ダパグリフロジンは心血管イベントに影響しますか?

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今回は、ダパグリフロジンと心血管イベントに関するメタ分析の論文を読んでみました。メタ分析とはいっても、第2b相、第3相試験のメタ分析ではありますが。

 

参考文献 Cardiovascular effects of dapagliflozin in patients with type 2 diabetes and different risk categories: a meta-analysis.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26895767

 

PMID:26895767

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:2型糖尿病患者

E:ダパグリフロジン服用有り(2.5~10mg)

C:ダパグリフロジン服用無し(プラセボまたは他剤)

O:MACE(心血管死亡、心筋梗塞脳卒中)+不安定狭心症による入院、MACE

  

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

→2名以上の評価者でデータ抽出等しているかは不明。(そもそも、すべての研究が組み入れられている?)

 

評価者バイアス不明

 

2、出版バイアス

情報元:第2b相(5件:12~24週)、第3相試験(16件:~208週)

 →網羅的に集められていると判断していい?

 

出版バイアス不明

 

3、元論文バイアス

→元論文バイアスの評価を行っているか不明(元論文は第2相、第3相試験)

 

元論文バイアス不明

 

4、異質性バイアス

→記載なし

 

結果

MACE

(全員)

ダパグリフロジン群:1.15/100人年 vs C群:1.69/100人年

HR=0.772(95%CI:0.543~1.097)

 

(心血管疾患の既往ありの患者のみ)

ダパグリフロジン群:2.21/100人年 vs C群:2.76/100人年

HR=0.802(95%CI:0.527~1.221)

 

(心血管リスクのある高齢者)

ダパグリフロジン群:3.28/100人年 vs C群:3.61/100人年

HR=0.916(95%CI:0.512~1.640)

 

※心血管リスク因子:65歳以上、心血管イベント既往歴、高血圧既往歴、脂質異常症既往歴、喫煙歴、早期冠状動脈性心疾患の家族歴、eGFR<60mL/min/1.73m2

 

MACE不安定狭心症による入院

(全員)

ダパグリフロジン群:1.46/100人年 vs C群:2.15/100人年

HR=0.787(95%CI:0.579~1.070)

 

(心血管疾患の既往ありの患者)

ダパグリフロジン群:2.94/100人年 vs C群:3.76/100人年

HR=0.806(95%CI:0.562~1.156)

 

(心血管リスクのある高齢者)

ダパグリフロジン群:4.19/100人年 vs C群:5.06/100人年

HR=0.824(95%CI:0.497~1.365)

 

☆心血管死亡

(全員)

ダパグリフロジン群:0.37/100人年 vs C群:0.59/100人年

HR=0.704(95%CI:0.367~1.359)

 

(心血管疾患の既往ありの患者)

ダパグリフロジン群:0.74/100人年 vs C群:0.85/100人年

HR=0.785(95%CI:0.365~1.689)

 

(心血管リスクのある高齢者)

ダパグリフロジン群:1.27/100人年 vs C群:1.11/100人年

HR=1.018(95%CI:0.369~2.811)

 

心筋梗塞

(全員)

ダパグリフロジン群:0.48/100人年 vs C群:0.91/100人年

HR=0.567(95%CI:0.339~0.947)

 

(心血管疾患の既往ありの患者)

ダパグリフロジン群:0.82/100人年 vs C群:1.39/100人年

HR=0.578(95%CI:0.301~1.107)

 

(心血管リスクのある高齢者)

ダパグリフロジン群:1.18/100人年 vs C群:1.42/100人年

HR=0.767(95%CI:0.295~1.994)

 

脳卒中

(全員)

ダパグリフロジン群:0.45/100人年 vs C群:0.57/100人年

HR=0.999(95%CI:0.536~1.864)

 

(心血管疾患の既往ありの患者)

ダパグリフロジン群:0.95/100人年 vs C群:0.69/100人年

HR=1.009(95%CI:0.491~2.074)

 

(心血管リスクのある高齢者)

ダパグリフロジン群:1.29/100人年 vs C群:1.68/100人年

HR=0.806(95%CI:0.317~2.050)

 

☆不安定狭心症

(全員)

ダパグリフロジン群:0.44/100人年 vs C群:0.58/100人年

HR=0.870(95%CI:0.475~1.593)

 

(心血管疾患の既往ありの患者)

ダパグリフロジン群:0.87/100人年 vs C群:1.06/100人年

HR=0.883(95%CI:0.442~1.767)

 

(心血管リスクのある高齢者)

ダパグリフロジン群:0.96/100人年 vs C群:1.42/100人年

HR=0.706(95%CI:0.263~1.895)

 

☆予期せぬ冠動脈再建術

(全員)

ダパグリフロジン群:0.90/100人年 vs C群:1.47/100人年

HR=0.729(95%CI:0.497~1.067)

 

(心血管疾患の既往ありの患者)

ダパグリフロジン群:1.95/100人年 vs C群:2.67/100人年

HR=0.795(95%CI:0.512~1.233)

 

(心血管リスクのある高齢者)

ダパグリフロジン群:2.39/100人年 vs C群:2.80/100人年

HR=0.952(95%CI:0.493~1.836)

 

心不全による入院

(全員)

ダパグリフロジン群:0.15/100人年 vs C群:0.41/100人年

HR=0.361(95%CI:0.156~0.838)

 

(心血管疾患の既往ありの患者)

ダパグリフロジン群:0.51/100人年 vs C群:0.94/100人年

HR=0.371(95%CI:0.155~0.889)

 

(心血管リスクのある高齢者)

ダパグリフロジン群:0.67/100人年 vs C群:0.96/100人年

HR=0.389(95%CI:0.103~1.470)

 

感想

 MACEまたは、MACE+不安定狭心症による入院はいずれも減少傾向はあるものの、有意差無しとなっている。

 心血管疾患の既往のある患者では、心不全による入院は有意に減らすという結果が得られている。

 現時点ではいずれの患者に対しても、積極的にダパグリフロジンを使う事を勧めるような結果とは感じない。ただ、心血管疾患既往のある患者では。心不全による入院を減らすという結果も出ているため使用を全く否定するようなものでもないかと思う。

 いずれにしても、第2b相と第3相試験の統合結果という事で、結果をそのまま鵜呑みには出来ないかもしれないと感じた。

  

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。