ダパグリフロジンは心血管イベントに影響しますか?
ご訪問ありがとうございます。
今回は、ダパグリフロジンと心血管イベントに関するメタ分析の論文を読んでみました。メタ分析とはいっても、第2b相、第3相試験のメタ分析ではありますが。
参考文献 Cardiovascular effects of dapagliflozin in patients with type 2 diabetes and different risk categories: a meta-analysis.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=26895767
PMID:26895767
研究デザイン:メタ分析
論文のPECO
P:2型糖尿病患者
E:ダパグリフロジン服用有り(2.5~10mg)
C:ダパグリフロジン服用無し(プラセボまたは他剤)
O:MACE(心血管死亡、心筋梗塞、脳卒中)+不安定狭心症による入院、MACE
一次アウトカムは明確か?
→明確
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
4つのバイアス
1、評価者バイアス
→2名以上の評価者でデータ抽出等しているかは不明。(そもそも、すべての研究が組み入れられている?)
評価者バイアス不明
2、出版バイアス
情報元:第2b相(5件:12~24週)、第3相試験(16件:~208週)
→網羅的に集められていると判断していい?
出版バイアス不明
3、元論文バイアス
→元論文バイアスの評価を行っているか不明(元論文は第2相、第3相試験)
元論文バイアス不明
4、異質性バイアス
→記載なし
結果
☆MACE
(全員)
ダパグリフロジン群:1.15/100人年 vs C群:1.69/100人年
HR=0.772(95%CI:0.543~1.097)
(心血管疾患の既往ありの患者のみ)
ダパグリフロジン群:2.21/100人年 vs C群:2.76/100人年
HR=0.802(95%CI:0.527~1.221)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:3.28/100人年 vs C群:3.61/100人年
HR=0.916(95%CI:0.512~1.640)
※心血管リスク因子:65歳以上、心血管イベント既往歴、高血圧既往歴、脂質異常症既往歴、喫煙歴、早期冠状動脈性心疾患の家族歴、eGFR<60mL/min/1.73m2
☆MACE+不安定狭心症による入院
(全員)
ダパグリフロジン群:1.46/100人年 vs C群:2.15/100人年
HR=0.787(95%CI:0.579~1.070)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:2.94/100人年 vs C群:3.76/100人年
HR=0.806(95%CI:0.562~1.156)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:4.19/100人年 vs C群:5.06/100人年
HR=0.824(95%CI:0.497~1.365)
☆心血管死亡
(全員)
ダパグリフロジン群:0.37/100人年 vs C群:0.59/100人年
HR=0.704(95%CI:0.367~1.359)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:0.74/100人年 vs C群:0.85/100人年
HR=0.785(95%CI:0.365~1.689)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:1.27/100人年 vs C群:1.11/100人年
HR=1.018(95%CI:0.369~2.811)
☆心筋梗塞
(全員)
ダパグリフロジン群:0.48/100人年 vs C群:0.91/100人年
HR=0.567(95%CI:0.339~0.947)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:0.82/100人年 vs C群:1.39/100人年
HR=0.578(95%CI:0.301~1.107)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:1.18/100人年 vs C群:1.42/100人年
HR=0.767(95%CI:0.295~1.994)
☆脳卒中
(全員)
ダパグリフロジン群:0.45/100人年 vs C群:0.57/100人年
HR=0.999(95%CI:0.536~1.864)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:0.95/100人年 vs C群:0.69/100人年
HR=1.009(95%CI:0.491~2.074)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:1.29/100人年 vs C群:1.68/100人年
HR=0.806(95%CI:0.317~2.050)
☆不安定狭心症
(全員)
ダパグリフロジン群:0.44/100人年 vs C群:0.58/100人年
HR=0.870(95%CI:0.475~1.593)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:0.87/100人年 vs C群:1.06/100人年
HR=0.883(95%CI:0.442~1.767)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:0.96/100人年 vs C群:1.42/100人年
HR=0.706(95%CI:0.263~1.895)
☆予期せぬ冠動脈再建術
(全員)
ダパグリフロジン群:0.90/100人年 vs C群:1.47/100人年
HR=0.729(95%CI:0.497~1.067)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:1.95/100人年 vs C群:2.67/100人年
HR=0.795(95%CI:0.512~1.233)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:2.39/100人年 vs C群:2.80/100人年
HR=0.952(95%CI:0.493~1.836)
☆心不全による入院
(全員)
ダパグリフロジン群:0.15/100人年 vs C群:0.41/100人年
HR=0.361(95%CI:0.156~0.838)
(心血管疾患の既往ありの患者)
ダパグリフロジン群:0.51/100人年 vs C群:0.94/100人年
HR=0.371(95%CI:0.155~0.889)
(心血管リスクのある高齢者)
ダパグリフロジン群:0.67/100人年 vs C群:0.96/100人年
HR=0.389(95%CI:0.103~1.470)
感想
MACEまたは、MACE+不安定狭心症による入院はいずれも減少傾向はあるものの、有意差無しとなっている。
心血管疾患の既往のある患者では、心不全による入院は有意に減らすという結果が得られている。
現時点ではいずれの患者に対しても、積極的にダパグリフロジンを使う事を勧めるような結果とは感じない。ただ、心血管疾患既往のある患者では。心不全による入院を減らすという結果も出ているため使用を全く否定するようなものでもないかと思う。
いずれにしても、第2b相と第3相試験の統合結果という事で、結果をそのまま鵜呑みには出来ないかもしれないと感じた。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
重篤な低血糖を経験したことがあると、股関節骨折のリスクは高くなりますか?
