サキサグリプチンで2型糖尿病患者の心血管イベントは防げますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、DPP-4阻害剤の1つ、サキサグリプチンの効果についてです。

 

参考文献 Saxagliptin and cardiovascular outcomes in patients with type 2 diabetes mellitus.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23992601

 

PMID:23992601

 

研究デザイン:多施設共同ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:2型糖尿病患者のうち、心血管イベントの既往もしくはリスクがある者

E:サキサグリプチン5mg or 2.5mg→8210名

C:プラセボ→8212名

O:(Primary) 心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合アウトカム

 (Secondary)心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中心不全による入院、冠動脈再建術、不安定狭心症の複合アウトカム

 

除外基準

6か月以内のインクレチン関連治療、末期腎疾患による透析、腎移植、血清クレアチニン>6.0mg/dL

 

ランダム化されているか?

→されている

 

一次アウトカムは明確か?

→複合アウトカムなので明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→されている

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→記載なし

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

追跡率=99.8%

 

追跡期間

→中央値2.1年

 

結果

(Primary outcome)

心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合アウトカム

E群(613/8280:7.3%)vs C群(609/8212:7.2%) 

HR=1.00(95%CI:0.89-1.12) p=0.99

 

(Secondary outcome)

心血管死、心筋梗塞、虚血性脳卒中心不全による入院、冠動脈再建術、不安定狭心症の複合アウトカム

E群(1059/8280:12.8%)vs C群(1034/8212:12.4%) 

HR=1.02(95%CI:0.94-1.11) p=0.66

 

心不全による入院

E群(289/8280:3.5%)vs C群(228/8212:2.8%) 

HR=1.27(95%CI:1.07-1.51) p=0.007

 

感想

本研究の結果からは、心筋梗塞心筋梗塞、虚血性脳卒中の複合アウトカムに関してプラセボと差は無いという結果。また、複合アウトカムを構成する個々のアウトカムも差は無く、臨床上、2型糖尿病患者にサキサグリプチンを用いる事のメリットは疑問が残るところ。

追跡期間は中央値で2.1年という事なので、もう少し長期間の結果が気になる所ではある。

一方、心不全による入院に関しては、サキサグリプチン服用群で有意に増加するという結果となっているので、この点に関しても注意したいところ。DPP-4阻害剤と心不全に関する関連についてはしばしば議論されている所なので、より深く調べてみたい。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

ベザフィブラートは心筋梗塞・安定狭心症患者の2次予防に効果がありますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、心筋梗塞・安定狭心症既往の患者へのベザフィブラートの2次予防効果を検討した、BIP Studyの論文を読んでみました。

 

参考文献 Secondary prevention by raising HDL cholesterol and reducing triglycerides in patients with coronary artery disease.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10880410

 

PMID:10880410

 

研究デザイン:ランダム化比較試験(イスラエル

 

論文のPECO

P:45~74歳で心筋梗塞、もしくは安定狭心症の既往歴があり、総コレステロール180~250mg/dL、HDL-C≦45mg/dL、TG≦300mg/dL、LDL-C≦180mg/dL(50歳未満はLDL-C≦160mg/dL)の患者

E:ベザフィブラート400mg/日

C:プラセボ

O:(Primary) 致死性・非致死性心筋梗塞、突然死→The primary end point wasとなっているので、複合アウトカム?

 (Secondary)不安定狭心症による入院、経皮冠動脈形成術、冠動脈バイパス術、脳卒中、総死亡

 

 

除外基準

インスリン依存性糖尿病、重症心不全、不安定狭心症肝不全、腎不全、ベザフィブラートに対する過敏症、直近の脂質改善薬使用

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

心筋梗塞も突然死も誰が見ても明らかなので明確と言える

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→されている

 

ITT解析を行われているか?

