高齢者のHbA1cはどれぐらいにコントロールするのがいいですか?
ご訪問ありがとうございます。
ある本を読んでいて気になる論文を見つけたので、読んでみました。
参考文献 Glycosylated hemoglobin and functional decline in community-dwelling nursing home-eligible elderly adults with diabetes mellitus.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=22702660
PMID:22702660
研究デザイン:コホート研究
論文のPECO
P:施設入所が必要とされるような糖尿病患者367名
E:HbA1c<7.0、8.0<HbA1c<8.9%、9.0%<HbA1c
C:HbA1c7.0~7.9(reference)
O:機能低下、機能低下と2年以内の死亡
※機能低下→ベースラインからのADLの低下
ベースラインのADL:HbA1c測定前6か月以内で一番直近のADLスコア
フォロー後のADL:HbA1c測定後24±3カ月のADL
研究対象集団の代表性
→一般の地域在住の高齢者へ結果をそのまま適用は出来ないかもしれない。
※オンロック:要介護老人にデイセンターでサービスを提供しながら在宅生活の継続を保障するために始められたNPO(以下のリンク先より引用)
On Lokについて↓
https://mediva.co.jp/oishi-blog/2014/11/on-lokpace-program-center.html
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?
→年齢、性別、種族・民族、On Lok加入からの期間、ベースラインのADL、併存疾患(悪性腫瘍、虚血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、腎臓病、透析)、治療薬(無し、経口、インスリン)
追跡期間
→2年間
結果
【ベースライン】
平均年齢:80±9歳
治療薬
治療薬無し:48%、経口血糖降下薬(インスリン無し):32%、インスリン:50%
ADL
10~9点:34% 8~7点:23% 6~5点:25% ≦4点:19%
【アウトカム】
2年以内の死亡
HbA1c7.0~7.9:reference
HbA1c<7.0:調整リスク比=1.06(95%CI:0.92~1.21)
8.0<HbA1c<8.9%:調整リスク比=0.95(95%CI:0.80~1.13)
9.0%<HbA1c:調整リスク比=1.09(95%CI:0.91~1.29)
身体機能の低下
HbA1c7.0~7.9:reference
HbA1c<7.0:調整リスク比=1.07(95%CI:0.95~1.21)
8.0<HbA1c<8.9%:調整リスク比=0.90(95%CI:0.78~1.05)
9.0%<HbA1c:調整リスク比=0.98(95%CI:0.82~1.16)
身体機能の低下と2年以内の死亡
HbA1c7.0~7.9:reference
HbA1c<7.0:調整リスク比=1.07(95%CI:0.98~1.17)
8.0<HbA1c<8.9%:調整リスク比=0.88(95%CI:0.79~0.99)
9.0%<HbA1c:調整リスク比=0.97(95%CI:0.84~1.12)
感想
今回の結果によると、高齢者のHbA1cは8.0~8.9の間を目指すのが最も機能低下や死亡が発生しにくいという事であった。
対象集団は施設入所を要するような患者であるが、インスリンを50%の患者で導入されている。On Lokではどの程度治療のサポートがあるのか不明だが、結構手厚くサポートを受けているのかもしれない。
もしかすると、アドヒアランスなどは一般的な地域在住の高齢者と相違があるかもしれない。なので、そのままこの結果を一般家庭の高齢者へ適用する事は出来ないのかもしれない。少なくとも80歳を超えるような高齢者において、HbA1c<7.0のような比較的厳しい血糖コントロールをしなくてもいいのではないかと思う。
このような高齢者の、HbA1cの違いによる転倒・骨折リスクについても気になる所ではある。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。