風邪に抗菌薬は有効ですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、風邪に対する抗菌薬の安全性と有効性を検討した研究です。

 

この論文の存在は知っていたのですが、改めて自分でも読んでみました。

 

参考文献 Risks and benefits associated with antibiotic use for acute respiratory infections: a cohort study.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23508604

 

PMID:23508604

 

研究デザイン:後ろ向きコホート研究

 

 論文のPECO

P:急性非特異的呼吸器感染症患者

E:抗生物質服用あり

C:抗生物質服用無し

O:①重篤な薬物関連有害事象による入院 ②市中肺炎による入院

 

※薬物関連有害事象:下痢、肝毒性、過敏症、光毒性、腎毒性、痙攣発作

 

研究対象集団の代表性

→UK’s The Health Improvement Network :THIN(英国のプライマリケアデータベース)が用いられており、大きな問題は無いかと思われる。

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

※アウトカムごとにそれぞれ交絡因子が設定されている

→有害事象による入院:年齢、研究年、薬剤、前年の受診数、Townsendスコア

 市中肺炎による入院:年齢、年、併存疾患数、薬剤数

 

追跡期間

→有害事象:15日、30日  市中肺炎:15日

 

結果

【処方された抗生剤】

1位:アモキシシリン 51.2% 2位:ペニシリン 17.0% 3位:エリスロマイシン 12.7%

 

【アウトカム】

重篤な薬物関連有害事象による入院

抗生物質あり(8.48/100,000 visit) vs 抗生物質無し(7.75/100,000 visit)

2群の差(15日) -1.07/100,000件(95%CI:-4.52~2.38)p=0.54

2群の差(30日) -3.79/100,000件(95%CI:-8.38~0.80)p=0.11

 

抗生物質のクラスごとの差

βラクタム系 -1.62/100,000件(95%CI:-5.19~1.96) p=0.37

マクロライド系 2.40/100,000件(95%CI:-3.26~8.07) p=0.40

フルオロキノロン 1.06/100,000件(95%CI:-17.02~19.14) p=0.91

 

市中肺炎による入院

抗生物質あり(17.96/100,000 visit) vs 抗生物質無し(21.93/100,000 visit)

2群の差 -8.16/100,000件(95%CI:-13.24~-3.08)p=0.002

NNT=12255名

 

感想

 抗生物質を使用すると、統計学上は有意差が出ているものの、NNTは12,255名である。この結果が臨床上どれだけの意味を持つかと考えると、使用してもしなくてもほとんど変わらないのではないかと思う。

 今回の対象患者の平均年齢は抗生物質あり群47.91歳、抗生物質無し群43.98歳という事で比較的若いように思う。肺炎のリスクがもともと高いような高齢者だと、この結果をそのまま当てはめる事は出来ないのかもしれない。

 また、処方されている抗生物質の割合が、現在の国内における処方実態とは相違があるように思うので、その点も考慮は必要かと思う。(現状は、第三世代セフェムが多いような気がする…。)

 少なくとも、風邪に対する抗菌薬の効果は非常に限定的であり、耐性菌が発生する恐れも考えると、むやみに処方すべきものではないかと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。