All patients who took the study medication at least once (n=3090) were included in the

intent-to-treat analysisの記載あり→FAS

サンプルサイズ

→3000名(パワー62~85%、α=5%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率99%

 

追跡期間

→平均6.2年

 

結果

ベースラインからの検査値の変化

・総コレステロール

E群:-4.5mg/dL  C群:+0.2mg/dL

 

・LDL-C

E群:-6.5mg/dL  C群:-1.3mg/dL

 

・HDL-C

E群:+17.9mg/dL  C群:+3.5mg/dL

 

・TG

E群:-20.6mg/dL  C群:+4.6mg/dL

 

(Primary outcome)

合計(非致死性心筋梗塞+致死性心筋梗塞+突然死)

E群(211/1548:13.6%) vs C群(232/1542:15.0%) p=0.26

 

非致死性心筋梗塞

E群(150/1548:9.7%) vs C群(172/1542:11.2%) p=0.18

 

致死性心筋梗塞

E群(18/1548:1.2%) vs C群(17/1542:1.1%) p=0.87

 

突然死

E群(43/1548:2.8%) vs C群(43/1542:2.8%) p=0.98

 

(Secondary outcome)

いずれも両群で大きな違い無し

 

有害事象

両群で違いは無し

 

感想

 ベザフィブラート服用群のTGは低下、HDLは増加と、検査値には改善が見られている。しかし、非致死性心筋梗塞、致死性心筋梗塞、突然死はいずれもプラセボ群と差が無いという結果である。

 ベースラインのTG≧200mg/dLの患者では、Primary outcomeの発生に有意差こそ出ているが、絶対数としての違いは大きくなさそうであり、この結果からだと積極的にベザフィブラートを服用する必要は無いかなと感じた。

 TG値が下がり、HDL値が高くなれば理論上は心筋梗塞も防ぐことが出来ると予想されるが、実際はこのような結果である。

 この結果も、理論と現象の乖離と言えるのかもしれないし、理論は暫定的なものであるという所を示しているのかもしれない。今後もアップデートを繰り返していく必要がある。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

12/29(木)熊本温泉抄読会配信のご案内

 

ご訪問ありがとうございます。
 
12/29(木)21時頃(多少遅れる可能性あり)より、熊本温泉抄読会のツイキャス配信を行います。
 
熊本の山鹿温泉にて、温泉に入った後、宴会のついでに論文を読んでみようという事で、いつもの居酒屋抄読会のように気軽な気持ちで、お酒でも飲みながらご視聴頂けると幸いです。
 
今回は、パラッポ先生zuratomo(ずらとも)先生あめくも先生GUCCI先生にいやんの5名で配信いたします。
 
今回は、薬ではなく、足湯と睡眠についての論文を読んでいきますので、非医療者の方も参加しやすいかもしれません
 

 

使用論文 Effects of bathing and hot footbath on sleep in winter.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=10979246

PMID:10979246

 

配信はこちらから→http://twitcasting.tv/zuratomo4

 

 
以下、zuratomo先生に作成頂いた仮想症例シナリオです。↓↓
 

 

温泉抄読会 仮想症例シナリオ

 

【不眠で悩む母】

 

貴方は保険薬局に勤務する薬剤師です。

 

年末のあわただしい仕事が終わり、年末年始の休暇。

実家での年越しのため久々の帰省をした貴方。

 

晩御飯も終わり、テレビを見ながらくつろいでいると、

 

母「最近寒くて、なかなか寝付けなくてねぇ。暖房は効かせてるし、テレビでいいって言ってた湯たんぽも使ってるんだけどねぇ。寒さで朝も早く目が覚めるし。年のせいって言ってももっとしっかり眠りたいの」

 

あなた「昼間に眠気がなくて、生活に支障なければいいんじゃない」

 

母「そうじゃなくて!寝付けなくて布団にもぐっているだけの時間が嫌なのよ。お薬に頼るのも週刊誌にあったみたいにぼけたら怖いし。この間テレビで足湯がいいって言ってたけど、足湯なら薬も使わないしいいと思うんだけど。あなたはどう思う?」

 

あなた「今なら時間あるし、調べてみるわ。待ってて」

 

(結局、健康番組の情報かよ)と思いながら、pubmedで「footbath sleep」と入力して「free full text」に限定して検索してみました。Clinical Queriesではめぼしい論文がヒットしなかったため、https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmedの検索窓で「footbath sleep」で検索してみたところ以下の論文が足湯と冬の睡眠について研究していたため、「これだ!」とばかりに読んでみることにしました。

 

Effects of bathing and hot footbath on sleep in winter.

https://www.ncbi.nlm.nih.gov/m/pubmed/10979246/

PMID:10979246

 

 

