SSRI、SNRIは消化管出血に影響しますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

先日、とある勉強会に参加させて頂きまして、そこでSSRIと出血について話題に上がっていました。

 

正直な所、これまであまり意識していなかった部分で、非常に興味深くお話を聞いていましたが、自分でも調べてみることにしました。

 

参考文献  Use of SSRI, But Not SNRI, Increased Upper and Lower Gastrointestinal Bleeding: A Nationwide Population-Based Cohort Study in Taiwan.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26579809

 

PMID:26579809

 

研究デザインコホート研究(台湾)

 

論文のPECO

P: 台湾の国民健康保険データベースに登録された一般人口

E:①SSRIを服用→8809名

   ②SNRIを服用→944名

C:SSRISNRI服用無し(Control群)→39012名

O:上部消化管出血(UGIB)、下部消化管出血(LGIB)

 

※除外基準:アルコール関連疾患、消化管の悪性腫瘍、炎症性腸疾患、試験参加以前の消化管出血

 

SSRI服用者:12週の間にSSRIを少なくとも28 DDD服用し、SNRIは服用していない

SNRI服用者:12週の間にSNRIを少なくとも28 DDD服用し、SSRIは服用していない

 

※DDD:Defined dairy dose(1日投与量)

 

SSRIフルボキサミンフルオキセチンパロキセチンセルトラリンシタロプラムエスシタロプラム

SNRIミルナシプラン、ベンラファキシン、デュロキセチン

 

研究対象集団の代表性

→台湾の国民健康保険データベースが用いられており、大きな問題無し

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

年齢、性別、高血圧、糖尿病、冠動脈疾患(CAD)、COPD、慢性腎臓病、単純性の消化性潰瘍(PUD)、肝硬変、脂質異常症、アセチルサリチル酸・NSAIDs・選択的COX-2阻害剤・ステロイド・クロピドグレル・チクロピジン・ワルファリンの使用

 

追跡期間

UGIB:中央値5.06年  LGIB:中央値5.08年

 

 結果

上部消化管出血(UGIB

SSRI vs C群 HR=1.97(95%CI:1.67~2.31) p<0.001

 

SNRI vs C群 HR=1.09(95%CI:0.58~2.04) p=0.786

 

下部消化管出血(LGIB

SSRI vs C群 HR=2.96(95%CI:2.46~3.57) p<0.001

 

SNRI vs C群 HR=0.84(95%CI:0.32~2.27) p=0.737

 

SSRI累積服用量との関連

上部消化管出血(UGIB

SSRI(28~140 DDD)vs C群 HR=2.39(95%CI:1.68~3.39) p<0.001

 

SSRI(141~280 DDD)vs C群 HR=2.39(95%CI:1.82~3.13) p<0.001

 

SSRI(>280 DDD) vs C群 HR=1.71(95%CI:1.39~2.10) p<0.001

 

下部消化管出血(LGIB

SSRI(28~140 DDD)vs C群 HR=3.77(95%CI:2.55~5.57) p<0.001

 

SSRI(141~280 DDD)vs C群 HR=3.18(95%CI:2.30~4.40) p<0.001

 

SSRI(>280 DDD) vs C群 HR=2.71(95%CI:2.15~3.41) p<0.001

 

感想

 SSRI服用と上部消化管出血(UGIB)、下部消化管出血(LGIB)の関連が示唆されている。一方で、この結果によるとSNRIは消化管出血との関連はSSRIと比較すると小さいようである。

 ただ、SSRI累積服用量と、消化管出血発生の相関は見られていない。SSRI服用初期に消化管出血が多いという事?とも思ったが、本当のところはまだ分からない。

 SSRI服用患者では、そもそもストレスに弱く、胃腸症状をきたしやすいという所も関連があるかもしれない。個人的には、交絡因子としてPPIH2ブロッカーの併用も加えてもいいんじゃないかと思った。

 また、TABLE5を見ると、SSRIとアセチルサリチル酸やNSAIDsの併用では、SSRIによる上部消化管出血リスクがさらに高くなるという結果。

 アセチルサリチル酸NSAID服用患者ではPPIの併用がなされることが多いが、これら単独処方時はPPIを併用しない例でも、SSRIとの併用時には念のためPPIの併用を考慮に入れた方がいいのかもしれない。

