心房細動患者に対するリバーロキサバンvsワルファリン

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、リバーロキサバンとワルファリンの比較です。ROCKET AF試験ってやつですね。

 

 参考文献 Rivaroxaban versus warfarin in nonvalvular atrial fibrillation.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=21830957

 

PMID:21830957

 

研究デザイン:ランダム化比較試験(非劣性)

※非劣性マージン:1.46

 

論文のPECO

P:脳卒中リスクの高い、非弁膜症性心房細動患者14264名

E:リバーロキサバン20mg/日(クレアチニンリアランス30~49mL/minの患者は15mg/日)

C:ワルファリン(INR2.0~3.0になるよう用量調節)

O:(Primary) 脳卒中(虚血性・出血性)と全身塞栓症の複合アウトカム

 

脳卒中リスク:脳卒中・一過性脳虚血性発作・全身塞栓症の既往歴、以下のうち2つ以上該当(心不全、左室駆出率35%以下、高血圧、75歳以上、糖尿病)

→CHADS2スコア≧2点

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている(double-dummyもされている)

※who provided sites with either real INR values (for patients in the warfarin group in

order to adjust the dose) or sham values (for patients in the rivaroxaban group receiving placebo warfarin) during the course of the trial.

→INRの変動で盲検化が見破られないよう、ワルファリン群は実際のINRを、リバーロキサバン群は偽値のINRを提供されている

 

隠蔽化されているか?

→Randomization was performed with the use of a central 24-hour, computerized, automated voice-response system.

隠蔽化されていると思われる

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析、Per-protocol解析

 

サンプルサイズ

→14000名(パワー95%、α=5%)

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率=99.8%

 

追跡期間

→中央値707日

 

結果

【ベースライン】

年齢:中央値73歳

CHADS2スコア:平均値:3.5点 中央値:3.0点

 

【アウトカム】

脳卒中と全身塞栓症の複合アウトカム(Primary outcome

リバーロキサバン群:1.7/100人年 vs  ワルファリン群: 2.2/100人年

HR=0.79(95%CI:0.66~0.96) p<0.001(非劣性が示された)

 

安全性

大出血+臨床上意義のある非大出血

リバーロキサバン群:14.9/100人年 vs  ワルファリン群: 14.5/100人年

HR=1.03(95%CI:0.96~1.11) p=0.44

 

大出血

リバーロキサバン群:3.6/100人年 vs  ワルファリン群: 3.4/100人年

HR=1.04(95%CI:0.90~1.20) p=0.58

 

頭蓋内出血

リバーロキサバン群:0.5/100人年 vs  ワルファリン群: 0.7/100人年

HR=0.67(95%CI:0.47~0.93) p=0.02 

 

感想

 Primary outcomeである脳卒中と全身塞栓症の複合アウトカムは、リバーロキサバンがワルファリンに比べて劣っていない事が示されている。また、大出血は両群で差が無く、頭蓋内出血はリバーロキサバン群で少ないという結果である。用量が国内で用いられているものよりやや多いので、もう少し変わってくることも考えられるが。

 現実として、リバーロキサバンとワルファリンの間で薬価の差が非常に大きい。そのことを考慮すると、頭蓋内出血が少ないとはいえ、247人に1人程度頭蓋内出血を回避できる程度の違いであり、積極的にワルファリンからリバーロキサバンに変更を勧めるというようなものではないという印象である。

 国内の結果を検討した、J-ROCKET AF試験も読んでおく必要がある。↓

参考文献 Rivaroxaban vs. warfarin in Japanese patients with atrial fibrillation – the J-ROCKET AF study –.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/22664783

 

PMID:22664783

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

DOACはワルファリンより死亡を減らせますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、DOAC vs ワルファリンの死亡についてのメタ分析を見つけたので、読んでみました。

 

参考文献 Comparing mortality in patients with atrial fibrillation who are receiving a direct-acting oral anticoagulant or warfarin: a meta-analysis of randomized trials.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=24986568

 

PMID:24986568

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:心房細動患者

E:DOAC

C:ワルファリン

O:①総死亡 ②血管性死亡 ③出血性死亡 ④頭蓋内出血

 

 ※対象となっているDOAC

→ダビガトラン、リバーロキサバン、アピキサバン、エドキサバン

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→いずれも真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

→2名の評価者が独立して(?)データ抽出

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2出版バイアス

情報元:PubMed

・言語制限などは不明。未出版のデータも探してはいないと思われる。

 

出版バイアスはやや疑われるかも?

