ベザフィブラートは心筋梗塞・安定狭心症患者の2次予防に効果がありますか?
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今回は、心筋梗塞・安定狭心症既往の患者へのベザフィブラートの2次予防効果を検討した、BIP Studyの論文を読んでみました。
参考文献 Secondary prevention by raising HDL cholesterol and reducing triglycerides in patients with coronary artery disease.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10880410
PMID:10880410
研究デザイン:ランダム化比較試験(イスラエル)
論文のPECO
P:45~74歳で心筋梗塞、もしくは安定狭心症の既往歴があり、総コレステロール180~250mg/dL、HDL-C≦45mg/dL、TG≦300mg/dL、LDL-C≦180mg/dL(50歳未満はLDL-C≦160mg/dL)の患者
E:ベザフィブラート400mg/日
C:プラセボ
O:(Primary) 致死性・非致死性心筋梗塞、突然死→The primary end point wasとなっているので、複合アウトカム?
(Secondary)不安定狭心症による入院、経皮冠動脈形成術、冠動脈バイパス術、脳卒中、総死亡
※除外基準
インスリン依存性糖尿病、重症心不全、不安定狭心症、肝不全、腎不全、ベザフィブラートに対する過敏症、直近の脂質改善薬使用
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→心筋梗塞も突然死も誰が見ても明らかなので明確と言える
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→されている
ITT解析を行われているか?
All patients who took the study medication at least once (n=3090) were included in the
intent-to-treat analysisの記載あり→FAS
サンプルサイズ
→3000名(パワー62~85%、α=5%)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率99%
追跡期間
→平均6.2年
結果
ベースラインからの検査値の変化
・総コレステロール
E群:-4.5mg/dL C群:+0.2mg/dL
・LDL-C
E群:-6.5mg/dL C群:-1.3mg/dL
・HDL-C
E群:+17.9mg/dL C群:+3.5mg/dL
・TG
E群:-20.6mg/dL C群:+4.6mg/dL
(Primary outcome)
E群(211/1548:13.6%) vs C群(232/1542:15.0%) p=0.26
非致死性心筋梗塞
E群(150/1548:9.7%) vs C群(172/1542:11.2%) p=0.18
致死性心筋梗塞
E群(18/1548:1.2%) vs C群(17/1542:1.1%) p=0.87
突然死
E群(43/1548:2.8%) vs C群(43/1542:2.8%) p=0.98
(Secondary outcome)
いずれも両群で大きな違い無し
有害事象
両群で違いは無し
感想
ベザフィブラート服用群のTGは低下、HDLは増加と、検査値には改善が見られている。しかし、非致死性心筋梗塞、致死性心筋梗塞、突然死はいずれもプラセボ群と差が無いという結果である。
ベースラインのTG≧200mg/dLの患者では、Primary outcomeの発生に有意差こそ出ているが、絶対数としての違いは大きくなさそうであり、この結果からだと積極的にベザフィブラートを服用する必要は無いかなと感じた。
TG値が下がり、HDL値が高くなれば理論上は心筋梗塞も防ぐことが出来ると予想されるが、実際はこのような結果である。
この結果も、理論と現象の乖離と言えるのかもしれないし、理論は暫定的なものであるという所を示しているのかもしれない。今後もアップデートを繰り返していく必要がある。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。