 「SSRI bleeding」でPubmed検索すると、他にも多数の論文が引っかかってきたので、それらにもあたってみる。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

心房細動患者に対するNOAC vs ワルファリン

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、NOACとワルファリンの比較をしたメタ分析の論文を読んでみました。

 

参考文献 Effects of Non-Vitamin K Antagonist Oral Anticoagulants Versus Warfarin in Patients With Atrial Fibrillation and Valvular Heart Disease: A Systematic Review and Meta-Analysis.

 

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=28720644

フルテキスト  http://jaha.ahajournals.org/content/6/7/e005835

 

PMID:28720644

 

研究デザイン:システマティックレビュー&メタアナリシス(4つのRCTを統合)

 

論文のPECO

P:心房細動患者71526名(13574名は心臓弁膜症あり)

E:NOAC(アピキサバン、ダビガトラン、エドキサバン、リバーロキサバン)

C:ワルファリン

O:脳卒中と全身塞栓症、死亡、大出血、頭蓋内出血

 

 一次アウトカムは明確か?

→明確と判断した

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

2名の評価者が独立してデータ抽出している

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元:PubMed、Embase、Medline、CENTRAL

・言語制限なしに探している

・追加データも探している

 

出版バイアスはさほど問題なさそう

 

 

3、元論文バイアス

Cochrane risk-of-bias algorithmを用いて元論文の質を評価している

→Table1より、ほとんどの項目がLow risk

 

元論文バイアスもさほど問題なさそう

 

4、異質性バイアス

→結果を参照

 

 

結果

脳卒中と全身塞栓症

①心臓弁膜症(VHD)あり患者群

NOAC vs ワルファリン HR0.70 95CI0.600.82  I20% p0.0001

 

②心臓弁膜症(VHD)無し患者群

NOAC vs ワルファリン HR0.84 95CI0.740.94  I246% p0.004

 

③全患者

NOAC vs ワルファリン HR0.79 95CI0.710.88  I239% p0.0001

 

★死亡

①心臓弁膜症(VHD)あり患者群

NOAC vs ワルファリン HR1.01 95CI0.911.12  I20% p0.92

 

②心臓弁膜症(VHD)無し患者群

NOAC vs ワルファリン HR0.88 95CI0.820.93  I20% p0.0001

 

③全患者

NOAC vs ワルファリン HR0.91 95CI0.860.93  I27% p0.001

 

★大出血

①心臓弁膜症(VHD)あり患者群

NOAC vs ワルファリン HR0.93 95CI0.671.28  I285% p0.64

 

②心臓弁膜症(VHD)無し患者群

NOAC vs ワルファリン HR0.85 95CI0.711.02  I284% p0.07

 

③全患者

NOAC vs ワルファリン HR0.88 95CI0.751.03  I283% p0.11

 

★頭蓋内出血

①心臓弁膜症(VHD)あり患者群

NOAC vs ワルファリン HR0.47 95CI0.240.92  I286% p0.03

 

②心臓弁膜症(VHD)無し患者群

NOAC vs ワルファリン HR0.49 95CI0.420.57  I20% p0.00001

 

③全患者

NOAC vs ワルファリン HR0.48 95CI0.380.62  I270% p0.00001

 

感想

 脳卒中、全身塞栓症に関してはワルファリンと比較してNOACの方が抑制効果はあるような結果。また、VHD無しの患者では、死亡もワルファリンと比較して有意に減らしている。

 大出血に関してはワルファリンと有意差は無いが、頭蓋内出血はNOACで少ないという結果。これは、NOACが第Ⅶ因子を阻害しないという所からきている結果なのかもしれない。

 ただし、ROCKET AF試験の結果を見てみると、ワルファリンよりも大出血、頭蓋内出血ともに多い可能性がある。NOACの中でも、リバーロキサバンはやや出血リスクは高いのかもしれない。

 統合されている4つのRCTに関しては読んでおいた方が良さそうなので、また読んでみようと思う。

  