 

3、元論文バイアス

・Cochrane Collaboration toolを用いて評価している

→there was a low risk of bias for all key domains for the ROCKET-AF, ARISTOTLE and ENGAGE AF-TIMI 48 trials. For the RE-LY trial, there was an unclear risk of bias for one key domain but, overall, a low risk of bias for all other key domains (Table 2 and Table S2).

 

元論文バイアスもさほど問題なさそう

 

4、異質性バイアス

・総死亡、血管性死亡、出血性死亡の異質性は少ない。頭蓋内出血は、やや異質性あり。

 

 

結果

総死亡

DOAC:3205/42341件 vs ワルファリン:2245/29221件

RR0.89 (95%CI:0.85~0.94) I2=0% p<0.0001

ARR=0.76 NNT=132

 

血管性死亡

DOAC:2098/42341件 vs ワルファリン:1465/29221件

RR0.88 (95%CI:0.82~0.94) I2=0%  p<0.0001

ARR=0.53 NNT=189

 

出血性死亡

DOAC:165/42304件 vs ワルファリン:208/29221件

RR0.54 (95%CI:0.44~0.67) I2=0%  p<0.00001

ARR=0.32 NNT=313

 

頭蓋内出血

DOAC:272/42304件 vs ワルファリン:425/29221件

RR0.42 (95%CI:0.34~0.53) I2=53%  p<0.00001

ARR=0.85 NNT=118

 

感想

総死亡、血管性死亡、出血性死亡、頭蓋内出血のいずれもワルファリン群に比べ、DOAC群で少ないという結果。

 しかしながら、NNTを見てみると総死亡は132、血管性死亡は189、出血性死亡は313、頭蓋内出血は118ということで、その薬価に見合っただけのベネフィットが得られるかと問われると、微妙な感じがする。

 個々の元論文によって、追跡期間やワルファリンのTTRが異なるため、単純にDOAC同士の効果の比較をすることは、このメタ分析の結果からは難しいと思われる。

 このテーマについては、引き続き追いかけていこうと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

喘息のコントロールにフルチカゾン+ビランテロールはどうですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、喘息患者に対するフルチカゾンフランカルボン酸+ビランテロールの効果に関する論文です。残念ながらアブストラクトしか読めない論文です。

 

参考文献 Effectiveness of fluticasone furoate plus vilanterol on asthma control in clinical practice: an open-label, parallel group, randomised controlled trial.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/28903864

 

PMID:289003864

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:18歳以上の症候性喘息と診断され吸入剤による維持療法を受けている患者

E:フルチカゾンフランカルボン酸(100 or 200㎍)+ビランテロール25㎍を1日1回吸入

C:通常ケア

O:(Primary) ベースラインのACTスコアが20点未満の患者のうち、ACTスコアが20点を上回った患者、または24週後でベースラインからACTスコアが3点以上改善した患者(レスポンダー)の割合

 

※ACTスコア(喘息コントロールスコア)について↓

GSKホームページより http://zensoku.jp/tools/tools_002.html

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→代用のアウトカム?

 

盲検化されているか?

