血糖異常患者はn-3系脂肪酸で心血管死亡を防げますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は血糖異常患者に対するn-3系脂肪酸についての論文です。
参考文献 n-3 fatty acids and cardiovascular outcomes in patients with dysglycemia.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=22686415
PMID:22686415
研究デザイン:ランダム化比較試験
※インスリングラルギン使用 vs 通常ケアの比較も同時並行で行われている、2×2の研究デザイン
論文のPECO
P:食後血糖異常、耐糖能異常、糖尿病のいずれかがある、心血管イベント高リスクの患者12536名
E:n-3系脂肪酸(465mgのEPA+375mgのDHA)→6319名
C:プラセボ→6292名
O:(Primary) 心血管死亡
※除外基準
研究に使われていないn-3系脂肪酸の中止を望まない、HbA1c>9.0%、過去4年以内の冠動脈バイパス術、重篤な心不全、声明に影響を及ぼす悪性腫瘍
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検化されている
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
サンプルサイズ
→12500名(パワー90%、α=5%)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→99.4%
追跡期間
→中央値6.2年
結果
【ベースライン】
平均年齢 n-3系:63.5±7.8歳 vs プラセボ:63.6±7.9歳
心筋梗塞、脳卒中、血行再建術既往 n-3系:59.1% vs プラセボ:58.6%
高血圧 n-3系:78.7% vs プラセボ:80.3%
HbA1c(中央値) n-3系:6.4% vs プラセボ:6.4%
食事由来のEPA-DHA n-3系:210.0mg/日 vs プラセボ:209.3mg/日
【アウトカム】
Primary outcome(心血管死亡)
n-3系:1.55/100人年 vs プラセボ:1.58/100人年
調整HR=0.98(95%CI:0.87~1.10) p=0.72
Secondary outcome
n-3系:2.92/100人年 vs プラセボ:2.88/100人年
調整HR=1.01(95%CI:0.93~1.10) p=0.81
☆総死亡
n-3系:2.57/100人年 vs プラセボ:2.62/100人年
調整HR=0.98(95%CI:0.89~1.07) p=0.63
☆不整脈による死亡
n-3系:0.78/100人年 vs プラセボ:0.70/100人年
調整HR=1.10(95%CI:0.93~1.30) p=0.26
☆致死性・非致死性心筋梗塞
n-3系:0.95/100人年 vs プラセボ:0.88/100人年
調整HR=1.09(95%CI:0.93~1.27) p=0.28
☆致死性・非致死性脳卒中
n-3系:0.86/100人年 vs プラセボ:0.93/100人年
調整HR=0.92(95%CI:0.79~1.08) p=0.32
☆心不全による入院
n-3系:0.91/100人年 vs プラセボ:0.88/100人年
調整HR=1.02(95%CI:0.88~1.19) p=0.76
☆血行再建術
n-3系:2.54/100人年 vs プラセボ:2.65/100人年
調整HR=0.96(95%CI:0.87~1.05) p=0.39
☆狭心症
n-3系:2.11/100人年 vs プラセボ:2.12/100人年
調整HR=1.00(95%CI:0.90~1.10) p=0.94
☆虚血による手足・手指切断
n-3系:0.14/100人年 vs プラセボ:0.13/100人年
調整HR=1.09(95%CI:0.974~1.62) p=0.67
☆心血管イベントによる入院
n-3系:6.87/100人年 vs プラセボ:7.00/100人年
調整HR=0.98(95%CI:0.92~1.04) p=0.50
感想
n-3系脂肪酸(EPA+DHA)を服用しても、心血管死亡やいずれのSecondary outcomeも、抑制できないという結果。
今回用いている用量は、国内で使用されているEPA+DHA製剤の通常容量より少ない量(1/2~1/4)である点は注意が必要かもしれない。食事によるn-3系脂肪酸の摂取も多少影響はあるのかもしれないが。
今回の患者背景を見てみると、ベースラインで心筋梗塞・脳卒中・血行再建術を経験した患者が60%近くを占めている。また、併用薬も多い。
少なくとも、このような心血管イベント高リスクの患者に対するn-3系脂肪酸の有用性は、今回の論文からだと大きくなさそうだと感じた。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
急性心筋梗塞の二次予防に、水溶性スタチンと脂溶性スタチンで違いはありますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回はスタチンについて興味深い論文を見つけたので、読んでみました。
参考文献 Assessment of lipophilic vs. hydrophilic statin therapy in acute myocardial infarction – ALPS-AMI study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=25392071
PMID:25392071
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:20歳以上で血清LDLコレステロール≧70mg/dlの、急性心筋梗塞発生後96時間以内にPCIを受けた患者508名
E:脂溶性スタチン(アトルバスタチン) →255名
C:水溶性スタチン(プラバスタチン)→253名