 今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

ACS後の患者に対するアログリプチンは、心血管イベント発生に影響しますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、アログリプチン vs プラセボの心血管イベントへの影響を調べた、EXAMINE試験を読んでみました。

 

参考文献 Alogliptin after acute coronary syndrome in patients with type 2 diabetes.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/23992602

 

PMID:23992602

 

研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣勢試験)

※非劣勢マージン1.3

 

論文のPECO

P:15~90日以内に入院を要する急性心筋梗塞または不安定狭心症を発症した、2型糖尿病患者(DPP-4阻害剤、GLP-1アナログ製剤を使用していない患者が対象)

HbA1c=6.5~11.0%(インスリン製剤使用例では7.0~11.0%)

E:既存治療にアログリプチン上乗せ

C:既存治療にプラセボ上乗せ

O:(Primary) 心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム

 

※除外基準:1型糖尿病、不安定な心機能障害(NYHA分類クラスⅣの心不全、治療抵抗性狭心症、コントロール不良の狭心症、重篤な弁膜症、重篤なコントロール不良の高血圧)、スクリーニング14日以内の透析

 

※アログリプチンの用量は腎機能に応じて調整

eGFR≧60ml/min/1.73㎡ →25mg

30≧eGFR>60 ml/min/1.73㎡ →12.5mg

30 ml/min/1.73㎡≧eGFR →6.25mg

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→Cox proportional-hazards models were used to analyze the time to the first occurrence of a primary or secondary end-point event among all randomly assigned patients,の記載があり。ランダム化された人数と、結果の人数が同じなのでITT解析かと・・・。

 

※非劣勢試験なので差が出にくくなると言われているITT解析ではなく、FASかPer-protocol解析の方が望ましいのではないかと思ったり・・・。

 

サンプルサイズ

→5400名(パワー91%)

 

追跡期間

→中央値18カ月

 

結果

【ベースライン】

平均年齢:E群:61.0歳 C群:61.0

HbA1c:E群:8.0±1.1% C群:8.0±1.1

 

ベースラインからのHbA1cの変化

E群:-0.33% vs  C群:+0.03%

 

★Primary outcome(心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム)

E群:305/2701件(11.3%)vs C群:316/2679件(11.8%)

HR=0.96(95%CI≦1.16) 非劣勢:p<0.001 有益性:p=0.32

 

プラセボと比較して非劣勢が示された。有益性は示されず。

 

有害事象

低血糖、急性・慢性膵炎、悪性腫瘍の発生は両群で類似

 

感想

 プラセボと比較して、アログリプチンは心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム発生について非劣勢が示された。アログリプチンで心血管イベントが減らせるかというよりは、アログリプチンで心血管イベントを増やさないかを確かめるという前提という物であるところは注意が必要かと思われる。

 一応、HbA1cはアログリプチン群でやや低下が見られたようだが、あまり大きな変化とは感じなかった。それもあってか、低血糖の発生はプラセボと大差はなかったようである。

 二重盲検が行われているようだが、HbA1cが少しの差とはいえ若干ブラインドが破綻する可能性もあるかもしれない。ただ、Primary outcomeして設定されているものは、盲検化が見破られても影響は少ないのかもしれないが。

 Discussionにも少し記述があるが、追跡期間の中央値は18か月であり、より長期的な追跡をした場合の結果は分からない。この結果をもって、DPP-4阻害薬は心血管イベントを増やさないとも言い切ることは出来ないのかなと感じた。

  また、対象患者はACS後であるし、もともと心血管イベントリスクの高い患者が多かったようで、中央値18カ月の追跡期間の間に両群11%以上の患者でイベントが発生している。心血管イベントリスクのもう少し低い患者群では差が出てくる可能性もあるのかな?