ご訪問ありがとうございます。
これまで低血糖と骨折に関する論文を読んでいなかったため、今回見つけて読んでみました。残念ながら、アブストラクトしか読めませんが・・・。
参考文献 Severe hypoglycemia and hip fracture in patients with type 2 diabetes: a nationwide population-based cohort study.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28374044
PMID:28374044
研究デザイン:コホート研究
論文のPECO
P:2型糖尿病患者
E:重篤な低血糖あり→2588名
C:重篤な低血糖無し→5173名
O:股関節骨折
研究対象集団の代表性
→台湾の国民健康保険データベースが用いられており、大きな問題無し
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?
→不明
追跡期間
→中央値3.9年
結果
股関節骨折
E群:148/2588件(17.9/1000人年) vs C群:209/5173件(8.83/1000人年)
調整HR=1.71(95%CI:1.35~2.16)
※股関節骨折を起こした患者の約半数が、最初の重篤な低血糖から2年以内に股関節骨折を経験
※SU薬単独、インスリン単独、インスリン分泌促進薬+インスリンを使用している患者で、股関節骨折リスクが高い傾向に見られた
感想
低血糖を起こすと、その後の股関節骨折リスクは高くなる傾向にあるとの結果。残念ながらアブストラクトしか読めないため詳細な結果は分からないが、SU薬やインスリン使用患者は転倒に十分注意する必要がある。また、低血糖を起こしやすい患者の血糖降下薬使用は慎重に行う必要がある。
最初の重篤な低血糖から2年以内の股関節骨折の割合が高いとの結果であるため、低血糖を起こした場合は、比較的早い段階で薬剤の変更や減量も考慮する必要があるのではないかと感じた。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
糖尿病治療薬ごとの心不全、心血管疾患、総死亡
ご訪問ありがとうございます。
今回も糖尿病関連で気になる論文を見つけたので読んでみました。
参考文献 Diabetes treatments and risk of heart failure, cardiovascular disease, and all cause mortality: cohort study in primary care.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=27413012
PMID:27413012
研究デザイン:コホート研究
論文のPECO
P:25~84歳の2型糖尿病患者469688名
E:①グリタゾン、②グリプチン、③メトホルミン、④SU薬、⑤インスリン
C:使用無し
O:心不全、心血管疾患(狭心症、心筋梗塞、脳卒中、TIA+)、総死亡
※除外基準
35歳以前に1型糖尿病の診断を受けインスリン導入となっている患者
研究対象集団の代表性
→英国のプライマリケアデータベースが用いられており、大きな問題は無いかと思われる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?