O:(Primary) 総死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症、入院を要する虚血性心不全、冠血行再建術の複合アウトカム
※両群とも10㎎/日から開始し、LDLコレステロール<100mg/dlを目指す。4週後にLDLコレステロール<100mg/dlを達成しなければ20mg/日に増量。開始8週後にまだLDLコレステロール<100mg/dlを達成していなければ、10㎎のエゼチミブを追加。
※除外基準
冠動脈バイパス術予定患者、妊婦、肝臓病、腎臓病、悪性腫瘍、重篤な不整脈、血行動態不安定(低血圧、うっ血性心不全、急性心不全後の器質的合併症)
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→複合アウトカムなので明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→PROBE法を用いている
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
サンプルサイズ
→500名(パワー80%、α=5%)
(引用文献15を参照)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率95.9%
追跡期間
→2年間
結果
【ベースライン】
平均年齢 プラバスタチン:65.7±11.7歳 vs アトルバスタチン:66.3±11.4歳
TC プラバスタチン:240.1±38.6mg/dl vs アトルバスタチン:203.2±40.8mg/dl
LDL-C プラバスタチン:130.2±33.2mg/dl vs アトルバスタチン:131.0±33.9mg/dl
HDL-C プラバスタチン:47.6±11.4mg/dl vs アトルバスタチン:48.0±12.4mg/dl
TG プラバスタチン:142.9±114.2mg/dl vs アトルバスタチン:130.8±94.3mg/dl
※エゼチミブの追加投与が必要となった患者
プラバスタチン:19% vs アトルバスタチン:4.7% p<0.001
【アウトカム】
☆Primary outcome(総死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症、入院を要する虚血性心不全、冠血行再建術の複合アウトカム)
アトルバスタチン:80/255名(31.4%)vs プラバスタチン:77/253名(30.4%)
HR=1.181(95%CI:0.862~1.619) p=0.299
☆総死亡
アトルバスタチン:3.5% vs プラバスタチン:5.5% p=0.277
☆心血管死亡
アトルバスタチン:1.2% vs プラバスタチン:1.2% p=0.992
☆心筋梗塞
アトルバスタチン:0% vs プラバスタチン:0.4% p=0.315
☆脳卒中
アトルバスタチン:0.4% vs プラバスタチン:2.0% p=0.098
☆血行再建術
アトルバスタチン:24.7% vs プラバスタチン:20.2% p=0.219
☆心不全による入院
アトルバスタチン:2.7% vs プラバスタチン:2.4% p=0.790
※安全性
治療の中止はアトルバスタチン2.4%、プラバスタチン2.8%(p=0.7677)
※中止の主な理由は肝機能障害
感想
この研究では、二重盲検をしておらず(LDL-Cなど検査値を追っていく必要があるため、盲検化不可能と思われる)、PROBE法を採用している。それにも関わらずソフトエンドポイントである、入院を要する心不全や、冠動脈再建術が複合アウトカムに含まれている。そして、実際に発生したアウトカムの大部分が冠動脈再建術である。この点は注意したい。
そもそも、水溶性・脂溶性の違いの他に、プラバスタチンはスタンダードスタチン、アトルバスタチンはストロングスタチンに分類される。Figre2を見てみると、総コレステロールやLDLコレステロールの変化に両群で差が出ている。LDLコレステロール低下に関しては確かにアトルバスタチンの方が優位かと思われる。
しかし、総死亡・非致死性心筋梗塞・非致死性脳卒中・不安定狭心症・入院を要する虚血性心不全・冠血行再建術の複合アウトカム、また個々のアウトカムは、いずれも両群で違いはないという結果である。
エゼチミブの追加投与はプラバスタチン群19%、アトルバスタチン服用群4.7%と、プラバスタチン服用群の方が多いので、個人的に、プラバスタチン群ではエゼチミブを併用している割合が高い影響で、アウトカム発生が多少減っているのでは?という疑問もある。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
ダパグリフロジンは心血管イベントに影響しますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、ダパグリフロジンと心血管イベントに関するメタ分析の論文を読んでみました。メタ分析とはいっても、第2b相、第3相試験のメタ分析ではありますが。
参考文献 Cardiovascular effects of dapagliflozin in patients with type 2 diabetes and different risk categories: a meta-analysis.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26895767
PMID:26895767
研究デザイン:メタ分析
論文のPECO
P:2型糖尿病患者
E:ダパグリフロジン服用有り(2.5~10mg)
C:ダパグリフロジン服用無し(プラセボまたは他剤)
O:MACE(心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中)+不安定狭心症による入院、MACE
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
4つのバイアス
1、評価者バイアス
→2名以上の評価者でデータ抽出等しているかは不明。(そもそも、すべての研究が組み入れられている?)
