関節リウマチ患者へのグルココルチコイド使用は心血管イベントに影響しますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、関節リウマチ患者へのグルココルチコイド使用と、心血管イベントの関連についてです。
というのも、私が担当している施設の患者様で、関節リウマチの治療にプレドニゾロン錠を12.5mg継続で(入所前から)飲まれている患者様がいらっしゃいます。
この患者さん、最近心不全の疑いが出てきていまして、併用薬を見ていてプレドニゾロン、よく分からないけど怪しいなぁと思った(根拠なく)ので、少し調べてみようという事で論文を探してみました。
参考文献 Glucocorticoids and cardiovascular events in rheumatoid arthritis: a population-based cohort study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=17330254
PMID:17330254
研究デザイン:一般集団対象後ろ向きコホート研究
論文のPECO
P:ミネソタ州ロチェスターの関節リウマチ患者603名(9,066人年)
E:グルココルチコイド使用
①累積グルココルチコイド使用量(3分位)
②最近(3カ月以内)の使用vs過去(3カ月以上前)の使用
③1日平均服用量7.5mg/日以下vs7.5mg/日以上
C:グルココルチコイド使用無し
※グルココルチコイド服用量はプレドニゾロン等量に換算
研究対象集団の代表性
→ミネソタ州ロチェスターの一般人口を対象にしており、大きな問題は無いと思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?
年齢、性別、関節リウマチ発症年齢、虚血性心疾患既往歴、喫煙、高血圧、糖尿病、BMI,脂質異常症、赤血球沈降速度、DMARD使用、リウマトイド因子、小関節腫脹、大関節腫脹、X線により確認される浸食・破壊、結節、リウマチ肺疾患・血管炎、関節手術
追跡期間
→中央値13年
結果
★全患者
①累使用量(3分位)ごとのHR(vsグルココルチコイド使用無し)
低用量(≦1,500mg) HR=1.01(95%CI:0.66~1.54)
中用量(1,500~7,000mg) HR=1.06(95%CI:0.68~1.67)
高用量(>7,000mg) HR=1.90(95%CI:1.28~2.82)
②服用タイミングごとのHR(vsグルココルチコイド使用無し)
過去(3カ月以上前)の使用 HR=1.13(95%CI:0.80~1.60)
最近(3カ月以内)の使用 HR=1.66(95%CI:1.14~2.41)
③1日平均使用量ごとのHR(vsグルココルチコイド使用無し)
≦7.5mg/日 HR=1.26(95%CI:0.80~2.01)
>7.5mg/日 HR=1.75(95%CI:1.05~2.91)
★リウマトイド因子陰性患者
①累使用量(3分位)ごとのHR(vsグルココルチコイド使用無し)
低用量(≦1,500mg) HR=0.48(95%CI:0.22~1.02)
中用量(1,500~7,000mg) HR=0.71(95%CI:0.32~1.57)
高用量(>7,000mg) HR=0.85(95%CI:0.39~1.87)
②服用タイミングごとのHR(vsグルココルチコイド使用無し)
過去(3カ月以上前)の使用 HR=0.70(95%CI:0.36~1.38)
最近(3カ月以内)の使用 HR=0.36(95%CI:0.11~1.20)
③1日平均使用量ごとのHR(vsグルココルチコイド使用無し)
≦7.5mg/日 HR=0.69(95%CI:0.27~1.74)
>7.5mg/日 -
★リウマトイド因子陽性患者
①累使用量(3分位)ごとのHR(vs RF陰性患者のグルココルチコイド使用無し)
低用量(≦1,500mg) HR=1.69(95%CI:1.00~2.88)
中用量(1,500~7,000mg) HR=1.52(95%CI:0.84~2.74)
高用量(>7,000mg) HR=3.06(95%CI:1.81~5.08)
②服用タイミングごとのHR(vs RF陰性患者のグルココルチコイド使用無し)
過去(3カ月以上前)の使用 HR=1.62(95%CI:0.92~2.86)
最近(3カ月以内)の使用 HR=3.26(95%CI:1.86~5.71)
③1日平均使用量ごとのHR(vs RF陰性患者のグルココルチコイド使用無し)
≦7.5mg/日 HR=2.21(95%CI:1.22~4.00)
>7.5mg/日 HR=3.13(95%CI:1.74~5.62)
感想
全体としては、累積使用量が高用量、使用が最近、1日当たりの使用量が多いと、心血管イベントのHRが高くなる傾向にある。また、リウマトイド因子(RF)陽性患者では、このような傾向が見られるのに対し、RF陰性患者ではこのような傾向が見られないという所も興味深い。
高血圧や脂質異常症・糖尿病治療薬以外の併用薬など、他にも交絡因子として取り上げた方がいいと思われる物があり、そのあたりのバイアスは多少あるのかもしれないが、少なくとも心血管イベントリスクが高く、長期服用患者、比較的高用量を服用している患者では注意が必要なのかもしれない。
1日7.5mg以上というのは良く見かけるので、症状が安定している関節リウマチ患者では、減量を考えてもいいのかもしれないが、この辺りはこの結果だけをもって何とも言い難いので、今後検討していきたい。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。