→性別、年齢、糖尿病の診断からの期間、民族、タウンゼント階層スコア、喫煙歴、他の糖尿病治療薬併用、抗凝固薬、チアジド、ACE-I、ARB、CCB、スタチン、アスピリン、合併症(失明、高血糖、低血糖、切断、重篤な腎不全)、高血圧、心血管疾患、心房細動、慢性腎不全、関節リウマチ、心臓弁膜症、末梢血管疾患、BMI、収縮期血圧、HbA1c、血清クレアチニン、HDLの割合
結果
☆それぞれの糖尿病治療薬服用無しの患者との比較
総死亡
グリタゾン 調整HR=0.77(95%CI:0.71~0.84)
グリプチン 調整HR=0.82(95%CI:0.77~0.88)
メトホルミン 調整HR=0.59(95%CI:0.58~0.60)
SU薬 調整HR=1.10(95%CI:1.07~1.12)
インスリン 調整HR=1.47(95%CI:1.41~1.53)
グリタゾン 調整HR=0.74(95%CI:0.66~0.83)
グリプチン 調整HR=0.86(95%CI:0.78~0.95)
メトホルミン 調整HR=0.70(95%CI:0.68~0.73)
SU薬 調整HR=1.32(95%CI:1.22~1.43)
インスリン 調整HR=0.92(95%CI:0.79~1.06)
心血管疾患
グリタゾン 調整HR=0.75(95%CI:0.69~0.81)
グリプチン 調整HR=0.94(95%CI:0.88~1.00)
メトホルミン 調整HR=0.76(95%CI:0.74~0.78)
SU薬 調整HR=1.00(95%CI:0.97~1.03)
インスリン 調整HR=1.23(95%CI:1.15~1.31)
☆単剤、2剤併用、3剤併用ごとの比較(無治療との比較)
①単剤
メトホルミン 調整HR=0.68(95%CI:0.65~0.71)
SU薬 調整HR=1.00(95%CI:0.94~1.07)
インスリン 調整HR=1.26(95%CI:1.10~1.44)
グリタゾン 調整HR=0.50(95%CI:0.26~0.97)
グリプチン 調整HR=0.87(95%CI:0.58~1.31)
心血管疾患
メトホルミン 調整HR=0.76(95%CI:0.74~0.79)
SU薬 調整HR=1.00(95%CI:0.95~1.05)
インスリン 調整HR=1.22(95%CI:1.08~1.37)
グリタゾン 調整HR=0.79(95%CI:0.53~1.18)
グリプチン 調整HR=1.14(95%CI:0.85~1.54)
総死亡
メトホルミン 調整HR=0.64(95%CI:0.63~0.66)
SU薬 調整HR=1.24(95%CI:1.20~1.28)
インスリン 調整HR=1.64(95%CI:1.55~1.74)
グリタゾン 調整HR=0.89(95%CI:0.67~1.18)
グリプチン 調整HR=1.20(95%CI:1.00~1.44)
②2剤併用
メトホルミン+SU薬 調整HR=0.74(95%CI:0.70~0.78)
メトホルミン+インスリン 調整HR=1.08(95%CI:0.93~1.25)
メトホルミン+グリタゾン 調整HR=0.50(95%CI:0.40~0.63)
メトホルミン+グリプチン 調整HR=0.62(95%CI:0.52~0.75)
SU薬+インスリン 調整HR=1.18(95%CI:0.96~1.45)
SU薬+グリタゾン 調整HR=0.65(95%CI:0.47~0.89)
SU薬+グリプチン 調整HR=0.88(95%CI:0.66~1.17)
心血管疾患
メトホルミン+SU薬 調整HR=0.75(95%CI:0.73~0.78)
メトホルミン+インスリン 調整HR=0.89(95%CI:0.78~1.01)
メトホルミン+グリタゾン 調整HR=0.46(95%CI:0.39~0.54)
メトホルミン+グリプチン 調整HR=0.67(95%CI:0.59~0.75)
SU薬+インスリン 調整HR=1.18(95%CI:0.96~1.44)
SU薬+グリタゾン 調整HR=0.75(95%CI:0.58~0.98)
SU薬+グリプチン 調整HR=0.97(95%CI:0.76~1.22)
総死亡
メトホルミン+SU薬 調整HR=0.62(95%CI:0.60~0.64)
メトホルミン+インスリン 調整HR=0.76(95%CI:0.69~0.84)
メトホルミン+グリタゾン 調整HR=0.55(95%CI:0.47~0.64)
メトホルミン+グリプチン 調整HR=0.52(95%CI:0.46~0.59)
SU薬+インスリン 調整HR=1.49(95%CI:1.35~1.66)
SU薬+グリタゾン 調整HR=0.96(95%CI:0.80~1.16)
SU薬+グリプチン 調整HR=0.92(95%CI:0.79~1.08)
③3剤併用
メトホルミン+SU薬+インスリン 調整HR=0.91(95%CI:0.76~1.09)
メトホルミン+SU薬+グリタゾン 調整HR=0.54(95%CI:0.45~0.64)
メトホルミン+SU薬+グリプチン 調整HR=0.60(95%CI:0.52~0.70)
心血管疾患
メトホルミン+SU薬+インスリン 調整HR=0.95(95%CI:0.82~1.09)
メトホルミン+SU薬+グリタゾン 調整HR=0.59(95%CI:0.53~0.66)
メトホルミン+SU薬+グリプチン 調整HR=0.70(95%CI:0.63~0.78)
総死亡
メトホルミン+SU薬+インスリン 調整HR=0.98(95%CI:0.87~1.10)
メトホルミン+SU薬+グリタゾン 調整HR=0.44(95%CI:0.38~0.50)
メトホルミン+SU薬+グリプチン 調整HR=0.49(95%CI:0.44~0.55)
感想
いずれのアウトカムもSU薬、インスリン以外では減少傾向を示す結果。個人的には、グリタゾン、グリプチンで心不全が有意に減っている点が興味深いと感じている。
全体的に、やはりメトホルミンはいずれのアウトカムも減らしている印象であり、反対にインスリン+SU薬という組み合わせは各アウトカムを増やす傾向が見られているため、この組み合わせはどうなのかなという印象。
2剤併用の場合、メトホルミンと組み合わせるなら、これまでにいくつか読んできた論文と同じようにSU薬よりはグリプチンの方が良さそうである。
あくまでコホート研究であるので、各薬剤の組合せごとに比較したRCTも見つけて読んでいく必要があると思う。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
エンパグリフロジンで心血管イベントは防げますか?