以下、母の情報

【年齢】

63歳

【現病歴】

糖尿病、高血圧、脂質異常症、便秘症

【喫煙】

 なし

【飲酒】

 機会飲酒

【服用中の薬剤】

メトホルミン250mg 1回2錠 1日3回 毎食後

シタグリプチン50mg 1回1錠 1日1回 朝食後

アムロジピン5mg 1回1錠 1日1回 朝食後

トリクロルメチアジド2mg 1回1錠 1日1回 朝食後

ロスバスタチン5mg 1回1錠 1日1回 朝食後

酸化マグネシウム330mg 1回1錠 1日3回 毎食後

【服用中のサプリメント】(  )内は母の服用目的のうち聴取できたもの

 チアシード(ダイエット)、エゴマ油(血管がどうとか?)

 

配信は以下のサイトから行います。

良ければコメントお願いします!

http://twitcasting.tv/zuratomo4/

 

 

慌ただしいド年末の配信になりますが、お時間の合う方はぜひご参加頂き、お気軽にコメントや質問など頂けるとありがたいです。

 

それでは、当日は宜しくお願い致します。

高血圧高齢者の脳卒中予防に降圧剤使用はどれぐらい効果がありますか?(SHEP研究)

ご訪問ありがとうございます。

 

先日、薬ゼミ主催の薬剤師生涯学習講座「みんなで考えるポリファーマシー」に参加してきました。

 

非常にありがたいことに、その中で論文を何本も紹介して頂きました。

 

ご紹介頂いた論文は可能な限りメモしたので、自分がまだ読んだ事のない論文を地道に読んでいこうと思います。

 

今回は、高齢者への降圧剤と脳卒中の発生を検討した研究(SHEP trial)についてです。

 

参考文献 Prevention of stroke by antihypertensive drug treatment in older persons with isolated systolic hypertension. Final results of the Systolic Hypertension in the Elderly Program (SHEP). SHEP Cooperative Research Group.

 

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/2046107

PMID:2046107

 

研究デザインプラセボ対照 ランダム化比較試験

 

ランダム化されているか?

→されている

 

論文のPECO

P:60歳以上の高齢者で、収縮期血圧160~219mmHg、拡張期血圧90mmHg未満の者

E:降圧剤使用(2365名)

C:プラセボ(2371名)

O:(Primary) 非致死性・致死性脳卒中

 (Secondary)心血管・冠動脈疾患罹患率、心血管・冠動脈性死亡、総死亡、QOL

 

※使用薬剤:クロルタリドン12.5mg/day or 25mg/day

           アテノロール25mg/day or 50mg/day

 

※詳細はよく分からないが、クロルタリドンで十分な降圧効果が見られなければ、アテノロール追加?

 

除外基準

アブストに記載なし

 

サンプルサイズ

アブストに記載無し

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→double-blind:二重盲検されている

 

ITT解析を行われているか?

アブストに記載なし

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

アブストに記載無し

 

追跡期間

→平均4.5年

 

結果

非致死性・致死性脳卒中

E群(5.2/100人)vs C群(8.2/100人) RR=0.64 p=0.0003

 

非致死性心筋梗塞+冠動脈性死亡

RR=0.73 

 

主要心血管イベント

RR=0.68

 

総死亡

RR=0.87 

 

感想

 患者の平均年齢は72歳であり、そこから平均4.5年間の追跡である。絶対差として、100人当たり3人の差という事で、個人的にはあまり積極的に治療しなくても案外問題ないのかな?と感じた。もう少し長い期間の追跡結果も気になる所。高齢の方が対象なので、本研究で対象としているイベント以外での死亡も多いのではなかろうか。

 また、この類の研究は降圧剤を用いている群の方が血圧は下がりやすいので、盲検化こそされているが、割り付けが血圧の変動により見破られる可能性もあるのかもしれない。

 この論文は、薬剤師として知っておいた方がいいと思われるのでフリーで読みたいところ。何とかして(生活は苦しいけれども、多少のお金なら払う覚悟で)フルテキスト読んでみたい。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

シロスタゾールをドネペジルに併用すると認知機能低下の抑制効果は高まりますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

先日の往診同行の際に、ある施設入居者様が継続して服用されていたアスピリン腸溶錠を、シロスタゾール錠に変更するという事例がありました。

 