→オープンラベル

 

均等に割り付けられているか

→不明

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→サンプルサイズに関する詳細の記載が見つけられず。

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→追跡率に関する記載が見当たらない

 

追跡期間

→12カ月

 

結果

レスポンダーの割合

E群:977/1373名(71%)vs C群:784/1399名(56%)

OR=2.00(95%CI:1.70~2.34) p<0.0001

 

ベースラインからの平均ACTスコアの変化

E群:4.4点 vs C群:2.8点

両群の差:1.6点(95%CI:1.3~2.0点) p<0.0001

 

有害事象

両群間に重篤な有害事象の発生の差はなかった。

 

感想

 レスポンダーの割合は、フルチカゾン+ビランテロール群で有意に多いという結果。しかしながら、この研究はオープンラベルのデザインであり、このような自己評価スコアのような主観的なアウトカムでは、プラセボ効果も無視できないのではないだろうか。

 また、改善したスコアの差も通常ケア群と比べて1.6点ということで、25点満点の1.6点がどの程度臨床上大きな差なのかは疑問である。

 ただ、実際に現れてくる効果としては、プラセボ効果+実際の薬剤の効果となると思う。有害事象を確認するのには人数が少ないような気もするが、この人数では有害事象に差が無かったという事も踏まえ、しばらく使ってみるという選択肢もアリかなと思った。

 この領域に関しては、デバイスの使い勝手という事も重要かと思う。エリプタは比較的操作も簡単だと思うが、うまく使えるかの確認も重要かなと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございます。

心筋梗塞後の少量n‐3系脂肪酸で心血管イベントは減らせますか?

ご訪問ありがとうございます

 

今回は、心筋梗塞後の患者に対するn-3系脂肪酸の、心血管イベント抑制効果に関する論文です。

 

参考文献 n-3 fatty acids and cardiovascular events after myocardial infarction.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/?term=20929341

 

PMID:20929341

 

研究デザイン:ランダム化比較試験

 

論文のPECO

P:60~80歳の、10年以内に心筋梗塞を起こした患者のうち降圧薬、抗血栓薬、脂質補正薬の治療を行っている患者4837名

E:①EPA+DHA400mg ②α-リノレン酸(ALA)2g ③EPADHA+α-リノレン酸

C:プラセボ

O:(Primary) 致死的・非致死的心血管イベント(心筋梗塞、心停止、脳卒中を含む)、PCI、冠動脈バイパス術の複合アウトカム

 

※引用文献16を参照↓↓

http://www.ahjonline.com/article/S0002-8703(10)00074-8/pdf

 

※除外基準

マーガリンの1日摂取量<10g、n-3系サプリメント使用、1年以内の5kg以上の意図しない体重減少、余命1年未満の悪性腫瘍

 

ランダム化されているか?

→ランダム化されている

 

一次アウトカムは明確か?

→明確??(あまり具体的な記載ではない印象)

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

盲検化されているか?

→二重盲検されている

 

均等に割り付けられているか

→均等に2群に割り付けられていると思われる

 

ITT解析を行われているか?

→ITT解析されている

 

サンプルサイズ

→4800名(パワー80%、α=5%)※Supplementary Appendixより

 

脱落率は結果を覆すほどあるか?

→No patients were lost to follow-up.(追跡率100%)

 

追跡期間

→中央値3.7年

 

結果

EPA-DHA群:EPA-DHA服用あり、ALA/プラセボ群:EPA-DHA服用無し

※ALA群:ALA服用あり、EPA/プラセボ群:ALA服用無し

 

Primary outcome

EPA-DHA群:336/2404件(14.0%)vs ALA/プラセボ群:335/2433件(13.8%)

HR=1.01(95%CI:0.87~1.17) p=0.93

 

ALA群:319/2409件(13.2%)vs EPA-DHA/プラセボ群:352/2428件(14.5%)

HR=0.93(95%CI:0.78~1.05) p=0.20

 

感想

 心筋梗塞後の患者に対してEPA-DHA、α-リノレン酸の追加投与ともに心血管イベントを減らさないという結果である。

 用いられているEPADHAの平均用量はEPAが226mg、DHAが150mgであり、国内で用いられるような量と比較すると少ない。

 少なくともこの論文によると、心筋梗塞後の患者に対してEPADHA、ALAいずれも心血管イベントを減らすような結果ではなく、積極的に少量のn-3系脂肪酸の追加摂取を勧めるような印象ではない。.