ご訪問ありがとうございます。
今更ながら、SGLT-2阻害薬エンパグリフロジンの論文である、EMPA-REGを読んでみました。
参考文献 Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26378978
PMID:26378978
研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣性試験) 非劣性マージン1.3
論文のPECO
P:18歳以上の心血管イベント高リスクの2型糖尿病患者7028名
※BMI<45、eGFR>30ml/min/1.73m2、HbA1c=7.0~9.0%(12週以内に血糖降下薬の服用無しの場合)、7.0~10.0%(12週以内に血糖降下薬服用有りの場合)
E:エンパグリフロジン(10 or 25mg)
C:プラセボ
O:(Primary) 心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム
(Secondary)Primary outcomeと不安定狭心症による入院
ランダム化されているか?
→ランダム化されている(computer-generated random-sequence)
一次アウトカムは明確か?
→明確といえる
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている。しかし、HbA1cの測定値によりブラインドが見破られている可能性あり
隠蔽化されているか?
→隠蔽化されている(interactive voice- and Web-response systemが用いられている)
中央割り付け
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる
ITT解析を行われているか?
→mITT解析されている
サンプルサイズ
→691件のイベント発生(パワー90%)
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率=99.2%
追跡期間
→中央値3.1年
結果
【ベースライン】・・・Supplementary Appendixより↓
http://www.nejm.org/doi/suppl/10.1056/NEJMoa1504720/suppl_file/nejmoa1504720_appendix.pdf
平均年齢:プラセボ群:63.2±8.8歳 エンパグリフロジン群:63.1±8.6歳
BMI:プラセボ群:30.7±5.2 エンパグリフロジン群:30.6±5.3
HbA1c:プラセボ群:8.08±0.84% エンパグリフロジン群:8.07±0.85%
糖尿病歴10年以上:プラセボ群:57.4% エンパグリフロジン群:57.0%
【アウトカム】
(Primary outcome)心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム
プラセボ群:43.9/1000人年vs エンパグリフロジン群:37.4/1000人年
RR=0.86(95%CI:0.74~0.99) 非劣性p<0.001 優越性p=0.04 NNT=63
心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中、不安定狭心症による入院の複合アウトカム
プラセボ群:52.5/1000人年vs エンパグリフロジン群:46.4/1000人年
RR=0.89(95%CI:0.78~1.01) 非劣性p<0.001 優越性p=0.08
総死亡
プラセボ群:28.6/1000人年vs エンパグリフロジン群:19.4/1000人年
RR=0.68(95%CI:0.57~0.82) p<0.001
心血管死亡
プラセボ群:20.2/1000人年vs エンパグリフロジン群:12.4/1000人年
RR=0.62(95%CI:0.49~0.77) p<0.001
非致死性心筋梗塞
プラセボ群:18.5/1000人年vs エンパグリフロジン群:16.0/1000人年
RR=0.87(95%CI:0.70~1.09) p=0.22
非致死性脳卒中
プラセボ群:9.1/1000人年vs エンパグリフロジン群:11.2/1000人年
RR=1.24(95%CI:0.92~1.67) p=0.16
心不全による入院
プラセボ群:14.5/1000人年vs エンパグリフロジン群:9.4/1000人年
RR=0.65(95%CI:0.50~0.85) p=0.002
【有害事象】
(男性)プラセボ群:1.5% vs エンパグリフロジン群:5.0%
(女性)プラセボ群:2.6% vs エンパグリフロジン群:10.0%
骨折
プラセボ群:3.9% vs エンパグリフロジン群:3.8%
感想
エンパグリフロジン服用により、プラセボに対し心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカムはRR=0.86(95%CI:0.74~0.99)となり非劣性が示され、かつ優越性も示されている。
しかし、個々のアウトカムを見てみると、心血管死亡は有意に減っているが、非致死性心筋梗塞や非致死性脳卒中は有意差無しとなっている。どのような原因による死亡が増えているのだろうか。心不全?
