風邪に抗生剤はどれぐらい効果がありますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、風邪に対して抗生剤の服用はどれぐらい効果があるか調べた研究についてです。
先日発売された、「ポリファーマシー解決!虎の巻」という本にも取り上げられていた論文です。
まだ、少ししか読んでいませんが、引用文献に対してきちんとPMIDまで記載されていて、引用文献の批判的吟味もしながら読み進めていくと相当勉強になる1冊だと思います。
といったところで本題です。
今回取り扱うのは、コクランのメタ分析の論文です。
参考文献 Antibiotics for the common cold and acute purulent rhinitis.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=23733381
PMID:23733381
研究デザイン:メタ分析
論文のPECO
P:7日以内の急性上気道感染症1047名と、10日以内の急性可能性鼻炎の患者791名
E:抗菌薬投与
C:プラセボ
O: (Primary)風邪症状の持続、急性化膿性鼻炎の持続
(Secondary)有害事象、風邪症状(咽頭炎、労働時間のロス、食欲不振、くしゃみ)、化膿性鼻炎症状(薬物治療下での化膿性鼻炎の持続)
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
4つのバイアス
1、評価者バイアス
複数の評価者が独立して評価
評価者バイアス問題なし
2、出版バイアス
情報元:CENTRAL2013、Issue1、MEDLINE, EMBASE, CINAHL、LILACS、Biosis Previews
・ 言語制限に関する記載は見つけられず…。
・未発表のデータに関しても探している。
出版バイアスに大きな問題はなさそう
3、元論文バイアス
Cochrane’s Risk of bias toolが用いられている
Other biasが大きい印象。本文中にも、There was a moderate risk of bias の記載あり。
元論文バイアスにやや問題あり
4、異質性バイアス
異質性バイアスはいずれも大きい
結果
上気道炎症状の持続
RR=0.95 (95%CI:0.59~1.51) I2=76% p=0.81
上気道炎に使用したことによる有害事象
RR=1.80 (95%CI:1.01~3.21) I2=66% p=0.047
※成人:RR=2.62(95%CI:1.32~5.18)I2=64% p=0.0059
小児:RR=0.91(95%CI:0.51~1.63)I2=35% p=0.76
化膿性鼻炎症状の持続
RR=0.73 (95%CI:0.47~1.13) I2=78% p=0.16
化膿性鼻炎に使用したことによる有害事象
RR=1.46 (95%CI:1.10~1.94) I2=44% p=0.0086
感想
上気道感染症や化膿性鼻炎に抗生剤を使用しても、症状の持続は抑えられなかったという結果である。一方、有害事象に関しては抗生剤を用いると増えるといった結果である。この話題の論文は自身初めて読んだので、まだ風邪に抗生剤は必要ないと断言することはできない。日常業務の中で、風邪に抗生剤が高頻度で処方されているが、この結果だけでいくと必ずしも風邪に抗生剤は必要ないのではないかといった感想。
個々のアウトカムについてそれぞれ、異質性が大きい感じがするので元論文についてもあたってみる必要がありそうである。
上気道感染症に対して抗生剤を用いた場合、成人では有害事象が増えたが、小児では増えないという結果が出ている。小児は有害事象について自己申告するケースが少ないからなのか、それとも別な理由があるのか分からないが、少なくとも小児に対して用いる場合も、下痢など体調変化には注意しておく必要があるだろう。
最近、風邪に対して抗生剤を出さないDrも時々みかけるが、この結果を見ると少し納得がいった気がします。関連論文も読んでみようと思います。
そして、「ポリファーマシー解決!虎の巻」も引用文献も吟味しながら読み進めていこうと思います。
今回も最後までお付き合いいただきありがとうございました。