 

 まあ、「新しい薬ほど効果は優れているんだろう」みたいな固定観念は捨てて、一次情報に立ち返り、冷静に情報を吟味するという事は非常に重要だと思います。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

脳卒中を起こして間もない患者の再発はテルミサルタンで防げますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

諸事情により、更新がしばらく途絶えていましたが、再開しようと思います。

 

今回は、脳卒中を発症してから間もない患者に対するテルミサルタンの効果をみた研究です。

 

参考文献 Telmisartan to prevent recurrent stroke and cardiovascular events.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=18753639

 

PMID:18753639

 

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

アスピリン(25mg)+ジピリダモール(200mg) vs クロピドグレル(75mg)と、テルミサルタン vs プラセボの2×2の研究デザイン

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

論文のPECO

P:50歳以上で、120日以内に虚血性脳卒中を起こした患者20332名

E:テルミサルタン80mg/日→10146名

C:プラセボ→10186名

O:(Primary)脳卒中の再発

 (Secondary)主要心血管イベント(心血管死亡、脳卒中の再発、心筋梗塞心不全の新規発症または再発)、糖尿病の新規発症

 

除外基準

原発性出血性脳卒中脳卒中による重篤な障害、披験薬の抗血小板薬への禁忌

 

一次アウトカムは明確か?

→明確

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲見化されているか?

→盲検化はされていないと思われる(血圧の変動で見破られる可能性あり)

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

追跡率=99.4%(lost to follow upはE群51名、C群74名)

 

サンプルサイズ

20000名(パワー91%)

 

追跡期間

平均30.か月

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 E群:66.1±8.6歳  C群:66.2±8.6歳

血圧 E群:144.1±16.4/83.8±10.5  C群:144.2±16.7/83.8±10.6

 

☆Primary outcome脳卒中の再発)

E群:880/10146件(8.7%)vs C群:934/10186件(9.2%)

HR=0.95(95%CI:0.86~1.04) p=0.23

 

☆Secondary outcome

主要心血管イベント(心血管死亡、脳卒中の再発、心筋梗塞心不全の新規発症または再発)

 

E群:1367/10146件(13.5%)vs C群:1463/10186件(14.4%)

HR=0.94(95%CI:0.87~1.01) p=0.11

 

糖尿病の新規発症

 

E群:125/10146件(1.2%)vs C群:151/10186件(1.5%)

HR=0.82(95%CI:0.65~1.04) p=0.10

 

☆有害事象

低血圧

E群:393/10146件(3.9%)vs C群:186/10186件(1.8%)

P<0.001

 

感想

 脳卒中後の患者の抗血小板療法にテルミサルタンを上乗せしても、脳卒中の再発は減らなかったという結果。脳卒中の再発防止目的として、テルミサルタンの積極的にな使用を推奨するような結果ではないかなと感じた。

 並行して行われている、アスピリン+ジピリダモール vs クロピドグレルの結果も気になるところである。

 それにしても、テルミサルタンは食事の影響を受けたり、大部分が胆汁を介して便中に排泄されたり、個性たっぷりで面白い薬だな~と個人的には感じている。さらに色々と調べてみたい。

 

 今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

7/29(土) 第5回居酒屋抄読会ツイキャス配信のご案内

ご訪問ありがとうございます。

 

7/29(土)の21:00頃から、第5回の居酒屋抄読会を開催し、リアルタイムでツイキャス配信致します。

 

今回は、大阪の梅田の居酒屋より配信予定です。

 

いつもと同じく、個室居酒屋でお酒を飲みながら、のんびりまったりゆるーくやろうと思います。

 

今回のメンバーはInao(いなお)先生、キャノン先生ぐっち先生zuratomo(ずらとも)先生ちぃ先生にいやんみやQ先生、りちおさん、リンコ先生の9名と、特別ゲストを1名お招きしまして、計10名で配信致します。いつになく大人数です!!

 

これまでの居酒屋抄読会は薬剤師のみで配信してきましたが、今回は登録販売者の、りちおさんにも参加して頂けました。非常にありがたいです!違った視点からの意見も出て、議論が白熱して盛り上がりそう(∩´∀`)∩

 

そして今回は、グルコサミン・コンドロイチンに関する論文をお題論文として選択させていただきました。

 

使用文献はこちら↓↓

Glucosamine, chondroitin sulfate, and the two in combination for painful knee osteoarthritis.

リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=16495392

 

PMID:16495392

 

 ツイキャス配信はこちらから↓↓

http://twitcasting.tv/zuratomo4

 

 

 

 

 仮想症例シナリオ

<仮想症例> ひざ痛に悩むご近所のTさん(68歳、女性)

 

貴方はドラッグストアで勤務している登録販売者。

品出しをしているとご近所のTさんが膝をさすりながら歩いて来ました。

 

貴方「こんにちは。Tさんどうされました?」

Tさん「両膝が痛くてね。冬場には歩けなくなるくらいひどくてね。テレビのCMでグルコサミンやコンドロイチンがいいって言ってたし、友達の知り合いも使ったらよくなったらしいしね。サプリかなんかでいいのあるかな?」

 

取りあえずサプリや健康食品のコーナーにご案内。

 

貴方「グルコサミンやコンドロイチンはこのあたりになります」

Tさん「どれもいい値段するのね~。これは120mg、180粒で3360円ね~。こっちは医薬品?5600円?コンドロイチンは1500mg?効果に違いってあるの?やっぱり医薬品がいいのかな?素直にお医者様にかかった方がいいのかしら?あなたはどう思う?」

貴方「A先生!」

 

Tさんに断ってから時間をもらい薬剤師のA先生に相談した貴方。

 

A先生「一緒に調べて考えてみよう」とA先生が以前読んだPharmaTribuneの記事のGoogleなどの検索サイトで日本語による情報検索方法を試してみることにしました。

https://t.co/snRXVMxTNO

 

調べてみると一次情報も載せているブログもありました。

http://rokushin.blog.so-net.ne.jp/2015-11-09

http://www.rda.co.jp/topics/topics3853.html

 

「GAIT研究?そんなのあるんだ!」

早速調べてみると、以下の論文に当たりました。

Glucosamine, chondroitin sulfate, and the two in combination for painful knee osteoarthritis.

 

 

 

 

以上のお題論文と仮想症例シナリオを用いて、皆さまと共に議論し、盛り上がることが出来ればと思います。

 

 今回も配信中にその都度、気軽にコメントを頂けると嬉しいですし、視聴して下さる方とも一緒に議論できればより楽しい抄読会になるのではないでしょうか。

 

 さあ、楽しい土曜日の夜です。

 

 視聴頂ける皆さまも、ぜひビールやチューハイ、ワインなど片手に持ちながら、気軽にご参加いただければと思いますので、どうぞよろしくお願い致します。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

 

高齢の高血圧患者は収縮期血圧<140mmHgを目指すべきですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

ここのところ、ある事情で高血圧関連の論文を読んでいますが、今回は、VALISH Studyの論文を読んでみました。

 

参考文献 Target blood pressure for treatment of isolated systolic hypertension in the elderly: valsartan in elderly isolated systolic hypertension study.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/20530299

 

PMID:20530299

 

研究デザイン:ランダム化比較試験(日本)

 

論文のPECO

P:収縮期高血圧(収縮期血圧160~199mmHg、拡張期血圧<90mmHg)の70~84歳の高齢者3260名

E:厳格な血圧コントロール(<140mmHgを目指す)→1545名

C:中等度の血圧コントロール(140~150mmHgを目指す)→1534名

O:(Primary) 突然死、致死性・非致死性脳卒中、致死性・非致死性心筋梗塞心不全による死亡、心血管疾患による予期せぬ入院、腎機能障害(血清クレアチニン値の倍化、透析導入)の複合エンドポイント

 (Secondary)Primary outcomeの各項目、総死亡、狭心症の新規発症または悪化

 

※ファーストステップとしてバルサルタン40~80mg/日を使用。1~2か月で目標血圧値に達しなければ、バルサルタンを160mg上限として増量、その上/または、ARB以外の他の降圧薬が追加(低用量の利尿薬、CBBなど)

 

※除外基準(以下のリンク先参照)

リンク→ https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/15750259

・二次性高血圧、悪性高血圧、収縮期血圧≧200mmHg、拡張期血圧≧90mmHg、6か月以内の脳血管疾患または心筋梗塞既往、6か月以内に冠動脈形成術を受けた患者、重篤な心不全(NYHA分類クラスⅢ以上)、重篤な大動脈狭窄または弁膜疾患、心房細動、心房粗動、重篤な風情脈、血清クレアチニン≧2mg/dlの腎機能障害、重篤な肝機能障害、バルサルタンの過敏症

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→PROBE法

 

均等に割り付けられているか

→おおよそ均等に2群に割り付けられていると思われるが、喫煙はE群が多め。結果に大きく影響するほどではなさそう。

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている(per-protocol analysisもされているが)

 

サンプルサイズ

→3000名(パワー80%、α=5%)

 

脱落は結果を覆すほどあるか?