評価者バイアス不明
2、出版バイアス
情報元:第2b相(5件:12~24週)、第3相試験(16件:~208週)
→網羅的に集められていると判断していい?
出版バイアス不明
3、元論文バイアス
→元論文バイアスの評価を行っているか不明(元論文は第2相、第3相試験)
元論文バイアス不明
4、異質性バイアス
→記載なし
結果
☆MACE
(全員)
ダパグリフロジン群:1.15/100人年 vs C群:1.69/100人年
HR=0.772(95%CI:0.543~1.097)
(心血管疾患の既往ありの患者のみ)
ダパグリフロジン群:2.21/100人年 vs C群:2.76/100人年
HR=0.802(95%CI:0.527~1.221)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:3.28/100人年 vs C群:3.61/100人年
HR=0.916(95%CI:0.512~1.640)
※心血管リスク因子:65歳以上、心血管イベント既往歴、高血圧既往歴、脂質異常症既往歴、喫煙歴、早期冠状動脈性心疾患の家族歴、eGFR<60mL/min/1.73m2
☆MACE+不安定狭心症による入院
(全員)
ダパグリフロジン群:1.46/100人年 vs C群:2.15/100人年
HR=0.787(95%CI:0.579~1.070)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:2.94/100人年 vs C群:3.76/100人年
HR=0.806(95%CI:0.562~1.156)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:4.19/100人年 vs C群:5.06/100人年
HR=0.824(95%CI:0.497~1.365)
☆心血管死亡
(全員)
ダパグリフロジン群:0.37/100人年 vs C群:0.59/100人年
HR=0.704(95%CI:0.367~1.359)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:0.74/100人年 vs C群:0.85/100人年
HR=0.785(95%CI:0.365~1.689)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:1.27/100人年 vs C群:1.11/100人年
HR=1.018(95%CI:0.369~2.811)
☆心筋梗塞
(全員)
ダパグリフロジン群:0.48/100人年 vs C群:0.91/100人年
HR=0.567(95%CI:0.339~0.947)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:0.82/100人年 vs C群:1.39/100人年
HR=0.578(95%CI:0.301~1.107)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:1.18/100人年 vs C群:1.42/100人年
HR=0.767(95%CI:0.295~1.994)
☆脳卒中
(全員)
ダパグリフロジン群:0.45/100人年 vs C群:0.57/100人年
HR=0.999(95%CI:0.536~1.864)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:0.95/100人年 vs C群:0.69/100人年
HR=1.009(95%CI:0.491~2.074)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:1.29/100人年 vs C群:1.68/100人年
HR=0.806(95%CI:0.317~2.050)
☆不安定狭心症
(全員)
ダパグリフロジン群:0.44/100人年 vs C群:0.58/100人年
HR=0.870(95%CI:0.475~1.593)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:0.87/100人年 vs C群:1.06/100人年
HR=0.883(95%CI:0.442~1.767)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:0.96/100人年 vs C群:1.42/100人年
HR=0.706(95%CI:0.263~1.895)
☆予期せぬ冠動脈再建術
(全員)
ダパグリフロジン群:0.90/100人年 vs C群:1.47/100人年
HR=0.729(95%CI:0.497~1.067)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:1.95/100人年 vs C群:2.67/100人年
HR=0.795(95%CI:0.512~1.233)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:2.39/100人年 vs C群:2.80/100人年
HR=0.952(95%CI:0.493~1.836)
☆心不全による入院
(全員)
ダパグリフロジン群:0.15/100人年 vs C群:0.41/100人年
HR=0.361(95%CI:0.156~0.838)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:0.51/100人年 vs C群:0.94/100人年
HR=0.371(95%CI:0.155~0.889)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:0.67/100人年 vs C群:0.96/100人年
HR=0.389(95%CI:0.103~1.470)
感想
MACEまたは、MACE+不安定狭心症による入院はいずれも減少傾向はあるものの、有意差無しとなっている。
心血管疾患の既往のある患者では、心不全による入院は有意に減らすという結果が得られている。
現時点ではいずれの患者に対しても、積極的にダパグリフロジンを使う事を勧めるような結果とは感じない。ただ、心血管疾患既往のある患者では。心不全による入院を減らすという結果も出ているため使用を全く否定するようなものでもないかと思う。
いずれにしても、第2b相と第3相試験の統合結果という事で、結果をそのまま鵜呑みには出来ないかもしれないと感じた。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
重篤な低血糖を経験したことがあると、股関節骨折のリスクは高くなりますか?