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

NSAIDごとに心不全リスクは異なりますか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今日は、11月11日です。そう、ポッキー&プリッツの日ですね。

皆さんはポッキーまたはプリッツを食べるのでしょうか?

 

さて、そんなことは全く関係ないですが、今回は、NSAIDごとの心不全リスクを調べた研究です。

 

参考文献 Non-steroidal anti-inflammatory drugs and risk of heart failure in four European countries: nested case-control study.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27682515

 

PMID:27682515

 

研究デザインコホート内症例対象研究

 

 

論文のPECO

P:18歳以上の新規にNSAIDを開始した成人のうち、心不全のため入院した92163名(症例)と、年齢、性別、コホート参加日でマッチングした8246403名(対照)

E:NSAIDを服用

C:NSAID服用無し

O:心不全による入院

 

コホート参加の前年に心不全による入院をした患者は除外

 

研究対象集団の代表性

→4か国(オランダ、イタリア、ドイツ、イギリス)の人口ベースの医療データベースが用いられており、大きな問題は無いかと思われる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

アウトカムは明確か?

→明確と言える

 

調節した交絡因子は何か?

コホート参加日の年齢、併存疾患、併用薬

※Table 2 reports the full list of covariates.と記載あり→詳しくはTable2を参照

 

結果

※服用のタイミングによる定義

・Current:アウトカム発生14日以内の使用 

・Recent:アウトカム発生15~183日前の使用

・Past:184日以上前

 

心不全による入院

【服用タイミングごとのオッズ比】

Current vs Past  OR=1.19(95%CI:1.17~1.22)

Recent vs Past  OR=1.00(95%CI:0.99~1.02)

 

NSAIDごとのオッズ比】 ※主なもののみ

インドメタシン     OR=1.51(95%CI:1.33~1.71)

スリンダク       OR=1.32(95%CI:0.79~2.21)

ジクロフェナク     OR=1.19(95%CI:1.15~1.24)

イブプロフェン     OR=1.18(95%CI:1.12~1.23)

ナプロキセン      OR=1.16(95%CI:1.07~1.27)

ロルノキシカム     OR=1.06(95%CI:0.80~1.41)

ケトプロフェン     OR=1.03(95%CI:0.96~1.11)

メロキシカム      OR=1.02(95%CI:0.94~1.11)

フルルビプロフェン   OR=0.97(95%CI:0.68~1.04)

セレコキシブ      OR=0.96(95%CI:0.90~1.02)

エトドラク       OR=0.87(95%CI:0.63~1.19)

 

感想

 オッズ比がものすごく大きいわけではないが、NSAID服用中はやはり心不全に注意が必要であると思われる。少なくとも、漫然と不必要に処方する事は避けた方が良さそうである。

 インドメタシンやジクロフェナク、イブプロフェンなどではエトドラクやセレコキシブよりも心不全による入院のオッズ比が大きくなっている。しかし、あくまで観察研究の結果であり、このまま鵜呑みには出来ない印象。

    この研究対象患者からは、コホート参加日前の1年以内に心不全による入院歴がある患者は除外されているようである。(We excluded participants if they:→4つ目の項目に、Were admitted to hospital with a primary diagnosis of heart failure in the year before the date of cohort entryと記載あり)心不全リスクの高い患者が除外されているものと思われ、心不全リスクの高い患者では、より注意が必要かもしれない。

 この論文の結果だけでみると、心不全のリスクがある患者にNSAIDを用いる必要がある場合、ジクロフェナクなどよりは、セレコキシブなどの方がいいのかもしれない。しかし、他の心血管イベントリスクなども調べてみなければ何とも言えないので、今後調べてみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

血糖値は厳格にコントロールするべきですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

今回は、血糖値をしっかり下げるべきなのか検討したメタ分析の論文です。

 

参考文献 Effect of intensive glucose lowering treatment on all cause mortality, cardiovascular death, and microvascular events in type 2 diabetes: meta-analysis of randomised controlled trials.

