられているPPI
エソメプラゾール、パントプラゾール、オメプラゾール、ラベプラゾール、ランソプラゾール
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
4つのバイアス
1、評価者バイアス
2名の評価者が独立して選定
評価者バイアス問題なし
2、出版バイアス
情報元: MEDLINE、EMBASE、コクラン
Only studies published in English were included(英語で書かれたものだけ)
Publication biasのところに、Funnel plotよりPublication biasの可能性ありと記載
出版バイアスが含まれている可能性あり
3、元論文バイアス
Cochrane Risk of Bias toolを用いて、2名の評価者が独立して各論文の質を評価
Risk of biasの図を見ても、High riskの項目は少ない
元論文バイアス問題なし
4、異質性バイアス
異質性バイアスは少ない
結果
低用量アスピリンに関連する上部消化管潰瘍
OR=0.16 (95%CI: 0.12-0.23) I2=0%
※サブグループ解析
PPI vs プラセボ OR=0.20 (95%CI: 0.13-0.30) I2=0%
PPI vs ゲファルナート OR =0.12(95%CI: 0.07-0.22)I2=8%
PPI vs H2ブロッカー OR = 0.12 (95%CI: 0.02-0.65)I2=0%
低用量アスピリンに関連する消化管出血
OR=0.27 (95%CI: 0.16-0.43) I2=0%
※サブグループ解析
PPI vs プラセボ OR = 0.26(95%CI: 0.14-0.49) I2=0%
PPI vs ゲファルナート OR = 0.21(95%CI: 0.05-0.86) I2=0%
PPI vs H2ブロッカー OR= 0.32(95%CI: -0.13-0.79) I2=60%
DAPTに関連する上部消化管潰瘍
OR = 0.36(95%CI: 0.15-0.87) I2=30%
DAPTに関連する主要心血管イベント
OR = 1.00(95%CI;0.76-1.31) I2=30%
※DAPT:dual anti-platelet therapy(低用量アスピリン+クロピドグレル)
感想
このメタ分析の結果から、低用量アスピリン療法を行う場合にはPPIを併用した方がいいのではないかという事が再確認された。DAPTの場合もPPIの併用を行った方が良さそうである。
また、サブグループ解析の結果であるが、プラセボ、ゲファルナート、ファモチジンいずれと比較においてもPPIの方が上部消化管潰瘍、消化管出血のオッズは明らかに低くなっている。このことからも、他の胃薬よりPPIなのかな?と感じた。
アスピリン関連の上部消化管潰瘍のNNTは27名、消化管出血のNNTは71名、DAPT関連の上部消化管潰瘍のNNTは81名と、いずれも、なかなか影響は大きいのではないかという印象である。
日頃、併用されている事が当たり前のような処方でも、今回のようにその効果がどの程度あるのか?といった視点で改めて調べてみるのも凄く勉強になりました。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。