ご訪問ありがとうございます。
これまで低血糖と骨折に関する論文を読んでいなかったため、今回見つけて読んでみました。残念ながら、アブストラクトしか読めませんが・・・。
参考文献 Severe hypoglycemia and hip fracture in patients with type 2 diabetes: a nationwide population-based cohort study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28374044
PMID:28374044
研究デザイン:コホート研究
論文のPECO
P:2型糖尿病患者
E:重篤な低血糖あり→2588名
C:重篤な低血糖無し→5173名
O:股関節骨折
研究対象集団の代表性
→台湾の国民健康保険データベースが用いられており、大きな問題無し
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?
→不明
追跡期間
→中央値3.9年
結果
股関節骨折
E群:148/2588件(17.9/1000人年) vs C群:209/5173件(8.83/1000人年)
調整HR=1.71(95%CI:1.35~2.16)
※股関節骨折を起こした患者の約半数が、最初の重篤な低血糖から2年以内に股関節骨折を経験
※SU薬単独、インスリン単独、インスリン分泌促進薬+インスリンを使用している患者で、股関節骨折リスクが高い傾向に見られた
感想
低血糖を起こすと、その後の股関節骨折リスクは高くなる傾向にあるとの結果。残念ながらアブストラクトしか読めないため詳細な結果は分からないが、SU薬やインスリン使用患者は転倒に十分注意する必要がある。また、低血糖を起こしやすい患者の血糖降下薬使用は慎重に行う必要がある。
最初の重篤な低血糖から2年以内の股関節骨折の割合が高いとの結果であるため、低血糖を起こした場合は、比較的早い段階で薬剤の変更や減量も考慮する必要があるのではないかと感じた。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
糖尿病治療薬ごとの心不全、心血管疾患、総死亡
ご訪問ありがとうございます。
今回も糖尿病関連で気になる論文を見つけたので読んでみました。
参考文献 Diabetes treatments and risk of heart failure, cardiovascular disease, and all cause mortality: cohort study in primary care.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27413012
PMID:27413012
研究デザイン:コホート研究
論文のPECO
P:25~84歳の2型糖尿病患者469688名
E:①グリタゾン、②グリプチン、③メトホルミン、④SU薬、⑤インスリン
C:使用無し
O:心不全、心血管疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中、TIA+)、総死亡
※除外基準
35歳以前に1型糖尿病の診断を受けインスリン導入となっている患者
研究対象集団の代表性
→英国のプライマリケアデータベースが用いられており、大きな問題は無いかと思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?
→性別、年齢、糖尿病の診断からの期間、民族、タウンゼント階層スコア、喫煙歴、他の糖尿病治療薬併用、抗凝固薬、チアジド、ACE-I、ARB、CCB、スタチン、アスピリン、合併症(失明、高血糖、低血糖、切断、重篤な腎不全)、高血圧、心血管疾患、心房細動、慢性腎不全、関節リウマチ、心臓弁膜症、末梢血管疾患、BMI、収縮期血圧、HbA1c、血清クレアチニン、HDLの割合
結果
☆それぞれの糖尿病治療薬服用無しの患者との比較
総死亡
グリタゾン 調整HR=0.77(95%CI:0.71~0.84)
グリプチン 調整HR=0.82(95%CI:0.77~0.88)
メトホルミン 調整HR=0.59(95%CI:0.58~0.60)
SU薬 調整HR=1.10(95%CI:1.07~1.12)
インスリン 調整HR=1.47(95%CI:1.41~1.53)
グリタゾン 調整HR=0.74(95%CI:0.66~0.83)
グリプチン 調整HR=0.86(95%CI:0.78~0.95)
メトホルミン 調整HR=0.70(95%CI:0.68~0.73)
SU薬 調整HR=1.32(95%CI:1.22~1.43)
インスリン 調整HR=0.92(95%CI:0.79~1.06)
心血管疾患
グリタゾン 調整HR=0.75(95%CI:0.69~0.81)
グリプチン 調整HR=0.94(95%CI:0.88~1.00)
メトホルミン 調整HR=0.76(95%CI:0.74~0.78)
SU薬 調整HR=1.00(95%CI:0.97~1.03)