リンク   https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/21791495

 

PMID:21791495

 

研究デザイン:メタ分析

 

論文のPECO

P:18歳以上の2型糖尿病患者

E:血糖値の厳格コントロール

C:血糖値の標準コントロール

O:(Primary)総死亡、心血管死亡

 (Secondary)重篤な低血糖、全心筋梗塞、非致死性心筋梗塞、致死性脳卒中、非致死性脳卒中、うっ血性心不全、光凝固、網膜症(新規発症、悪化)、微量アルブミン尿、腎不全(腎不全の悪化、血清アルブミンの倍化)、末梢血管疾患(脚の血管再建術、末梢動脈疾患、間欠性跛行)、切断、重篤な低血糖

 

一次アウトカムは明確か?

→明確といえる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

4つのバイアス

1、評価者バイアス

・2名の評価者が独立してデータ抽出している

 

評価者バイアスはさほど問題なさそう

 

2出版バイアス

情報元:MEDLINE、EMBASE、Cochrane database of systematic reviews

・without any language restriction(言語制限なしに検索されている)

・未出版のデータを集めているかは不明

 

出版バイアス多少はあるかも

 

3、元論文バイアス

・13個のRCTを集めている

・Jadad scoreを用いて元論文の質を評価している

・Table1より、ほとんどの元論文がJadad score3点以上

 

元論文バイアスはさほど問題なさそう

 

4、異質性バイアス

→Primary outcomeは、やや異質性が高いように思われる

 

 結果

※今回の論文はP<0.01で有意差あり

 

【Primary outcome

総死亡

リスク比1.04 (99%CI:0.91~1.19)  I2=42% P=0.47

 

心血管死亡

リスク比1.11 (99%CI:0.86~1.43)  I2=61% P=0.29

 

Secondary outcome】

心筋梗塞

リスク比0.90 (99%CI:0.81~1.01)  I2=0% P=0.02

 

非致死性心筋梗塞

リスク比0.85 (99%CI:0.74~0.96)  I2=0% P<0.001

 

脳卒中

リスク比0.96 (99%CI:0.83~1.13)  I2=0% P=0.55

 

非致死性脳卒中

リスク比1.00 (99%CI:0.83~1.21)  I2=0% P=0.95

 

うっ血性心不全

リスク比1.17 (99%CI:0.91~1.50)  I2=59% P=0.11

 

網膜症(新規発症、悪化)

リスク比0.85 (99%CI:0.71~1.03)  I2=54% P=0.03

 

光凝固

リスク比0.91 (99%CI:0.71~1.17)  I2=57% P=0.32

 

視力の悪化または失明

リスク比1.00 (99%CI:0.96~1.05)  I2=0% P=0.99

 

神経障害(新規発症、悪化)

リスク比0.99 (99%CI:0.95~1.03)  I2=0% P=0.54

 

微量アルブミン尿(新規発症、悪化)

リスク比0.90 (99%CI:0.85~0.96)  I2=31% P<0.001

 

腎不全の悪化または血清クレアチニンの倍化

リスク比1.03 (99%CI:0.98~1.08)  I2=0% P=0.15

 

末梢血管イベント

リスク比0.98 (99%CI:0.84~1.13)  I2=34% P=0.69

 

切断

リスク比0.84 (99%CI:0.54~1.29)  I2=0% P=0.30

 

重篤な低血糖

リスク比2.33 (99%CI:1.62~3.36)  I2=63% P<0.001

 

感想

 このメタ分析では、血糖値を厳格にコントロールするのと標準的にコントロールするので、総死亡、心血管死亡は変わらないという結果。また、低血糖はやはり厳格にコントロールした方が2.33倍多いという結果である。