今回の研究の対象患者は、糖尿病期間10年以上が57%程度と比較的罹患期間が長い患者が対象となっている。
Primary outcomeの95%信頼区間上限は0.99となっており、今回の解析ではITT解析よりは有意差の出やすいmITT解析を行っているため、優越性に関してはITT解析を行うと有意差無しとなってしまう可能性もあるかもしれない。
この研究では、CANVAS同様にエンパグリフロジンの用量10mgと25mgを合体させたPoolとして解析している。本来なら10mg服用群と25mg服用群に分けて解析すべきなのではないだろうかと思う。
CANVAS programでは骨折がカナグリフロジン服用群で増加する可能性が指摘されていたが、エンパグリフロジンではそのような傾向は見られていない。しかし、生殖器の感染症はやはり大きく増加する事が示唆されている。
Supplementary Appendixより、メトホルミン併用患者が70%以上であり、この事からも糖尿病治療の第一選択としてエンパグリフロジンを強く推奨するような論文ではないように思われる。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
カナグリフロジンで心血管イベントは減らせますか?
ご訪問ありがとうございます。
9/16(土)に、兵庫県養父市で開催された竹田城EBMワークショップに参加してきました。
最近は日程が合わなかったりで、student CASPなどのワークショップに参加できておらず、禁断症状が出ていたので、久しぶりのワークショップで楽しかったです(*'ω'*)
そこで今回は、お題論文となっていたCANVAS programについてまとめてみます。
参考文献 Canagliflozin and Cardiovascular and Renal Events in Type 2 Diabetes
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28605608
いつの間にか、フルテキスト見られなくなっているんですよね・・・。
PMID:28605608
研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣性試験:非劣性マージン1.3)
※CANVAS試験とCANVAS-R試験2つ研究の結果を統合している
☆最近は非劣性試験が増えてきている印象です。多くの疾患において標準治療が確立されてきているため、分野によるのでしょうが、最近ではプラセボ対照の比較試験が倫理的に許されなくなってきているようです。
論文のPECO
P:2型糖尿病で心血管イベントハイリスクの患者10142名
E:カナグリフロジン(100mg、300mg)
C:プラセボ
O:心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム
※CANVAS試験
→カナグリフロジン300mg、カナグリフロジン100mg、プラセボに1:1:1で割り付け。
※CANVAS-R試験
→カナグリフロジン(初期用量100mg、その後必要に応じて300mgに増量)、プラセボに1:1で割り付け。
ランダム化されているか?
→ランダム化されている(computer-generated randomization)
一次アウトカムは明確か?
→複合アウトカムなので明確といえる
※複合アウトカムでは、含まれているアウトカムのうちどれか1つが発生した時点でその患者の追跡は打ち切りになるそうです。
(例)死亡、心筋梗塞、脳卒中の複合アウトカムが設定されている場合、心筋梗塞を発症し、その後脳卒中を発症したとしても最初に発生した心筋梗塞のみイベントとしてカウントされる。そのため、実際に起こったイベント数よりは少なくカウントされることになる。
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→二重盲検されている(Randomization, Treatment, and Follow-upに、Participants and all trial staff were unaware of the individual treatment assignments until completion of the trial.と記載がある)
※しかし、HbA1cなどを確認するためブラインドが見破られている可能性がある
隠蔽化されているか?
→隠蔽化されている(Randomization was performed centrally through an interactive Web-based response system)中央割り付け
※今まで盲検化と隠蔽化の違いがあまりよく分かっていなかったので、ちょっと補足を。
隠蔽化(concealment):目の前の患者をこれから割り付けする時に、すでに割り付けられた別の患者がどちらの群に割り付けられたか、割り付けを行う者に分からないようにする(介入が始まる前)
盲検化(blind):研究を進めていく上で、追跡終了までどちらの群に割り付けられたか分からないようにする事(介入が始まった後)
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる(Table1参照)
※最近はTable1のベースラインについて、p値を記載しなくなっているらしいです。ベースラインで比較している項目がたくさんあるので、どれかしら有意差が出てしまう可能性があるし、その有意差を意識しすぎると振り回されてしまう事があるからという理由らしいです。なので、p値ではなく実際の数字をみて大きな偏りが無いか比較していくことが重要だそうです。
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
※ITT解析を行うと差が出にくい傾向になります。非劣性試験では、ITT解析を使うと非劣性が示されやすくなる懸念があり、PPSで検討する必要があるのではないでしょうか?