インスリン 調整HR=1.23(95%CI:1.15~1.31)
☆単剤、2剤併用、3剤併用ごとの比較(無治療との比較)
①単剤
メトホルミン 調整HR=0.68(95%CI:0.65~0.71)
SU薬 調整HR=1.00(95%CI:0.94~1.07)
インスリン 調整HR=1.26(95%CI:1.10~1.44)
グリタゾン 調整HR=0.50(95%CI:0.26~0.97)
グリプチン 調整HR=0.87(95%CI:0.58~1.31)
心血管疾患
メトホルミン 調整HR=0.76(95%CI:0.74~0.79)
SU薬 調整HR=1.00(95%CI:0.95~1.05)
インスリン 調整HR=1.22(95%CI:1.08~1.37)
グリタゾン 調整HR=0.79(95%CI:0.53~1.18)
グリプチン 調整HR=1.14(95%CI:0.85~1.54)
総死亡
メトホルミン 調整HR=0.64(95%CI:0.63~0.66)
SU薬 調整HR=1.24(95%CI:1.20~1.28)
インスリン 調整HR=1.64(95%CI:1.55~1.74)
グリタゾン 調整HR=0.89(95%CI:0.67~1.18)
グリプチン 調整HR=1.20(95%CI:1.00~1.44)
②2剤併用
メトホルミン+SU薬 調整HR=0.74(95%CI:0.70~0.78)
メトホルミン+インスリン 調整HR=1.08(95%CI:0.93~1.25)
メトホルミン+グリタゾン 調整HR=0.50(95%CI:0.40~0.63)
メトホルミン+グリプチン 調整HR=0.62(95%CI:0.52~0.75)
SU薬+インスリン 調整HR=1.18(95%CI:0.96~1.45)
SU薬+グリタゾン 調整HR=0.65(95%CI:0.47~0.89)
SU薬+グリプチン 調整HR=0.88(95%CI:0.66~1.17)
心血管疾患
メトホルミン+SU薬 調整HR=0.75(95%CI:0.73~0.78)
メトホルミン+インスリン 調整HR=0.89(95%CI:0.78~1.01)
メトホルミン+グリタゾン 調整HR=0.46(95%CI:0.39~0.54)
メトホルミン+グリプチン 調整HR=0.67(95%CI:0.59~0.75)
SU薬+インスリン 調整HR=1.18(95%CI:0.96~1.44)
SU薬+グリタゾン 調整HR=0.75(95%CI:0.58~0.98)
SU薬+グリプチン 調整HR=0.97(95%CI:0.76~1.22)
総死亡
メトホルミン+SU薬 調整HR=0.62(95%CI:0.60~0.64)
メトホルミン+インスリン 調整HR=0.76(95%CI:0.69~0.84)
メトホルミン+グリタゾン 調整HR=0.55(95%CI:0.47~0.64)
メトホルミン+グリプチン 調整HR=0.52(95%CI:0.46~0.59)
SU薬+インスリン 調整HR=1.49(95%CI:1.35~1.66)
SU薬+グリタゾン 調整HR=0.96(95%CI:0.80~1.16)
SU薬+グリプチン 調整HR=0.92(95%CI:0.79~1.08)
③3剤併用
メトホルミン+SU薬+インスリン 調整HR=0.91(95%CI:0.76~1.09)
メトホルミン+SU薬+グリタゾン 調整HR=0.54(95%CI:0.45~0.64)
メトホルミン+SU薬+グリプチン 調整HR=0.60(95%CI:0.52~0.70)
心血管疾患
メトホルミン+SU薬+インスリン 調整HR=0.95(95%CI:0.82~1.09)
メトホルミン+SU薬+グリタゾン 調整HR=0.59(95%CI:0.53~0.66)
メトホルミン+SU薬+グリプチン 調整HR=0.70(95%CI:0.63~0.78)
総死亡
メトホルミン+SU薬+インスリン 調整HR=0.98(95%CI:0.87~1.10)
メトホルミン+SU薬+グリタゾン 調整HR=0.44(95%CI:0.38~0.50)
メトホルミン+SU薬+グリプチン 調整HR=0.49(95%CI:0.44~0.55)
感想
いずれのアウトカムもSU薬、インスリン以外では減少傾向を示す結果。個人的には、グリタゾン、グリプチンで心不全が有意に減っている点が興味深いと感じている。
全体的に、やはりメトホルミンはいずれのアウトカムも減らしている印象であり、反対にインスリン+SU薬という組み合わせは各アウトカムを増やす傾向が見られているため、この組み合わせはどうなのかなという印象。
2剤併用の場合、メトホルミンと組み合わせるなら、これまでにいくつか読んできた論文と同じようにSU薬よりはグリプチンの方が良さそうである。
あくまでコホート研究であるので、各薬剤の組合せごとに比較したRCTも見つけて読んでいく必要があると思う。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
エンパグリフロジンで心血管イベントは防げますか?
