糖尿病治療薬ごとの心不全、心血管疾患、総死亡

ご訪問ありがとうございます。

 

今回も糖尿病関連で気になる論文を見つけたので読んでみました。

 

参考文献 Diabetes treatments and risk of heart failure, cardiovascular disease, and all cause mortality: cohort study in primary care.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27413012

 

PMID:27413012

 

研究デザインコホート研究

 

論文のPECO

P:25~84歳の2型糖尿病患者469688名

E:①グリタゾン、②グリプチン、③メトホルミン、④SU薬、⑤インスリン

C:使用無し

O:心不全、心血管疾患(狭心症心筋梗塞脳卒中TIA+)、総死亡

 

※除外基準

35歳以前に1型糖尿病の診断を受けインスリン導入となっている患者

 

研究対象集団の代表性

→英国のプライマリケアデータベースが用いられており、大きな問題は無いかと思われる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

→性別、年齢、糖尿病の診断からの期間、民族、タウンゼント階層スコア、喫煙歴、他の糖尿病治療薬併用、抗凝固薬、チアジド、ACE-I、ARB、CCB、スタチン、アスピリン、合併症(失明、高血糖低血糖、切断、重篤な腎不全)、高血圧、心血管疾患、心房細動、慢性腎不全、関節リウマチ、心臓弁膜症、末梢血管疾患、BMI収縮期血圧HbA1c、血清クレアチニン、HDLの割合

 

 

結果

☆それぞれの糖尿病治療薬服用無しの患者との比較

総死亡

グリタゾン  調整HR=0.77(95%CI:0.71~0.84)

グリプチン  調整HR=0.82(95%CI:0.77~0.88)

メトホルミン 調整HR=0.59(95%CI:0.58~0.60)

SU薬    調整HR=1.10(95%CI:1.07~1.12)

インスリン  調整HR=1.47(95%CI:1.41~1.53)

 

心不全

グリタゾン  調整HR=0.74(95%CI:0.66~0.83)

グリプチン  調整HR=0.86(95%CI:0.78~0.95)

メトホルミン 調整HR=0.70(95%CI:0.68~0.73)

SU薬    調整HR=1.32(95%CI:1.22~1.43)

インスリン  調整HR=0.92(95%CI:0.79~1.06)

 

心血管疾患

グリタゾン  調整HR=0.75(95%CI:0.69~0.81)

グリプチン  調整HR=0.94(95%CI:0.88~1.00)

メトホルミン 調整HR=0.76(95%CI:0.74~0.78)

SU薬    調整HR=1.00(95%CI:0.97~1.03)

インスリン  調整HR=1.23(95%CI:1.15~1.31)

 

☆単剤、2剤併用、3剤併用ごとの比較(無治療との比較)

①単剤

心不全

メトホルミン 調整HR=0.68(95%CI:0.65~0.71)

SU薬    調整HR=1.00(95%CI:0.94~1.07)

インスリン  調整HR=1.26(95%CI:1.10~1.44)

グリタゾン  調整HR=0.50(95%CI:0.26~0.97)

グリプチン  調整HR=0.87(95%CI:0.58~1.31)

 

心血管疾患

メトホルミン 調整HR=0.76(95%CI:0.74~0.79)

SU薬    調整HR=1.00(95%CI:0.95~1.05)

インスリン  調整HR=1.22(95%CI:1.08~1.37)

グリタゾン  調整HR=0.79(95%CI:0.53~1.18)

グリプチン  調整HR=1.14(95%CI:0.85~1.54)

 

総死亡

メトホルミン 調整HR=0.64(95%CI:0.63~0.66)

SU薬    調整HR=1.24(95%CI:1.20~1.28)

インスリン  調整HR=1.64(95%CI:1.55~1.74)

グリタゾン  調整HR=0.89(95%CI:0.67~1.18)

グリプチン  調整HR=1.20(95%CI:1.00~1.44)

 

②2剤併用

心不全

メトホルミン+SU薬    調整HR=0.74(95%CI:0.70~0.78)

メトホルミン+インスリン  調整HR=1.08(95%CI:0.93~1.25)

メトホルミン+グリタゾン  調整HR=0.50(95%CI:0.40~0.63)

メトホルミン+グリプチン  調整HR=0.62(95%CI:0.52~0.75)

SU薬+インスリン     調整HR=1.18(95%CI:0.96~1.45)

SU薬+グリタゾン     調整HR=0.65(95%CI:0.47~0.89)

SU薬+グリプチン     調整HR=0.88(95%CI:0.66~1.17)

 

心血管疾患

メトホルミン+SU薬    調整HR=0.75(95%CI:0.73~0.78)

メトホルミン+インスリン  調整HR=0.89(95%CI:0.78~1.01)

メトホルミン+グリタゾン  調整HR=0.46(95%CI:0.39~0.54)

メトホルミン+グリプチン  調整HR=0.67(95%CI:0.59~0.75)

SU薬+インスリン     調整HR=1.18(95%CI:0.96~1.44)

SU薬+グリタゾン     調整HR=0.75(95%CI:0.58~0.98)

SU薬+グリプチン     調整HR=0.97(95%CI:0.76~1.22)

 

総死亡

メトホルミン+SU薬    調整HR=0.62(95%CI:0.60~0.64)

メトホルミン+インスリン  調整HR=0.76(95%CI:0.69~0.84)

メトホルミン+グリタゾン  調整HR=0.55(95%CI:0.47~0.64)

メトホルミン+グリプチン  調整HR=0.52(95%CI:0.46~0.59)

SU薬+インスリン     調整HR=1.49(95%CI:1.35~1.66)

SU薬+グリタゾン     調整HR=0.96(95%CI:0.80~1.16)

SU薬+グリプチン     調整HR=0.92(95%CI:0.79~1.08)

 

③3剤併用

心不全

メトホルミン+SU薬+インスリン 調整HR=0.91(95%CI:0.76~1.09)

メトホルミン+SU薬+グリタゾン 調整HR=0.54(95%CI:0.45~0.64)

メトホルミン+SU薬+グリプチン 調整HR=0.60(95%CI:0.52~0.70)

 

心血管疾患

メトホルミン+SU薬+インスリン 調整HR=0.95(95%CI:0.82~1.09)

メトホルミン+SU薬+グリタゾン 調整HR=0.59(95%CI:0.53~0.66)

メトホルミン+SU薬+グリプチン 調整HR=0.70(95%CI:0.63~0.78)

 

総死亡

メトホルミン+SU薬+インスリン 調整HR=0.98(95%CI:0.87~1.10)

メトホルミン+SU薬+グリタゾン 調整HR=0.44(95%CI:0.38~0.50)

メトホルミン+SU薬+グリプチン 調整HR=0.49(95%CI:0.44~0.55)

 

感想

 いずれのアウトカムもSU薬、インスリン以外では減少傾向を示す結果。個人的には、グリタゾン、グリプチンで心不全が有意に減っている点が興味深いと感じている。

 全体的に、やはりメトホルミンはいずれのアウトカムも減らしている印象であり、反対にインスリン+SU薬という組み合わせは各アウトカムを増やす傾向が見られているため、この組み合わせはどうなのかなという印象。

 2剤併用の場合、メトホルミンと組み合わせるなら、これまでにいくつか読んできた論文と同じようにSU薬よりはグリプチンの方が良さそうである。

 あくまでコホート研究であるので、各薬剤の組合せごとに比較したRCTも見つけて読んでいく必要があると思う。

 

 今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。