サンプルサイズ
→688件のイベント(パワー90%、α=0.05)
ちなみにこれは、非劣性を示すためのサンプルサイズ
※サンプルサイズが多くなると有意差が出やすくなる。中心極限定理(例数が増えてくると、分布が中央に集まりやすくなる。そのため、95%信頼区間の幅が狭くなる。)が関係している。
参照↓
https://bellcurve.jp/statistics/course/8543.html
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→追跡率96%
追跡期間
→平均188.2週間(CANVAS:295.9週、CANVAS-R:108.0週)
結果
【ベースライン】
平均年齢:カナグリフロジン群:63.2±8.3歳 プラセボ群:63.4±8.2歳
糖尿病の罹患期間:カナグリフロジン群:13.5±7.7年 プラセボ群:13.7±7.8年
BMI:カナグリフロジン群:31.9±5.9 プラセボ群:32.0±6.0
HbA1c:カナグリフロジン群:8.2±0.9% プラセボ群:8.2±0.9%
【アウトカム】
(Primary)心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカム
カナグリフロジン群:26.9件/1000人年vs プラセボ群:31.5件/1000人年
HR=0.86(95%CI:0.75~0.97) 非劣性 p<0.001 優越性 p=0.02
NNT=218/年
心血管死亡
カナグリフロジン群:11.6件/1000人年vs プラセボ群:12.8件/1000人年
HR=0.87(95%CI:0.72~1.06)
非致死性心筋梗塞
カナグリフロジン群:9.7件/1000人年vs プラセボ群:11.6件/1000人年
HR=0.85(95%CI:0.69~1.05)
非致死性脳卒中
カナグリフロジン群:7.1件/1000人年vs プラセボ群:8.4件/1000人年
HR=0.90(95%CI:0.71~1.15)
【有害事象】
切断
カナグリフロジン群:6.3件/1000人年vs プラセボ群:3.4件/1000人年
HR=1.97(95%CI:1.41~2.75) p<0.001 NNH=345/年
全骨折
カナグリフロジン群:15.4件/1000人年vs プラセボ群:11.9件/1000人年
HR=1.26(95%CI:1.04~1.52) p=0.02 NNH=286/年
男性の性器感染
カナグリフロジン群:34.9件/1000人年vs プラセボ群:10.8件/1000人年
p<0.001 NNH=42/年
女性の真菌感染
カナグリフロジン群:68.8件/1000人年vs プラセボ群:17.5件/1000人年
p<0.001 NNH=20/年
感想
カナグリフロジンで、心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカムはHR=0.86(95%CI:0.75~0.97)ということで、95%信頼区間の上限(0.97)が非劣性マージンの1.3を下回っていることからプラセボに対する非劣性が示されている。95%信頼区間が1をまたいでいない事から、優越性についても示されている(p=0.02)。
心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中の複合アウトカムとしては有意差が付いているものの、個々のアウトカム(心血管死亡、非致死性心筋梗塞、非致死性脳卒中)はいずれも有意差が付いていない。
この研究はそもそも非劣性試験として設計されている点からも、結果の解釈には注意が必要かとは思われる。
用量として、カナグリフロジン100mgを用いた患者と300mgを用いた患者、初期用量として100mg、その後300mgに増量した患者がいる。本来であれば、用量別の結果を示すべきだろうが、それをまとめてカナグリフロジン群とまとめている所も問題があるかと思われる。この研究は、CANVAS試験とCANVAS-R試験の結果を統合したものであるが、この2つの研究においては追跡期間も異なる点から、統合する事が妥当ではないように思われる。
Figure1を見てみると、そもそもHbA1cは時間経過とともにカナグリフロジン群とプラセボ群の差が小さくなってきている。一方で、体重や収縮期血圧は時間経過を経ても、2群間の差が維持されている。もしかすると、Primary outcomeはHbA1cというよりは、これらの影響によるものなのかもしれない。
あちこちで言われている切断リスクについてはHR=1.97(95%CI:1.41~2.75)、そのHHN=345/年であり、重大なイベントであることを考えると決して少なくないと感じた。男性の性器感染や女性の真菌感染も頻度が高いと思う。
サブグループ解析を見てみると、βブロッカー服用患者や利尿薬を服用している患者でカナグリフロジン優位という結果になっている。
骨折リスクなども懸念されるため、骨粗鬆症リスクのあるような高齢者へは避けた方が良さそうな気がするし、感染症リスクを高める可能性がある事も示されている。今回の結果を加味すると、使用を検討するような患者というのはかなり限定的なものになるのではないだろうか。
糖尿病罹患期間は平均13.5年ほど、アテローム性血管疾患既往のある患者が70%以上と、比較的進行した糖尿病患者が対象となっており、少なくとも現時点では、このような患者にカナグリフロジンを積極的に用いるような根拠とはならないように思われる。
実はまだ、EMPA-REGもちゃんと読んでいないので読んでみます。
Empagliflozin, Cardiovascular Outcomes, and Mortality in Type 2 Diabetes.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/26378978
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
高齢者のHbA1cはどれぐらいにコントロールするのがいいですか?