ご訪問ありがとうございます。
今更ながら、SGLT-2阻害薬エンパグリフロジンの論文である、EMPA-REGを読んでみました。
参考文献 Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26378978
PMID:26378978
研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣性試験) 非劣性マージン1.3
論文のPECO
P:18歳以上の心血管イベント高リスクの2型糖尿病患者7028名
※BMI<45、eGFR>30ml/min/1.73m2、HbA1c=7.0~9.0%(12週以内に血糖降下薬の服用無しの場合)、7.0~10.0%(12週以内に血糖降下薬服用有りの場合)
E:エンパグリフロジン(10 or 25mg)
C:プラセボ
O:(Primary) 心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム
(Secondary)Primary outcomeと不安定狭心症による入院
ランダム化されているか?
→ランダム化されている(computer-generated random-sequence)
一次アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている。しかし、HbA1cの測定値によりブラインドが見破られている可能性あり
隠蔽化されているか?
→隠蔽化されている(interactive voice- and Web-response systemが用いられている)
中央割り付け
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる
ITT解析を行われているか?
→mITT解析されている
サンプルサイズ
→691件のイベント発生(パワー90%)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率=99.2%
追跡期間
→中央値3.1年
結果
【ベースライン】・・・Supplementary Appendixより↓
http://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa1504720/suppl_file/nejmoa1504720_appendix.pdf
平均年齢:プラセボ群:63.2±8.8歳 エンパグリフロジン群:63.1±8.6歳
BMI:プラセボ群:30.7±5.2 エンパグリフロジン群:30.6±5.3
HbA1c:プラセボ群:8.08±0.84% エンパグリフロジン群:8.07±0.85%
糖尿病歴10年以上:プラセボ群:57.4% エンパグリフロジン群:57.0%
【アウトカム】
(Primary outcome)心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム
プラセボ群:43.9/1000人年vs エンパグリフロジン群:37.4/1000人年
RR=0.86(95%CI:0.74~0.99) 非劣性p<0.001 優越性p=0.04 NNT=63
心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症による入院の複合アウトカム
プラセボ群:52.5/1000人年vs エンパグリフロジン群:46.4/1000人年
RR=0.89(95%CI:0.78~1.01) 非劣性p<0.001 優越性p=0.08
総死亡
プラセボ群:28.6/1000人年vs エンパグリフロジン群:19.4/1000人年
RR=0.68(95%CI:0.57~0.82) p<0.001
心血管死亡
プラセボ群:20.2/1000人年vs エンパグリフロジン群:12.4/1000人年
RR=0.62(95%CI:0.49~0.77) p<0.001
非致死性心筋梗塞
プラセボ群:18.5/1000人年vs エンパグリフロジン群:16.0/1000人年
RR=0.87(95%CI:0.70~1.09) p=0.22
非致死性脳卒中
プラセボ群:9.1/1000人年vs エンパグリフロジン群:11.2/1000人年
RR=1.24(95%CI:0.92~1.67) p=0.16
心不全による入院
プラセボ群:14.5/1000人年vs エンパグリフロジン群:9.4/1000人年
RR=0.65(95%CI:0.50~0.85) p=0.002
【有害事象】
(男性)プラセボ群:1.5% vs エンパグリフロジン群:5.0%
(女性)プラセボ群:2.6% vs エンパグリフロジン群:10.0%
骨折
プラセボ群:3.9% vs エンパグリフロジン群:3.8%
感想
エンパグリフロジン服用により、プラセボに対し心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカムはRR=0.86(95%CI:0.74~0.99)となり非劣性が示され、かつ優越性も示されている。
しかし、個々のアウトカムを見てみると、心血管死亡は有意に減っているが、非致死性心筋梗塞や非致死性脳卒中は有意差無しとなっている。どのような原因による死亡が増えているのだろうか。心不全?