そのドクターが、帰り際に「シロスタゾールには、アルツハイマーを防ぐ効果があるからね~。そんな論文も出てるし、認知が進まないようにアスピリン腸溶錠から変えたんだよ」と、熱弁されました。

 

その情報、どこかで聞いたこともある(どなたかのブログで読んだ事があるような)気がすると思いながら、また後で論文探して読んでみようという事で今回の論文にたどり着きました。

 

参考文献 Cilostazol add-on therapy in patients with mild dementia receiving donepezil: a retrospective study.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24586841

 

PMID:24586841

 

研究デザイン:後ろ向き観察研究

 

論文のPECO

P:1年以上ドネペジルを服用しており、MMSEスコア<27の認知症患者

E:ドネペジルにシロスタゾール併用

C:シロスタゾール併用無し

O:MMSEの年間変化量

 

研究対象集団の代表性

1996年9月1日~2012年6月30日までに得られた、洲本伊月病院(兵庫県)の電子カルテからデータを収集→1つの病院の診療情報であり、患者特性によっては一般集団と性質が異なる可能性あり

 

真のアウトカムか?

→MMSEの年間変化量がアウトカムとして設定されており、代用のアウトカムと思われる

 

調節した交絡因子は何か?

年齢、性別、血管危険因子(高血圧、糖尿病、脂質異常症)、服用薬(Ca拮抗薬、ACE-I、利尿剤、α/β遮断薬)

 

結果

MMSEの1年当たりの変化量

中程度/重度認知症

ベースラインのMMSE E群:15.9±4.2  C群:16.5±4.8  

MMSE変化量  E群:-0.7±2.8  C群:-0.9±2.6  p=0.72

 

軽度認知症

ベースラインのMMSE E群:24.0±1.3  C群:24.2±1.5  

MMSE変化量  E群:-0.5±1.6  C群:-2.2±4.1  p=0.02

 

感想

 中等度/重度認知症患者においては、ドネペジルにシロスタゾールを併用するか否かで、MMSEスコアの変化量に差は無いという結果。軽度認知症患者においては、シロスタゾール上乗せの有無によるMMSEスコア変化に統計学的有意差こそ出ているが、その絶対差としては1.7ポイント(MMSEは30点満点)の違いであり、臨床上大きな差とは言い難いといった印象。

 認知機能低下の予防に対して、あえて積極的にシロスタゾールを上乗せする必要は無いのかなと感じた。シロスタゾールは、副作用として頭痛が多いと言われているので、そちらに関しても今後調べてみたい。

 

今回も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

ACS後の患者さんは、スタチンにエゼチミブを併用した方がいいですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、以前から気になっていたエゼチミブの論文を1本読んでみました。

 

参考文献 Ezetimibe Added to Statin Therapy after Acute Coronary Syndromes.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26039521

 

PMID:26039521

 

研究デザイン:ランダム化、二重盲検

 

ランダム化されているか?

→されている

※過去の脂質降下療法、ACSのタイプなどで層別化もされている

 

論文のPECO

P:ACSのため入院して10日以内の50歳以上の患者のうち、脂質降下療法を受けていれば血清LDL-Cが50~100mg/dL、受けていなければ50~125mg/dLの者

E:シンバスタチン40mgとエゼチミブ10mg併用

C:シンバスタチン40mgとプラセボ併用

O:(Primary) 心血管因性死亡、主要冠イベント(非致死性心筋梗塞、再入院を要する狭心症、ランダム化後少なくとも30日以降の血行再建術)、非致死性脳卒中の複合アウトカム

 

除外基準

冠動脈バイパス術を予定している患者、クレアチンリアランス<30mL/min、活動性肝疾患、シンバスタチン40mgより強力なスタチン使用

 

一次アウトカムは明確か?

→入院や血行再建術はソフトエンドポイントと考えられるの。また、複数のアウトカムからなる複合エンドポイントなので、結果の解釈には注意が必要

 

真のアウトカムか?

→日常生活に影響を及ぼす事象なので、真のアウトカムといえる

 

盲検化されているか?

→盲検化されている

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析が行われている

 

ベースラインの患者背景のバラツキは無いか?