ご訪問ありがとうございます。
ある本を読んでいて気になる論文を見つけたので、読んでみました。
参考文献 Glycosylated hemoglobin and functional decline in community-dwelling nursing home-eligible elderly adults with diabetes mellitus.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=22702660
PMID:22702660
研究デザイン:コホート研究
論文のPECO
P:施設入所が必要とされるような糖尿病患者367名
E:HbA1c<7.0、8.0<HbA1c<8.9%、9.0%<HbA1c
C:HbA1c7.0~7.9(reference)
O:機能低下、機能低下と2年以内の死亡
※機能低下→ベースラインからのADLの低下
ベースラインのADL:HbA1c測定前6か月以内で一番直近のADLスコア
フォロー後のADL:HbA1c測定後24±3カ月のADL
研究対象集団の代表性
→一般の地域在住の高齢者へ結果をそのまま適用は出来ないかもしれない。
※オンロック:要介護老人にデイセンターでサービスを提供しながら在宅生活の継続を保障するために始められたNPO(以下のリンク先より引用)
On Lokについて↓
https://mediva.co.jp/oishi-blog/2014/11/on-lokpace-program-center.html
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
調節した交絡因子は何か?マッチングされているか?
→年齢、性別、種族・民族、On Lok加入からの期間、ベースラインのADL、併存疾患(悪性腫瘍、虚血性心不全、慢性閉塞性肺疾患、腎臓病、透析)、治療薬(無し、経口、インスリン)
追跡期間
→2年間
結果
【ベースライン】
平均年齢:80±9歳
治療薬
治療薬無し:48%、経口血糖降下薬(インスリン無し):32%、インスリン:50%
ADL
10~9点:34% 8~7点:23% 6~5点:25% ≦4点:19%
【アウトカム】
2年以内の死亡
HbA1c7.0~7.9:reference
HbA1c<7.0:調整リスク比=1.06(95%CI:0.92~1.21)
8.0<HbA1c<8.9%:調整リスク比=0.95(95%CI:0.80~1.13)
9.0%<HbA1c:調整リスク比=1.09(95%CI:0.91~1.29)
身体機能の低下
HbA1c7.0~7.9:reference
HbA1c<7.0:調整リスク比=1.07(95%CI:0.95~1.21)
8.0<HbA1c<8.9%:調整リスク比=0.90(95%CI:0.78~1.05)
9.0%<HbA1c:調整リスク比=0.98(95%CI:0.82~1.16)
身体機能の低下と2年以内の死亡
HbA1c7.0~7.9:reference
HbA1c<7.0:調整リスク比=1.07(95%CI:0.98~1.17)
8.0<HbA1c<8.9%:調整リスク比=0.88(95%CI:0.79~0.99)
9.0%<HbA1c:調整リスク比=0.97(95%CI:0.84~1.12)
感想
今回の結果によると、高齢者のHbA1cは8.0~8.9の間を目指すのが最も機能低下や死亡が発生しにくいという事であった。
対象集団は施設入所を要するような患者であるが、インスリンを50%の患者で導入されている。On Lokではどの程度治療のサポートがあるのか不明だが、結構手厚くサポートを受けているのかもしれない。
もしかすると、アドヒアランスなどは一般的な地域在住の高齢者と相違があるかもしれない。なので、そのままこの結果を一般家庭の高齢者へ適用する事は出来ないのかもしれない。少なくとも80歳を超えるような高齢者において、HbA1c<7.0のような比較的厳しい血糖コントロールをしなくてもいいのではないかと思う。
このような高齢者の、HbA1cの違いによる転倒・骨折リスクについても気になる所ではある。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。
血糖値をしっかりコントロールしたら10年後はどうですか?(UKPDS80)
ご訪問ありがとうございます。
今回は糖尿病の有名な論文である、UKPDS80を読んでみました。
参考文献 10-year follow-up of intensive glucose control in type 2 diabetes.
リンク https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=18784090
PMID:18784090
研究デザイン:ランダム化比較試験
論文のPECO
P:25~65歳で食後血漿中グルコース108~270mg/dLの新規に2型糖尿病と診断された患者のうちUKPDSに参加した者
E:標準治療(食事制限)の治療終了10年後
C:厳格治療(SU薬、インスリン、標準体重の120%以上の患者ではメトホルミン)の治療終了10年後
O:7項目
①糖尿病関連エンドポイント(突然死、高血糖または低血糖による死亡、致死性・非致死性心筋梗塞、狭心症、心不全、致死性・非致死性脳卒中、腎不全、切断、硝子体出血、網膜光凝固術、片目失明、白内障摘出術)
②糖尿病関連死亡(突然死、心筋梗塞・脳卒中・末梢血管疾患・腎疾患・高血糖。低血糖による死亡)
③総死亡
⑥末梢血管疾患(指の切断、末梢血管疾患による死亡)
⑦微小血管疾患(硝子体出血、網膜光凝固術、腎不全)
※UKPDS研究終了後、3277名が5年間は1年に1回UKPDSの病院を受診するように指示された。ただし、UKPDSで割りつけられた治療は維持されなかった。6~10年間は年1回の質問票に回答してもらった。
ランダム化されているか?