今回の研究の対象患者は、糖尿病期間10年以上が57%程度と比較的罹患期間が長い患者が対象となっている。
Primary outcomeの95%信頼区間上限は0.99となっており、今回の解析ではITT解析よりは有意差の出やすいmITT解析を行っているため、優越性に関してはITT解析を行うと有意差無しとなってしまう可能性もあるかもしれない。
この研究では、CANVAS同様にエンパグリフロジンの用量10mgと25mgを合体させたPoolとして解析している。本来なら10mg服用群と25mg服用群に分けて解析すべきなのではないだろうかと思う。
CANVAS programでは骨折がカナグリフロジン服用群で増加する可能性が指摘されていたが、エンパグリフロジンではそのような傾向は見られていない。しかし、生殖器の感染症はやはり大きく増加する事が示唆されている。
Supplementary Appendixより、メトホルミン併用患者が70%以上であり、この事からも糖尿病治療の第一選択としてエンパグリフロジンを強く推奨するような論文ではないように思われる。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
カナグリフロジンで心血管イベントは減らせますか?
ご訪問ありがとうございます。
9/16(土)に、兵庫県養父市で開催された竹田城EBMワークショップに参加してきました。
最近は日程が合わなかったりで、student CASPなどのワークショップに参加できておらず、禁断症状が出ていたので、久しぶりのワークショップで楽しかったです(*'ω'*)
そこで今回は、お題論文となっていたCANVAS programについてまとめてみます。
参考文献 Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28605608
いつの間にか、フルテキスト見られなくなっているんですよね・・・。
PMID:28605608
研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣性試験:非劣性マージン1.3)
※CANVAS試験とCANVAS-R試験2つ研究の結果を統合している
☆最近は非劣性試験が増えてきている印象です。多くの疾患において標準治療が確立されてきているため、分野によるのでしょうが、最近ではプラセボ対照の比較試験が倫理的に許されなくなってきているようです。
論文のPECO
P:2型糖尿病で心血管イベントハイリスクの患者10142名
E:カナグリフロジン(100mg、300mg)
C:プラセボ
O:心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム
※CANVAS試験
→カナグリフロジン300mg、カナグリフロジン100mg、プラセボに1:1:1で割り付け。
※CANVAS-R試験
→カナグリフロジン(初期用量100mg、その後必要に応じて300mgに増量)、プラセボに1:1で割り付け。
ランダム化されているか?
→ランダム化されている(computer-generated randomization)
一次アウトカムは明確か?
→複合アウトカムなので明確といえる
※複合アウトカムでは、含まれているアウトカムのうちどれか1つが発生した時点でその患者の追跡は打ち切りになるそうです。
(例)死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合アウトカムが設定されている場合、心筋梗塞を発症し、その後脳卒中を発症したとしても最初に発生した心筋梗塞のみイベントとしてカウントされる。そのため、実際に起こったイベント数よりは少なくカウントされることになる。
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている(Randomization, Treatment, and Follow-upに、Participants and all trial staff were unaware of the individual treatment assignments until completion of the trial.と記載がある)
※しかし、HbA1cなどを確認するためブラインドが見破られている可能性がある
隠蔽化されているか?
→隠蔽化されている(Randomization was performed centrally through an interactive Web-based response system)中央割り付け
※今まで盲検化と隠蔽化の違いがあまりよく分かっていなかったので、ちょっと補足を。
隠蔽化(concealment):目の前の患者をこれから割り付けする時に、すでに割り付けられた別の患者がどちらの群に割り付けられたか、割り付けを行う者に分からないようにする(介入が始まる前)
盲検化(blind):研究を進めていく上で、追跡終了までどちらの群に割り付けられたか分からないようにする事(介入が始まった後)
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる(Table1参照)
※最近はTable1のベースラインについて、p値を記載しなくなっているらしいです。ベースラインで比較している項目がたくさんあるので、どれかしら有意差が出てしまう可能性があるし、その有意差を意識しすぎると振り回されてしまう事があるからという理由らしいです。なので、p値ではなく実際の数字をみて大きな偏りが無いか比較していくことが重要だそうです。
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
※ITT解析を行うと差が出にくい傾向になります。非劣性試験では、ITT解析を使うと非劣性が示されやすくなる懸念があり、PPSで検討する必要があるのではないでしょうか?
