血糖異常患者はインスリンを使用した方がいいですか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、インスリングラルギン使用の有無を比較した論文を見つけたので、読んでみました。
参考文献 Basal Insulin and Cardiovascular and Other Outcomes in Dysglycemia
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22686416
PMID:22686416
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:心血管イベントリスクありで、空腹時血糖異常、耐糖能異常、または2型糖尿病の患者12537名
E:インスリングラルギン使用(目標空腹時血糖<95mg/dl)
C:標準ケア
O:(Primary)
①非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死亡の複合アウトカム
②非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死亡・血行再建術・心不全による入院の複合アウトカム
※n-3系脂肪酸 vs プラセボの比較も並行して行っている2×2のデザイン
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→Primary outcomeは2つあるが、明確であると考えた
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→盲検化はされていないと思われる
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
サンプルサイズ
→12500名(パワー=90% α=5%)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率=99.87%
追跡期間
→中央値6.2年
結果
【ベースライン】
平均年齢 E群:63.6±7.8歳 C群:63.5±7.9歳
空腹時血糖(中央値) E群:125mg/dl C群:124mg/dl
HbA1c(中央値) E群:6.4% C群:6.4%
心血管イベント既往 E群:59.3% C群:58.4%
【検査値の変化】
HbA1c(中央値)
E群 ベースライン:6.4% 1年後:5.9% 7年後:6.2%
C群 ベースライン:6.4% 1年後:6.2% 7年後:6.5%
【アウトカム】
①非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死亡の複合アウトカム(First primary outcome)
E群:2.94/100人年 vs C群:2.85/100人年
調整HR=1.02(95%CI:0.94~1.11) p=0.63
②非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死亡・血行再建術・心不全による入院の複合アウトカム(Second primary outcome)
E群:5.52/100人年 vs C群:5.28/100人年
調整HR=1.04(95%CI:0.97~1.11) p=0.27
総死亡
E群:2.57/100人年 vs C群:2.60/100人年
調整HR=0.98(95%CI:0.90~1.08) p=0.70
重篤な低血糖
E群:1.00/100人年 vs C群:0.31/100人年 p<0.001
体重の変化(中央値)
E群:+1.6kg vs C群:-0.5kg p<0.001
感想
今回のような、心血管イベントリスクがある血糖異常患者に対して、インスリングラルギンを使用しても、①非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死亡の複合アウトカム、②非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・心血管死亡・血行再建術・心不全による入院の複合アウトカム、どちらも減らせなかったという結果。
また、低血糖は重篤なものから重篤ではないものまで、インスリングラルギン群で多く、体重はインスリングラルギン使用では増加傾向が示されている。
今回の対象患者のベースラインのHbA1cは中央値6.4%、空腹時血糖の中央値は125mg/dl程度と、そこまでコントロールが不良な患者というわけではなさそうである。
心血管イベントリスクがあっても、HbA1cが6.5%程度のそこまで血糖コントロールが悪くない患者では、インスリングラルギンを用いて積極的に血糖値を下げようとしなくてもいいのではないかと感じた。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。