→lost to follow-upは181名:追跡率=94.4%

 

追跡期間

→平均2.85年、中央値3.07年

 

結果

【ベースライン】

・平均年齢:E群:76.1±4.1歳  C群:76.1±4.1歳

・血圧:E群:169.5±7.9/81.7±6.6mmHg  C群:169.6±7.9/81.2±6.8mmHg

 

【36カ月後】

・血圧:E群:136.6±13.3/74.8±8.8mmHg  C群:142±12.5/76.5±8.9mmHg

 

【追跡期間終了時点】

バルサルタン服用量 E群:91.2±36.9 mg/日  C群:88.1±36.8 mg/日

バルサルタン単独治療 E群:56.1%  C群:57.6%

 

Primary outcome

★突然死、致死性・非致死性脳卒中、致死性・非致死性心筋梗塞心不全による死亡、心血管疾患による予期せぬ入院、腎機能障害(血清クレアチニン値の倍化、透析導入)の複合エンドポイント

※ITT解析

C群:47/1545件(3.04%)vs C群:52/1534件(3.39%)

HR=0.89(95%CI:0.53~1.36) p=0.383

 

※per-protocol analysis 

HR=1.04(95%CI:0.56~1.93) p=0.894

 

Secondary outcome

★ハードエンドポインント(心血管死亡、TIAを除く致死性・非致死性脳卒中、致死性・非致死性心筋梗塞

C群:32/1545件(2.07%)vs C群:37/1534件(2.41%)

HR=0.84(95%CI:0.53~1.36) p=0.484

 

★総死亡

C群:24/1545件(1.55%)vs C群:30/1534件(1.96%)

HR=0.78(95%CI:0.46~1.33) p=0.362

 

★心血管死亡

C群:11/1545件(0.71%)vs C群:11/1534件(0.72%)

HR=0.97(95%CI:0.42~2.25) p=0.950

 

★突然死

C群:6/1545件(0.39%)vs C群:8/1534件(0.52%)

HR=0.73(95%CI:0.25~2.11) p=0.564

 

★致死性・非致死性脳卒中

C群:16/1545件(1.04%)vs C群:23/1534件(1.50%)

HR=0.68(95%CI:0.36~1.29) p=0.237

 

★致死性・非致死性心筋梗塞

C群:5/1545件(0.32%)vs C群:4/1534件(0.26%)

HR=1.23(95%CI:0.33~4.56) p=0.761

 

★予期せぬ入院

C群:12/1545件(0.78%)vs C群:14/1534件(0.91%)

HR=0.84(95%CI:0.39~1.82) p=0.656

 

★腎機能不全

C群:5/1545件(0.32%)vs C群:2/1534件(0.13%)

HR=2.45(95%CI:0.48~12.64) p=0.267

 

有害事象

2群間で大きな差なし

 

感想

 ベースとしてバルサルタンを用いた治療の場合、血圧を140mmHg未満にコントロールするのと、140~150mmHgにコントロールするのとで、突然死、致死性・非致死性脳卒中、致死性・非致死性心筋梗塞心不全による死亡、心血管疾患による予期せぬ入院、腎機能障害(血清クレアチニン値の倍化、透析導入)の複合エンドポイントは変わらないという結果。

 36カ月後の血圧の値を見てみると、厳格降圧群と中等度降圧群でその差は収縮期血圧5.6mmHg、拡張期血圧は1.7mmHgと大きな差ではないため、アウトカム発生にも差が見られていないのかもしれない。Secondary outcomeも全て有意差無しとなっている。

 そもそもどちらの群においても、Primary outcome発生はそれぞれ3.04%、3.39%とわずかなので、βエラーの可能性もあるのかもしれないが、少なくとも70歳を超える高齢者に対しての降圧は140mmHg未満を目指さなくても、150mmHg未満で十分なのではないかと感じた。

 

 また、関連する以下の論文も気になるので、今後読んでみることにする。

Risks of untreated and treated isolated systolic hypertension in the elderly: meta-analysis of outcome trials.

リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/10752701

 

PMID:10752701

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

糖尿病患者の降圧にはACE-IとARBどちらがいいですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は糖尿病患者へのACE-I、ARBと総死亡や心血管死亡に関する論文を読んでみました。

 

参考文献 Effect of angiotensin-converting enzyme inhibitors and angiotensin II receptor blockers on all-cause mortality, cardiovascular deaths, and cardiovascular events in patients with diabetes mellitus: a meta-analysis.

 

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/24687000

 

PMID:24687000

 

研究デザイン:メタアナリシス

 

論文のPECO

P: 糖尿病患者56444名

E:①ACE-I(32827名) ②ARB(23867名)

C:ACE-I、ARB無し(プラセボ、治療無し、他の降圧薬)

O:(Primary)総死亡、心血管死亡 

 

 

一次アウトカムは明確か?

→アウトカムは2つなのでそこまで問題ないとは思う

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

・2名の評価者が独立してデータ解析

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2、出版バイアス

情報元: MEDLINE、EMBASE、Cochrane Central Register of Controlled Trials

 

・参考文献も集めている

・言語制限なしに集めてる

・未出版のデータも探している

 ・ファンネルプロットを用いて出版バイアスが検討されている

 

 出版バイアスはさほど問題なさそう

 

3、元論文バイアス

・35個のRCTのみ集めている

 

・Jadadスコアで元論文の質を評価

→60%の研究はJadadスコア3点(0~5点)以上なので質はいいと書いてあるが、2点の研究も多い印象であるので注意が必要

 

元論文バイアスは多少注意が必要かも

 

4、異質性バイアス

異質性検定がされている。ACE阻害薬では異質性はそこまで高くなさそう。ARBは中程度の異質性。

 

結果

★総死亡

・ACE-I:1209/12767件 vs C群:1365/12777件

RR0.87 (95%CI:0.78~0.98) p=0.02 I2=26%

 

ARB:540/8950件 vs C群:576/8963

RR0.94 (95%CI:0.82~1.08) p=0.39 I2=22% 

 

★心血管死亡

・ACE-I vs C

RR0.83 (95%CI:0.70~0.99) p=0.04 I2=40%

 

ARB vs C

RR1.21 (95%CI:0.81~1.80) p=0.35 I2=61% 

 

感想

 今回の結果では、糖尿病患者の総死亡や心血管死亡はARBよりACE-Iの方が抑制できることが示唆されている。

 ACE阻害薬のうち、比較的対象患者数の多いADVANCEやHOPE研究ではプラセボと比較して総死亡が有意に減っている。規模の小さい研究は症例数が少ないこともあってか、有意差が出ていない。Activeコントロールと比較では、有意差無しである。

 一方、ARBは総死亡、心血管死亡ともに有意差無しとなっている。但し、ロサルタンを用いたLIFE studyでは、コントロール群との比較で総死亡を有意に減らしている。ただ、対照になっているのがβ遮断薬のアテノロールで、糖尿病に対して悪影響を及ぼす気もするし、ARBのクラスエフェクトとして語れないのかもしれないので、この辺りも読んでみることにする。

 また、あくまでSecondary outcomeだが、心不全はACE-I、ARBいずれでも抑制されており、心筋梗塞はACE-Iのみ抑制されている。少なくとも、どちらも全く効果が無いわけではなさそう。現時点では、ACE-Iの方がARBに比べて優勢かなという印象。薬価も含めて。

 

 ★LIFE study

Cardiovascular morbidity and mortality in patients with diabetes in the Losartan Intervention For Endpoint reduction in hypertension study (LIFE): a randomised trial against atenolol.

リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/11937179

 

PMID:11937179

 

★糖尿病患者へのβブロッカーと心血管イベント

Risk of Cardiovascular Events in Patients With Diabetes Mellitus on β-Blockers.

リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28559400

 

PMID:28559400

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。