サンプルサイズ
→688件のイベント(パワー90%、α=0.05)
ちなみにこれは、非劣性を示すためのサンプルサイズ
※サンプルサイズが多くなると有意差が出やすくなる。中心極限定理(例数が増えてくると、分布が中央に集まりやすくなる。そのため、95%信頼区間の幅が狭くなる。)が関係している。
参照↓
https://bellcurve.jp/statistics/course/8543.html
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率96%
追跡期間
→平均188.2週間(CANVAS:295.9週、CANVAS-R:108.0週)
結果
【ベースライン】
平均年齢:カナグリフロジン群:63.2±8.3歳 プラセボ群:63.4±8.2歳
糖尿病の罹患期間:カナグリフロジン群:13.5±7.7年 プラセボ群:13.7±7.8年
BMI:カナグリフロジン群:31.9±5.9 プラセボ群:32.0±6.0
HbA1c:カナグリフロジン群:8.2±0.9% プラセボ群:8.2±0.9%
【アウトカム】
(Primary)心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム
カナグリフロジン群:26.9件/1000人年vs プラセボ群:31.5件/1000人年
HR=0.86(95%CI:0.75~0.97) 非劣性 p<0.001 優越性 p=0.02
NNT=218/年
心血管死亡
カナグリフロジン群:11.6件/1000人年vs プラセボ群:12.8件/1000人年
HR=0.87(95%CI:0.72~1.06)
非致死性心筋梗塞
カナグリフロジン群:9.7件/1000人年vs プラセボ群:11.6件/1000人年
HR=0.85(95%CI:0.69~1.05)
非致死性脳卒中
カナグリフロジン群:7.1件/1000人年vs プラセボ群:8.4件/1000人年
HR=0.90(95%CI:0.71~1.15)
【有害事象】
切断
カナグリフロジン群:6.3件/1000人年vs プラセボ群:3.4件/1000人年
HR=1.97(95%CI:1.41~2.75) p<0.001 NNH=345/年
全骨折
カナグリフロジン群:15.4件/1000人年vs プラセボ群:11.9件/1000人年
HR=1.26(95%CI:1.04~1.52) p=0.02 NNH=286/年
男性の性器感染
カナグリフロジン群:34.9件/1000人年vs プラセボ群:10.8件/1000人年
p<0.001 NNH=42/年
女性の真菌感染
カナグリフロジン群:68.8件/1000人年vs プラセボ群:17.5件/1000人年
p<0.001 NNH=20/年
感想
カナグリフロジンで、心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカムはHR=0.86(95%CI:0.75~0.97)ということで、95%信頼区間の上限(0.97)が非劣性マージンの1.3を下回っていることからプラセボに対する非劣性が示されている。95%信頼区間が1をまたいでいない事から、優越性についても示されている(p=0.02)。
心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカムとしては有意差が付いているものの、個々のアウトカム(心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)はいずれも有意差が付いていない。
この研究はそもそも非劣性試験として設計されている点からも、結果の解釈には注意が必要かとは思われる。
用量として、カナグリフロジン100mgを用いた患者と300mgを用いた患者、初期用量として100mg、その後300mgに増量した患者がいる。本来であれば、用量別の結果を示すべきだろうが、それをまとめてカナグリフロジン群とまとめている所も問題があるかと思われる。この研究は、CANVAS試験とCANVAS-R試験の結果を統合したものであるが、この2つの研究においては追跡期間も異なる点から、統合する事が妥当ではないように思われる。
Figure1を見てみると、そもそもHbA1cは時間経過とともにカナグリフロジン群とプラセボ群の差が小さくなってきている。一方で、体重や収縮期血圧は時間経過を経ても、2群間の差が維持されている。もしかすると、Primary outcomeはHbA1cというよりは、これらの影響によるものなのかもしれない。
あちこちで言われている切断リスクについてはHR=1.97(95%CI:1.41~2.75)、そのHHN=345/年であり、重大なイベントであることを考えると決して少なくないと感じた。男性の性器感染や女性の真菌感染も頻度が高いと思う。
サブグループ解析を見てみると、βブロッカー服用患者や利尿薬を服用している患者でカナグリフロジン優位という結果になっている。
骨折リスクなども懸念されるため、骨粗鬆症リスクのあるような高齢者へは避けた方が良さそうな気がするし、感染症リスクを高める可能性がある事も示されている。今回の結果を加味すると、使用を検討するような患者というのはかなり限定的なものになるのではないだろうか。
糖尿病罹患期間は平均13.5年ほど、アテローム性血管疾患既往のある患者が70%以上と、比較的進行した糖尿病患者が対象となっており、少なくとも現時点では、このような患者にカナグリフロジンを積極的に用いるような根拠とはならないように思われる。
実はまだ、EMPA-REGもちゃんと読んでいないので読んでみます。
Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26378978
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。