→特に大きな問題は無いと思われる

 

サンプルサイズ

→イベント発生が5250件(パワー90%、α=5%)

 

追跡期間

→中央値6年

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=99.5%

 

結果

LDL-Cの変化

ベースライン E群:93.8mg/dL  C群:93.8mg/dL

治療開始1年後 E群:53.2mg/dL  C群:69.9mg/dL

 

Primary outcome

E群:32.7% C群:34.7% HR=0.936(95%CI:0.89‐0.99) p=0.016

 

個々のアウトカム

総死亡

E群:15.4% C群:15.3% HR=0.99(95%CI:0.91‐1.07) p=0.78

 

心血管因性死亡

E群:6.9% C群:6.8% HR=1.00(95%CI:0.89‐1.09) p=0.50

 

非致死性心筋梗塞

E群:12.8% C群:14.4% HR=0.87(95%CI:0.80‐0.95) p=0.002

 

心血管因性死亡

E群:6.9% C群:6.8% HR=1.00(95%CI:0.89‐1.09) p=0.78

 

虚血性脳卒中

E群:3.4% C群:4.1% HR=0.79(95%CI:0.67‐0.94) p=0.008

 

出血性脳卒中

E群:0.8% C群:0.6% HR=1.38(95%CI:0.93‐2.04) p=0.11

 

ランダム化後少なくとも30日以降の血行再建術

E群:24.2% C群:25.6% HR=0.96(95%CI:0.90‐1.02) p=0.18

 

不安定狭心症による入院

E群:2.1% C群:1.9% HR=1.06(95%CI:0.85‐1.33) p=0.62

 

有害事象

→両群で大きな違いは無し

 

感想

 Primary outcomeは、有意差こそ出ているが、この差が臨床上意味のある差ではないかなという印象である。個々のアウトカムについて見ていくと、有意差が見られているのは非致死性心筋梗塞と、虚血性脳卒中のみである。

 ガイドライン変更などにより、サンプルサイズなどを含め、プロトコルが5回変更された研究のようなので、やや注意が必要かもしれない。

 ランダム化は行われているが、治療開始後のLDL-C値により割り付けが見破られる可能性があり、複合アウトカムにソフトエンドポイントの入院などが含まれている点も注意が必要。

 大規模な症例数と、長期の追跡期間でかなり研究費がかかっているのでは無いかと思うが、その労力からすると少し残念な結果かなと感じた。

 

今回も、最後までお付き合い頂きありがとうございました。

過活動膀胱に対するオキシブチニン貼付剤 vs プロピベリン vs プラセボ

ご訪問ありがとうございます。

 

昨日、オキシブチニン貼付剤の効果がなかなか実感できないとおっしゃる患者さんがおられたので、オキシブチニン貼付剤の効果を検討したRCTを読んでみました。

 

プラセボとの比較は優越性試験、プロピベリン内服との比較は非劣勢試験になっています。

 

参考文献 Efficacy and safety of once-daily oxybutynin patch versus placebo and propiverine in Japanese patients with overactive bladder: A randomized double-blind trial.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24350662

 

PMID:24350662

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:20歳以上で24週間以上過活動膀胱症状が出ている患者のうち、1日8回以上の排尿があり、1日1回以上の切迫性尿失禁エピソードがあるもの

E:オキシブチニン貼付剤576名

C:①プラセボ381名→優越勢試験

②プロピベリン20mg 1日1回(573名)→非劣勢試験(非劣勢マージン0.37)

O:(Primary) 12週後の平均排尿回数の変化

 (Secondary)12週後の緊急を要するエピソード回数の変化、12週後の切迫性尿失禁回数の変化、12週後の尿失禁回数の変化、夜間排尿回数の変化、排尿ごとの平均空隙容積

 

 

除外基準

腹圧性尿失禁、過活動膀胱症状と鑑別の難しい症状を呈する疾患、尿路機能に影響を及ぼす状態、下部尿路閉塞による排尿障害・尿閉、残尿量>100mL、重度の肝・腎機能障害、悪性腫瘍、研究対象の貼付剤使用で皮膚症状悪化の恐れがある者、貼付剤適用に影響のある広範囲の入れ墨・母斑、頻繁な日焼け、妊婦、授乳婦、妊娠の可能性のある者・試験期間に妊娠を希望する者

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→トイレの回数が多いと、睡眠障害や行動の制限など、日常生活に影響が及ぶことを考えると、真のアウトカムと考えられる

 

ランダム化されているか?

