エスゾピクロンで睡眠時間はどれぐらい改善できますか?
ご訪問ありがとうございます。
ここ最近、私の勤務する薬局で触る事がやや多くなってきた印象である、エスゾピクロンの効果について調べてみました。
参考文献 A 12-week, randomized, double-blind, placebo-controlled study evaluating the effect of eszopiclone 2 mg on sleep/wake function in older adults with primary and comorbid insomnia.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=20175406
PMID:20175406
研究デザイン:ランダム化比較試験
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
論文のPECO
P:65~85歳で、総睡眠時間(TST)≦6時間が週3回以上かつ、中途覚醒時間(WASO)≧45分が週3回以上の不眠症患者。そのうちMMSE≧28のもの。
E:エスゾピクロン2mg→194名
C:プラセボ→194名
O:(Primary)ベースラインから12週間後までの主観的総睡眠時間(TST)の変化
(Secondary)睡眠潜時(LS)、中途覚醒時間(WASO)
※除外基準
→睡眠時無呼吸やレストレスレッグズ症候群、周期性四肢運動異常症、医学的・精神医学的に睡眠に影響を及ぼす状況(慢性疼痛、前立腺肥大症など)、医学的に不安定な状態や慢性疾患、心電図異常、薬物代謝に影響する状態、過去にゾピクロン・エスゾピクロンの臨床試験に参加した者、薬物・アルコール依存症
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている
ITT解析を行われているか?
→FASが用いられているよう
サンプルサイズ
→300名(パワー90%、α=5%)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率74%(やや脱落が多い?)
結果
【ベースライン】
・平均年齢 エスゾピクロン群:71.6歳 プラセボ群:72.4歳
・総睡眠時間(TST) エスゾピクロン群:297.86分 プラセボ群:294.03分
・睡眠潜時(SL) エスゾピクロン群:75.68分 プラセボ群:82.17分
・中途覚醒時間(WASO) エスゾピクロン群:92.66分 プラセボ群:90.86分
Primary outcome
・総睡眠時間(TST)の平均
エスゾピクロン群:360.08分(ベースラインからの変化:63.24分) p<0.0001
Secondary outcome
・睡眠潜時(SL)
エスゾピクロン群:-24.62分 プラセボ群:-19.92分 p<0.0001
・中途覚醒時間(WASO)
エスゾピクロン群:-36.4分 プラセボ群:-14.8分 p<0.0001
有害事象
・頭痛 エスゾピクロン群:13.9% vs プラセボ群:12.4%
・不快な味 エスゾピクロン群:12.4% vs プラセボ群:1.5%
・めまい エスゾピクロン群:4.1% vs プラセボ群:1.5%
・転倒 エスゾピクロン群:4.1% vs プラセボ群:1.5%
感想
プラセボ群におけるTSTの具体的な記載が見つけられなかったが、Figure2より、TSTは約30~40分程度の差がプラセボ群とエスゾピクロン群の間にありそうである。
また、エスゾピクロン群では、ベースラインの総睡眠時間(TST)が297.86分、投与後は360.08分とおよそ60分程度の総睡眠時間延長がみられている。
Secondary outcomeではあるが、睡眠潜時(SL)や中途覚醒時間(WASO)も、プラセボとの比較でやや改善傾向という結果である。
あくまで、実臨床ではプラセボとの比較ではなく服用するかしないかの比較であり、結果はプラセボ効果+実薬の効果として現れてくると予測されるため、睡眠時間の確保という点ではエスゾピクロンは侮れないのかもしれない。
本研究は二重盲検をされているが、エスゾピクロンはゾピクロン同様に、翌朝の口の不快な味が問題になる事がある。有害事象としても、明らかにプラセボ群(1.5%)よりエスゾピクロン群(12.4%)で多くなっている。私もそのような訴えを患者様から聞く事は度々ある印象である。なので、もしかすると味でブラインドが見破られる可能性は無いのかな?という疑問はある。
非ベンゾジアゼピン系は安全と言われることが多いが、転倒リスクへも影響はありそうなので、特に高齢者ではこの点も重視してリスクとベネフィットのバランスを考えなければならない。エスゾピクロンには多少なりの睡眠改善効果はあるのかもしれないが、あくまでも不眠によりものすごく困っているという患者の訴えが強くないのであれば、高齢者に積極的に使わない方がいいのかもしれない。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。