 元論文のそれぞれの目標血糖値や患者の対象年齢、糖尿病罹患期間なども異なるため、一概には言えないと思うが、必ずしも厳格な血糖コントロールを行った方がいいとは言い切れない。

 Table1を見てみると、元論文の対象患者の年齢は比較的若く、追跡期間もあまり長くない物も多い。この事も結果に影響しているのかもしれないと感じた。

 あくまでメタ分析の結果であるが、統合されている元論文は重要文献が盛りだくさんという印象なので、今更ながらPROactive試験など、まだ読んでいない物は読んでみようと思う。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。

インスリン デテミルやインスリン グラルギンはNPH製剤に比べ総死亡は少ないですか?

ご訪問ありがとうございます。

 

あっという間に11月に入り、今年も残る所2か月を切ってしまいましたね。

最近は疲れ気味なのと、朝も寒いので、なかなか布団から出られない毎日を送っています(´-ω-`)

 

 さて、今回は基礎インスリンどうしの死亡を比較した論文です。

 

参考文献 All-Cause and Cause-Specific Mortality among Users of Basal Insulins NPH, Detemir, and Glargine.

リンク  https://www.ncbi.nlm.nih.gov/pubmed/27031113

 

PMID:27031113

 

研究デザインコホート研究

 

論文のPECO

P:40歳以上の2型糖尿病患者23751名

E:①インスリン デテミル ②インスリン グラルギン

C:NPH製剤

O:総死亡、原因別死亡

 

 

研究対象集団の代表性

フィンランドの一般人口を対象にしており、大きな問題無いと思われる

 

真のアウトカムか?

→真のアウトカム

 

調節した交絡因子は何か?

→傾向スコアマッチが行われている

※年齢、性別、過去の基礎インスリンでないインスリン製剤使用の有無、過去のSU薬使用の有無、過去の重篤な低血糖による入院の有無、index date

 

追跡期間

→中央値1.7年

 

結果

【ベースライン】

平均年齢 65.5歳

 

【アウトカム】

総死亡

デテミル vs NPH  調整HR=0.39(95%CI:0.30~0.50) p<0.001

 

グラルギン vs HPH  調整HR=0.55(95%CI:0.44~0.69)  p<0.001

 

デテミル vs グラルギン  HR=0.71(95%CI:0.54~0.93)  

 

心血管死亡

デテミル vs NPH  調整HR=0.42(95%CI:0.28~0.61) p<0.001

 

グラルギン vs HPH  調整HR=0.65(95%CI:0.47~0.91)  p=0.012

 

デテミル vs グラルギン  HR=0.64(95%CI:0.43~0.95) 

 

癌による死亡

デテミル vs NPH  調整HR=0.23(95%CI:0.14~0.40) p<0.001

 

グラルギン vs HPH  調整HR=0.35(95%CI:0.22~0.54)  p<0.001

 

デテミル vs グラルギン  HR=0.67(95%CI:0.38~1.18) 

 

消化器疾患による死亡

デテミル vs NPH  調整HR=0.45(95%CI:0.19~1.06) p=0.064

 

グラルギン vs HPH  調整HR=0.44(95%CI:0.19~1.00)  p=0.049

 

感想

 HPH製剤を用いた場合と比べ、インスリン デテミル、インスリン グラルギンを用いた場合の方が総死亡、心血管死亡、癌による死亡は少なくなる可能性が示されている。

 また、インスリン グラルギンよりインスリン デテミルの方がリスクは少ない可能性が示されている。

 今回の対象患者の平均年齢は65.5歳と比較的若く、追跡期間も中央値1.7年にも関わらず、このような死亡率に差が出ていることは少々驚きであった。

 あくまでも観察研究なので、結果を鵜呑みには出来ないと思うが、あえて用いるのであればNPH製剤よりは、インスリン デテミルやインスリン グラルギンの方がいいかなという印象。

 

今回も最後までお付き合い頂きありがとうございました。