→されている

 

盲検化されているか?

→されている(ダブルダミー法を用いている)

 

ITT解析を行われているか?

FASを使用

 

追跡期間

→12週間

 

サンプルサイズ

1450名(パワー80%、α=5%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=90.4%

 

結果

12週後の平均排尿回数のベースラインからの変化

オキシブチニン貼付剤 vs プラセボ(優越勢試験)

-1.89±2.04回 vs −1.44±2.23回 p=0.0015

 

オキシブチニン貼付剤 vs プロピベリン(非劣勢試験)

-0.04回(95%CI:-0.28~0.21) 

95%CI上限が非劣勢マージン0.37より小さいので非劣勢が示された

 

緊急を要するエピソード回数の変化

オキシブチニン貼付剤 vs プラセボ(優越勢試験)

-1.92±2.21回 vs −1.51±2.33回 p=0.0069

 

オキシブチニン貼付剤 vs プロピベリン(非劣勢試験)

0.02回(95%CI:-0.26~0.29)

 

切迫性尿失禁回数の変化

オキシブチニン貼付剤 vs プラセボ(優越勢試験)

-1.02±1.24回 vs −0.92±1.49回 p=0.3481

 

オキシブチニン貼付剤 vs プロピベリン(非劣勢試験)

0.02回(95%CI:-0.16~0.19)

 

尿失禁回数の変化

オキシブチニン貼付剤 vs プラセボ(優越勢試験)

-1.10±1.40回 vs −0.95±1.57回 p=0.1966

 

オキシブチニン貼付剤 vs プロピベリン(非劣勢試験)

-0.03回(95%CI:-0.23~0.17)

 

夜間排尿回数の変化

オキシブチニン貼付剤 vs プラセボ(優越勢試験)

-0.52±0.79回 vs −0.42±0.83回 p=0.0694

 

オキシブチニン貼付剤 vs プロピベリン(非劣勢試験)

-0.03回(95%CI:-0.13~0.07)

 

有害事象

 

オキシブチニン群

n=572

プロピベリン群

n=576

プラセボ

n=381

口渇

37名(6.5%)

76名(13.2%)

7名(1.8%)

便秘

4名(0.7%)

29名(5.0%)

4名(1.0%)

適用部皮膚炎

182名(31.8%)

34名(5.9%)

20名(5.2%)

適用部紅斑

32名(5.6%)

7名(1.2%)

4名(1.0%)

適用部の痒み

18名(3.2%)

19名(3.3%)

9名(2.4%)

 

 

感想

 この結果からオキシブチニン貼付剤使用で劇的な排尿回数の低下というわけではないかなという感想。プラセボとの差は非常に小さいが、実際の薬剤の効果は、「プラセボ効果+薬物そのものの効果」なので、1日にして2回弱ほど排尿回数を減らす事が出来るかもしれない。それでも、ベースラインの排尿回数は平均11回ほどなので、2回減ってもまだ回数は多いかなといった印象。

 あくまでもSecondary outcomeであるが、夜間排尿回数について見てみると、ベースラインで1.3回程度だが、オキシブチニン貼付剤を用いると夜間排尿が0になる患者が多く現れるかもしれない。また、切迫性尿失禁などのSecondary outcomeも0になる患者が多少なりとも現れるかもしれない。

 オキシブチニン貼付剤と、プロピベリンの比較では非劣勢が示されている。オキシブチニン貼付剤では、プロピベリン服用より抗コリン薬で問題となる口渇・便秘の頻度は低い。しかし、何といっても皮膚症状の頻度が高い。やはり、貼付部位のかぶれには注意を促したいところである。

 

 実際、薬局でオキシブチニン貼付剤が処方されている患者様でも、かぶれの為に中止となったり、対策としてベタメタゾン・ゲンタマイシン軟膏が併用されているというパターンが多く見受けられます。感覚として、処方患者の半数はどちらかに該当している気もします。排尿回数の多さを、そこまで生活する上で問題に感じていない肌の弱い患者対しては、なかなか積極的に使いにくいのかなという感想でした。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。