→ランダム化されている
一次アウトカムは明確か?
→アウトカムとして7つ挙げられており、多く設定されているためどれか偶然に有意差が出てしまうのではないかという懸念はある。やや注意が必要かもしれない。
真のアウトカムか?
→真のアウトカム
盲検化されているか?
→盲検化は不可能かと思われる。PROBE法?
均等に割り付けられているか
→均等に2群に割り付けられていると思われる
ITT解析を行われているか?
→ITT解析されている
サンプルサイズ
→記載なし
脱落率は結果を覆すほどあるか?
→Figure1の文章の下から1行目にOverall, 3.5% of patients were lost to follow-upの記載があるため、追跡率は96.5%
追跡期間
→インスリン、SU薬群:8.5年 メトホルミン群:8.8年
結果
【ベースライン】
平均年齢
SU薬 標準治療:63±9歳 厳格治療:63±9歳
メトホルミン 標準治療:63±9歳 厳格治療:64±9歳
※理想体重の120%以上の患者はメトホルミン服用
SU薬 標準治療:8.5% 厳格治療:7.9%
メトホルミン 標準治療:8.9% 厳格治療:8.4%
SU薬 標準治療:28.7±5.6 厳格治療:29.3±5.5
メトホルミン 標準治療:32.2±5.7 厳格治療:31.7±5.4
※追跡開始1年後ぐらいで厳格治療群と標準治療群のHbA1cの値は同等になっている。(Figure2より)
【アウトカム】
①糖尿病関連エンドポイント
・インスリン/SU薬:48.1/1000人年 vs 標準治療群:52.2/1000人年
リスク比=0.91(95%CI:0.83~0.99) p=0.04
・メトホルミン:45.7/1000人年 vs 標準治療群:53.9/1000人年
リスク比=0.79(95%CI:0.66~0.95) p=0.01
②糖尿病関連死亡
・インスリン/SU薬:14.5/1000人年 vs 標準治療群:17.0/1000人年
リスク比=0.83(95%CI:0.73~0.96) p=0.01
・メトホルミン:14.0/1000人年 vs 標準治療群:18.7/1000人年
リスク比=0.70(95%CI:0.53~0.92) p=0.01
③総死亡
・インスリン/SU薬:26.8/1000人年 vs 標準治療群:30.3/1000人年
リスク比=0.87(95%CI:0.79~0.96) p=0.007
・メトホルミン:25.9/1000人年 vs 標準治療群:33.1/1000人年
リスク比=0.73(95%CI:0.59~0.89) p=0.002
④心筋梗塞
・インスリン/SU薬:16.8/1000人年 vs 標準治療群:19.6/1000人年
リスク比=0.85(95%CI:0.74~0.97) p=0.01
・メトホルミン:14.8/1000人年 vs 標準治療群:21.1/1000人年
リスク比=0.67(95%CI:0.51~0.89) p=0.005
⑤脳卒中
・インスリン/SU薬:6.3/1000人年 vs 標準治療群:6.9/1000人年
リスク比=0.91(95%CI:0.73~1.13) p=0.39
・メトホルミン:6.0/1000人年 vs 標準治療群:6.8/1000人年
リスク比=0.80(95%CI:0.50~1.27) p=0.35
⑥末梢血管疾患
・インスリン/SU薬:2.0/1000人年 vs 標準治療群:2.4/1000人年
リスク比=0.82(95%CI:0.56~1.19) p=0.29
・メトホルミン:2.3/1000人年 vs 標準治療群:3.4/1000人年
リスク比=0.63(95%CI:0.32~1.27) p=0.19
⑦微小血管疾患
・インスリン/SU薬:11.0/1000人年 vs 標準治療群:14.2/1000人年
リスク比=0.76(95%CI:0.64~0.89) p=0.001
・メトホルミン:12.4/1000人年 vs 標準治療群:13.4/1000人年
リスク比=0.84(95%CI:0.60~1.17) p=0.31
感想
もとのUKPDS(33,34)終了後、追跡期間1年ほどで厳格治療群と標準治療群のHbA1cの値は同等になっている。それにも関わらず糖尿病関連死亡や総死亡、心筋梗塞は有意に厳格治療群で少ないという結果。また、脳卒中や末梢血管疾患は有意差こそ出ていないが減少傾向がみられる。
この結果から、糖尿病は初期段階の治療が割と重要なのかなという印象である。逆に言うと、初期の治療をしっかりやれば、その後はそこまで厳格な治療でなくてもいいということなのだろうか。
個人的には、DPP-4阻害薬を用いて初期治療を行った場合の結果というのも気になる所である。
今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。