インスリン デグルデクとインスリン グラルギンで心血管イベント発生に違いがありますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、持効型インスリン製剤であるインスリン デグルデクとインスリン グラルギンでの心血管イベントの発生を比較した論文です。
申し訳ないのですが、フリーでは読めない論文となっております(´・ω・`)
参考文献 Efficacy and Safety of Degludec versus Glargine in Type 2 Diabetes.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28605603
PMID:28605603
研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣性試験:非劣性マージン=1.3)
論文のPECO
P:心血管イベントリスクの高い2型糖尿病患者7637名
※経口血糖降下薬またはインスリンを少なくとも1つ使用。50歳以上で、心血管または腎の併存疾患がある、または60歳以上で心血管イベントリスク因子を少なくとも1つもっている患者。
E:通常ケア+インスリン デグルデク 1日1回→3818名
C:通常ケア+インスリン グラルギン100U 1日1回→3819名
O:(Primary) 心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
サンプルサイズ
→7500名(パワー91%)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率=98%
追跡期間
→中央値1.99年
結果
【ベースライン】
平均年齢:65.0歳
糖尿病罹患期間:平均16.4年
HbA1c:平均8.4±1.7%
全体の83.9%がインスリンを使用
全体の85.2%の患者が心血管疾患または中等度の慢性腎臓病あり
※24カ月の平均空腹時血糖値
デグルデク群:128±56mg/dL vs グラルギン群:136±57mg/dL
【アウトカム】
(Primary outcome)心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム
デグルデク群:4.29件/100人年(8.5%) vs グラルギン群:4.71件/100人年(9.3%)
HR=0.91(95%CI:0.78~1.06) p<0.001(非劣勢)
※95%信頼区間の上限値が非劣性マージンの1.3より小さいので、インスリン デグルデクの、インスリン グラルギンに対する非劣性が認められた。
重篤な低血糖
デグルデク群:3.70件/100人年(4.9%) vs グラルギン群:6.25件/100人年(6.6%)
HR=0.60(95%CI:0.48~0.76) p<0.001(優越性)
感想
インスリン デグルデクでは、インスリン グラルギンンと比較して、心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の発生は少なくとも劣らないことが示されている。
今回の研究対象患者は、糖尿病罹患期間の平均が16.4年、85.2%の患者が心血管疾患または中等度の慢性腎疾患を併発している。比較的糖尿病罹患期間も長く、症状が進行している患者が多い印象である。
また、今回の研究ではITT解析を行っている。結果が大きく覆る事は無いかもしれないが、非劣性試験なのでPer-protocol解析を行わなければ差が出にくい方向に傾くような気がした。
少なくとも、このような症状の比較的進行した患者に用いるのであれば、インスリン デグルデクはインスリン グラルギンと比較して心血管イベント抑制効果は劣っていないと思われる。ただし、追跡期間の中央値が1.99年と、比較的短い印象もある。
また、平均空腹時血糖値はインスリン デグルデクの方が低いにも関わらず、前回取り上げた論文とも同様に、インスリン デグルデクの方が重篤な低血糖は少ないことも示されている。
もっと長期に追跡した結果も気になる所である。今回取り上げたのは持効型インスリンどうしの比較であったが、超速攻型インスリンに関しても今後調べてみようと思う。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。